【完結】ジャミルとダウドの転生記   作:どんぐりヒッター

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第三話 ロマサガ2

「ダウド。俺の左手にはなぁ、カセットの世界を渡り歩く能力が有るんだよ!」

「あにきあにき、カセットって何?」

「あ、最近はカセットだけじゃないか。要するに違う世界に行けるんだよ」

「違う世界? 大丈夫なの?」

「大丈夫だ。俺はあちこち行ってるんだ、任せておけ」

 

ロマンシング サ・ガ2の説明書には色々書いてあった。

 

「このジェラール、ベア、ジェイムズ、テレーズ、ヘクターのどれかになれば良いの?」

「他のやつでも出来るぜ。ただ、テオドールとヴィクトールはすぐに死んじまうから、選んじゃダメだぞ」

「うん、あにきは誰にする?」

「ジェラールだな。その方が、そっちの世界を案内しやすいだろう」

「俺、どうしようかな」

「この間、魔術師出来なかったし宮廷魔術師なんかどうだ?」

「え、そんなのなっても良いの?」

「大丈夫だ。みんな適当にやってるって」

「じゃ、やる」

「おし、これでジョーカーのアルベルトともお別れだな」

 

別の世界に行く前の打ち合わせ。

 

「良いか、お前はあっちに行ったら宮廷魔術師のアリエスだ」

「宮廷魔術師のアリエス、格好良い!」

「でな、最初は俺が先に動いて準備するから、お前はちょっと待ってろ」

「うん」

「城の中がざわついて、ヘクターってやつが怒られたら出て来い」

「分かった」

 

 

 そして来てしまった。ロマンシング サ・ガ2の世界。待機中。壺のある待合室には同僚のエメラルドさんが居た。寡黙な人で話しかけても答えてくれない。あにきがちょろっと来てファイアーボールを教わっていた。

 

「あにき。あと、どのくらい?」

「もうすぐだぜ、待っとけ」

「うん。あ、そうだ」

「どうした?」

「パンチ最初から持ってたよ」

「あっちでさんざんやったもんな、今回もやるか?」

「ふふふ、武闘派魔術師」

「良いだろう。じゃ、俺が呼んだらこのセリフな」

 

紙を貰った。

 

 

 待つこと数日。

 

ヘクター「ごにょごにょごにょ」

文官「ヘクター貴様なんという!」

「気にしなくて良い、アリエス! アリエスは居るか!」

 

出番だ。セリフはバッチリ。

 

「はっ、御前に。風と水の術はお任せあれ」

 

あにきは俺の肩に手を置き、

 

「体術も任せた」

 

城の外にはゴブリンが一杯。こっちのメンバーは、あにきと俺に重装備のベア、軽装備のジェイムズ、狩猟兵のテレーズだった。

 

「おい、武道着装備しとけ」

「あ、武道着。ありがとう」

「取るの苦労したんだぜ」

 

ゴブリン退治に陣形を変更。

 

「この陣形はインペリアルクロス。ダウド、お前の位置が一番安全だ」

「ここからパンチ届くの?」

「届くよ、気にすんな」

 

「よし、お前ら! 術の強化も兼ねて戦闘していくからな」

「うん!」

 

ゴブリンたちはあっけなく倒れて行った。

 

「それじゃ、クジンシー討伐に向かうぞ」

 

 

 七英雄の一人と言われるクジンシーは、ソーモンの街に居た。館の最奥に陣取っているので、そこまで進まないといけない。途中の人型モンスターとの対戦中、あにきが変な動きをしていた。

 

「あにき、変な事して遊んでると負けちゃうよ」

「クイックセーブでドロップ吟味してるんだよ」

「え? なに?」

「今度の敵は、アイテムとか武器とか防具も落としていくからな」

 

モンスターは武道着を落とした。

 

「あの黒い忍者が出たときは、今見たいのするからな」

「あれするとモンスターが何か落とすの?」

「そうだ、粘りまくれば選べるんだぜ」

「へー」

「ほら。ベア、武道着装備しとけ」

 

また出た。

 

「今度は目当てのラバーソウルだな。もう一個目指そう」

 

次の敵もラバーソウルを落とした。

 

「楽ちんだね」

「こっちは大変だったんだぞ。何度、武道着で妥協しようとしたことか」

「え? 何かあったんだ」

「術ポイントが無くなったら言えよ。無くなったら魔法使えないからな」

「分かった」

 

なんだかんだで、ボスの前。ボスのクジンシーは一度崩れるかと思ったら、強くなって復活した。しかし、何とか倒せた。

 

「ドロップ吟味しなくて良い敵は楽で良いわ」

「え? 今のボスが楽だったの?」

「どんな所でも、裏方さんは大変なんだよ」

「ふーん」

「城に戻るか」

「うん」

 

 

 1年が経った。城の中の武官たちは互いに仲が悪い。そして、皇帝のアニキが通ると頭を下げるが、暗い笑みを浮かべていた。

 

「お城の人たちって、なんか怖いね」

「あいつら、次の皇帝になりたいのさ」

「え? じゃあ、あにきやばいの?」

「そうだな、気を付けないと暗殺されちまうな」

「じゃあじゃあ、早く元の世界に戻ろうよ」

「まてまて、次の世界にすっげえ可愛い子が居るんだよ」

「え、本当に?」

「すげえぞ、お嬢様だぞ」

「じゃ、そっちに早く行こうよ」

「だから、行く前にこっちで慣れておいた方が良いんだよ」

「慣れる? 何に?」

「お前、技レベルと技ポイントとか術レベルと術ポイントとか、慣れ始めたろ?」

「あと、閃きとかすごいね」

「次のもそういう世界だから、ここで慣れさせてやってるんだぜ」

「そうだったんだ。ありがとう、あにき」

「さて、資金調達でもするか」

 

そう言ったのに、何故か部屋で寝るらしい。翌日起こされ街中へ。

 

「屋根の上だ、来い」

「この窓は入れるね」

「ここは盗賊たち隠し部屋だな。隠した財産が有るんだぜ」

「頂く?」

「もち」

 

そして十数日、俺達は盗賊たちの隠し財産を奪い続けた。

 

「しかし、この世界は稼いだ気がしないな」

「全部、国に持ってかれちゃうのがね」

「俺達も自由に使えるって言われてもな」

「うん」

「しかし、これで術の研究所を立てても余るだろう」

「おおー、そしたら魔法もっと覚えられる?」

「お前もライトボール使えるようになるぞ」

「あ、街の人が軍師のライトボールはすごいって」

「あいつらスマホで遊んでやがるな」

「え? 何々?」

「まあ、軍師は大学作れるようにならないと育たないからな」

「へー」

「最初の世代では無理だから、今の俺達には関係ないな」

 

その日は深夜に盗賊たちの隠し部屋に行くようだ。

 

「あ、人が居る!」

「盗賊だな、お縄にしてやろう」

「うふふ」

「ありゃ、逃げられちゃったね。あにき」

「逃がしたんだよ」

「そうなの?」

 

部屋から出て、屋根伝いに帰っていくと、逃げた盗賊がモンスターに襲われていた。

 

「助ける?」

「うーん、そうだな。俺が助けなくても大丈夫、って言ったときは本当に大丈夫な時だから、それを証明するために襲われたままにしておくか」

「じゃ、放っておくの? あの子、女の子だよ。それに可愛いのに」

「なんだ? もう惚れちまったのか? 相変わらず派手好きだな」

「あ、いや。でもでも」

「どっちにしろ、盗賊だろ。たまに怖いめ見せても平気さ」

「えー」

「先に、ゴブリンの巣でも退治しに行って、術の研究所で魔法覚えて来ようぜ」

「大丈夫なのかなぁ」

「大丈夫だ、安心しろ」

 

ゴブリンの巣にはちょっと良い弓が有った。弓はテレーズさんが装備した。その後、術の研究所で、みんな魔法を覚えた。

 

 

「あの子、本当にあのまま囲まれてるだけで襲われてないんだね」

「モンスターたちも何やってんだかな」

「あの子、仲間に出来たりする?」

「そうすると、今の仲間の誰かに死んでもらわないとな」

「え? そんなの駄目だよ」

「こいつら、何世代かすると生き返るんだぜ」

「本当だとしてもわざわざ死なしてしまうのは、ちょっと」

「まあ、そうだよな。じゃ、そろそろ助けてみるか」

「うん」

 

 

 助けてみると、酒場での合言葉を残して消えて行った。言われた通り、酒場に行くと墓へ行けとのこと。地下には盗賊団のアジトが。

 

「地下に厄介なモンスターが居るんだ。俺達の代わりに倒してくれないか? 地下のモンスターは皇帝にとっても敵になるだろ?」

「ふむ、見返りは何が期待できるのかな?」

「俺達の流儀で忠誠を示そう」

 

「あの盗賊の親分は普通にしゃべるんだね」

「あれはセリフさ」

「セリフ、へー」

「この世界の戦える連中はセリフ以外は、ほとんどしゃべらないぞ」

「そうなの?」

「暗殺されまくって、壊れてる奴が多いからな」

「あれれ、じゃあの子も壊れてるの?」

「行って見な」

 

「僕はダウド。今は世を忍ぶ仮の姿で宮廷魔術師のアリエスって名乗ってるんだ。君の名前は?」

「うふふ」

「うん。良かったら今度、月の光がそそぐ宿で食事でもどうかな?」

「うふふ」

 

何を聞いても、うふふ、としか言わない。

 

「本当だ、あにき。あの子、壊れてる」

「だろ? モンスターになかなかのおっぱいちゃんが居るから、それ見たら次に行こうぜ」

「うん、分かった。あにき、おっぱい好きだもんね」

「なんだ? 語ってほしいのか?」

「やめとく」

 

「地下のボスは道場だからな! みんな、技覚えまくりだぞ!」

「あ、はい!」

 

地下にはタコみたいなモンスターが居た。

 

「閃いたら退却、良いな」

「うん!」

 

俺は体術担当。集気法、気弾、ネコだまし、カウンター、コークスクリューを覚えた。かなり粘って他の皆も色々な技を覚えた。用済みのタコを倒して術レベルをアップさせた。

 

 

「さて、あいつの案内で要塞攻略といこう」

 

壊れてたあの子は、うふふと笑いながら秘密の通路に案内してくれた。

 

「あんなになってても役割はこなすんだよな」

「折角、可愛いのに」

凄愴(せいそう)って感じだな」

 

ボスの部屋まで案内の印まで付けてくれていた。

 

「ボスは三体。ワニから倒すぞ」

「わかった!」

 

七英雄のクジンシーを倒してから少しは強くなった気でいたが、三種類のボスはなかなか手ごわかった。

 

 

 戦いの後。城に戻ると、あにきは文官に南バレンヌの村に行くよう勧められていた。格闘家集団を吸収するためらしい。

 

「あの人たちは普通なんだね」

「ああ見えて、あいつら早い段階から暗殺に協力してたりするんだよ」

「うへー」

「ルドン地方の話をしてたろ」

「そうだっけ?」

「ルドン地方には鉱山と高原があってさ、高原がやばいんだ」

「覚えとくよ」

 

格闘家のリーダーは、セリフ以外「メンツがー」と鳴く鳥のような男だった。

 

「じゃ、モンスターの巣に行こうぜ」

「うん」

「そこにな」

「うん?」

「行ってみてからで良いか」

「なんだよー」

 

モンスターの巣に到着。

 

「倒すのは精霊だけだ。他は無視するぞ!」

「え! ぶよぶよは?」

「最初は倒すつもりだったけど、LPが減り過ぎちまったな」

 

何体か精霊を倒したら、目当てのモンスターが出てきたようだ。褐色の肌にプルンプルンのおっぱい。なるほど。

 

「出たぞ、おっぱいちゃんの情熱の香水だ。つけてみるか?」

「えー、あにきがつけたら?」

「もう、つけてるよ」

「俺は良いや」

 

さらに褐色のおっぱい精霊を倒すと剣が出てきた。

 

「こいつは結構良い剣なんだぜ」

「そうなんだ。こっちでは剣、使ってなかったな」

「もう少し倒したら、お前好みの精霊も出てくると思うぞ」

「ふーん」

 

宿で休憩をはさみながらの精霊退治。噂の精霊は三日目に出てきた。

 

「ほんとだ。しかも強いねこいつ」

「ほら、怪力手袋出たぞ。臭いでも嗅ぐか?」

「あ、うん。一応」

「もう一匹倒すか」

 

倒すと腕輪が出てきた。

 

「これはワンダーバングルって名前の、凄い盾なんだぜ」

「腕輪じゃないの?」

「盾だな」

「装備して良い?」

「ああ」

 

装備してみた。意外と重い。宿に戻ってお喋りタイム。

 

 

「ふー、長くかかったなー」

「三日がかりだもんね」

「ん? あ、そうか。主人公だとセーブとロードの間も見えてるけど、お前は見えてなかったんだったな」

「え?」

「モンスターは数に限りが有ったりするからさ、同じ敵でも欲しいのがドロップするまでセーブとロード繰り返してるのさ」

「ふーむ?」

「今の敵だって四時間くらい、ぷるんぷるん見てたんだぜ、俺」

「あ、主人公ってミリアムさんが言ってたやつだ」

「今はお前も主人公適正あるな」

「そうなの?」

「この世界じゃ俺が死ぬと、主人公に選ばれるかもしれないな」

「主人公ってどんな感じ?」

「プレイヤーって神様が居てさ、その神様と心がつながってる感じかな」

「どんな神様なの?」

「男もいるし女もいるし、いろんな神様が居るよ。この世界のことを全く知らない神様だって居るんだぜ」

「知らないのに神様なの?」

「うん。知ってる奴は良く知ってるんだけどな」

「そういや、この世界のジョーカーは誰?」

「オアイーブって女だな。ここでは決まってこいつだ」

 

あにきは「さて」と言って、次の世界の説明を始めてくれた。

 

「ちょっと、LP減ったままじゃ疲れた感じがしてさ。本当は俺も早く次の世界に行きたいんだよ」

「LPがゼロになっちゃうと死んじゃうんだもんね」

「次の所は宿屋に泊まると回復するから、楽だぞ」

「へー、すごいね」

「壊れてる奴も少ないから、なかなか楽しいんだぜ」

「壊れてる人居るんだ」

「カタリナって女とミカエルって男だな。ほら、説明書」

「ロマンシング サ・ガ3だって」

「ああ、そこの玉座イベントの所に居るのがミカエルだな」

「じゃ、他の人を選ぶんだね」

「お前、次も体術やるか? すげーつえーの居るぞ」

「ほんとに? やるやる!」

「次の所だと閃いた技を使ってると極意ってのが取れて、他の仲間も使えるようになるんだよ」

「他の仲間が極意とったのも使えるの?」

「使えるぞ。よし、良さそうな世界を探してみるか」

 

 

 待つこと一時間くらい。

 

「お、ここ良いかもな」

「待ってました!」

「よし、行くぞ。次の世界で俺はユリアン。」

「うん」

「お前はエレン。女の子だ」

「えっ?!」

 


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