ビーストについて
■の■■■ず持■■■■■ださい
■■■ラ■■■■ より
「これは・・・!?」
「ご主人様ご主人様!」
「わわ! イエイヌちゃんなになに?」
ある日の事、あたしとイエイヌちゃんはおうちのおそうじをしていた。あたしが本棚を整理していたら、つくえをかたづけていたイエイヌちゃんが何か珍しいものを見つけたようで、コーフンしながら駆け寄ってきた。手にはほこりまみれのひらたいふくろをもっていた。
「ご主人様! これなんですか??」
「……なんだろう。あたしも初めてみたよ」
『ビーストについて』と書かれてある。ビースト……最近出没しているといわれていて、フレンズやセルリアンをよく襲っているらしい。その強さはフレンズよりとっても強い。ビーストと聞けばみんな顔が青くなる。恐らくそのビーストのことだろう。なかには紙が入っていた。もじがかかれているのはわかったが、びっしりと書かれていて…
「びーすとについて……かこ……? びーすととは…………???あたしにはわっかんないや!」
「じゃあかばんちゃんにも見せに行きましょう!ご主人様」
イエイヌちゃんがしっぽをフリフリしながらおでかけの準備をする。
かばんちゃんはあたしのそんけーしている人で、とにかくあたまのいい人だ。お料理から実験、セルリアン退治までなんでもできる。あのかばんちゃんなら、このもじを読むことはかんたんだろう。
「いいね! かばんちゃんに聞けばいろいろわかるかもしれない。いこーいこー!」
とっくにおそうじを忘れていたあたしたちはおでかけの準備をぱぱっと済ませておうちを飛び出した。これは新発見の予感! あたしたちは急いだ。
ともえちゃんたちから渡されたのは、一通の手紙だった。
これはジャパリパークの職員に宛てて書かれた物に違いない。
ビーストについて…………なかなか興味深い。
筆者カコ。カコさんという人が書いたのだろう。
カコと言う名前……どこかで聞いたことあるような? なんだか懐かしい名前。
「ふむ……なるほど……へぇ~……」
びっしりと書かれた手紙を読み進めていく
サンドスター値? セルリウム値? なるほど……
対策や対処法もちゃんと確立されている……
麻酔銃? そんなのもあるんだ……
長い手紙を読み終えて、僕は机の上に手紙を置いた。
「かばんちゃん、なにかわかった?」
「うん。ビーストがどうやってできるかがわかった。ジャパリパークのスタッフがどのようにビースト対策をしたかもわかった。なによりも……」
「「なによりも?」」
なによりも……
「ビーストをフレンズにできるかもしれない」
衝撃の一言に、二人は驚いた。
「び、ビースト、を?」
「わー! どうやってフレンズにできるんですか!?」
ともえちゃんはなんだかうれしそうだ。ともえちゃんはフレンズが好きだ。いつかビーストもフレンズになって欲しいと願っていた。そう、私も願っていた。願いがかなうのかもしれないから、嬉しいはずだ。
「やろうと思えば可能です。ビーストのセルリウム値を減らしてサンドスター値を増やすだけです」
そう、これだけだ。ここだけ見れば簡単だ。
「でも、どうやるんですか?」
イエイヌちゃんの疑問は僕の疑問でもあった。どうやるか?
「ビーストに一撃でも当てられたらひとたまりもないですよ。それに足が速くて逃げ切れなかったフレンズも多いと聞きます……」
そう、そこだ。ビーストは圧倒的に強い。セルリアンより強いと思う。
「わかっています。でも、僕に思いつきがあるんです」
僕は続けて、
「今夜、作戦会議をしましょう。ロードランナーちゃんにも協力してもらいます」
机と椅子のセットが並んでいる。正面には「ほわいとぼーど」があり、かばんちゃんたちやはかせたちが立っていた。あたしたち3人は椅子にすわる。
「きたきたー! ともえちゃんたちもきたから「さくせんかいぎ」はじめちゃおう!」
サーバルちゃんがあたしの右隣に座っている。もう準備はできていた。はかせたちがしゃべりはじめる。
「では、さくせんかいぎをはじめるのです。はじめに、こんかいのがいようをせつめいするのです」
「我々の目標はビーストのフレンズ化、です」
「ビーストのおそろしさはもうしっているはずなのです」
「念を押しますが、失敗したら逃げることに専念するのですとくにサーバル、お前はいつも先走るのです」
「じしんかじょうはきけんなのですよ、サーバル」
「へーきへーき! なにかあってもぴょーんって逃げられるから!」
不安そうな視線が一点に集まる。サーバルちゃんはさばんなちほーのトラブルメーカーとしてよく知られている。
「なんでそんなカオするのー? へーきだってー!」
「ま、まぁサーバルちゃんのジャンプ力ならビーストが相手でもなんとかなりますから……」
かばんちゃんがフォローする。実はサーバルちゃんのジャンプ力もよく知られている。そのジャンプ力で様々なトラブルを乗り越えてきたらしい。
「さて、ちゃばんはそこまでにしてつぎにさくせんをはっぴょうするのです、かばん」
「発表するのです、かばん」
「はい。まず、ビーストの中には『サンドスター値』と『セルリウム値』がいつも同じくらいあります」
ビーストの絵が貼られた。私がこの前に描いた物だ。
「『サンドスター値』と『セルリウム値』がどっちかが多くなりすぎたり少なくなりすぎたりすると、フレンズになったり、セルリアンになってしまうことがあるそうです」
「ですからビーストはフレンズのサンドスターやセルリアンのセルリウムをほきゅうしているのです」
「襲われたフレンズが野生化するのは、サンドスターのみを奪われたからなのです」
今度はなにか、複雑な形をした物の絵が出てきた。
「そこでちょっと乱暴ですが、サンドスターをビーストに向けて射ちます。そのための道具がこれ、『バリスタ』です」
その複雑な形の物を指した。『バリスタ』というらしい。かっこいい。あたしも描いてみたい。
「これは今ビーバーさんたちに作ってもらっています。としょかんに置いてあった『古代の兵器大全』を参考にしました」
その本、かばんちゃんが読んでいる所を見たことがある。曰く「
「ちょっと痛いかもしれませんが勢い良くビーストにサンドスターの塊をぶつけてサンドスターを浴びてもらいます。」
「ふんかでサンドスターがふってきて、どうぶつなどにぶつかってフレンズがうまれるのはしっているはずです」
「その原理の応用みたいなものなのです」
「勢いよくぶつかればサンドスターが活性化し、急激に『サンドスター値』が多くなり『セルリウム値』も減らされます」
つまりは『ふんかの再現』……?難しそうだ。
「ただし、バリスタは大きくて持ち運びが難しく、チャンスも一度きりです」
「にはつもうつとかのんびりやってたら、ビーストにたべられちゃうのです」
「一撃なのです。ブラックジャガーのように一撃なのです」
「はい。そこで・・・・」
ジャパリパークの地図が貼られる。その地図には星のシールが何枚か貼ってある。
「このようにあらかじめ狙いやすい位置を決めて、フレンズさんたちがそこまで誘導します。今回の作戦の重要なポイントです」
「つまり、フレンズとビーストでおいかけっこするということなのです」
「ですがビーストはフレンズより速い個体が多いし、なにより爪が当たったら即野生化なのです」
「はい。ですがちゃんと逃げるときの工夫も考えています。逃げる係はサーバルちゃん、イエイヌちゃん、ロードランナーちゃんにお願いします」
「はいはーい! 私1番行ってみたーい!」
サーバルちゃんがまた先走る。
「誘導はリレーごっこのように何人かでやります。サーバルちゃんは2番目がいいかな。1番目は……」
ロードランナーちゃんの挙手。ロードランナーちゃんはかけっこが大好きな鳥のフレンズだ。
「このロードランナー様が1番目を受けてやるぜ。俺様は毎日走っているからへっちゃらだぜ」
「わかりました。ロードランナーちゃんは1番目ですね。じゃあ、3番目はイエイヌちゃんですね」
イエイヌちゃんは自信満々に
「ハイ! 3番手は任せてください!」
と返事をした。イエイヌちゃんもかけっこは得意だ。
「はい。イエイヌちゃんよろしくお願いします」
でも、ちょっとだけ不安だ。万が一ビーストにひっかかれるようなことがあったら……
へーきへーき、きっとなんとかなる……
「このビーストは姿勢がネコ目に近く、行動もネコ目寄りの行動が多く見られます。なので走り方もネコ目のような走り方、つまり『まっすぐにはやく走れるけど、曲がることが苦手』です」
「ロードランナーは小回りが効くので、ジグザグにまがりながらはしることができるのです」
「同じネコ目のサーバルやイエイヌは同じ走り方になってしまうので、今回のビースト相手だと必ず不利になるのです」
「でも、サーバルちゃんはジャンプ力でカバーできますし、イエイヌちゃんの番になるころには恐らくビーストも疲れているでしょう。もちろん支援は惜しみません。ですから、みなさん全力で逃げてください」
「わかったよかばんちゃん。まかせて!」
「応! まかせておけ! このロードランナー様、ビーストだろうと翻弄してやるからな」
「私も頑張ります! ほんろーしてやりますよ!」
3人はやる気に満ち溢れていた。心強い。
「ありがとうございます。そして……」
そういうとかばんちゃんはあたしの方を向く。
「ともえちゃんには射手を任せようと思います」
え!?
あたしがこんなオオトリを任されるとは思ってもいなかった。た、たしかにバリスタには射手も必要だとは思うけど、えっと、でも、
「あ、あたしですか、あのバリスタを、つかうのは?」
「はい。今このバリスタを使えるのは僕とともえちゃんしかいない。それに、僕とラッキーさんはジャパリバスを運転しないといけないです。だから、ともえちゃんには頑張ってもらいます」
「バスノ ウンテン ボクラニ マカセテネ」
「わかりました……でも大事な場面を任されるって緊張します……」
「大丈夫です。ともえちゃんの絵の正確さと観察力は、バリスタをうつときも生かされるはずです。僕はそれを見込みました」
確かに絵は得意だ。でも、あたしに絵以外のとりえなんて
「大丈夫ですよご主人様! 私達だってなんとかなりますから、ご主人様もできますよ!」
「えへへ……ありがとう、イエイヌちゃん」
「そーそー! へーきだよ!」
「ビーストは一人だが、俺達はたくさんいるからな!」
サーバルちゃんやロードランナーちゃんまで励ましてくれる
「ありがとう。あたし、頑張る」
「ありがとうございます。はかせとじょしゅは明日かざんへ行って、サンドスターのかたまりを作って持って来てください。それとビーストを探すのと、ビーストから逃げているときに上からてだすけもお願いします」
「やれやれなのです。やることがたくさんなきがするのです」
「ビーストに追われるよりはマシなのです。お任せなのです」
「これで作戦は整いましたね。実行は明日にしましょう。そうだ、わたしたいものが……」
そういって鞄からなにかを取り出す。小型でくの字、筒がくっついているモノと、先が丸くなった円柱型のモノが2個。
「これは信号銃、フレアガンともいいます。そしてこれはこの弾。もしもの為に一人一個二発はもっておいてください」
「これは……むずかしいこうぞうをしているのです、かばん」
「使い方を教えるのです、かばん」
「そうですね。これは危ないので、外で使いましょう」
みんなで外に出て、使い方を実践し始めた。
「まず弾を込めて、このレバーを引きます」
よっこいしょ、とかばんちゃんがレバーを引いて見せた
「あとはこのひきがねを引くだけです」
プシューッ。射出された弾はバチバチと綺麗な火花を散らしまぶしく輝いて空に軌跡を描いた。
でも火だ。フレンズがみんな怖がった
「なんてことですかかばん! われわれにひをつかわせるつもりですか!?」
「本能で火を怖がる事はわかっているはずですかばん」
「えっと……マッチでいちいち火を付けるよりはずっと楽で安全だし、野生開放すれば火を克服できますから……」
慌てて説明をするかばんちゃん。後ろでは火花がまだ輝いている
「まったく、『ひ』と『ひと』ははおそろしいのです」
「上手いことを言っても克服はできないですよはかせ」
「せっかくなんで、みなさんこれを撃って見てください」
試しうちをするフレンズたち。道具がうまく扱えなかったり火がこわかったりでみんな発射することすらままならなかった。
「じゃあ、あたしもうってみます」
かばんちゃんがやったような動きをし、ひきがねを引く。プシュー。火花はまた軌跡を描いた。やっぱりフレンズ達は怖がっていた。
夜。寝床につくあたしとイエイヌ。イエイヌちゃんが嬉しそうに話しかける。
「もし成功すれば新しいフレンズですよ、ご主人様」
「そうだね……何のフレンズか楽しみだな。何のフレンズだろうね?」
「うーん……トラ?」
「かばんちゃんはネコやらなにやら言ってた気がします。トラもネコの仲間だったはずです」
こんな感じにお互いに期待を膨らませていたら、いつのまにか寝てしまった。
「オハヨウ ゴザイマス カバン アサノ 5ジヲ オシラセシマス オハヨウ ゴザイマス カバン アサノ 5ジヲ オシラセシマス」
ラッキーさんの声で目が覚めた。既にはかせたちは行ったようだ。
じゃぱりまんよし、フレアガンよし、資料よし、車の電池よし。すぐに身支度を済ませ、僕たちはビーバーさんたちの家に向かった。
「おはようの挨拶をするであります!」
家から出てきたのは、意外にも早起きのプレーリーさん。勢い良く『挨拶』でお出迎えする。
「!!!//////」
不意の『挨拶』には、いつでも動揺する。じかんがゆっくりなようにかんじ、くちのなかがとろけて、ってやってる場合ではない。すぐに体制を立て直す。
「おはようッス! 依頼のブツはできたッスよ!」
つづけてこれまた早起きのビーバーさんが迎える。昨日いきなりこの二人にバリスタの製作を頼んだわけだが、さすが製作のプロ。もうバリスタそのものが出来上がっている。完璧な出来。続けて池に試しうちをする。手ごろな岩をセットし、対岸の木に標準を向け、おもいっきり弦を引き絞る。そして、
「発射!」
ぴょーん! と弾丸の岩は軽々と池を飛び越えた。幸い対岸にフレンズはいなかったが、予想以上の飛距離だ。
「いきなりでごめんなさい。本当にありがとうございます」
「気にするなッス! いつでも引き受けてやるッスよ!」
「かばんさんは我々の命の恩人であります! いつでも頼るであります!」
お礼にじゃぱりまんをたくさん渡して、バリスタをバスに乗せてその場を後にする。
「カバン イヨイヨダネ」
ラッキーさんも期待しているようだ。
「コレハ パークノ キロク ニモナイ ココロミ ナンダ ダイジョウブ キット ウマク イクサ」
「ええ、あの子たちならやってくれます。信じてます。後は…………ビーストさんを、フレンズとしてお迎えできますように」
希望を抱きつつ作戦場所へと向かう
「おっはよ~~~~~~!!!!!!」
「わあああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?」
せっかちなあたしはイエイヌを勢い良く起こした。今日は騒がしい朝だ。
「ご主人様!?まだ行くのには早すぎませんか!?」
「今日はさくせん実行の日! 待ちきれないの! さあ支度支度!!」
興奮するあたしと振り回されるイエイヌちゃんはチーターのような早さで支度をすませた。
「くぅ~ん、もう少し寝ていたかったのに……」
「寝ているヒマはないよ!さあしゅっぱーつ!」
ロードランナーちゃんを迎えにスキップで向かうあたし、走るイエイヌ。どういうわけかあたしの方が速い。
「おーはーよーう!!! ロードランナーちゃーん!!!」
さくせん開始までまだ長いというのに、早すぎるお迎えに対してロードランナーちゃんの嘆きが中から返ってきた。
「と、ともえちゃん! 早すぎるよ! このロードランナー様もまだ支度してないのに!」
慌ててロードランナーちゃんが支度を済ませる。パンをくわえたロードランナーちゃんが出てきたが、お構いなく
「じゃあ、いこうか!」
と、興奮しつつさくせん場所にむかって走り始めた
「お、オイ……あれいつものともえちゃんの速さじゃないぞ!?」
「走っても走っても追いつけないです~! まってくださ~いご主人様~!」
どういうわけかイエイヌちゃんとロードランナーちゃんより早く走るあたし。こういうときのお決まりである。
そう。今日は新しいフレンズが増えるかもしれないという大事な日。けものが大好きな、フレンズが大好きなあたしが興奮が抑えられるはずがない。
「ビーストさんを、フレンズとしてお迎えできますように」
つづく。