シトナイといっしょ! 作:龍翠
カルデアの廊下を、シトナイは珍しく一人きりで歩いていた。シロウはジャックたちが遊んでほしそうにしていたので、あの子たちに任せてある。今頃は一緒に遊んでいることだろう。
遊んであげているのか遊ばれているのか、そこまでは分からないけど。
シトナイは少し暇を持て余している。とりあえず誰かに会いに行こうかとこうして廊下を歩いているのだが、まだ誰に会うか決めていなかったりする。
この体に縁のある誰かにしようかなと思い浮かべようとして。
何故かマスターの顔が真っ先に浮かんでしまった。
「……? なんで?」
理由が分からず、首を傾げる。マスターに会いに行くという選択肢は最初からないはずなのに。
今日のマスターは休みではなかったはずだ。今現在はカルデア唯一のマスターなので、色々と忙しい身だと聞いている。稀に発生する小さな特異点に行ったり報告書を書いたりと、聞いているだけで大変そうだと思ったものだ。
だから今日はマスターはだめだ。
休みだったら、会いに行っても良かったかもしれないけど。
「……? いや、なんで?」
どうしてそう思ったのだろう。自分で自分が分からずに首を傾げていると。
「あ、シトナイ」
そのマスターが向かい側から歩いてくるところだった。
「マスターさん? どうしたの? 今日は書類がたまってるって言ってなかったっけ?」
「今やってるところだよ。ちょっと休憩しようかなと思ってね」
「そうなんだ」
マスターはよく仕事の手伝いをサーヴァントの誰かに頼んだり、休憩を一緒に過ごす相手を誰かにお願いしたりとしている。休憩の方は、稀らしいが。
「休憩で誰かを探していたのね。もしかしてわたしだったりして」
あり得ないと思っているのでいたずらっぽく笑いながら聞いてみる。
「うん。そうだけど」
「…………。え?」
一瞬、何を言われたのか分からなくて凍り付いてしまった。
「いや、だから、シトナイを探してたんだよ」
「へ、へえ……。わたしでいいの?」
「うん」
「そう……」
どうしてか分からないけど。ただ、なんとなく、嬉しい。顔がにやけそうになるので堪えておく。見られるのは、ちょっと恥ずかしいから。
「それとも、忙しいかな。それならいいんだけど」
「ううん。わたしも暇だったからちょうどいいかな」
「そっか。それなら良かった。じゃあ、行こうか」
マスターが手を差し出してくる。シトナイは少しだけ逡巡して、その手を取った。
マスターの手は温かかった。
「ココアでいいかな」
「うん」
そうして案内された、マスターの部屋。テーブルの片隅には書類が積まれているので、先ほどまではやはり仕事をしていたらしい。
椅子に座って待っていると、マスターが湯気の立つカップを持って戻ってきた。どうぞ、と渡されたカップを手に取る。まだ少し熱いだろうか。
少し飲んでみると、優しい甘さが口の中に広がった。
「ん……。美味しい」
「そう? 良かった」
嬉しそうに笑うマスター。単純すぎると思う。
「ここには慣れたかな?」
ココアを飲みながらマスターが聞いてくる。シトナイは頷いて、
「それなりに、かな? たくさんサーヴァントがいて、驚いちゃったけど」
「はは……。気付けば大所帯だったからね」
本当に、ここにはサーヴァントが多い。シトナイの、というよりはこの体が知っているサーヴァントも数多くいて、少し戸惑うこともある。
ただ、そんなサーヴァントたちとの騒がしい日々は、それなりに充実しているとも思っている。
「それで? マスターさん。今日はどうしてわたしなの?」
とりあえず先に本題を聞いておくことにした。
わざわざ自分を選んだということは、何かしら理由があるのだろう。他のサーヴァントと同じように、シトナイも独自の関係性を持っている。そこから何かを聞いてほしい、というのはあり得るだろう。
けれど、マスターの答えは予想とは違うものだった。
「え? いや、別に大した理由はないんだけど……」
「そうなの? 人目のあるところだと言えない用事かなと思ったんだけど……」
「いや、まさか。単純にシトナイと話をしたかったからだよ」
意味が、分からない。思わずまじまじとマスターを見つめると、気恥ずかしそうに頬をかいて目を逸らされてしまった。
「えっと……。マスターさん?」
「な、なにかな!?」
「声、裏返ってるよ」
思わず笑い声を漏らしてしまう。マスターはきょとんと、少しだけ呆けてから、続けてシトナイと同じように小さく笑った。
二人でココアを飲む。甘い。ただ、さっきよりも甘いような気がするのは、気のせいだろうか。
少しずつココアを飲む。マスターととりとめの無い話をしながら、少しずつ。
一気に飲まないことに意味はない。本当に、大した意味はない。
ただ、このココアを飲み終えるまでは、マスターと一緒にいられる、そんなことを、少しだけ考えてしまっていて。
けれどマスターも本当に少しずつ飲んでいるから、もしかしたら同じ気持ちなのかも、と考えると、少しだけ嬉しく思えてしまった。
それでも飲み続けている以上はなくなる時もくるわけで。
「あ……」
気付けば、カップの中は空になっていた。
「なくなっちゃった……」
「ああ……。こっちもだ」
マスターも残念そうにため息をついている。名残惜しいが、休憩はここまでだろう。少し長くいすぎたかもしれない。
時計を見て、少し驚いた。ここに来てから二時間も経っている。ココアも冷めてしまっているわけだ。
「シトナイ」
「うん」
「お代わり、いる?」
「え」
とりあえず正気を疑ってしまった自分は悪くないと思う。ちらりと書類を見る。シトナイの視線に気付いたマスターは笑いながら、
「大丈夫大丈夫。あとでちゃんとやるから」
「本当に?」
「もちろん。それに、俺がもうちょっとシトナイと一緒にいたいからさ」
「ん……」
そう言われて、悪い気はしない。いや、正直に言ってしまうと、すごく嬉しい。
「じゃあ、もらおうかな」
シトナイがカップを差し出して言うと、マスターは嬉しそうに受け取った。
「ねえ、シトナイ」
「なに? マスターさん」
「どうして急に隣に座ったのかな……?」
マスターが戻ってくる前に椅子を動かしてマスターの隣に置いた。マスターは少しだけ困惑しつつも、そのままカップを渡してきたので気にしていないと思っていたのだが。
「うーん……。なんとなく。嫌なら戻るわ」
「嫌じゃないよ」
「それならいいよね?」
「もちろん」
マスターのその反応が面白くて、思わず笑ってしまう。
なんとなくはなんとなくだ。それ以上に意味はない。あるわけもない。
ただ、もう少しだけ。マスターの温もりを感じたいと思っただけ。
「マスターさん」
「うん」
「また呼んでくれる?」
思った以上に居心地がいいから。もっと一緒にいたいから。
マスターは少しだけ驚いたように目を丸くして、そして笑顔で頷いてくれた。
「もちろん」
そして、
「仕事が進まないけど」
「あはは。いいよ、手伝ってあげる」
「ありがとう。正直すごく助かるよ……」
仕事が終わったら一緒に食堂に行こう、とマスターが提案してくれたので、シトナイは嬉しくなって、うんと頷いていた。
壁|w・)今回はシトナイ視点にしてみたよ!
こう、ちょっと気になってる相手への甘酸っぱい感じが好きだよ私は!
マスターくんの方はあからさまだけどね!
でもいちゃいちゃが好きな人もいると思うんだよね!
だからアンケートを設置してみたよ!
答えてくれると、この先がちょっとかわるかも!
週一更新したいなと思うけど、予定は未定だー!
あとあとがきはいつもこんな感じでうるさいけど、気にしちゃだめだよ!
ではさらばだー!
さっさとくっついていちゃいちゃか、なかなか素直になれないもにょもにょする関係を継続か、どっちがいい?
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いちゃいちゃ(砂糖増量)
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もにょもにょ(砂糖据え置き)
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もふもふ(シロウ増量)