シトナイといっしょ!   作:龍翠

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べったり

 シトナイは少々困っていた。

「ええっと……。マスターさん?」

「うん」

「うん、じゃなくて……」

 少々、ではなくかなり困っていた。

 

 

 

 退去を思い止まった翌日。シトナイは朝からマスターの部屋を訪ねていた。昨日のことを謝って、あんなことはもう言わない、と伝えるために。

 そしてしっかりと伝えたのだが、その後、マスターに手招きされて、マスターの隣に座らされて、マスターの仕事をずっと見守っている。マスターの右手はシトナイの手と繋がれていて、器用に左手で書類を見て、書いていた。

 

「マスターさん、左利きだっけ……?」

「いや、右利き」

「だよね? 書きにくくない?」

「シトナイの手を握ることよりも優先することがあるの?」

「へ!? あ、その、ええっと……。うん……」

 

 なんだか今日はぐいぐいくる。シトナイの方が恥ずかしくなるぐらいだ。赤くなっているであろう顔を見られたくなくて俯いていると、よし、とマスターがペンを置いた。

 

「終わった!」

「あ……。早いね。もっとあると思ってたのに」

「昨日の残りだからね」

「あ……」

 

 昨日、あの後、マスターはカルデア内に戻ってから、すぐに温かいお風呂に入って、しっかりとご飯を食べて、すぐに就寝した。本来なら可能であればその日のうちに報告書を書いていたはずだ。そうして帰還後から数日間は休みになる。

 その報告書を今書いている原因は、間違い無く自分にあるわけで。申し訳なくなってきたところで、

 

「もしもさ、シトナイ。少しでも悪いと思ってくれるなら、お願いがあるんだけど」

「う、うん。いいわ。なんでも言って!」

 

 せめて、自分にできることなら、どんなことでも手伝おう。そう思ってのことだったのに。

 

「じゃあ、今日はずっと一緒にいてね」

「え」

 

 何故かそんなお願いで。そしてその後、先ほどと同じようにずっと手を繋いでいる。

 だけでなく。

 

「マスターさん……。さすがにね、恥ずかしいというか……」

「うん」

「うんじゃなくて……!」

 

 シトナイはマスターに後ろから抱きしめられていた。ぎゅっと、はぐされている。もうかれこれ一時間だ。さすがにこれは、困る。

 とても、とても恥ずかしい。なんだろうこれは。どうすればいいのだろう。

 

「マスターさん……。一緒にいるのはいいけど、ずっとくっついてくるのは……。は、恥ずかしいからね? だからそろそろ、離れない?」

「ん……。いやだ」

「ええ……」

 

 どうしよう。このままで誰かに見られると非常に恥ずかしいのだが。

 そう、思っていたところで。

 

『失礼します。先輩。書類を取りに来ました』

 

 この声は、マシュだ。わざわざこの部屋に書類を取りに来たらしい。

 マスターの仕事のパートナーは間違い無くマシュだ。今更それを疑いもしないし嫉妬もしないが、だからといってこのタイミングで来るとは思わなかった。

 一度帰ってもらうように言ってもらうか、もしくは離れてもらうためにマスターへと視線を向ける。いわゆるアイコンタクトというやつだ。察してくれたのだろう、マスターが頷いてくれたので、ほっと一安心。

 

「マシュ。テーブルに置いてあるから、入ってきてくれていいよ」

「マスターさん!?」

 

 見事に伝わっていなかった。いや、マスターの表情を見れば、なんとなく分かる。伝わっていて、察してくれていて、それでもなおマスターはこの選択を選んだ。何故に。

 シトナイが唖然としている間に、ドアが開く。失礼します、とマシュが入ってきて、

 

「せんぱ……」

「…………」

 

 シトナイとマシュの視線が交わり、マシュが凍り付いた。シトナイの頬は引きつっている。

 

「マシュ。書類はそこだよ。ごめんね、わざわざ来て貰って」

 

 マスターだけが平常運転。

 さすがに文句の一つでも言おうかと思ったが、それよりも先にマシュが動いた。

 

「す、すみません。では届けてきますね」

「うん。よろしく」

 

 マシュが素早く室内に入り、書類を回収して、そしてあっという間に部屋を出て行く。そうして最後に振り返って、なんだかすごく意味深な、生暖かい笑顔を向けられた。

 そうしてドアが閉じて、静寂が戻ってくる。何がなにやら、だ。

 

「マスターさん……。書類は自分で持って行かないとだめだと思うのだけど」

「うん。今日は本来休みだし、シトナイと一緒にいたかったから、マシュにお願いした」

「そうなんだ……。マシュにあとでお礼言わないと……」

 

 いや、まずは謝罪だろうか。本当に申し訳ないと思ってしまう。

 それよりも、だ。

 

「マスターさん。さすがに人に見られると恥ずかしいからね? そろそろ……」

「どうしても?」

「う……」

 

 捨てられた子犬のような目で見てくるのは卑怯だと思う。何も言えなくなってしまう。

 シトナイはたっぷり一分間悩んで迷って、仕方ないとため息をついた。

 

「もう……。今日だけだからね?」

「うん。ありがとう」

「ん」

 

 恥ずかしいだけで、シトナイだって嫌ではないのだ。マスターの温もりを感じられて、シトナイもなんだか幸せな気持ちになる。

 

「んー……。ねえ、マスターさん」

「うん?」

「別にね、嫌じゃないの。誤解されちゃうのは嫌だから、言っておくけど。わたしだって、その……」「なに?」

「……っ! なんでもない!」

 

 マスターが意地悪な笑顔になっていたので、ふんとそっぽを向く。マスターが小さく笑うのが聞こえてきた。まったく、自分だって怒る時は怒るのだが。

 

「俺の彼女がすごくかわいい」

「…………」

 

 とりあえず。平然とそんなことをのたまうのは本当にやめてほしい。

 

「マスターさん」

「うん」

「今日は許してあげる。明日はとびっきりのお仕置きをするから」

「え!?」

 

 マスターがしどろもどろに慌て始める。今更謝っても許してなんかやらないのだ。

 謝りながらも離れないマスターに苦笑しつつ、シトナイはマスターの温もりに身を委ねた。

 

 

 

「マスターさん。別に嫌ってわけじゃないの。その……、人に見られない場所なら、こうしてくっついても、いいからね……?」

「…………。ぎゅー」

「んん!? どうして力を込めるの!?」

 




壁|w・)ぎゅー。
サトウキビをぶちこんでみたよ! これでどうだこんにゃろう!

来週はアナちゃんの方を書きたいから次は二週間後だよ!
のんびり書くのだ!

感想とかもらえると嬉しいよ! それだけが活力だよ!
でもお仕事ブラックだから返信に時間がかかるのは許してね!

ではさらばだー!

さっさとくっついていちゃいちゃか、なかなか素直になれないもにょもにょする関係を継続か、どっちがいい?

  • いちゃいちゃ(砂糖増量)
  • もにょもにょ(砂糖据え置き)
  • もふもふ(シロウ増量)
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