「あにきー、はい奇麗な腕輪」
「ああ、ダウド。ありがとよ」
俺の名前はダウド、あにきはジャミル。南エスタミルの町でコソ泥やってる。
「しっかし、しけてやがんなー」
「しょうがないじゃん、まだまだ大物には成れないよ」
「この町に居たって駄目だな、こりゃ」
「どこにも行けないよ?」
「なーに、言ってんだよ。裏技ってもんが有るんだぜ」
「え? 裏技? なになに?」
「ちょっと来い」
裏通りに身をひそめる。
「冒険者ギルドに入っちまうんだよ」
「盗賊ギルド、抜けたらやばいよ!」
「しーっ! 大きい声出すな。大丈夫だって、俺達みたいな下っ端は居なくなっても誰も気にしやしないさ」
「俺達弱いんだから、町から出られないよ? 船に乗る金もないし」
「だから、裏技があるって」
「どうやって町を出るの?」
「町はずれに下水道が有るだろ? あそこから北エスタミルに行けるらしいんだよ」
「下水道って、あそこモンスター一杯なのに無理じゃん」
「だから、冒険者ギルドに入っちまうのさ」
「それで?」
「冒険者ギルドの登録はパブで名前と親の職業書き込むだろ?」
「うん」
「親の職業、魔術師って書いちまえば魔法が使えるようになるんだよ」
「まさか、それに魔法って高いんでしょ」
「魔法使いになっちまえば最初の魔法はタダなんだぜ」
「冒険者ギルドに嘘ついて大丈夫なの?」
「平気さ、みんな名前だって適当に書いてるって」
二人でこっそりパブに行って冒険者ギルドに登録。何故か俺はどうしても嘘が書けなかった。書けたあにきは大騒ぎ。
「うおー、魔法だー!」
「俺。どうしても嘘、書けなかったよ」
「なんだよ、だらしねーな。まあ良い、買い物してから出かけるぞ」
あにきは傷薬を買って、近所のおばさんに小銭を何度もあげていた。
「俺達、一文無しになっちゃったね」
「餞別だからな、あれで良いんだよ。下水道に行くぞ」
下水道の入口で装備を確認。
「ダウド。お前、アイアンソードと傷薬を装備しとけ」
「あにきは?」
「俺は魔法だ。ほら腕輪も付けとけ」
「わかった」
「途中までは徹底的に逃げていくからな」
「う、うん」
下水道の中に入る。必死で逃げまくったが、階段の下にどうしても逃げられない魚が居た。
「あいつらは倒すぞ! エナジーボルト!」
「うわっ、一撃! あにきすげー」
「ほら次だ」
三つの群れを倒した。
「走れ、ダウド!」
「水が!」
「いいから来い」
しばらくモンスターから逃げていたが、あにきは途中で立ち止まった。
「あそこだ」
「なに? 早く出ようよ」
「あそこの扉、入るぞ」
入ってみたらアンデッドの巣。
「付いて来い、走れ!」
「骨とかゾンビが一杯だよ!」
「墓だ! あそこまで走れ!」
墓に着くと天井が光った。
「聖杯だ。情報通り」
「ゾンビとかこっち来てるよ!」
「こいつら倒しまくるぞ!」
「えー!」
「聖杯!」
「なにそれー! 一掃じゃん」
「はっはっは。これが有りゃあ、ゾンビなんか目じゃねーな」
「金貨が一杯貯まりまくりだよ」
「とにかく出るか、魔法の残り回数が心もとないからな」
「今日は美味しいご飯食べられるね」
「出るまで気を抜くんじゃねーぞ」
「わかった!」
何とか下水道を脱出し、北エスタミルのパブに向かった。
「あにき、ご飯美味しいねー」
「同じエスタミルって言っても、こっちは町中もすげー奇麗だな」
「奇麗って言えば、あそこの女の人、すっごい奇麗だよ」
「なんだ、気に入っちまったのか」
「うん、うんうん」
「しかし、駄目だな。ありゃあ、本物の魔術師だぜ」
「駄目なの?」
「見ろよ、ろくな装備も無いくせに。ドレスなんか着て、お高くとまってるぜ」
「そうなのかなー」
「それに魔法は高いからな。お前の分の魔法買えなくなっちまうだろ」
「でもでもー」
「そんなに言うなら行ってこい」
「やった」
ドキドキしながら女の人の所へ。
「俺はダウド。お姉さん、冒険者なら一緒に旅をしないかい?」
「あら、こんばんは。あたしはミリアム。うーん」
「俺、下水道で結構鍛えてきたんだぜ」
「駄目ね。あなた主人公適正無いじゃない」
「なにそれ、そこをなんとか」
「あっち行きなさい」
戻ってきたら、あにきが笑ってた。
「な、お高くとまってやがるだろ?」
「訳の分からないこと言って、あっち行けって。酷いよ」
「ちょっとは金も出来たんだ。明日は船で騎士団領に行ってみようぜ」
「船! 乗りたい乗りたい」
騎士団領ミルザブールに到着。町は山にモンスターが出たと大騒ぎ。
「おい、ダウド。あの城、家探ししてみようぜ」
「盗賊の血が騒いだ?」
「ふふっ、そういうこった」
高い指輪と大量の金貨。
「ため込んでやがったな、頂きだぜ。高い指輪はお前が付けてろ」
「ありがとう。何か買う?」
「もう一つ、町が有るらしいな。そっちにも行こう」
「うん!」
オイゲンシュタットの町。
「おい、パンチとキックは武器だってよ」
「なんで?」
「知らねーよ。でも、お前使ってみるか?」
「強いのそれ?」
「お前、素早いまんまだろ? 行けんじゃねーか?」
「ふーん」
「ほら、剣を振り回しながらパンチとかキックとか、荒くれ物の戦い方みたいで格好いいじゃねーか」
「あ、ミリアムさんも仲間になってくれるかな?」
「そいつはどうか分かんねーけど、やるだけやってみろよ」
「うん、やってみる」
オイゲンシュタットの城を家探ししていたら、領主に話しかけられてしまった。何故かそのままミルザブールへ。城の中では、モンスター討伐の会議中で大激論。
「討伐の為の資金が失われてしまったのだ、金が無くては兵は動かせん!」
「騎士団の誇りはどうした!」
「背に腹は代えられん、駄目なものは駄目だ!」
俺はあにきの袖を引っ張った。
「まずいよ。俺達が資金、持ってちゃったからモンスター討伐出来ないって。捕まっちゃうよ」
「大丈夫だ。見てろ」
会議の後、ミルザブールの領主テオドール様の部屋に連れて行かれた。オイゲンシュタットの領主と息子のラファエルも居た。
「ラファエル、我らだけでも騎士の誇りを示そうではないか!」
「はい、見習いの身ではありますが。騎士の誇りにかけて!」
「俺達も手伝うぜ!」
「あ、あにき」
「なんと、感謝するぞ!」
山のモンスターの巣へ一回目の突撃。見習いのラファエルが弱い。どのくらい弱いかって言うと、俺くらい弱い。
撤退して宿の中。あにきは皆の装備を確認すると言って部屋に防具を並べてみた。
「やっぱ、装備が足りねーな」
「防具高いよ」
「エスタミルの下水道でゾンビ倒して稼ぐか、四人いりゃ早いだろ」
「なんと、モンスターを放置してエスタミルに行くと。そんなことは出来ん。このアイアンソードと騎士の誇りが有れば、どんな敵も粉砕してくれるわ! 行くぞラファエル」
「はい!」
二人は防具を残して行ってしまった。
「馬鹿か、あいつら」
「このブロンズアーマーと木の盾、どうする?」
「貰っちまおうぜ」
「大丈夫かな?」
「平気だよ。あっちは貴族様だ、やばくなったら家臣が助けに行くさ」
「俺達どうする?」
「余裕のあるうちに南エスタミルに行って、火と風の術法買いてーな」
「戻ったら、盗賊ギルドに見つかっちゃうよ」
「大丈夫だ。ちょっと武装変えたらわかりゃしないよ」
「本当かなー?」
南エスタミルで、あにきはヘルファイアとアイスジャベリンを買った。
「騎士団のモンスター倒す?」
「ほっといても良いだろ」
「可哀そうだよー」
「仕方ねーな」
二人での騎士団領モンスター退治は難航を極めた。三度四度と撤退を余儀なくされたが、それでも戦う度に俺達は強くなってきたようだ。
「お前のパンチとキック、様になって来たな」
「あにきの魔法も回数増えたよね」
「聖杯も強いからな。次はさらに地下に潜るか」
「うん」
地下二階ではラファエルが倒れていた。横でテオドール様が勇気づけていた。
「助けないと」
「もう、あいつら足手まといだ。ほっとこう」
「でもでも」
「俺達がモンスター討伐しちまった方が早いんだよ。行くぞ」
なんだかんだで討伐できた。貴族の二人も帰ってきたようだ。
「金貨三千枚超えたよ!」
「冒険者になって良かったよな」
「うん! でも、テオドール様たちはどんよりしてたね」
「精神論者なんか、たまに痛い目見とけば良いのさ」
「次はどうする?」
「南エスタミルに戻るか。パブで情報集めようぜ」
南エスタミルのパブ。
「おい、ダウド。あそこに踊り子が居るぞ」
「本当だ」
「お前、派手好きだろ。声かけて来いよ」
「えー、俺はミリアムさんみたいに清楚な感じの人が良いな」
「なんだよ。仕方ねー俺が行くか」
翌朝。
「情報聞いて身ぐるみ剥いでやったぜ」
「冒険者ギルドに怒られちゃうよ!?」
「平気だって。冒険者なんて馬鹿ばっかりなんだから、次に会う頃には忘れてるよ」
「情報ってどんなの?」
「フロンティアの開拓地とローザリア地方の話だな」
「どっち行く?」
「そりゃお前、ローザリアだろ。クリスタルシティって凄いらしいぞ」
「名前からしてかっこいいよね」
「だろ? 開拓地なんてしけた所、行ってられないもんな」
クリスタルシティのパブ。
「うおー、おっぱいちゃんだ!」
「あっちにもかわいい子いるよ!」
「ありゃ、家出娘だな。面倒くさいからやめとけ」
「えー」
「俺はおっぱいちゃんに突撃してくるぜ!」
「なんだい? あんた達、あたしは骨のあるやつしか興味ないよ」
「俺はジャミル、こいつは弟分のダウドだ。俺達、結構やるんだぜ」
「本当かい? あたしはシフ。まあ試しにパーティ組んでも良いよ」
「あの、僕。うぅぅ」
「この子はアルベルト、ちょっとかわいそうな子でね。一緒に頼んでも良いかい?」
「おう、任せとけ」
「ちょっとちょっと、あにき。面倒くさいのは駄目なんじゃないの?」
「大丈夫だって、パブの親父に話せば仲間から外せるよ」
「それじゃ、シフさん怒るじゃん」
「だから言ったろ、冒険者なんて馬鹿ばっかりだって」
しかし、アルベルトは仲間から外せなかった。
「おかしい、こんなバグは無かったはずなのに」
「駄目だったの? じゃ、あっちの可愛い子の所、行ってみても良い?」
「ああ、行ってこい」
「俺はダウド、君は?」
「わたしはアイシャ」
「アイシャちゃん、こんな世界だ。一人で冒険は危ないよ、一緒に来ないかい?」
「ごめんなさい。わたしは助けてくれた王子様に会いたくて、この都市に居るの」
「あにきー、ふられたー」
「な、面倒くさいだろ」