黄金残滓と地獄大蛇 作:カナーさん
背中を撫でる
女神の愛が尽きたのかここ最近では本来は持ち越せぬ記憶もアルバムを眺めるように見ることができた。
そこで確かに未来で会えるならいいなという話はした。死の前後ゆえに深く刻まれているから確かだ。
だが様子を見るかぎり、どうやら意識の齟齬が見られる。
俺は、いやあの時の私はお前ほどのいい女なら再び相見えるのも悪くない。
その時の私は、私でも想像つかないであろうから、垓分の一くらいならば惹かれるかも知れぬ。そうなると良いな、と。
私は、俺との出会いについては前向きに考えていたのだがな。必要ない確率を導き出すくらいだ。女としてはかなり好意的な見方だったのであろう。
だが清姫は今の俺でなく、私に目が向けられているようだ。私は未来、つまり俺についての話をしていたというのに。あんなもの家柄、肩書、財産に目先を囚われた愚かな女となんら変わりないではないか。
少しばかり残念だ。私に身を捧げるのは変わらぬが
しかしサーヴァント。
捕まる気は毛頭ないが、このままでは過去一の汚点になることは間違いないな。
ふむ…選択肢に入れてなかったけどフランス、ローマ、円卓、______にも
先の決まった世界に留まっている理由なし。
なら特異点とかいう楔のルート先をぶっ壊して、それを元に新たなを道を築くのも悪くない…か?
となると、あのマスターと呼ばれている娘の邪魔になるわけだが…別にいいか。
なんというか、そもそも気に食わない。人類が唐突に滅んだのがなんだ。それを修復する?馬鹿か。滅んだのならそれはそういう宿命だったというだけでなぜそこで立ち上がろうとする。まるで滅びるのは可笑しいと叫んでいるように。
…俺がいた世界は恐らく滅んでいるが、俺はそれに意は唱えなかったぞ。悲しいと思った。あの朧げな空気に浸れないと残念がったさ。
だがそれがどうした?あれはもどかしいことに起こりうる結末だった。自身の親や親族が死ぬことに疑問を持ったことがあるか?
…死ぬという結末に関しては疑問は持たない筈だ。「なぜいまなのか」、「なぜこれからだって時に」、そういう疑問は全て時期に対する不満だ。
ニュースで百歳の高齢者が死んでも長生きしたねぇで終わるが十歳の子供には悲観の感想を述べたりするだろう。
大抵終わりに文句があるのは間の悪さが原因だ。なら人類滅亡も間が合えば肯定される筈だ。そもそも文明の滅びの果てにこの人類がいるのだから滅びはそもそも肯定しているも同義なのに異議を唱えるのはただの不躾だろう。
だから俺の世界が終わったとき、俺はそれを受け止めた。巫山戯るな、そんな結末は認めない。悪いがそんな思いは溢れなかったよ。
終わったものに囚われるな。俺達は今を活きているのだから。未来に固執して"今"を疎かにするのは馬鹿のすることだ。俺は"今"しかいないのだから先の今を思うのは間違っていないがそれは今が充実したときだ。
だから…そうだな。修復…今に満足するため滅びに立ち向かうのであれば…それは肯定しよう。
それは俺の考えに近い。俺があの娘ならば、俺だって似たことをした。矛盾しているのは承知だがあくまで似たことをした、だ。
この場合なにによって未来が打ち止めになるのかわからないが…そうだな、例えば星が爆発すると仮定しよう。それならば俺は星を出る、もしくは限られた期間を大事に使うかだな。間違っても星の爆発を止めようとは思わない。それが星の寿命だから。
体が高熱を出した時、無理やり平熱に戻す馬鹿がいるか?いないだろう?あれは体の"機能"で"必要だから"行われたことだ。
自然の摂理。なるべくしてなった。それを無理やり書き換えることは余計に壊すだけ。そう思っているからそうなっていいような場を構築する。
とはいえ、その選択をしていないことから見るに
極端な話、笑って死ねればいいと思っている刹那主義の俺からすれば爆発を止めることに錯誤しながら結局楽しめず死ぬのであれば余生ははっちゃけたい。そうすれば少なくとも世界で一番幸せ者になれそうだ。それはとても幸せ者そうだから。
それにまた
人類など俺からすればその程度の価値でしかない。
……………………………まて。
今なんと言った。また?
………なるほど合点がいった。
そもそも主義がどうとか摂理がどうとかそういう話じゃなくて…既知だからか。
ゲームじゃないんだから同じ人生を歩みたくない、そういうことか。
大幅に逸れたが、さて…今更喚び出しに応じたところで出遅れ分を取り戻せるか…メリットは
…チェイテ、本能寺、閻魔亭なら安心はできそうだが…厄介事の気配が拭えないな。
…取り敢えず目安のために、バビロンでも旅行してくるか。
…それと先程の評価は訂正するよマスターという人。
魔術王などという固有に滅ぼされたなら間違いなく俺も抗ったよ。
あの方のに包まれているように錯覚させる食堂に私はよく留まっていた。
仮染めの安らぎ揺らいで堕ちて、時間が熔ける。
現実の齟齬が絆される。
過ぎた時間は微々たるものだが…なるほど女という生き物の理解はまだまだと言うことか。
思わず「妹」と呼んでしまいそうになったぞ。
とはいえ、清姫がそれをまだ望んでいないのは愚かしい私でも察することはできる。
清姫が私のことを「君」と呼べぬように、私もおいそれと口にするわけにはいかないのでね。
あれは城島なのか出雲なのかそれはもうわからない。幻含め、何度目かの邂逅。ただあの方の側に居たいと、あの方に縋った。
それに眉をひそめずに歩んでいた足を止め、若干の苦笑を交えながら刹那の、私に言わせれば悠久の間。
森の中腹。そんな場所でポッカリと辺りが海岸のように砂の大地に変貌した中心に私達はいた。
砂と森の境界線。
焼け、黒焦げとなった枝が風に攫われ、塵となり姿を消す。
その光景に、この地があの方に耐えきれなかったのだろう、と私は当たり前のように考えて疑問すらなかった。
辺りには生命の成れの果ての砂と魂の慟哭の受け皿にされた乾いた空気。そして総てを灰燼の化してなお、あの方は眼差しに憐憫や慙愧の念は兆しは灯らない。
「さて、私もまた歩み始めるとしよう。清姫と話に興じるのもいいが、いまの私の目的は他にある」
告げるべき事は告げきったとばかりにあの方は踵を返す。その歩みを留めるものは誰もおらず浮かべれられた表情は
実につまらなそうだった。
そう___ちょうど今のような横顔だった。
___!??!!?
急速に覚醒する意識と鮮明な現実。
点滅する視界と逆転する大地。ショックで体の機能が刹那停止した。呼吸も心臓も脳も電気信号も全て。その一瞬だけ、私は死んだ。
だから忽然と目の前を通り過ぎていくあの方に私はすぐに声を投げることが出来なかった。気道に空気がうまく通らず突っ掛かって過呼吸のような状態になる。捻り出そうにも通ってくれないのだ。残るは微かで聞き取ることなんてできない呼吸音のみ。
「…ぅ……ぅげ…………」
感電したように体が思ったように動いてくれない。
破裂しそうなほど心臓が痛い。苦痛が体を呑み込むが、おかげでこの光景が幻なんかじゃないことに確信がもてる。
あの幻で見た砂の大地と同じく耐えれなかったのだろう。幻は心の痛みはあるが体の痛みはない。
なら締め上げるようなこの痛みはきっと真実なのだろう。
ゆったりとあの方は歩いていく。それでも昔から同じく、その歩みに追いつけそうにない。行き先を知らない私では決して追いつけない。
だからその歩みが止まったのは奇跡だと思った。
ゴソゴソと自分の服をまさぐり、なにかも探しているようだった。
その間に少しだけ前進して、口に咥えているものが垣間見えた。
私はそれに火をかけた。ジュぅと。
「久しぶりですね」なんて言葉が出なかった。だから会話のキッカケのためだ。
それでも顔を合わせるのが恐くて、迷惑だったかなんて関係ない言葉を紡ぐ。
「……………………………………」
体の痛みすら押しのけて沈黙が痛い。
「……あっ…………」
顔はこちらを向いていたのだろう。けどもう視線は前に、歩みは私を離していく。
それに手を伸ばそうとして、躊躇して何も掴めず、そのまま姿を痛みと共に消してしまった。
伸ばした手を戻して掌を見つめるけどそこには何も得られなかった物しか映ってなかった。
感情が溢れそうになってギュッと目を瞑る。
……。
…………。
……………………。
……………………………………………………。
ポトッ
そんな感触が寂しい掌に落ちた。なんだろうと目を開こうとして、その途中に予期しない痛覚でビクッと跳ねて急いでそれを見た。
細長い筒。タバコだろうか。
なんで、という疑問より先に彼の咥えていたものだと直感した。
「……………………………………………ふふ」
ジ〜と凝視してけど笑みがこぼれてしまった。
あてつけかそれともやさしさか。
焼いた私に対するものなのか、感謝からなのか。それとも別の気まぐれなのか。
どれでも良かった。
なにも掴めなかった寂しい手には痛いほど暖かさがあったから。それで今は充分だった。
妹、意味は愛しいあなた。
…だったはず。
淡く儚い…前の話を読み返すとあのタイミングできよひー死にかけていたんですね。
それと何かしら矛盾が生じる場合、基本的にきよひーが正しいです。例えば時間ですね。きよひー視点は深夜ですが男視点は黄昏です。
これもそうなの?と思う方は感想まで
イベントは完走しました。紅ちゃん引けたよ…嬉しい