「よし、見回りは終わりだ。みんな、宿で飯にしようぜ」
「ちょっと、あにき! 俺、女の子なんてやだよ」
「うっは、声からして違和感すげーな」
「笑ってないでやり直そうよ」
仲間は四人居た。あにきのユリアン、商人の息子のトーマス、俺がエレンで、妹のサラ。俺があにきに文句言ってる間にトーマスがサラをさらっていった。
「トーマスって不器用なのに色々できるのね」
「ありがとう、サラ。うちの爺さん厳しくてさ」
「大変だったのね」
「不器用な奴は忘れないんだ! の一点張りでさ、凄かったよ」
まだ若いのに苦労話で女の気を引こうとするとは、こいつ年取ったら酒場の踊り子に説教するタイプだな。いや、今はそんな事どうでも良い。
「とにかく、あにき。やり直そうよ」
「待て待て。お前、ミリアム落としたいんだろう? 本当の意味で」
「そりゃあそうだけど」
「一応、女性の気持ちみたいなもんは分かるんじゃねーかな? って思ってさ」
「えー? これで?」
「本当はさ、プレイヤーの神様が女性の時に女の子の主人公をやるのが一番なんだけど」
「うん」
「たまたま見当たらなかったんだよ」
「その玉々が無いのが嫌なんだけど」
外の雨が一段と酷くなってきた。ぶーぶー文句言っても、あにきはやり直してくれない。
「おい、そろそろ来るぞ」
「ちょっと、近づくのやめてよ」
「なんだ? 俺に惚れちまったのか?」
「何言ってんの。ってあれ? あにき、パッと見が派手な割に良く見るとやぼったくない?」
「まじか、歳星小剣で魅力盛ったんだけど。足りなかったか」
バタン。宿屋の扉が開く。
「お願い! 至急連絡が必要なの、馬を!」
「俺は自称トルネード。みんな、関わらない方が良いぜ」
こいつ誰? と思う隙も無く、あにきはしゃしゃり出た。
「これはこれはモニカ姫、我らが力になりましょうぞ」
「本当ですか? ありがとうございます。では早速」
「待て! 雨の闇夜に出発など、この自称トルネードが許さん」
「それでは連絡が遅くなってしまいます!」
「朝に出発するなら、この自称トルネードが助太刀いたそう」
話し合いの末、出発は翌朝にすることになった。そんな事よりやり直しの話だ、そっちがしたい。
「あにきー、やり直そうよ」
「でもほら、な? あのモニカちゃんってすげー可愛いだろ。お嬢様だぞ」
「そうだけどさぁ」
「なんだよ、しょぼくれちまって。お前好みに派手ながらも清楚な感じだろ?」
「だって、こっちも女の子じゃどうしようもないじゃん」
「だから女の子の立場を利用して近づいて、色々聞いてみたら良いだろ」
そう言う事なのか? 何か違うような。
「そういや、あにきが好きなのは、もっとぼいんぼいんの感じじゃなかったの?」
「分かってねーな。おっぱいってのは人となりと一致してなんぼなんだぜ」
「え?」
「むっちりした子のぼいんぼいんが良いのは否定しないぞ」
「うん」
「細身の子のぺちゃぱいもな」
「はぁ」
「でも、強気な子のでかぱいとか、弱気な子のぺちゃぱいとか良いだろう?」
「うーん?」
「逆の不一致も有りなんだけどな。強気なのにぺちゃぱいとか、弱気なのにでかぱいとか」
「何でも良いんじゃ?」
「全体だよ、全体を見るんだ。そこにバランスと言うものが有るのさ」
「もう、寝ていい?」
「これだから、お子様は。まあ、明日な」
翌朝。
「では、この自称トルネードがデザートランス陣形の先頭に立つ。お前たちは後衛に回れ」
自称トルネード氏が先頭に立った。他の四人は後ろに並ぶ。モニカ様はその後ろ。
「トルネード師匠、かすみ二段をお願いします」
「うむ、この自称トルネードのかすみ二段だ。とくと見るが良い」
「よし、皆それぞれの持ち技を使ってみるんだぞ」
「俺。いや、わたしはトマホークで良いの?」
「ああ、やって見ろ」
そばに居た犬を倒す戦闘中。あにきが少しだけ変な動きをすると極意が取れた。
「トルネード師匠のかすみ二段、エレンのトマホーク、トーマスの足払い。極意取れたな」
「うむ、この自称トルネードのかすみ二段。お前たちの目に焼き付いたようだな」
「はい、次は俺がパリィを決めてみますので、トルネード師匠は後ろで監督お願いします」
「良かろう」
あにきは自称トルネード氏の装備をはぎ取り、他の皆の武器もそれぞれ合ったものに渡すと言う。
「トーマスは手斧をしばらくやってくれ」
「手斧? 分かった」
「サラはロングスピアだな。距離取れる奴が良いだろう」
「うん。槍ね」
「エレンは三日月刀。さすがトルネード師匠の愛刀だ、特別な技が付いているんだぜ」
「へー、って体術じゃないの?」
「そいつはもうちょっと後が良いな。で、モニカ様。モニカ様は狩人の弓で」
「え、弓? 触ったことも無いですけど大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ、技ポイントの足しになれば良いだけですから。それにこのフルーレにしても触ったことしか無いのでは?」
「は、はい。足手まといですみません」
「では、行きますよ」
あにきは避けられない敵の前に一戦してみようと言い、また犬と戦う事にした。
「よし、パリィ極意。ダウド、お前も技にパリィとかすみ二段を装備してみろ」
「うん、あれ? これだけで使えちゃうの?」
「なかなか良いだろう」
「使ってみない事には分からないけど、凄そうだよね」
「よし、みんな。次の敵は避けられない、気合入れろ!」
そして出てきた、でかい鳥。
「新技の閃きも狙うぞ!」
ピコーン! なぎ払いを閃いた。
「あにき、なぎ払い閃いた!」
「おう、使ってけ」
あにきはフェイント、俺はなぎ払い、サラは石突き、モニカ様は影ぬいを閃いた。鳥を倒して取れた極意はフェイント、なぎ払い、石突き。
その後、ロアーヌ候ミカエル様のもとに。ミカエル様はあにきの言うように壊れていた。
「お前はマスコンか? お前は開発か?」
それしか言わない。隣に居るのがカタリナさんで、この人も壊れていた。
「に、偽物! 偽物!」
見かねた自称トルネード氏が、これでは戦になるまいと助太刀を申し出た。
「この場は、この自称トルネードが引き受けた。お前たちはポドールイのレオニード伯爵の庇護を受けると良い」
「分かったぜ、トルネード師匠。モニカ様は任せてくれ」
俺達は装備と道具を分けてもらいレオニード伯爵の元へ向かった。
「あにきー、やっぱり女の子の体は動かしづらいよ」
「有るはずの物が無かったり、無いはずの物が有ったりするもんな」
「それだけじゃなくて、脚が生えてる場所が何か違うし。手だって肩幅が足りないから、なんか変なんだよ」
「あー、そういやそうだったな。でもお前、手とか上下に後ろに回して着いちゃったりするんじゃないか?」
「え? あ、ほんとだ。指先がくっ付くとかの話じゃないや、手を握れちゃう」
「エレンって体術すごいからな。柔軟性も高いんだろ」
道中の戦闘であにきはアクセルスナイパー、俺は失礼剣、モニカ様はでたらめ矢を閃いた。アクセルスナイパーと失礼剣は極意も取れた。
「わたし、技ポイント無いから極意取れなくてごめんなさい」
「大丈夫ですよ。だんだん増えていきますから」
「そうですよ、俺もちょっとしかないですし」
「まあ、エレンさん。女の子が俺なんて言ってはいけませんよ」
「こいつ、俺っ子で」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
会話に混ざってみようとしたら失敗してしまった。
ポドールイの町で不要な道具や武器防具を売って技の薬を買い置き。レオニード伯爵の館の前。
「うわ、おどろおどろしい」
「伯爵はヴァンパイアなんだってさ」
「大丈夫なの? その人」
「平気さ、気の良い奴だよ」
入ってみると中も怖そうな感じ。
「ようこそわが城へ、モニカ様ご一行を歓迎しましょう」
「ありがとうございます、伯爵」
「ご自分の城に居ると思って、中はどこへ行っても構いません。ただし、ここはヴァンパイアの城。怖い所もあるのでお気をつけて」
「はい、ご厚意感謝致します」
「町の北の洞窟に、わたしの不要な財宝を隠してあります。ぶりょうをなぐさめに、遊びに行ってはいかがですかな?」
「はい、ぜひともそうさせて頂きます」
「では、部屋に案内させましょう。ごゆるりと」
案内された部屋の中。調度品がいちいち怖い。モニカ様は別室だった。
「さて、伯爵の許可も有るから探検だな」
「どこに行く? やっぱり財宝の洞窟?」
「そうだな、それから城の探検だ」
「お姉ちゃん、私ここ怖い」
「わ、いや、俺が居るから大丈夫だよ」
「どうしたの? お姉ちゃん、何か変よ」
「まあまあ、サラ。俺とエレンは小さい頃のごっこあそびで探検隊とかやってたんだ」
「そうなんだ」
「その時は二人とも男の子の設定でジャミルとダウドって名前も変えて遊んでたんだぜ」
「ふーん」
「名前も変えた方が雰囲気出るだろ? 探検隊の」
「そ、そうなんだよ。で、ユリアンの事。ジャミルのあにきって言ってたんだ」
「それで、お姉ちゃんずっと変だったんだ」
「今は探検みたいなものだからな、つい昔の癖が出ちゃうんだよ」
「さあ、サラ夜は寝ておこう」
「うん、お姉ちゃん」
皆が寝ようとしたとき部屋の扉がノックされた。
「誰?」
「あの、皆さん」
「モニカ様、どうかしました?」
「モニカ様もやっぱり怖いの?」
「あの、はい」
「よし、トーマスが向こうの部屋で寝るからモニカ様は俺の隣でゆっくりしてください」
「え、俺あっち?」
「大丈夫だよな、トーマス。男の子だもんな」
「まあいいさ、こう言う所で寝て旅慣れていくのも商人の道か」
トーマスはちらっとサラを見た。格好つけた決め台詞だったらしい。