けものフレンズ[Redo]   作:Alantheporty

4 / 4
アテンションプリ~ズ。ハト目ハト科の渡り鳥、リョコウバトでございま~す。今回案内するのは、絶滅種の理想郷。不可能とされていた絶滅種の再現がサンドスターの力によって成功し、フレンズとして復活した幻の動物たちをご案内いたしま~す。まずはこちら、ネコ目イタチ科、ニホンカワウソちゃんで~す。コツメカワウソと大変似ていて可愛いですね~!こちらは鯨偶蹄目カバ科、ゴルゴプスカバさ~ん!ゴルゴーンという名前からきているらしいですよ~。かっこいいですね~。次の動物は~・・・・・・・・・・・・


第三話「Extinct」

「あれ?ここは?」

 

 どこ?

 

 いつのまにかわたしは、いや、わたしたちは迷い込んでいた。

 

 さっきまで、イエイヌちゃん、ともえちゃん、ロードランナーちゃんとおいかけっこで遊んでいた。みんな、きっと夢中だった。今まで気づかなかったのが不思議だが、わたしたちはそれだけ夢中になっていたのだろう。

 気づいたら、みんないない。まいごになってしまった。

 周りはもやもやしていて、あまり遠くが見えない。かろうじて、周りにたくさんのたてものがあることがわかる。風の音が耳を通る。ここは、一体どこなんだろう?

 

「ともえちゃーん!ともえちゃーん!」

 

 みんなに聞こえるよう、おもいっきり叫んだ。聞こえるといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、一人になってしまった。夢中になりすぎたのがいけなかった。建物と霧に囲まれて、しかし誰も隣にはいない寂しさがあたしを覆う。こんなに建物がたっているのに、生き物の気配すらない。ここは、一体……

 

「ともえちゃーん!ともえちゃーん!」

 

 寂しさを飛ばすように、建物の間からあたしを呼ぶ声がやってきた。この声は、アムールトラちゃんだ。

 

「アムールトラちゃーん!いまいくよー!」

 

 あたしは声の方向にむかって走り出す。建物の間を通り抜け、霧をかきわけ進んでいく。

 

「イエイヌちゃーん!ロードランナーちゃーん!」

 

 みんな、無事だろうか、怪我はしていないだろうか。

 心配で心配でならない。

 大丈夫、あの子たちは自分でどうにかできるから……。

 

 

 

 

 

 

 

 目を疑う。

 

 このロードランナー様、目の前の光景に腰を抜かしている。

 

 いつのまにか、迷った先で、こんな奴に会ってしまうんだ。

 

「オイオイオイ、こりゃないぜ?」

 

 隣のイエイヌすらも、驚いている。

 

「お、おおきい……そんな……」

 

 一つ目の怪物(セルリアン)が、目の前を覆っている。大きな、丸い、怪物。おびえる俺達に、ゴロン、容赦なく突っ込んでくる。

 

「に、にに逃げましょう!」

 

「わわわかってる!どう考えたって逃げるしかねぇ!」

 

 その通り、逃げるしかなかった。とっさに坂道を二人で駆け下りる。でけぇセルリアンもゴロゴロ、恐ろしく速く転がってくる。

 

 ゴロゴロと、まるで落石のように、俺達を追う。いや、ただ転がっているだけかもしれない。どちらにしよ、当たれば潰れる。たてものが

 

「横だッ!」

 

 横にまがろう。あの速さで転がっては急に横にはまがれまい。たてものとたてものの間に逃げ込む。

 

「は、はい!」

 

 イエイヌも逃れた。セルリアンは予想どおり、まっすぐに転がっていってしまった。行き着く先は想像できない。

 

 

「セルリアンはなんとかなりましたけど、どうしましょう」

 

「ともえちゃんたちの場所が分からない事には、ここをうかつに動くこともできねぇ。さらに迷ってしまう」

 

「ご主人様なら、きっと大声でわたしたちを呼んでくれるはずです」

 

「だったら呼ばれるまで待つしかないな」

 

 まもなくして、呼び声が聞こえてくる

 

「ともえちゃーん!ともえちゃーん!」

 

「アムールトラちゃーん!今行くよー!」

 

「イエイヌちゃーん!ロードランナーちゃーん!」

 

 間違いなくアムールトラ、そしてともえの声だ。行くべき方向がわかった。

 

 その方向とは、セルリアンが転がっていった先だ。

 

「行くぞ!ともえたちが危ない!」

 

「はい、早くいきましょう!二人のところへ!」

 

 急いで二人のところへ向かう。

 

「ともえー!アムールトラー!気をつけろー!」

 

 走りながら叫ぶ。セルリアンは、もうすぐあいつらの前に現れる。

 

 

 

 

 

 

「アムールトラちゃーん!さびしかったよー!」

 

「ともえちゃーん!」

 

 再会。なんとかアムールトラちゃんと合流できた。あとは、イエイヌちゃんとロードランナーちゃんがどこにいるか。

 

「ともえー!アムールトラー!気をつけろー!」

 

 遠くから声が聞こえる。ロードランナーちゃんだ!

 え?気をつけろって?

 そしたら、同じ方向からゴロゴロゴロ、音が鳴り響く。何かが転がってくるが、見えない。まもなく、転がるような音が消える。

 嫌な予感がした。

 

「ともえちゃん!危ない!」

 

 とっさに後ろに身を引く。その瞬間、目の前に『岩』が落ちてきた。

 『岩』。そう呼びたかった。ただの『岩』ならよかった。

 それはまさしく『岩』のような、丸くてでかいセルリアン。一つ目がこちらを睨む。

 まずい。転がってくる。本能からだろうか、セルリアンが転がってくるであろうことは分かった。

 

 しかし、体が思ったように動かない。

 恐怖で、体を動かしたいのに、動かせない。

 

「い、嫌!嫌ああああああ!!」

 

 一つの目しかないセルリアンに叫ぶ。そんなことしても、あたしに転がってくるだろう。声はだせても、体がいうことを聞かない。

 

 

「やれやれだね……」

 

 横から石が三つ、丸いセルリアンの体に突っ込んでくる。セルリアンの体を押し出すのに十分な勢い。セルリアンの注意は、その石が投げられた方に向かった。

 

「いまだよ」

 

 パチン、指が鳴る音がした。

 

「はああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 反対方向から、何かが出てくる。その爪は、セルリアンの石を正確に、潰した。

 

 ぱっかぁーん!

 

 

 

「あ、ありがとうございます。

 

「あぶなかったですね~、人間さんたち」

 

「どうやらこの研究所区域にまよいこんでしまったみたいですね、あなたたちは」

 

 イエイヌちゃんと、ロードランナーちゃんが合流した。目の前には、二人のフレンズ。

 

 まるでコツメカワウソちゃんのようなフレンズ、片やタイリクオオカミちゃんのようなフレンズ。しかし、『色』そして『声』が違う。そして、『冷たそうな目』をしていた。

 

「あ、あなたたちは何のフレンズちゃんですか?」

 

「私はニホンカワウソ。よろしく……」

「ニホンオオカミです。よろしくね、人間さんたち!」

 

 あたしたちも自己紹介をする。

 

「あたしはともえです、よろしくおねがいします」

「イエイヌです~!よろしくおねがいします!」

「俺様はロードランナー!よろしくな」

「あ、アムールトラです。よろしくおねがいします!」

 

「さて、あなたたちが迷いこんだ研究所区域だけど、まぁ私達の『アジト』に案内するから」

「道中ゆっくりと話すとするわ!わたしもよくわかってないけど」

「ついてきて。仲間にあわせてあげるわ」

 

 仲間……?ここには他にもいるのかな?楽しみだ。ついていかない理由はない。案内してもらうことにした。

 

「まず、ここは研究所区域。常に霧で覆われていて、サンドスターの濃度も濃い。地形と天候の制御がされない区域らしい」

「らしいって、誰から聞いたの?」

「そのうちわかるよ!その人にも一度あってもらうから」

「人って、ともえちゃんみたいな人か?」

「ご主人様みたいな人間ですか?」

「人間、そうね。人間よ」

「人間がまだ居るんですね!ともえちゃん!」

「うん。かばんちゃんと、あたし。これで三人目の人間だね」

「「かばんちゃん?」」

「うん、あたしたちはかばんちゃんって呼んでいる。人間のフレンズだって言ってたよ」

「そうか、人間のフレンズか」

「人間のフレンズ、もう一人いたなんて……」

 

 そんなお話をしているうちに、『アジト』についた。ひときわ高い建物。霧に覆われていても、高さがなんとなく分かってしまった。

 

「あわせてあげる。もう一人の人間のフレンズにして、私達のリーダーに」

 

 

「こーんにちわー!わぁー!いっぱいきたぁー!」

「初めましてぇ、新入りかなぁ?」

「…こんにちは」

「こんにちは、ようこそ、アジトへ。ありがとう、来てくれて、四人も」

 

 いろんなフレンズが出迎えてくれる。しかし、その目はみんな、冷たそうな目をしている。いくら暖かそうな仕草をしていても、冷たい目が見えてしまう。

 

「カコさん!ただいま!」

「迷子を連れてきた……」

 

「えっと……カコさん……ですか?」

 

 青くて長い髪をした、白衣をまとう女の子。小さいのに、かばんちゃんよりずっと大人のような、そんな雰囲気があふれ出ている。

 

 鋭い目を見開き、あたしに話しかけてきた。

 

「こんにちは、人間の子。そして、イエイヌちゃんとロードランナーちゃんとアムールトラちゃん」

「す、すげぇ。なんで俺様の名前が分かるんだ?」

「わぁ~!物知りですね!」

「こ、こんにちは。あたしは、ともえです」

 

「ともえちゃん、いい名前。よろしくね」

「よ、よろしくおねがいします!」

 緊張する。きっとやさしい人なのに、なんだか恐ろしい雰囲気が緊張を誘う。

 

「改めまして、私の名前は『カコ』ヒトのフレンズよ」

 

 カコ、その女の子は、両手を広げ、あたしたちを迎えた。

 

「ようこそ、私の研究所『EXtinct Eden(EXE)』へ」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。