黄金残滓と地獄大蛇 作:カナーさん
どこか。暗い、ジメジメしていそうな場所で煙草もどきに火を付け、煙がユラユラとしているのを意味もなく眺めていた。
ここはカルデア。人類の最後の砦。
そんなことはわかっている。ここまで来てしまったかと、達観に似た感情を味わったのは記憶に新しい。
ここは最後の砦。最後の希望。分水嶺。
そこには緊張が伴うものだし、ピリピリとしたいつ切れるかわからない空気があるものだし、最初の頃はそうだった。
だが、この背にある扉を挟んだ向こうにはそんな空気はなくハロウィンなどの催しをするくらいには余裕があった。俺と違って。
…………外野に徹することにした俺が言えたことではないが催しは心の余裕だと思っている。
余裕があるから周りに目を向けることもできるし、一つの目標に突き進む団結力も少し欠く。だからいざこざも起こる。余裕があるから。
「旦那様〜」
そんな余裕があるから色恋にまで目を向けることまでしてしまう。
ドンドンと殴り付けるような音が背中を震わす。
こんな外野に胡座かいている男に気付き更に手を回してくるなんて余裕のある者の特権だろう。
やめてほしい。
呑気な空気が停滞していても人類はピンチだ。その人類全体の異常事態が消えた訳でないのに舞台裏に潜んでいたこんな俺にまで構わないでほしい。
そんな時間があるなら周回でも絆でも高めていればいいものを。その拳はその熱は俺なんかに浪費していいものじゃない。
そんなことにも気付かないのはやっぱり余裕ってやつのせいだ。
張り巡らされた澄んだ精神を余裕が人を盲目にさせ失敗を招き入れ、精神を濁らせる。
頼むよ。離れてくれ。こんな俺はお前じゃ満足できないんだ。
俺にすり潰されないでくれよ、清姫_
最初に感じたのは既知。あぁ私はコレを知っている。
明度も薫りもましてはカタチすら異なっている。
でも私にはわかる。
これはあの方の白紙にされても消せない真髄で狂気的な思い。
それがなんなのかついぞ知ることはなかったけどコレを纏っているのはあの方だけ。
あの方がいる。その事実に体に噴火しそうな程の感情が溢れるのを感じたがすぐに鎮火した。
それを纏っているのが人物に問題があった。
人類最後のマスターである小娘から。そう女。
次に感じたのは怒り。
一瞬、本気で焼こうかと思った。
だが、コレに再び触れ合えた喜びが私を押し留め、そして考えさせた。
そしてそれは考え込むまでもなく、その可能性は絶対にありえないこと。
あの人が自発的に攻めに行くことはないし、あの方は求められたなら応える。そういうスタンスだった筈。
ならあの小娘はお菓子だろうか。
それなら…まだ納得できないけど許容できる。
けど……………………あぁ、嘆かわしい。考えても埒が明かない。
一旦は様子見に徹しよう。戦力が欲しいならそれを貸そう。契約も…逃さないためにしよう。
兆が一、もしかしたら魂があの方もしれない。摩耗し原型を留めていないから私が本人だと断定できないのかも。
なら見極めてみよう。マスターが未来のあの方なのか、その周囲にあの方がいるのか。
最初に感じたのは既知。
初めての場所、初めての生。
だが何だ、この見覚えは?
何だ、このまたかという呆れは。