サンドスター値、セルリウム値全てを消耗しきっても
野生に戻ることはなかった。
ビーストの頃の激しい消耗が原因と考えられている。
墓が増えていく中、私は思った。
もし、ビーストをフレンズにできるとしたら?
遺体にサンドスターをぶつければ、理論上はフレンズ化は可能
死体からフレンズ化させるのは倫理に反している。
絶滅種やUMAを無理やり復活させたくせに、倫理とかよく言えたものだ。
じゃあビーストになっている時にフレンズ化は?
暴走の危険性がある 施設への甚大な被害が予測される
結局、ビーストのフレンズ化の試みは全て却下された。
でも、私は信じている。
奇跡はある。
かがやきのまぶしいサンドスターをちょいとばかり…
「…………ふぅ、しんせんなサンドスターのかたまりのできあがりなのです」
われわれはかざんのてっぺんで、かばんにたのまれてサンドスターをとっているのです。
「大きさを確認するのです」
あらかじめつくっておいた『うつわ』をとりだして、はめてみたのです。われわれはかしこいので。
「ふむ、ぴったりなのです。」
「申し分なしなのです」
「さて、そろそろいくのです、じょしゅ」
「みんな寝坊してないといいですね、はかせ」
フレアガンよし、サンドスターよし、わすれものはなし。いつだってわれわれはかんぺきなのです。
どれくらい待っただろうか、全員があつまった。あたしはバリスタを前にして、不安と緊張を感じはじめた。
「これがサンドスターのかたまりなのです、ともえ」
「チャンスは一回限り、失敗は許されないのです、ともえ」
サンドスターをバリスタにセッティングする。ちょうどいい大きさだ。引っ掛けて……準備よし。あとはこれを引けば発射できる。
「では、われわれはビーストをみつけてくるのです」
「見つけたら私が戻ってくるのです」
「わかりました。気をつけていってきてください」
かばんちゃんは二人を見届けると、地図を出し、赤い星のマークを指す。
「ぼくたちが今いるのがここです。ここは高く、遠くからも見えるので逃げる方向がわかりやすいです」
遠くから見ても分かりやすい、そして周辺は林地帯で逃げやすい。これ以上ない立地だった。
かばんちゃんは続けて
「走る距離はビーストの場所次第なのでまだわかりません。長くなるかもしれませんが、平気ですか?」
「まかせておけ! 長距離はなれっこだぜ」
「わたしもがんばっちゃうんだから!」
「サーバルちゃん、ロードランナーちゃん、今の内にかけっこしちゃいますか??」
「えーやめとくよー。本番のときに疲れちゃうもん」
「なんでだよ~、ロードランナー様は全然平気だぜ~」
談笑する三人を横に、かばんちゃんはあたしを見る。
「ごめんねともえちゃん、こんな危険な事をまかせちゃって」
「大丈夫です。あたしだってビーストをフレンズとして迎えたいです」
今日、それはあたしが待ち望んでいた日。
「そして、ビーストちゃんを迎えたら、みんなで遊んで騒いでる楽しい絵を描きたいんです。楽しい時間をすごしたいんです」
けものはいても、のけものはいない。だからビーストちゃんは、のけものにはしない。
「だから、あたしはビーストちゃんのために、成功させます!!」
イエイヌちゃんが、あたしの決意を聞いて振り向く・
「ご主人様なら、きっとできます!私達は信じてます!」
「ああ、それにこのロードランナー様がいる。
「そーだよともえちゃん!だからへーきへーき!なんとかなるって!」
「えへへ……みなさん、ありがとうございます!」
「僕も、ともえちゃんならできると信じています。応援しています」
「ありがとうございます!!」
と言っている間にじょしゅが帰ってきたようだ。
「ビーストを発見できたのです。地図に印をつけておくのです。はかせもそこにいるのです」
青い星を地図に貼るなり、じょしゅは急いではかせのもとに向かった。
「ありがとう。じゃあ……」
自分たちの居る所の星、はかせの居る所の星、その間に青い星が2つ貼られた。
「ラッキーさん、この青い星をたどってください」
「ルートサクセイチュウ・・・・ルートサクセイチュウ・・・・ デキタヨ ウンテンハ マカセテネ カバン」
「ありがとうございます、ラッキーさん。じゃあともえちゃん、いってきます」
「「「いってきます!」」」
「気をつけてくださいねー!」
4人はついに行ってしまった。久しぶりに、一人になってしまった。
さっきにも増して緊張に襲われている。
いや、緊張というよりは、恐怖だろうか?
一人になるのは目覚め以来かな。
一人は寂しい。
独りは寂しい。
それは、あたしが目覚めて最初に思った感情。
それを、イエイヌちゃんが救ってくれた。
ビーストだって一人。
ビーストだって独り。
独りぼっちは、寂しいもんね。
だから、今度はあたしが救う番。
あたしたちが、ビーストを救う。
だから、あたしに怖がっている暇はない。
もう、あたしは怖くない。
「ダイイチ ポイント トウチャク イチジ テイシ スルネ」
バスが停止した。私はここでおりるみたいだ。
「じゃあこれ、フレアガンと弾2個。使い方は覚えてる?」
昨日も今日もふくしゅうした。使い方はばっちり覚えている。
「もちろんです!」
「よかった。でも気をつけてね。じゃあ、サーバルちゃんが来るまでイエイヌちゃんはここでまっててね」
「よろしくねー!イエイヌちゃん!」
「はい!わかりました」
「ソレジャア シュッパツスルヨ」
バスはまた出発した。サーバルちゃんとロードランナーちゃんが手を振る。お互いに見えなくなるまで、手を振り合っていた。
私はみんなのためならなんだってできる。命令は絶対こなす。そうしている。そこに不安や恐怖はない。
でも、今日の私はなんだか違う。
近くに居るはずのご主人様がいない。
ご主人さまは今も寂しがっているはずだ。だって、私も寂しい。
でも、こんなに不安がっていてはご主人様に、みんなに迷惑をかけてしまう。
へーきへーき、きっとできる。
へーきへーき、私達はきっと成功させる。
怖がってたら、できるものもできない。
でも、それでも、ただご主人様が心配だった。
「ダイニ ポイント トウチャク イチジ テイシ スルネ」
「わーい!やっとついたー!私はここで待ってればいいんだね!」
「うん。じゃあサーバルちゃんにもこれ、気をつけてね」
かばんちゃんがフレアガンと弾を2こわたしてくれたー!紙ひこーきよりも難しいけど、へーきへーき!
「ありがとー!かばんちゃんにおそわったから使い方もばっちりだよー!」
グット!なサインをだしたんだ!そしたらかばんちゃんもグット!って返してくれたの!
「じゃあ、よろしくね!サーバルちゃん!」
「サーバル、よろしくな」
「へへん。まかせてー!あたしはかりごっこではまけないよ!!」
「ソレジャア シュッパツスルヨ」
「ロードランナーちゃんも頑張ってねー!」
「任せとけ!このロードランナー様は負けないからな!」
バスが見えなくなるまでロードランナーちゃんと手を振り合った!
本当は、私はちょっとだけ不安だった。
ちゃんと逃げ切れるか分からない。
いつもかばんちゃんに助けられてきた。
私だけでできるのかわからない。
でも、やるしかない。
へーきへーき!どうにかなるって!
いままでもなんだかんだ言ってどうにかなったから!
だから、ただ私は全力でやり遂げる!
おいかけっこは得意だ。
逃げるのも追いかけるのもかかってこい。
いつも走っているから余裕だ。
このロードランナー様がかけっこにおいてロードランナー様とチーター以外に動揺する日は来ない。
そう思っていた。
ビーストを目の前にするまでは。
「サイシュウ ポイント トウチャク ジドウ ウンテンヲ シュウリョウ スルネ」
バスが止まった。上からはかせとじょしゅがお迎えする。
「だいぶまったのです。ビーストはこのちかくにいるのです」
「気をつけるのです。何時何処から襲われてもおかしくないのです」
「わかりました。ロードランナーちゃん、準備はいいですか?」
そんな問い、答えは決まってる。
「ああ、このロードランナー様、いつでも行けるぜ!」
周りは木だらけで、どこから襲われるかわからない。俺はいつでも逃げられるよう、クラウチングをする。
「気をつけてください!今からビーストを呼びます!」
かばんさんがそう言うと、鞄からなにかを取り出す。フレアガンじゃない。紐を中心として、棒が何本も繋がった何かに、かばんちゃんは火をつけ、逃げ出した。
パンパンパン!!!パンパンパンパン!!!!!
その何かが光り始める。耳を突く音が森中に鳴り響く。そして、
「キケン キケン ビースト セッキンチュウ ビースト セッキンチュウ」
「ガォォォォォォ!!!」
ビーストの叫び声。その恐ろしい声を全身で感じて鳥肌が立つ。いけないぞロードランナー、ここで動揺しては狩られてしまう。
「では、ロードランナーちゃん!よろしくおねがいします!」
音の元をビーストが襲う。 音は既に止んでいた。 かばんちゃんはバスを走らせて、既に遠くにいた。
そして、ビーストはこちらを向いた。おいかけっこの始まりだ。
「おい! ビースト、このロードランナー様とおいかけっこで勝負するんだな!」
挑発が聞こえているのかいないのか、ビーストはこちらに突っ込んでくる。しかし想定外だ。
速すぎる。
瞬きしてるうちに、目の前にビーストがいた。
辛うじてひっかきを回避する。ビーストは回避されて倒れこんだ。そのまま逃げ足を加速させる。それでもビーストはこのロードランナー様を超えるスピードで追ってくる。だが俺には秘策がある。
「そこだ!!」
またギリギリで急カーブ。そのまま森の中に逃げ込む。ビーストは木をなぎ倒しながら追ってくる。そこでまた急カーブ。道に戻り、また反対側の森に入る。
そう、ジグザグに走る事で小回りの効かないビーストを翻弄する。これでスピード差を埋める。
だがビーストのスピードは木や枝の妨害ごときで緩まるほど軟弱ではない。ここまでやってもビーストに追いつかれてしまうのは必然。だが、このロードナンナー様にはもう一つ秘策がある。
野生開放だ!
野生開放で少しだけ速くなったが、それでもビーストの方が速いに。だがこのロードランナー様はただ足を速くするために野生開放をつかった訳ではない。
フレアガンだ。
道に出た俺はすぐさま飛んで、真上にフレアガンを放った。
プシューッ! バチバチバチ!! 火花に気を取られるビーストを背に、このまま突っ走る!
火花の音が消えた。ビーストは再びこのロードランナー様に向かって走ってくるだろう。だが俺はずっと先にいる。
サーバルが見えてきた。あと一息。
「ロードランナーちゃーん!ここだよー!!」
声が聞こえる。が、その声に気を取られた瞬間
「あっ!!!!」
服がビーストの爪に触れた。本能からか、急カーブしたのだろう。
混乱した。このロードランナー様自身でも何をやっているのかよくわからなかった。多分、がむしゃらに走っていたのだろう。
冷静になった頃には木の枝に足を引っ掛けていた。このロードランナー様がこうなるわけがない……たまたまビーストに引っかかれて周りが見えなくなった。
「Beep!Beep!Beeeeep!」
泣き叫ぶ哀れな食事に襲いかかるビースト。
食われる。
食われる。
食われる。もはやこの言葉で頭がいっぱいだった。
プシューッ!
バチバチバチ!!!
「まったく、われわれがいないとだめなのです」
「全く、さっきまで順調だったのに締まらないのです」
火花が飛んだ。サーバルのいる方向に飛んで行った。ビーストが火花を眺めている内に、枝を外して飛んで逃げた。ビーストは俺を諦め、サーバルを睨んだ。
「サーバル! あとはよろしくたのんだぜ!」
冷静を欠き、枝に引っかかった事が悔しかった。でも、今生きていることが嬉しかった。
「あ、ありがとう、はかせ、じょしゅ」
「だれだってビーストにひっかかれればああなりますよ」
「消耗した体ではすぐ落ちるのです。とっとと休憩するのです」
「ロードランナーちゃん!お疲れ様です!」
かばんちゃんが下にいた。バスに連れてってもらい、揺れるバスの中でジャパリまんをたべて休憩することにした。
「よーし!狩りごっこだね! 負けないんだから! 」
早速野性解放していくよー!
「うー、がおー!!」
ジャンプで枝から枝に!ビーストには真似できないんだから!
「ガオオォォォォォ!!!」
なんでなんで!?ビーストも私の後を追って枝をとんでいるよ!
そうだ!今度はもっと足に力を込めてにジャンプして!
勢いよく枝を踏んで~ジャンプ!うみゃ~!
「!?!?!?!?!?!?!?」
「うみゃ~!私の後を追うから落っこちるんだよ!」
狙ったとおり!枝が折れてビーストは落っこちちゃった!
「サーバルちゃーん!もう少しですよ!!」
イエイヌちゃんが見えてきた!このまま走って行くよー!
「うーみゃみゃみゃみゃみゃみゃ!!!!」
「ガオオオォォォォォォ!!!!」
近づいてきた!よーし!またやっちゃうんだから!
勢いよく枝を踏んで… バリィ!!
「ええ~~!?!?!?」
今度は私が落っこちちゃった!でも私にはフレアガンがあるんだから!
とっさにだして、ひきがね?を引いた!火は怖くない!
かちゃ
あれ?何も出ない?
「うみゃー!?弾を忘れちゃった!!」
それでもビーストは待ってくれない……慌てて逃げようとしたときにはもう爪が目の前に……
プシューッ!
バチバチバチ!!!
「食べないでくださーい!!!!」
かばんちゃん!?かばんちゃんが助けに来てくれた!!ビーストの目の前にいた私を抱えて森の中へ走り込んだ!
「ありがとう!かばんちゃん!」
「間に合ってよかった……サーバルちゃん、けがはないですか?」
「ぜんぜんへーきだよ!ごめんね、かばんちゃん!」
「怪我がないならよかったです。バスに乗っていきましょう」
ご主人様、待っててください。今行きますからね。ビーストを連れて!
「ガオオオォォォォォォ!!」
野性解放!
「ビーストさん!こっちですよ!」
私は高台を目指して、そこにいるご主人様を目指して全速力で走り出した。たくさん走ってきたビーストは動きが鈍くなっているはずだ。
だがそれでも、私の逃げる速さより、速い。
でも、突っ走る!!差はまだ開いている。この速さなら、ギリギリ……!
ただ走っていた。
何も考えず、前を見て走っていた。
いや、ご主人様の事を考えていたのかもしれない。
とにかく走っていた。
ご主人様が見えた。
私はなぜか、安心した。
ご主人様が見える。
ともえさんが見える。
それだけでなんだかほっとする。
でもほっとしてる場合じゃない!
ビーストが近くなっている!
そこでジャンプ!そして、フレアガン!
下に向けて放った火花は、ビーストの注意を引いた。
「ご主人様~!今行きます!」
「イエイヌちゃん!!」
高台から手を振っている。火花が消えない内に、高台にのぼることにした。
「ただいま、ご主人様!」
「おかえり、イエイヌちゃん!」
イエイヌちゃんが来た。
ついに本番だ。
イエイヌちゃんが隣に居てくれるお陰で、今まで、心の底で感じていた緊張と不安が吹っ飛んだ。
あとはもう、狙って、うつ。
「イエイヌちゃん、気をつけて!フレアガンを撃つよ!」
「は、はい!」
「ビーストちゃん!こっちを向いて!」
プシューッ!
バチバチバチ!!
狙い通り、ビーストはこちらを向いた。
ビーストを狙う。
さぁ、いつでも来い。
チャンスは一回。
「ガオォォォォォォォ!」
おたけびをあげてビーストが襲い掛かってきた。
あたしとビーストの間にはバリスタ。
引き金を引く。
サンドスターが勢いよく飛び出した。
ぱっかぁーん!
サンドスターが弾けた。
当たった。
ビーストはなおも止まらなかったが、爪を当てようともせず、私の後ろまで飛んだ所で倒れ込んだ。
みんながビーストの周りに集まり始める。
真っ先にあたしに声をかけたのはイエイヌちゃん。
「ご主人様!すごかったです!」
「ありがとう!イエイヌちゃんも速かったよ!」
続いてかばんちゃんも声をかけてくる
「ごめんなさい、こんな重荷を背負わせてしまって。そして、ありがとうございます!」
「こちらこそありがとうございます。お陰で、ビーストをフレンズに……あっ! 見てください! ビーストが……」
「サンドスターが輝いている……!」
見たことがある。これは、フレンズが生まれる時に発する輝きだ。
つまり……
「これでビーストちゃんもフレンズになれるはず!」
ビーストは輝きに満ち溢れた。
みんなは、ただじっと新しいフレンズの誕生を見守っていた
あたらしいフレンズへのごあいさつは?
みんな、言わずとも分かっていた。
?
???
ここは、どこ?
なぜ、私はここにいる?
わたしはアムールトラ。
それ以外の事はなにもわからない。
怖い。分からない。怖い。たくさんのにおいがする。怖い。
……重たいまぶたを開ける。私の目に映し出された景色は……
!
「ようこそ! ジャパリパークへ!」
End