執事を始めて、数日がたった。
それまでにした仕事といえば……
「お兄様ー!」
フランとずっと遊んでいるだけだった。
執事をやる、という事なのにそれらしい仕事をあまりやったことが無い。
楽なのでいいのだが……なにもしない、となるとなんだか気が引ける。
そう思ってまた数日。
やっと仕事がもらえたのだ。
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「すいません、どうしても手が放せないので……」
「いいですよ、咲夜さん。おつかいぐらい」
「では……お願いします」
そう、始めての仕事とは、おつかいだった。
館の前にある湖を抜け、それよりもっと向こうにある人間の里。さらにそれの向こうにある森に、行きつけのお店があると咲夜から説明してもらい、オレは始めてこの館の外に出るわけだ。
「でも……一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、地図も書いてもらったし」
「……分かりました。じゃあ、このメモに書いてある物を買ってきて下さい。多分、紅魔館です、って言えば分かってくれると思います」
「はい」
そう言ってオレは紅魔館の玄関を開けた。
「では、行ってきます!」
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美鈴が守る門を過ぎて……といっても彼女はまた寝ていたが、門の先にある湖を目指す。
「たしか……この湖には妖精がいるって咲夜さんが言ってたな……どんな妖精なんだろ」
そう、「チルノ」という妖精がいる、と先程咲夜から言われたのだ。
そう思いながら歩いていると、湖が見えてきた。
「おぉ、綺麗な所だな」
水は澄み渡っているし、空気も綺麗だ。
久しぶりの外なのでオレはゆっくりと深呼吸をした。
「でも……なんだか肌寒いな……」
そう思っていると、向こうの方からなにかが砕ける音がした。
何事か、と思い声のする方へと向かう。
そこには……
「あーあ、暇だなぁ……大ちゃんはいないしルーミアも来ないし……」
そう呟きながら蛙を凍らせている少女がいた。
「あれが……妖精……」
水色のショートの髪をリボンで縛り、青い服、そして背中には半透明の羽。
多分、彼女がチルノだろう。
そう思っていると彼女はため息をつきながらふわりと浮いて、どこかに飛んでいってしまった。
「あれが、妖精か……たしかフランもレミニアも吸血鬼で……みんな見た目だけじゃ分からないよな」
みんなは人間や妖精とか言っているがよく分からない。
確か……美鈴は妖怪だ、って言われたような気がする。
そう思いながらオレはまた歩きだした。
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しばらくすると賑やかな場所に着いた。
「ここが人間の里か」
ビルなどの高い建物がない。
雰囲気が一昔前の日本に似ていた。何と言うか、文明改化直後の日本、みたいなそんな感じだった。
街中を歩いている人達も、服装はばらばらだ。
着物を着ている人から最近のビジュアル系な服装をしている人もいる。
「えっと……ここから……」
咲夜からもらった地図を見ながらオレはさらに奥にある森に足を向けた。
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しばらく歩いているとやっとそれらしき店を見つけた。
「ここか?えっと……香霖堂……うん、そうみたいだな」
地図通りに来たから間違ってはいないはずだ。
オレは目の前にある店に「すいませーん」と言いながら入った。
「いらっしゃい。おっと、見ない顔だね。どちら様かな?」
入るとすぐに奥から人が出てきた。
白髪の男性で綺麗な色の着物を着ていた。
男性はかけていた眼鏡を指でクイッと上げると、レジの所に座った。
「あ、えっと……紅魔館の咲夜さんに頼まれておつかいに来たんですけど……」
「紅魔館?どうしてただの人間が咲夜なんかにおつかいを頼まれるんだい」
「あ、オレ、新しく紅魔館で働く事になった執事です」
「へぇ、あんな所で働くなんて……君、物好きだね」
そう言うと男性はクククと笑い、立ち上がった。
「一応自己紹介。僕は《森近霖之助》。こーりん、とか霖之助って呼ばれているけど、好きに呼んでもらって構わないよ」
すると霖之助は棚からいくつかの袋を取り出し、それを大きな袋に詰めていった。
「はい、この前頼まれていた紅茶の葉とナイフ、あと雑誌だね。他に要るものはあるかい?」
「あ、えっと……石鹸ありますか」
「石鹸……いつもの液体石鹸でいいよね?」
「は、はい。多分それでいいと思います」
そう言うとすぐに棚から石鹸を取り出してきた。
いつもの、で通じるということは相当通っているんだな、と思った。
「さて……このくらいかな」
「はい、ありがとうございます」
そう言ってオレは礼をすると、霖之助は「頑張れよ」と言って、笑顔で手を降ってくれた。
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買い物をして帰り道、途中に長い石段を見つけた。
石段の前に、赤い鳥居もあるので一目で神社だな、と思った。
まだ時間もあるし気になったので、オレはその石段を上っていった。
やっと上りきったと思ったら次に目に見えたのは、参拝客が一人もいない神社だった。
誰もいないのかと思ったが、掃除はきちんとされているので人がいることは確かだろう。
「とりあえず、お参りしよう」
オレは自分の財布から小銭を取り出し、賽銭箱に投げ入れた。
二礼、二拍手、と流れるようにして最後に一礼をする。
すると、後ろから誰かの足音が聞こえた。
しかも速い。という事はその誰かは走っているのか……
そう思っていると足音の主が目の前に現れた。
「おさい銭キター!」
と叫びながら。
「いくらいくら!?うわぁ!うれしー!久しぶりだぁ!」
彼女は目を輝かせ、文字通り飛び付くように賽銭箱に向かった。
見た感じ、巫女服を着ているのでこの神社の巫女なのだろう。
いや……確かに服装は巫女服なのだが、何と言うか……
「寒くないのか……?」
そう、脇が見えてるのだ。
普通の巫女服をアレンジしたような格好だった。
「あ……あの」
「え?あ!貴方が入れてくれたのね!」
すると巫女はオレの方を見て握手を求めてきた。
「ありがとう!私は《博麗霊夢》見ての通り、この博麗神社の巫女兼神主よ」
そう言って得意げな顔をする霊夢。
しかし、おさい銭が入ってこんなにも喜ぶ巫女って……
「じ……じゃあオレはこれで……」
一応一言掛けてからオレはその場を後にした。
しかし霊夢はおさい銭を見てうっとりしているだけだった。
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そのまま寄り道もせず帰宅路につく。
そして紅魔館の前まで着いた途端、また肌寒くなった。
「寒っ……」
「……お前、誰なのか?」
すると急に後ろから声がして、ビックリした。
振り返るとそこには、なんと言ったらいいだろうか……闇?黒い玉?そんなものが浮かんでいた。
「えっ……えっと?なんだこれ?」
「あっ、そうなのか」
そう言うと黒玉はゆっくりと地面に着いた。
すると黒玉が消えて、中から少女が現れた。
「よっと……」
現れた少女は黒い服を着た金髪の娘だった。
金髪の髪についている赤いリボンが印象的だった。
そして少女は両手を広げ、十字架のポーズをとった。
「……なにしてるの?」
「私の胸に飛び込んできなさい、のポーズ」
「いや、意味がわからないよ……」
すると今度は手をクロスにして頭の上でバッテンを作った。
「……今度はなんのポーズ?」
「不正解、解答権が相手に移ります、のポーズ」
「クイズ番組!?」
「じゃあ次!」
すると彼女は片足を上げて、両手を広げる、あのポーズをとった。
「……今度は?予想はつくけど」
「命!」
「古いわ!そしてパクるな!」
思いっきりつっこんだ。
「あはは、お兄さんおもしろいね」
そう言うと彼女はニッコリと笑い、宙に浮いた。
「じゃあねー」
そしてふわふわ浮かびながらどこかに飛んでいってしまった。
「……なんだったんだ?」
飛んでいる少女を見送ってから、オレは紅魔館に入った。
後で咲夜に聞いた所、その少女は《ルーミア》という人喰い妖怪らしい。基本、気まぐれな少女で今日もテキトーに見つけた人間、つまりオレを遊び相手にしたみたいだ。
やっぱり、人間やら妖怪やらの見分けがつかない……
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その日の夜、フランが「フランを置いて外に行くなんてひどいよ!お兄様!」と言ってオレの部屋中に弾幕を撒いていった。
今度から外に行くときはフランも連れていこうと思った。