黄金残滓と地獄大蛇   作:カナーさん

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ティアマトママ良かったですね。


黙契プルシャ審判と神会ニャル厶レマ双蛇

 

 

 

 「それでは女将、今回も良かったよ。また来る。あぁ見送りは必要ない。女将の声を聞くのは次の長い語らいの刻だ。その日を楽しみにしているよ」

 

 カルデアから抜け出してから何日か。寄り道でリフレッシュしていた。

 まあ、ここに来ると当初に戻るのか口調で疲れるけど概ね満足。

 さてじゃあ行きますか。近いものはタイムトラベルだと思うが本質的にはおそらく夢遊病のようなものだろう。そうなっていないのは俺が寝てる時も含めずーと体を力ませて必死しがみついて抗っているからで。

 だからそれがなくなると思うと清姫の発言で溜まっていた疲労から、意識は簡単に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 無事到着し、大凡三週間から一ヶ月くらい。

 苦難の連続だった。

 暗い鳥籠が羅列された地下からの脱出に始まり、地上に出たと思えば意味不明な動物に襲われ、天から光線は降ってくる。ようやく人がいる場所まで辿り着いたら言語がわからないという当然の問題にぶつかる。

 

 馬鹿なのは承知だがそもそも時代が違うのだから、言語が違うのも当然の摂理…けど失念していた…まじでやらかした。

 

 んーまぁ今はそんな困ってないからいいけど後々首を絞めそう。

 

 

 …まあいいか。

 

 

 で、のほほんと海を眺めていた。理由はとくにない。

 それでも滞在期間の半分をここで過ごしていたら、自分でもおかしいと流石に気付く。まるでここで足止めされてるように感じても可笑しくないだろう。

 前世を閲覧すれば答えはわかりそうだが、気に食わない。気に食わない程度、なんて感想は御法度。なんせそんな程度の思いで俺はここまで至ってしまったんだから。

 

 前回はそれを認識したから思わず閲覧してしまったが例外を除き出来るだけ頼りたくはない。

 しかしなんだろうな。ここまで熱心になるものは。これじゃあの未練タラタラの清姫と同じ____

 

____未練?

 

 

 

 


 

 

 

 

 その言葉が引っ掛かる。

 脳がフル稼働している間、髪や服が風に靡きユラユラ踊っている。空も海もくすみも穢れもない、自然が作り出した在るべき姿のまま在りたいようにそこに生きていた。

 

 「________」

 

 何度か瞬きを繰り返す。それは当たり前だが同じ景色で、しかしたった一回のほんの一瞬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには黄昏に包まれた世界が広がっていた。

 

 けど亡き景色は閉じた眉を上げる頃には既に失せて、のどかな自然の景色に戻っていた。

 

 その情景を見せられ、自身の中に確固とした考えが組まれる。だから例えそれが間違っていたとしても言わねばならなかった。

 

 「…悪いな回帰。あんたは尊敬する部分は多々あるがそれでも俺はそれを成せない。俺は自身に空いた穴を埋めたい。たったそれだけなんだよ。あんたを襲った結末はそう納得がいくものじゃなかったんだろう。だからあんたは待ち続ける。機会を。

 でも俺は出来ない。俺は神様じゃないから。永遠といえる時間がないから、俺は待たずに歩くんだよ。

……他にも色々言いたい事はあるけど言葉に纏めれそうにないから一番言いたいことをあなたに言う。

 

 

 

 

 

ごめん母さん」

 

 俺の言葉は海へと流され、直後襲った腹に響くような衝撃波に全てを掻き消された。

 

 

 


 

 

 

 偽エルキドゥが退散しホッと一息ついた、そんな気の緩んだ時。

 

 ボンッ!と重い爆発音が藤丸を襲った。

 

 幸いマシュが瞬時に間に入りダメージはない。

 

 「…俺はあんたの事は認めたが俺を邪魔する事は認めてねぇんだけど」

 

 そんな棒読みのような覇気の籠もってない場違いな声が藤丸達に投げかけられる。

 

 「頭空っぽにして自然に黄昏れていたのにいったいどういう了見だ。というかあんたらここに来るの速すぎないか」

 

 男だった。ボロボロのローブを羽織った男がやる気のなさそうな風貌で藤丸達に目を向けていた。

 

 「せ、先輩!彼は__」

 

 男が足を少し上げ地面を踏みつける。それだけでゴンッ!と振動が伝わり地面を割り藤丸達を襲う。反り上がった岩盤や高速で飛散する砂と投擲される石。それらの防御のためマシュは口を閉ざさる終えない。

 砂埃から投擲された初激の石は明らかに盾を狙っていた。その破壊力を盾越しに教えられた彼女はマスターを守るため行動しなければならない。

 

 何発も撃ち込まれ防いでいくが散弾のように広がる投石は盾を抜けていく。風が通る感触にスッとマシュの頬に紅い線が走る。

 遅れて背後の地面が爆ぜた。

 

 ギッと盾に力に込める。

 

 意識を一瞬持っていかれた明らかな隙。しかし予想していた追撃はこず砂埃が晴れるとそこには男とギルガメッシュが向かい合っていた。

 

 「ほう?我の眼でも俯瞰出来ないとは_」

 

 「その続きの言葉に対する答えは『何者でもない』といつも言っている。理由なんて簡単で、未来は今作られているのだから見通せないじゃなくて今見えているのが真実ってだけだ。いつも納得してもらないけどね」

 

 「フン。そんな見え透けた嘘を信じるわけなかろう。とはいえ貴様は本当にそう思っているようだな」

 

 「持論だけど、あんたらの宇宙じゃそうだろうが俺の宇宙じゃこれが真実だ」

 

 「……なかなか面白い。おいなにをしておる。撤収の用意だ」

 

 男の顔を数秒眺めていると興味をなくしたようにスッ目線を藤丸に向け指示を出す。

 

 「え、でも」

 

 急な展開に口が塞がらない。

 

 「戯けああいう手合は関わらなければ無害よ」

 

 「…まぁそうだね確認したいことは出来たし。ただ本人の前で言うもの、それ?」

 

 


 

 マスター達がこの場を離れているのを傍観していた時、ギルガメッシュ王がこちらにやってきた。

 

 「えっと『王様』でいいかな」

 

 「それでよい。カルデアの者には伏せていたが今回我がここに来たのはそなたを見極めるためでもあるからな」

 

 ………正直に言うんだ。

 

 「…俺の攻撃を邪魔しなかったのも観察のため?」

 

 「それもあるが、カルデアがお前と真の意味で敵対していないというアピールのためだ」

 

 「カルデアと一緒にいた王様まで敵だとわかったら確かに逃げてたけどさ…ヒドイな。王様は攻撃するってことはウルクに攻撃することと同義だから、そんなことを出来ないのに傍観してたなんて」

 

 「攻撃できぬのは俺が王だからか、それとも俺の民だったからか」

 

 …あぁ見極めるってそういう。

 

 「やっぱりわかるか…どっちもだよ。だからこうして王様と黄昏時の海を眺める日がくるとは恐縮だよ」

 

 「黄昏…か。なるほどそなたが観ている景色はそのように映るのか。我が未来とするならそなたは過去だな」

 

 そんな身の程知らずじゃない。吊り合わなさすぎる。

 

 「観てなんていないさ、ただ思い馳せているだけ…過去の彼女を忘れない哀れな未練タラタラ男と同じさ。それで王様、あなたの満足する結果は得られましたか?」

 

 「あぁ充分だとも」

 

 王様はそのままこの場から離れていく。淡い光、澄んだ空気を包まれた暖かなこの地が少し寂しくなった気がした。それだけ過去の俺は王様に対する尊敬とかの念が強かったのだろう。

 

 「せめて邪魔はしないよう配慮する。それが王様が一番助かるだろうから」

 

 閉鎖感がいやでここに来たのに郷愁を感じるハメになるとは。でも無理だ。手伝えない。

 

 だってこの時代の俺は既に死んでいるだから。

 俺に母さんの手は掴めない。

 

 

 

 

 

 あの後…死にかけた後、私は様々なことを試した。

 結果どうやらあの方は人間に似た体格で知性もあり、年齢は成人に満たないかギリギリであることがわかった。

 また『旦那様』という単語に強く反応し、薄れている気配が色濃く感知出来た。

 食事は嗜好品である菓子や茶が主で偶にキャットに残飯は要求することがある。が食事を一切摂取しない期間も多くあったので食事そのものは必要ないと私は考えている。

 過去の記憶だとあの方は摂取自体は長期間空いても大丈夫だったがその場合の摂取量が多かったはず。が菓子等で得られる栄養とカロリーは少すぎるから時代が変わり体の作りそのものが違うと考えている。

 髪色と体格、口調も変化しているのでおそらくそうだと思う。

 

 そういえば懸念していた人理滅却に協力していた可能性だが、ロンドンでその元凶と思われる存在を目撃する機会があったが、あれはちがう(・・・・・・)

可能性は元々ゼロに等しかったけど、あの存在に手を貸したとはとても思えない。

確証はなにもないけど女の勘がそういっている。

それにあの方特有の空気と子宮が動く感覚もないし本当に見当違いだった。

 

 この空気と疼く感覚は信用は出来る。最近これを使って居場所を炙り出して、チョコを渡したこともあるぐらいだ。

 その時に奇跡的に声を頂戴することができた。しかも会話まで。

 

 「わかった。わかったから少し温度を下げろ。清姫はそんな淫らな格好しているから暑くないんだろうけど」

 

 「淫ら?もしかして興奮しておられるのですか?私に?なら呼吸も少し荒いようですしベットに案内しますわ」

 

 「そんな赤熱した顔で誘われても恥ずかしいだけだぞ」

 

 「〜〜〜っ!」

 

 「だから温度を下げろ。気持ちはわかるがチョコが溶ける」

 

 …ヤバイ。

 また恥ずかしくなってきた。

 …けど私の作ったチョコを思っていただけたのは嬉しい。もしあのまま溶けていたら後悔で気持ちが沈んでいただろうし。

 ………その…嬉しいが止まらない。

 

 感情が昂ぶってしょうがないので今は色々お休みをいただいています。

 だがそれがむしろ苦しい。作業していれば気が紛れるのにその作業がまともに出来ない。刺繍も燃えて触ること下見さえも出来ない。

 救いは私専用のこの部屋はそこらの対策はされているのでベットに顔をうずめて悶えれることです。

はしたない…はしたない…けど無理、熱さで溶けてしまいそうです。

 

 マスターが連れてきた婦長?さんも熱中症と間違われるくらいにはもうアツアツ。ま、まぁ症状だけ聞くなら目は渦巻きのようにクラクラ、顔はほてる、汗はない(蒸発)、水は飲めない(蒸発)とむしろ自然なことなのですが内情は自身の熱さにやられてるだけなんですよね〜。

 

 う〜せっかくロンドンのことを考えて頭をCoolにしたのに再熱しちゃいました。

 

 そういえば最近新人の…ガウェインでしたか?その殿方とよく組まされます。えぇこの熱を有効利用するのはいいでしょう。冷却も兼ねていますし、作業もできるので。ですがなぜその殿方ばかり?太陽の騎士と称されているのは存じてますが、他にもいらっしゃいますよね熱に耐性ある方。

 その…出来れば男性の方とは組みたくないですの。そんなつもりはないのですが…浮気しているようでハラハラするのです。もしあの方がジャンヌさんとご一緒いしている所を見たら、私だったら仲良く火刑に処しちゃいますもの。

 ですから出来れば他の女性の方と…ってあら、熱が落ち着いてきましたね。

 

 …落ち着いてみると色々謎がありますね。

 一つはあの方の痕跡について。名前も姿形も性別すら違いますがどういう訳か今の所全ての特異点にあの方を感じるんですよね。

偶々で片付けるには…

 二つはあの方の不在。私を避けたというのは考えたくありませんがありえる話です。どこを探っても痕跡のみしか探し当てれない。この感覚は私独自なのでカルデアのバックアップは無理なので歩き回っているのですがもの家の殻。姿形はどこにもありません。

 住民の方に伺っても出ったきりや亡くなっていなど生存を肯定する話は聞けませんでした。

無駄なってしまった時間ということもなくあの方のプロファイリングに大いに貢献しました。それに優しい一面も見れましたしね。

 まさかカルデアに微弱な手助けをしていたとは。ドレイクさんの船の増強や山の民への援助など微々たるものですが小さな優しさを感じます。

 

 だから少しマスターが羨ましい。あの方の餞別を受け取れて前に進んでいるのだから。

 ………

 …………

 …あいたいです。

 

 そんなに私のことが嫌になりましたか。そうじゃあないならどうして痕跡を、轍を、こんなにあなたを感じれるのにどうして手が届かないのでしょうか。

 

 

 




A旅行して物理的にいないからです。

そんなことよりエレちゃん引きたい

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