俺達はアルベルトが頼まれたアクアマリンを取ってくるため、クリスタルレイクに向かった。モンスター退治は四人になって結構簡単になった。とはいえ、遅いシフさんと遅いうえに弱いアルベルトは残敵掃討係だ。アルベルトには敵が残ってない時も多い。
「ぼ、僕。アクアマリン返してくる」
「待て待て、そいつはまだ俺達に必要だ。返すのは後でもいい」
「え! そ、そんな!」
「どんどん北に行ってみようぜ!」
「あにき、どこまで行くの?」
「ノースポイントだ」
「ずいぶん北まで行くんだね。あんた達、何か当ては有るのかい?」
「アルベルトの姉さんを見たって話を聞いたんだよ」
「ほ、本当ですか?」
「あぁ、バッチリだ」
あにきはアルベルトを言いくるめると、アクアマリンを装備した。
「出かける前に、魔法と装備を整えないとな」
「魔法! 俺も使いたい」
「まずは三人とも癒しの水だな。それとシフとアルベルトは槍だ。ハルベルトを持て」
「中列に行くんだね、分かったよ」
「う、うん」
小遣い稼ぎとパーティ強化にガレサステップのモンスターを倒した。
「癒しの水があると安心だねー」
「俺は聖杯で回復できるからな。無い奴様に欲しかったんだよ」
「あんた達、本当に骨があったんだね。魔術師なんて口だけだと思ってたよ」
「あにきは魔術師で賢者なんだぜ。あにきの言う事聞いてりゃ何だって上手くいくのさ」
「ははっ、そうかい。賢者様だったのかい」
「どうだ? シフ。今夜の夕飯は二人で食わないか?」
「そう言うのは、まだ早いよ」
「姉さん。見つかると良いな」
「そうだね、賢者様が居るんだ。きっと大丈夫だよ」
ウロの村で泊まることになった。あにきはパブに行ったが、やはりアルベルトは外せなかったようだ。
「あいつ、シフにへばりついててさ。パブの親父の話、聞かせられないんだよ」
「じゃ、仕方ないね」
「あのシスコン野郎が、邪魔でしょうがないぜ」
ノースポイントに着いてもアルベルトの姉さんは居なかった。目撃情報は一杯あったので、手分けして情報集めると、船でアロン島に行ったらしい。
「アロン島、行くか」
「乗り掛かった舟だね」
「悪いね、あんた達」
「姉さん、どこへ」
ゴドンゴの村に着いた。このアロン島には海賊シルバーのお宝が眠っているという。
「こりゃ血が騒ぐぜ」
「やっぱり、行っちゃう?」
「当たり前だろ」
「姉さん、別の村で見かけたって人が」
「ん? ああ、アルベルト」
「なに?」
「お前たち兄弟はすれ違いになってる可能性が有る」
「そんな! じゃ、いつになったら会えるの?」
「こういう時は、しばらく腰を落ち着けてみるのも手だ」
「ここに?」
「そうだ。幸い、シルバーの洞窟って腕試しの場所も有るんだ」
「あら、良いねぇ。腕が鳴るよ」
こうしてシルバーの洞窟探しが始まった。何度目かのジャングルアタックの末、洞窟内に怪しいくぼみを見つけた。
「おい、これ」
「怪しいね。押してみる?」
「やれ」
「開いた!」
「なんだい? 何か見つけたのかい」
「絶対ここだぜ」
シルバーの洞窟探検が始まった。弱いアルベルトは戦闘中にすぐに倒れてしまう。
「ダウド、そいつは起こさなくて良い!」
「え、でも」
「モンスター倒せる奴が起きてる方が重要だ。全滅したら終わりだぞ」
「そうだね。気絶したって、勝てれば息を吹き返すんだ。こう言う子にはスパルタも必要だよ」
「シフさんまで」
「大丈夫だ、気にすんな」
シルバーの洞窟は厳しく、撤退を余儀なくされた。
「姉さん、僕は負けない」
スパルタで育てられてるアルベルトは、俺とアニキとシフさんよりも倒れる回数が多く、成長のチャンスは少なかった。それでも若いからか、少ないチャンスで少しづつ肉体の方は成長していったようだ。
数度のアタックの末。俺は剣とパンチとキックの技を二個づつ覚えた。もうそろそろ、三つめが出るかもしれない。シフさんは槍が強くなってきた。
「よし、今度こそ最下層まで潜るぞ!」
「よっしゃー」
そして最下層。ドラゴンが待ち受けていた。
「うわ、あんなの居るんだ」
「小さい方なら弱いんじゃないか?」
「やるよ!」
倒せた、倒せてしまった!
「毒霧きつかったなー」
「あにきが高い指輪付けさせてくれたから、俺。大丈夫だったよ」
「あたしも付いてきて良かったわ」
「もう一体は無理だな。今回はあきらめよう」
倒れまくったアルベルトは探索の途中から無言になってた。
帰り道。ドラゴンを倒したことで、あにきとシフさんの距離が近づいたようだ。当然、シフさんとアルベルトの距離が離れるので、俺のそばにアルベルトが居ることになる。
「おい、もう少しだ。元気出せよ」
「……」
今夜はウェイプの村に泊まることになった。あにきはパブの親父にアルベルトを預けてシフさんと食事。俺は村を歩いていた感じの良い子と夕食にした。
「やっぱり、お前は派手好きだな」
「えー、でも。今度こそミリアムさんを連れ出して見せるよ」
「駄目だったら、俺からも誘ってやるさ」
「一回は自分で行くよ」
「じゃ、明日。船でメルビルに行こうぜ」
「うん、明日。シフさんもおやすみー」
「おやすみ、ダウド。ねぇジャミル、もうちょっと一緒に飲んでよ」
「あんまり過ごすなよ」
翌朝。メルビル行きの船着き場にはアルベルトが待っていた。
「なんで? パブの親父に預けたはずなのに!」
「親父さんに話、一杯聞いて貰ったよ。お陰様で大分元気」
「あにき、どうする?」
「仕方ねー、連れてくか」
あにきはアルベルトを外すのあきらめた様だ。船旅中、アルベルトはあにきとシフさんの関係が変わったことに文句を言ってきた。
「俺に言われても」
「あのジャミルって人、結構いい加減な事ばっかり言ってるんじゃないの?」
「そ、そんなことないよ」
「早くアクアマリンも返したいし」
「だから、あにきの言う通りやってれば大丈夫なんだって」
「絶対、おかしいよ」
くそ、貴族の子供だけあって教養が高い。俺では言いくるめられない。
メルビルに着いた。一応、アルベルトの姉さんの情報を探した。大きな都市だけあって、覚えている人は居ない様だ。
「あにきー、ローバーンから来た女が居たよ」
「じゃ、陸路でローザリアに戻れるかもな」
「アクアマリン、返すよね」
「まだだな」
「なんで!?」
「分かる時が来るさ」
「ほら、アルベルト。わがまま言っちゃだめだよ」
「シフさん」
「あにき、準備はどうする?」
「あー、光術のスターファイア買ってこうぜ」
「おおー、戦闘魔術だ」
「みんな覚えちまおう」
「あたしも良いの?」
「もちろんだ」
ローバーンからイスマス通ってクリスタルシティを目指した。
「ここは」
「おい、ゾンビ一杯だぞ。俺の聖杯の出番だ!」
「稼ぎまくりだね!」
「あたしも腕が鳴るよ」
クリスタルシティで一泊した後、北エスタミルに向かった。
「おい、ガーラルソード買おうぜ」
「え、あれ高いんでしょう」
「もう、お前の腕なら十分な装備だ」
「買って良いの?」
「おう、それ持ってミリアムの所に行ってこい」
「やった!」
「ふられたー」
「なんだよ、またかよ」
「主人公じゃないとセーブできないからダメって、訳わかんないよ」
「じゃ、俺が行ってきてやろうか?」
「もう一回、もう一回鍛えてから試してみたい」
「じゃ、騎士団の連中からかいに行こうぜ」
「うん」
ブルエーレまでの船旅中。アルベルトは深刻な顔で話しかけてきた。
「ダウドさん、あの人と一緒に居ると危ないよ」
「そんなことないよ、あにきが居れば何でも大丈夫だって」
「聞いたよ。盗賊ギルドに居たんでしょう」
「な、なんでそれを」
「ああいう連中は絶対見逃してなんてくれないよ」
「俺達、もう何度か南エスタミルに入ったこと有るし」
「まだ、そんなに稼いでなかった頃でしょ」
「そ、それは」
「稼げるようになったら絶対捕まるって。そしたら一生奴隷みたいに働かされちゃうよ」
「えー、まさか」
「嘘じゃないよ。それにあのイスマスだって」
「イスマス? ゾンビが居た所?」
「あそこは僕の故郷なんだよ! シフさんだって知ってるんだから、あの人だって聞いてるはずなのに」
「ご、ごめん」
「あんなに楽しそうに戦えるなんておかしいよ!」
「だから、ごめんって」
「あの人、やっぱり普通の人じゃないよ。人間の心、持って無いかも」
「そんなはずは」
「いつか捨てられて盗賊ギルドに捕まっちゃうよ。早めに逃げた方が良いって」
「でも、どうやって?」
「とにかく、アクアマリンを取り返して、ナイトハルト殿下に守ってもらおうよ」
ブルエーレに着くと、町は貴族の令嬢がモンスターに誘拐されたと大騒ぎ。俺達はバイゼルハイムに居るフラーマと言う魔女の所に向かった。あにきは魔女に調子を合わせて色々貰った。
「こ、コンスタンツさん助けに行くの?」
「うーん、ちょっと覗いてみるか」
「助けないで?」
「まだまだ、時間的に大丈夫だからな」
確かに、人間の心が足りてないかも。そういや、こんな事、他にもあったような。
「おい、このメイジスタッフって良いな。敵の攻撃威力半減するんだってよ」
「本当に?」
「おう、俺が後ろで振ってるから。お前ら暴れて来い」
しばらくして、アルベルトが耳打ちしてくる。
「全然、敵の攻撃の威力が減ってないよ」
「確かに」
「ねえ、アクアマリン取り返すのを手伝ってよ。そしたら殿下にちゃんとお願いしてあげるからさ」
「どうしよう」
「さー、ここは一旦あがろうぜ」
町で一泊。
「金も貯まりやすくなったから南エスタミルでガーラルアーマー買いてーな」
「あ、あにき」
「どうした?」
「南エスタミルはやばいよ」
「平気だって、前にも何度も行ったろう?」
「強くなったら奴隷にされちゃうって」
「そんなことねーから」
「アルベルトがアクアマリン返してくれたらナイトハルト殿下が守ってくれるって」
「おい、まて! 俺のパーティーから離れるつもりか?」
「うん」
「だめだ、俺と離れたらお前。本当に死んじまうぞ」
「おれもう分かんないよ」
「落ち着け。アルベルトなんだな、話してきたのは」
「うん」
「そうか、パブで外せなかったのはジョーカーだったからか」
「ジョーカー?」
「誰かが成長するためには、他の誰かが犠牲にならなければならないって、言って回ってる奴の事だよ」
「それで、俺は殺されちゃうの?」
「俺と居る限り大丈夫だ」
「でもでも」
「アルベルトのやつ、シフも狙ってやがんな」
「どうして?」
「俺とお前の仲を裂いたら、次は俺とシフの仲を裂くつもりだろう」
「そうしたら?」
「俺たち二人、地獄行きだな」
「そんな!」
「俺はお前を捨てない。最初っからの仲なんだ、あり得ないだろ?」
「うん、でもどうやって?」
「カセットを変えるんだよ」
「カセット?」
「これが説明書だ読んでみろ」
「ロマンシング サ・ガ2」
「善は急げだ、行くぞ」
「うん」
「あー、シフのおっぱいもっと揉んでおくんだったなー」