「お兄様早く早く!」
「ちょ、待てよ!フラン!」
紅魔館の中を走り回っているフランの後を追いかける。
なぜこのようになっているのかというと……先程レミリアに言われた一言が原因である。
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「あんた、ここの執事をやりなさい!」
「……は?」
勢いよく指を差され、レミリアはそう言ってきた。
「何度も言わせないで。あんたは今からこの館の執事をしてもらうわ」
「いや、意味は分かってるって。ただ、なんでかっていうこと」
「そんなの、働き手が少ないからに決まっているでしょ。あんた、ただの人間だけどフランの弾幕避けきったみたいだし、使えそうだと思ったからよ」
そう言ってレミリアは椅子から立ち上がり、ゆっくりとオレの所に戻ってきた。
「……嫌と言ったら?」
「私達の食事になる。まぁ執事になっても少し血を貰うかもしれないけど、殺しはしないわ」
「…………」
こいつらもさっきの紫と一緒でイタい娘なのかと思ったが、さっきの怪力といい、今まで起こった不思議な現象をみると、どうやらこの世界はこれが普通なのかもしれない……
つまり人食い妖怪がいてもおかしくない。
「それに衣食住の不便はさせないわ。ここで働く以上万全の体調でいてほしいからね」
「はぁ……」
「どう?」
レミリアが期待の目をオレに向けてそう聞いてきた。
「どうって……断ったら殺されるんだろ……」
オレがため息混じりにそう答えると、レミリアは白い八重歯をちろりと見せて笑った。
「決定ね」
そして背中の蝙蝠の羽を少し動かし、こう言った。
「じゃあよろしくね、執事さん」
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と、いうことで今フランにこの館を案内してもらっているのだが……とてつもなく広い。
「これだけ広かったら、住んでる人も多いんじゃ?」
「そんなことないよ。フランとお姉様と咲夜とパチュリー、あと門番と小悪魔くらいかな。他に妖精メイドはいるけどここには住んでないし」
「じゃあこの広い館に六人で住んでるわけだ」
「そうそう」
そう言いながらフランは玄関を開けた。
「それで今からその門番の所に行くよ」
そう言ってスキップしながらフランは日傘を持ち、外に出ていった。
その後を追って外に出ると、眩しい日差しが目に飛び込んできた。
そしてその次に目に飛び込んできたのは……とても大きな門。
学校の校門とは比べものにならないくらい、とても大きな門だった。
「……もう驚かないぞ」
今まで圧倒され続けてきたが、もう慣れた。
そう思いながら門に近づくと、一人の女性が門の前で立っていた。
「あれが門番?」
「うん。紅美鈴っていうの」
フランから紹介を受け、もう一度彼女を見る。
後ろ姿だが、紅の長い髪がたなびいているのが見て取れる。
服装は、名前からも分かる通り中国人っぽくて、緑のチャイナ服を身にまとっていた。
そのスリットから覗く美脚。後ろ姿だが、スタイルがいいのは一目見て分かった。
「一応挨拶しておいた方がいいよね」
「無駄だと思うよ」
フランがそう言うので「なんで?」と聞き返す。
「だって……ほら」
フランが美鈴に指を差すので目を向けてみると、
「うーん……もう食べれないですよー」
そう呟き「エヘヘ」と笑っていた。
「なに……今の?」
「寝言」
「え?まさか……」
冗談だろ、と思い、ちゃんと前から回り込んで見てみる。
すると美鈴は、立ったまま涎を垂らし、幸せそうな顔をして目を閉じていた。
「……立ったまま寝てる」
「まぁ美鈴はいつもこんな感じなんだ。ほら、次行こ」
フランが腕を引っ張るのでそのまま門を後にした。
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またエントランスホールに戻ってきたオレ達。
やはりいつ見てもエントランスホールは広い。
白い柱が四本立っていて床は赤いカーペットで統一されている。
中央に立ち、上を見上げると吹き抜けになっていて上にも広いことが分かった。
玄関を入って、エントランスホールの奥に階段がある。
それを少し上がると、先程レミリアがいた部屋に着く。
「で、次はどこ行くの?」
「次は地下だよ」
「地下……という事はさっきのフランがいた部屋?」
「それもあるけど、まずはパチュリーの所だよ」
そう言って玄関から左に曲がってエントランスを抜ける。
そこからは先程咲夜に連れてこられた道のりを戻っていく。
「で、そのパチュリーっていうのは誰?」
「うん、パチュリーはお姉様のお友達なの。百年以上の付き合いなんだって」
「へぇ……って百年!?」
一瞬聞き逃しそうになったが、百年という単語に驚く。
「うーん……でもお姉様はもう五百過ぎてるからなぁ」
「五百!?」
「ちなみに私は四百九十五歳」
「えぇ!?」
その返答にまたまた驚く。
やはり、ここは普通じゃないと再確認した。
そうこうしているうちに階段を下りてきた。
下りてすぐ左手に扉があった。
「はい、ここが大図書館。地下一階は全部図書館になってるんだ」
「なるほど」
「あと、ここに小悪魔もいるよ」
小悪魔、ということは、なんかカッコイイ魔王の子供みたいなのがいるのかな……
そう思いながらオレはゆっくりと扉を開けた。
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大図書館。
地下一階が全部図書館、というほどなのでたくさん本があるのだろうな、とは思っていたが予想以上の数だった。
本当に、ここに来てから圧倒され続けている……
すると向こうからパタパタと足音が聞こえてきた。
「どちら様ですかー?あれ、いつもの人間じゃない?」
そう言って本棚の向こうから現れたのは黒服を着た少女。
だが、背中にはまたもや羽。蝙蝠の羽に似ているが、ふらんやレミリアとはまた別物だった。
薄赤色の髪からも二つ小さな羽が生えている。
「あ、どうも、ここで働く事になった執事です」
「あ、これはこれはご丁寧にどうも。小悪魔です」
やはり、この娘がその小悪魔みたいだ。
「コア、図書館では静かにしてちょうだい。あら、フランじゃない」
そうしているとまた本棚の向こうから、肌白い少女が現れた。
いかにも病弱、という感じだが脇に三冊も分厚い本を持っているので、そこまで病弱ではないようだ。
「あら、人間……あぁ、さっきレミィが新しく雇った執事ね。人間だったなんて驚いたわ」
そういうとその少女はマジマジとオレを見た。
「あの……なんですか?」
「あぁ、ごめんなさい」
そして少女は笑ってお辞儀をした。
「私はパチュリー・ノーレッジ。この小悪魔と図書館の管理をしているわ」
「と、言ってもただ本を読むだけですけどね」
そう言って小悪魔はペロッと舌をだした。
「ところで……貴方の名前は?」
「あぁ、オレの名は……」
オレが名前を告げようとした瞬間、廊下側からガラスの割れる音がした。
そして二秒もしないうちに図書館の扉が開いた。
「パチュリー!持ってきたぜ!」
そう大声をあげて入ってきたのは、魔女みたいな格好をした金髪の少女だった。
手には三冊のやっぱり分厚い本。そして身長よりも長い箒。
一体、彼女は何者なのか、と思っていると、少女は持っていた本をパチュリーに渡した。
「……これだけ?あと、持ってきてって言ったの、先月だったわよ」
「細かい事は気にすんなって。また今度持ってくるぜ。あとおすそ分けのマジックマッシュルームだ」
そう言って少女は白いキノコをポイッと投げた。ニカッと笑った笑顔が印象的だ。
そしてその笑顔のまま、オレを見た。
「んで……さっきから気になってたんだけど、この人間は誰なんだ?」
「あぁ、レミィが新しく雇った執事なのよ」
「ふぅん……人間か。ここにいる人間は咲夜だけじゃなくなったわけだ」
そう言うと少女は被っていた三角帽子を取り、スカートの裾を少し持ち上げ、お姫様がするようなお辞儀をした。
「はじめまして。私は真理沙。フルネームは霧雨真理沙だ。よろしくな」
「あ、あぁ、よろしく」
さっきから思っていたが、この真理沙という娘は、仕種は女の子らしいのだが、言葉遣いが男らしい。
いわゆる、ボーイッシュな娘、というやつだ。
「それよりパチュリー。あの魔法書と調合書、借りていくぜ」
「その前に……あと二百冊くらい、貴女の所にあると思うんだけど?貸した覚えのないやつも」
「また返しにくるぜ。とりあえず借りていくからなー」
そう言って真理沙はヒラヒラと手を振りながら奥へと歩いていった。
「はぁ……全く……」
パチュリーもため息をつきながら真理沙の後をついていった。
「なんか……大変そうだな、パチュリーさん」
「あの魔法使いには毎回手を妬いてるみたいだからね。ほら、次行こ」
またもやフランに手を引かれ、オレは図書館を後にした。
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図書館から出てまた階段を下りる。
「地下二階は何があるの?」
「お姉様達のお部屋があるんだよ。でもパチュリーと小悪魔はいつも図書館で寝てるからあんまり部屋にはいないんだ」
そう説明をうけて、オレは「へぇ」と感心する。
「それと執事とかメイドの控室もここにあるから」
そしてフランは階段を下りきった所で振り返り、そう説明してくれた。
「控室か……覗いていたほうがいいかな?」
「そうだね。あの奥がその控室だから行ってみたら?」
そう言ってフランは廊下の突き当たりの部屋を指差した。
「あそこだね。分かった」
そしてオレはその部屋まで早足で行った。
白い扉で、「Aute Room」と金のプレートが張ってあった。
「やっぱり……すごいな」
オレは感嘆の言葉を漏らしながらその扉を開けた。
しかし、そこには先客がいた。
しかも……
「あれ……パッドがズレる……おかしいな……」
その先客は下着姿で胸に白い何かを入れていた。
「あっ……あ……」
「うーん。ゴムが伸びたのかなぁ……それとも、胸が小さくなったのか……胸が小さくなるってことあるの?」
しかもその先客は、オレに気づかないまま、自分の胸を揉みはじめた。
小さくないが決して大きいとは言えない、美乳を両手で揉みながら、先客は小首を傾げた。
「胸を揉んだら大きくなるって……本当なのかしら?って……」
するとその先客はやっとオレに気づいた。
「あ……あの……さくや……さん……」
そう、その先客とは……
「いやぁぁぁぁぁ!」
咲夜だった。
悲鳴をあげた咲夜は下着姿なのにどこからかナイフを取り出し、オレに向かって投げてきた。
しかも、数が尋常ではないほど飛んでくる。
「見るなぁ!見るなぁ!」
「すいません!オレは何も見ていないです!」
「パッドを見るなぁ!」
「ってそっち!?」
オレはそうツッコミながら飛んでくるナイフを避け、その場を後にした。
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「はぁ……酷い目にあった……」
「大丈夫、お兄様?」
「うん……なんとか……」
奇跡的に切り傷一つ無かった事に喜ぶオレ。
とりあえず、これから控室に入る時は気をつけようと心に誓った。
「……それにしても長いな、この廊下」
先程の控室が廊下の突き当たり、つまり一番奥にあり、地下一階に続く階段が廊下の向こう側にある。
そしてちょうどこの廊下の真ん中にあるのが地下三階、フランの部屋へと続く階段だ。
「さて、これでだいたい回ったわけだけど……あとは客室の隣に食料庫と調理室、それと二階に大浴場があるくらいかな」
「なるほど、よく分かったよ。ありがとう」
そう言ってあげると、フランは頬を赤くして「エヘヘ」と笑った。
「さて……今日の仕事はこれで終わりだよ」
「仕事って……オレ、ただ案内してもらっただけだよ」
「ここの事が分からなかったら仕事も出来ないでしょ。それに今日はもう咲夜がほとんどやってくれてるよ」
確かに、今まで歩いてきてゴミ一つ、というより埃一つ無かった。
これを一人で……そう思うと彼女はものすごい人なんだな、と思った。
「それにね……」
そう言うとフランはさっきより顔を真っ赤にさせて笑った。
「それにね、フランはお兄様と一緒にいれて楽しかったよ」
「…………」
それを聞いてオレも顔を赤くする。
見ているこっちも、なんだか照れてくる。
「さ、さぁ、お兄様の部屋なんだけど、この階の階段近くに空き部屋があるからそこを使ってね!」
「分かった。今日はありがとうね」
そう言ってフランの頭を撫でてあげる。
とても満足そうにしているのでこちらもうれしくなってくる。
「じゃあね!」
撫でてもらい、満足そうなフランはニヤニヤしながら手を振り、地下三階への階段に走っていった。
「……まぁ、明日からオレも大変になるんだろうな。掃除とか、あの小さな主の相手とか……」
とりあえず、戻れないのならここで楽しく過ごせばいいか。
そう思いながらオレは用意してもらった部屋へと向かった。
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「どうでした?紫様?」
隙間から現れた紫を出迎えた藍がそう聞いた。
「また逃がしたわ……あいつ、やっぱりあの人間を探してるわ」
「あの人間って……」
「もうちょっと調べてみようかしら。まぁレミリア達の反応を見たら分かる事なんだけどね」
そう言うと紫達は持っていた扇子を広げ、また隙間に消えて行った。