りきざのかわり~首切り男とちんちん取られた神主~ 作:小名掘 天牙
たとえ、
「よし、出来たぞ♪」
「……」
事実、昨日の気配の後にも拘わらず、こうして茶々丸は力左衛門と共に次の飯の種の準備に精を出さざるを得ない。
「これが?」
「うむ!」
「ふーん……」
頷いた力左衛門の手にある一冊の冊子。その一番最後の頁に記された、真新しい自分の名前と、まだ乾ききらない朱色を茶々丸はしげしげと眺めた。
(そういえば、初めて見るんだよなあ……)
とある事情により、生まれ故郷を飛び出した身である茶々丸は、実のところ宗門人別帳を目にするのはこれが初めての事だった。当然、届け出のない出奔なのだから、この力左衛門の
(ま、本人が良いって言うんだし、別に良いか……)
本来取り締まるべき神主自身がノリノリで文書の偽装をしているのだから、茶々丸が気に病む必要もないだろう。
「……うん」
やけに自己主張の激しい花押をなぞると、茶々丸は少し愉快な気分になったのだった。
◆
普段、斬首の代行を主な収入としている茶々丸だったが、やはりその収入は斬首となる罪人の数に依存するきらいがある。端的に言って、懐具合が安定感に掛けるところがあった。まあ、今まで通りの気楽な一人暮らしであれば、それでも良かったかもしれないが、
「♪~」
「……」
隣で鼻歌を歌いながら、実に楽し気にはむはむと団子を頬張る
(単純に……食べるんだよね……)
昨日の夕飯を思い出しながら、茶々丸は内心で嘆息した。
―おお、これが中涙名物の鴨の天ぷらか!!―
―名物って程ではないけど……まあ、結構食べるかな―
そう言って茶々丸が出した鴨の天ぷらに手を付けた小さな少女(に、見えるだけのこの男)は、あろうことか茶々丸が買ってきた一羽の鴨のほぼ大半をぺろりと平らげたのだった。控えめに言って食いすぎである。そう、昨日の相撲で本人が稼いだ金があっても、数日で余裕で足が出る程度にはよく食べた。呆然とする茶々丸の前で「ふぃ~♥」と満足げに息を吐いたこの相撲取り(笑)は服が邪魔になったのかまわしと絆創膏だけになると、その場でごろりと横になって、直ぐにすーすーと寝息を立て始めた。そして、その隣で茶々丸は頭を抱えることになったのだった。
―早急に、収入を安定させる必要がある!!!!―
普段、滅多な事では動揺しない茶々丸が、そう決心する程度にはこの元神主で現女力士の食欲はシャレになっていなかった。
(まあ、宗門帳の偽装でとんとんといえばそうなのかもしれないけどさあ……)
一度無宿人になった人間が、宗門帳に名前を載せ直す方法など、尋常な手段では実質皆無と言って良い。あまり門徒の居ない寺や神社に金を積んで秘密裏に宗門帳に名を載せさせるにせよ、その金額は言わずもがなな事を考えれば、実質茶々丸の方が得をしている事になっているのだから、正直気分としては複雑だ。
「む? ここかの?」
煩悶する茶々丸の隣下で、少し上に向けて白いすらっとした人差し指を向ける力左。
「……」
釣られて顔を上げた茶々丸は、でかでかと入り口に掲げられた『大桐屋』という看板を確かめて「ん」と頷いた。
「そういえば、今更なのだが」
「ん?」
「何故、この店でなければいけなかったのだ?」
そう言って、こてんと首を傾げた力左に、茶々丸は「ああ」と頬を撫でた。
「まあ、他にも口入れ屋はあるもんね」
「うむ」
茶々丸の庵から此処まで、口入れ屋は二三軒あったのだが、茶々丸がその前を全て素通りしたことに疑問符を持っていたのだろう。まあ、その答えは端的で、
「正規の……って言うのかな、この大桐屋は中涙の中で唯一、奉行所の役人やこの町を通る武家相手に副業の斡旋を許されてるんだよ」
「なんと」
茶々丸の言葉に驚いたのか、力左はぱっと目を丸くした。
「何か、理由があるのかの?」
「まあね」
「ふむ?」
首を倒す力左に、茶々丸はなんのことはないと肩を竦めた。
「昨日、行った斬首場あったでしょ?」
「うむ」
「昔、あの辺りは、この大桐屋の土地だったらしいんだ」
「ほー」
奉行所の元々の土地所有者。その意外な事実に、力左はしげしげと大桐屋の看板を眺めた。
「今みたいに中涙に人が集まるようになって、江戸公方が新たに奉行所を設置するってお触れを出した時に、丁度町の中心に纏まった土地を持っていた大桐屋の何代か前の主が、其れを無償で幕府に提供して、自分達は今のこの場所に移ったらしいんだ。で、その縁で奉行所が積極的に大桐屋に仕事を出していたり、逆に大桐屋が奉行所の役人の人達に副業の斡旋をしたりしてた訳なんだけど」
「その繋がりで、中涙で武家に仕事を流せるのはこの大桐屋だけになった……と」
「そーゆーこと」
茶々丸は首肯した。
「まあ、形振り構わなければ、他の口入れ屋でも良いんだろうけどさ、此処から見えない裏通りの口入れ屋なんかは帳外れでも仕事貰えるし。ただ、そうなると斬首代行の方がね」
「流石に、そんなところに出入りしている人間に代役なぞさせんわな」
「……」
茶々丸は肩を一つ竦めて肯定した。
「ま、取り敢えず入ろうか」
そう言って先を促すと、「うむ」と腕を組んで頷いた力左衛門がとてとてと後ろを付いてきたのだった。
「! これはこれは、ようこそ御越しくださいました」
昨日、相撲一座に貰った着流しが楽だったのか、さらしも巻いていないおっぱいを薄い布の中でたゆーんたゆーんと揺らしている力左衛門を連れて、茶々丸が暖簾を潜ると、勘定台の前にいた白髪の老人がはっと目を見開いたのが見えた。
「?」
「はて?」と首をかしげた茶々丸だったが、既にその顔を引っ込めてにこにこと品の良い愛想笑いを浮かべている番頭の老人に、特にそれ以上気にすることもなく、「仕事を貰いに来たのですけど」と告げる。
「それはそれは。当大桐屋を選んでくださり、誠にありがとうございます」
そう言って、深々と頭を下げた老人は奥の間を振り替えると、よく通る声で中の手代の一人に「政吉、お客様にお茶を用意しなさい」と言った。
(なんか、随分歓迎されておるのう?)
慌ただしく店の手代に指示を出す番頭を前に、力左がひそと耳打ちをして来た。
「……」
無言のまま首肯した茶々丸だったが、内心でもう一度「はて?」と首をかしげていた。確かに客は客だが、口入れ屋では仕事を貰いに来た側だ。間違っても此処まで歓迎される理由はないはずだが……。
「大変失礼致しました。直ぐに手代を付けさせていただきます」
「ええ、宜しくお願いします」
そうこうしている内に支度が整ったのか、白髪の番頭がこちらを振り返り、もう一度折り目正しい一礼をしてきた。その後ろには年の若い手代が控えている。
「政吉でございます。この度、月下様の御相談を受けさせていただきます。どうぞ、お見知りおきを」
「はあ……どうも」
「支度も整いましたので、奥へどうぞ」
「宜しくお願いします……」
「???」
恭しく先導する政吉と名乗った手代に、茶々丸はまたも疑問符を浮かべる。
(やはり、何か扱いが丁重ではないか?)
(う〜ん……)
力左衛門もそれには気付いているらしく、もう一度ひそひそと耳打ちをして来た。
「ささ、此方へ」
手代が開けた襖の内には、小さいながらも質の良い一室。その真ん中の四角い机の上に、三つ置かれた湯飲みが湯気と共に煎れたての緑茶がぷんと渋味と甘味を薫らせていた。
「……」
「……」
置かれた座布団に座りながら、茶々丸は何となく腑に落ちない気持ちで身動ぎした。一方、隣の力左衛門は既にこの場に慣れたのか、早速湯呑みに手を伸ばしてその風味に満足げに「むふー」と鼻を鳴らしている。
「? どうか致しましたか?」
と、流石に茶々丸の疑問符に気が付いたのか、手代がそう尋ねてきた。
「何か、凄い扱いが丁寧だなと思って」
「想像していたのと違うので」と茶々丸が付け足すと、得心がいったのか、手代は「ああ」と納得したように頷いた。
「ま、確かにその通りですね」
「あ、やっぱり、普通の扱いじゃないんだ」
「ええ」
茶々丸が身も蓋もない言い方をすると、苦笑しながら手代は肯定してきた。
「当店は代々奉行所の方と付き合いが深い関係もあり、そちらの方に御仕事を紹介させて頂くこと自体は、其れほど珍しくはありません」
「まあ、だろうね」
「ですが、やはり御侍様は職をお持ちですから、私達口入れ屋に来られる頻度はそう多くありません」
「……」
「そうなると私達としては、他の町人の方にも仕事を紹介したいわけでして」
「宣伝かあ……」
茶々丸としては、随分拍子抜けする理由だったが、それが全てらしい。頷いた政吉という手代は苦笑しながら「この中涙の町で、"首斬り月下"の名は決して小さくありませんから」と肩を竦めたのだった。
「ま、良いや、僕としては良い仕事を振ってもらえれば特に文句はないし」
茶々丸がひらひらと手を振ると、手代は「ありがとうございます」と頭を下げたのだった。
「それでは、始めさせていただきたいのですが、先に宗門帳を改めさせていただいても宜しいですか?」
「ん」
「うむ」
頷いた茶々丸が肩を叩くと、同じく頷き返した力左衛門が、今朝違法製造したばかりの、出来立てホヤホヤの茶々丸の宗門帳をおっぱいの谷間からむにゅっと引っ張り出した。
「ほれ」
「あ、ど、どうも……」
余り、こういった事に慣れていなかったのか、手代はかなり戸惑った様子で茶々丸の宗門帳を確かめると、気まずさを誤魔化すようにそそくさと突き返してきたのだった。
「えー、ごほん」
「「……」」
「な、何ですか!?」
「いえ」
「別になー?」
「ごほん!!」
表情の読めない茶々丸の冷めた視線と、明らかに気付いていてからかうような力左衛門の悪戯っぽい視線を振り切るように、手代はもう一度咳払いをした。
(ねえ、力左)
(んむ?)
(何で、僕達は口入れ屋に来て、店の手代さんを玩具にして遊んでるんだろうね?)
(ふむ……)
(……)
(気の迷い……ではないかの?)
(そっか)
(うむ!)
(気の迷いなら仕方ないね)
(そうだな、朱丸神社最強の力士たる我の、一寸した戯れだ。笑って許せ!)
(仕方ないね。許してあげよう)
「えー、では早速、月下様に紹介できます御仕事なのですが」
「「はい」」
「……」
「「……」」
「……」
「「……」」
「実は折り入って依頼したい仕事がございます」
どうやら、何かを諦められたらしい。と、言うか、
「折り入って? 僕に?」
「ええ」
「……」
頷いた手代に、茶々丸は眉を潜めた。
茶々丸は、この中涙の町外れに住み着くようになってから、一度も口入れ屋を訪れたことはなかった。それもこれも、宗門帳を持っていなかったために他ならないのだが、そんな茶々丸のために態々仕事を取っておくなど普通に考えて有り得ないのだ。そもそも、来るかどうかも分からないのだから。と言うことは、
(どう考えても面倒事じゃん……)
この大桐屋が、処理したくても処理し辛い
(多分、断れないんだよなあ……)
元々、力左衛門の食欲のせいで、斬首以外の仕事に手を出さないという選択肢がない。そして、斬首代行を続けながら、副業に手を出すには大桐屋以外に選択肢がない。しかも、相手は大桐屋。奉行所との繋がりも強いこの口入れ屋の不興を買っては、そもそも斬首代行の職分すら失いかねないのだ。
「はぁ……」
その状況を理解し、茶々丸は深々と溜め息を吐いた。そして、それは隣下の力左衛門も同様だったようで、
「のう、茶々よ」
「何?」
「もしかせんでも、面倒事か?」
「もしかしない処か、当然のごとく面倒事」
茶々丸が答えると、力左衛門は余裕たっぷりに頷くと、徐に立ち上がり、むちっと大きな胸を無駄に張った。
「我は此れから、明日の取り組みの稽古に行ってくるぞ!!」
そう言って、そそくさとその場を立ち去ろうとした力左衛門の立てまわしを、
「はおぉ!?!?!?」
茶々丸は力任せに引っ張り倒したのだった。
「ちんぽが!帝王たる我の雄々しき聖槍ちんちんがぁ!?」
「……」
まわしの上からちんちん? を抑えてのたうち回る力左衛門を、虫けらを見る目で見下ろした茶々丸は、力左が身悶える度にばるんばるんと揺れてぱふんぱふんと畳を叩くおっぱいを無言で踏みつけたのだった。
「ぐふぅ……」
「ちんこ、付いてないでしょ」
「付いてたとしても、超短小の聖槍ちんちん(笑)でしょ」と、ぐにぐにと力左のおっぱいを踏みにじりながら、茶々丸は冷めた視線でしゃがみこんだ。
「僕としてはさ……」
「!?」
茶々丸がボソッと吐き出すと、何を思ったのか力左衛門はビクッと身を強張らせて、タラタラタラと大量の汗を掻き始めた。一体どうしたというのか。
「御神体だかなんだか知らないけど、君の身代わりにならざるを得ないこんな刀は直ぐに売っぱらっちゃいたいんだよ」
取り敢えず、目下の不満をつらつらと足の下の馬鹿に投げ落としながら、深く深く溜め息を吐く。
「けど、あれの法則も分からないから、手放せないんだよね。当の本人が何も知らないって言うしさ。ほんと、さっさと追い出したいけど、君に何かあったら、僕の身に何があるかも分からない訳だ」
「うぎぎ」
「ちょ、何で乳首
「ひにゅうっ!?」
何か足の裏で固くなったコリコリをグリグリと捏ね繰り回す。
「いっそ、斬捨てればとも考えたけど、それもそれでどうなるか分からないし我慢してたんだけど、その本人がそんな態度とか、もう後先考えずに君を斬り殺すことが選択肢に昇り始めてるんだけど、僕は果たして辛抱の足りない人間かな?」
「わ、わかったからやめ、ふおぉ!?」
「因みに、僕の嫌いな言葉は我慢と忍耐と辛抱だから」
「よく覚えておくように」と足を退けると、あとに残った力左衛門はビクビクッと痙攣しながら、「ひゅーひゅー」と荒く息を吐くのだった。
「じゃ、続きお願いします」
「……え、ええ」
茶々丸が振り返った瞬間、びくっっと肩を跳ねさせた手代はがくがくと頭を振って、事のあらましを話し始めたのだった。
「実は依頼の元は市松屋の御夫婦でして」
「市松屋の?」
「ええ」
頷いた手代の言葉に、茶々丸は少し思案する。
(市松屋か……)
市松屋はこの中涙の町で最も大きな塩問屋だ。比較的海に近いとはいえ、相応に距離のあるこの中涙では塩は相応に貴重品だ。当然、その問屋ともなればかなりの商いをしている筈だが、夫婦の人柄が良いのか、何かを警戒しなければいけないという話は聞いた記憶がない。
「市松屋で何かあったんですか?」
まあ、この町で塩が安価に手に入らなくなるのは困ると言えば困るので、茶々丸は少し本気で手代に尋ねた。
「それが、正直要領を得ない話でして」
「?」
だが、手代は予想に反して考え込むような表情で首をかしげた。
「と言うのも、この御依頼は市松屋さんからのもので間違いないんですが、どうも依頼したがっていたのは御新造様の方らしくて……」
「んー……」
手代の言葉に茶々丸も少し腕を組んだ。
「つまり、市松屋の主の方は依頼を出したいと思っていないと?」
「まあ、そういうことですねえ」
茶々丸が確認すると、手代は首を縦に下ろした。
「ただ、御新造様の事は大事みたいなのと、御新造様の怯えようは本物みたいなんでさあ」
「うーん……」
(つまり、町の豪商の旦那が、奥さんにせっつかれて渋々人を雇うことにしたと……)
「で、あまり、大袈裟に人を雇いたくはない、かといって下手な浪人を一人二人雇っても、御新造様の安心は得られないって訳でして……」
「そういうことね」
茶々丸は事態を理解して肩を竦めた。要するに、先に手代が口にした、"小さくない茶々丸の名"が実に"御あつらえ向き"なのだろう。
「ええ。まあ、そういうことでして……」
肯定した手代に、茶々丸も「ふむ」と思案した。
(まあ、それなら僕が受けること自体は構わないけど……)
もし、御新造の気のせいなら、文字通り寝ているだけでお金が入ってくる。問題は条件の折り合いだが。
「期間と、お金は?」
「取り敢えず、一月ほどお頼みしたいとのことで、泊まり込みで二日で一分でした。それと、食事は他の奉公人の分もあるから、店で取っても構わないと」
「ふむ……」
(悪くないね)
むしろ、流石に中涙一の塩問屋だけあって相当に良い条件だ。素直にそう思える額だし、単純に暮らすならそれだけで問題ない額だが……。
「此方からも幾つか条件があるんだけど、そこら辺を擦り合わせてもらっても?」
「伺わせていただきやす」
茶々丸がそう尋ねると、いつの間にか真剣な表情になっていた手代が頷いた。
「まず、僕としてはこの町に今後も住む以上、阿漕なことはしたくないし、むしろ細く長く仕事をしたいっていうのがある」
「へえ」
「で、ここに来たのは他でもないんだけど、こいつの食費でさ」
そう言って茶々丸がぐったりとしている力左衛門を指差すと、ちんちん()を押さえた力士は「我、滅茶苦茶空腹力士」と手を挙げた。
「ああ、その方は……」
「知ってるんだ?」
「まあ、月下様が年の若い女を連れて歩いてるってんで、そこそこ」
どうやら、噂になっているらしい。
「……」
頭痛を眉間を揉み解して逃がしながら、茶々丸は話を続ける。
「まあ、それなら話が早いんだけど、一寸こいつから目が離せない事情があってさ」
「ふむ」
「こいつを連れて行って良いかというのが一つ、そして、こいつの飯も出るとありがたいというのが一つ」
「……」
頷いた手代が、さらさらと手元の冊子に茶々丸の条件を書き足していく。
「最後に、僕も斬首代行があるし、こいつもこいつで」
「ああ、女相撲の」
「見たんだ?」
「ええ。あの一座は、今一番中涙で人気のある一座ですから」
もう一度頷く手代に、茶々丸は「なら話は早い」と肩を竦める。
「昼間は時々時間を取られる可能性があるから、其れを容認して……で、此方としても条件は色々あるから、その分、割引は当然だと思っている……そんなところかな?」
「成る程」
「念押しになるけど、此方も阿漕なことをしたいとは思ってない。ただ、どうしてもそうならざるを得ない部分があるからさ。その分割引は仕方ないと思う……って感じで」
「分かりました。これで折り合いがつくなら」
「ん。その時は宜しくお願いするよ」
頷き、茶々丸は立ち上がる。
「行くよ、力左」
「んむ!」
復活していた力左衛門を連れて店を出ると、丁度日が真上に昇った頃だった。
◆
明くる日のこと、大桐屋の遣いが庵にやって来て、茶々丸の条件で折り合いがついたと言ったため、茶々丸と力左衛門は早速市松屋に足を運んでいた。
「いやいやいや、此はなんとも申し訳ない」
(主人の方はあまり人を雇うことに乗り気でないと聞いていたんだけど……)
意外なことに、茶々丸と力左衛門が店に顔を出すと、主人は終始恐縮しきりだった。
「いや、私としては、それなりにちゃんとした男衆が一人来てくれれば良いかと思ったんですがね? まさか、月下様とは思わなかったもので」
(なんぞ、お主も大分恐れられておるのう)
「……」
茶化す力左に、茶々丸は無言で手刀を落とした。とはいえ、正直に言えば茶々丸としても、此処まで過敏な反応が帰ってくるとは思わなかったというのが本音ではあった。まあ、それは置いておいて、「それで……」と少し事情を確かめることにした。
「何か、不自然なことがあったのですか?」
「いやいや」
茶々丸がそう尋ねると、主人の方は困ったように手を振った。
「不自然なんて事はなーんにもないんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、ええ。ただ、最近二三これが変だっていうことがありましてね? そこまで言うならと大桐屋さんにお願いした訳なんですよ」
「御新造様が?」
確かめるように茶々丸が尋ねると、市松屋の主人は苦笑しながら頷いた。
「……」
「不自然なんて言うと、大袈裟すぎるのかも知れないですけどね?」
次いで、主人の隣で居心地悪そうに座っていた店の女将を振り返ると、此方は少し困った様子で頬に手を当てた。
「少し前から、何となく違和感と言いますか、胸騒ぎがありまして……」
「ふむ……」
(確かに、此は一寸要領を得ないな)
腕を組みながら、茶々丸が大桐屋の政吉の言葉を思い出していると、店の主人が「ほら見ろ」と口を尖らせた。
「月下様だって、呆れちゃっているじゃないか。大体、貴女はね「ああ、待ってください」
やはり、不満があったのか、あれこれと続けそうになった丸顔の主人の言葉を、茶々丸は一先ず遮ることにした。
「胸騒ぎの元は何か有るんですか?」
「……」
茶々丸が、そう問いかけると、女将は少し考え込み、やがて「さざんか……」と呟いた。
「さざんかですか?」
茶々丸が首をかしげると、女将はこくりと頷いた。
「ああ、これが庭で大切にしているさざんかがありましてね? それがこの前枝が折れてた事がありまして」
「風もない日だったので、私も一寸妙だなと思ってしまって……」
「取り越し苦労だと良いのですが……」と続けた内儀に、茶々丸も「ふむ」と呟いた。
「その、さざんかのある場所は、店の方はよく入るのですか?」
「いえ、そこまでは……まあ、別段出入りを禁じてもおりませんが」
そう言って、女将はもう一度首をかしげたのだった。状況はよく分からないが、何となく不安。女将の心情はそんなところだろうか?
「ま、それもこれも、月下様が来てくれたなら安心です。大船に乗った気持ちで居させていただきますよ!」
「あっはっは!」と笑う市松屋の主人のあっけらかんとした様子に、漸く夫人の方も安心したのか、「そうですね」とほっと胸を撫で下ろしていた。
「随分、買われておるのう?」
「(用心棒とか初めてですが)頑張ります」
力左の茶々を聞き流しながら、茶々丸はしれっとそう答えたのだった。そして、一礼を終えたところで、茶々丸は「で、早速なのですが」と切り出した。
「念のため、そのさざんかを見せていただけないでしょうか?」
「? ええ、構いませんが?」
不思議そうにしながらも、「どうぞ此方へ」と立ち上がった店主に続いて、茶々丸と力左衛門は奥座敷を後にしたのだった。
「へぇ……」
「おお〜」
店の主人に連れられて二人が目にしたのは、少し小さ目の庭ながらも、満開に咲いたさざんかの群れだった。
「見事だな!」
豪奢に見える、その花の壁が気に入ったのか、力左衛門は手放しで褒め称えた。
「手入れも、本当に行き届いてるね」
花や葉の中に、欠けたり色が落ちたものが無いのを見て、茶々丸もまた、そう呟いていた。
「有難うございます。このさざんかは家内の自慢でしてな、満開に咲いた此れを見るのが、この時期の私の一番の楽しみなのです」
そう言って、得意気に笑った店主の隣で、女将は「いやですよ、下手の横好きなんですから」と照れ臭そうに頬を押さえたのだった。
「……落ちていた花というのは?」
暫く、お相伴に預からせてもらっていた茶々丸は、その光景に満足すると、改めてそう尋ねた。
「そこですよ」
そう言って店主が指差したのは、一面のさざんかの丁度一番端の方。目を凝らすと、確かに少し深く折れた枝が、真新しい白い折れ口を晒していた。
「ね? 大したことはないでしょう?」
「……」
そう言って、はっはっはと笑った店主の前で、茶々丸は少し首をかしげると、かさりと苔の生えた庭に降りてみた。
「茶々?」
「……」
後ろで力左が不思議そうな声を出したが、茶々丸は一先ずそれを置いておいて、近くでさざんかの切り口を確かめた。
「……」
「何かあったのか?」
「特に気にすることはないと思う」
「そうか?」
茶々丸に釣られて、庭先に降りて来た力左衛門に頷くと、茶々丸は再び屋敷の中へと上がった。
「じゃあ、取り合えず、一月ほどお世話になります」
そう言って一礼をした茶々丸に、店の主人は鷹揚に頷き返したのだった。
◆
茶々丸と力左衛門が市松屋に寝泊まりするようになってから数日が経った。あの日の晩から早速店の一室で寝泊まりするようになった二人だったが、店の主人が言った様に、特に異変などはなく、依頼のきっかけとなった御内儀の方も今ではすっかり落ち着いたように見えた。結果、日々市松屋の端で食っちゃ寝していた二人だったが、今日は店の主人に断りを入れ、中涙の町中へと繰り出していた。
「じゃ、頑張って」
「うむ♪ 勝利を期待しておれよ?」
「尻天井しない様に祈ってるよ」
「訂正、我の完璧すぎる勝利に涙し、むせび泣かせ殺してくれるわ!」
二人で向かったのは、過日の芝居小屋。二回目ながら慣れた様子で裏に回る力左衛門を見送り、茶々丸は一分を払って観客席に座った。
「お……」
(少し番付が上がってる)
貼り出された取組表を見ると、先日の順番より少し上のところに"伴藤力"の名前があった。
「♪〜」
別に、自分に何か得があるわけでもないのだが、何となく悪くない気分だった。そんな茶々丸が軽く身動ぎするのと、一つ目の取り組みの呼び出しが行われたのは、ほぼ同時のことだった。
「ひが〜し〜、伴藤力〜、伴藤力〜」
(お、来た)
一つ目の取り組みから中々熱かった戦いが終わり、芝居小屋が徐々に熱を帯びる中、呼び出しの間延びした声が力左衛門の四股名を呼んだ。
「我! 見! 参!」
例によって、まわしの両脇に拳をあて、大きなおっぱいをばるんっ♥と揺らして偉そうにふんぞり返る力左に、会場の男達がやんややんやと歓声を上げる。
「ふふん♪」
小さな身体で、のっしのっしと妙に貫禄ありげに花道を歩く力左衛門。むちっとした脚が大地を踏みしめるごとに、黒い五芒星のあしらわれた白い巨乳がゆっさゆっさと重々しく弾んだ。
「!」
「あ……」
一瞬、花道を進む力左衛門と目が合った。
「……がんばれー」
「♪」
少し考えた茶々丸だったが、取り敢えず軽く声援を送ってひらひらと手を振ると、一瞬きょとんとした力左衛門だったが、すぐに嬉しそうに目を細めると、ぽんっと手を打って、その場で蹲踞する。
「……」
「♥」
目の前に拓かれたがに股と前袋に思わず顔を上げると、物凄く愉しそーに嗤った力左衛門が、その場で大きく四股を踏んだ。
ばるんっ!!!
一際大きく弾んだおっぱいに、観客が「「「「「おお〜」」」」」と沸き立つ。うっすらと浮かんだ汗とむわっと沸き立つ匂いを漂わせながら、茶々丸の前で力左衛門がにんまりと笑みを浮かべた。
(我からの、贈り物だ。喜んで良いぞ♪)
(嬉しいは嬉しいけど、完全に痴女じゃん)
(我、別に男だし気にならんぞ? お主もそうであろう?)
(そりゃそうだけどさ……)
男が男の前で蹲踞することや、四股を踏むことに感慨を持つわけがない。が、今一釈然としない茶々丸の前で「けっけっけ」と笑った力左衛門はひらひらと手を振ると、まわしの食い込んだ大きなお尻をむちっむちっも揺らしながら、土俵のなかへと入って行ったのだった。
「に〜し〜、純烈火〜、純烈火〜」
「お?」
力左が、土俵入りすると、今度は西の力士が呼び出される。が、その外見に茶々丸は思わず声を上げた。
「……」
きっと真っ直ぐ土俵の上の力左衛門を睨み付けるその少女は、力左衛門と同じくらいの身長の分かりやすいくらいの小兵だった。
短く切った癖っ毛に、分かりやすいくらいに勝ち気な表情を浮かべたその女力士は、間違いなくこの一座らしい美少女なのだが、小柄ながらおっぱいやお尻をはじめ、全身に肉のある力左衛門と違い、おっぱいも小振りなら、お尻や二の腕も無駄な肉がない引き締まった身体は、何処と無く少年のような雰囲気を漂わせている。
小さなおっぱいの上には燃える炎をあしらった赤い絆創膏。まわしも同じく火の色のそれを締め、力左衛門の対戦相手、純烈火が土俵に足を踏み入れた。
「……」
「……」
土俵の上での定型的な儀式が進み、清めの塩を撒いた二人が、ばんっ! ばんっ! とまわしを打って、戦場へと進み出た。
「……♪」
「……!!」
獰猛かつ傲慢な笑みで見下す力左衛門と、勝ち気な視線の純烈火が土俵の上で睨み合う。高まる両者の闘志に、会場の興奮は一気に最高潮に達した。
「みあってみあって〜……」
行司の間延びした声と共に、二人の力士は二重に引かれた白い仕切り線に拳を打ち付ける。ここより先は戦場。漲る二人の闘気が、何よりも雄弁に其れを物語っていた。
「はっけよ〜い……のこった!!」
「「!!」」
軍配が振り下ろされ、二人の力士は全力でぶつかり合った。
「しっ!!」
先手を取ったのは純烈火の方だった。
小柄ながら、全身の肉のせいで、立ち上がりが他の力士と変わらぬ力左衛門に比べ、小兵としての長所を最大限に生かした純烈火が、素早い突進と共に、一気に力左衛門を攻め立てたのだった。
「はっ! はっ! はっ!!!」
矢継ぎ早に繰り出される、電光石火の張り手。鋭いその連撃がぱぱぱんっ! と力左衛門のおっぱいを打ち据える。
「む、むおっ!?」
先日の取り組みから、まわしを取ってのがぶり寄りに手応えを感じていたのか、紅のまわしに手を伸ばしていた力左衛門が思わずといった様子で声を上げた。
「はああああああああああ!!!」
ぱんっ! ぱんっ! と弾けとんだおっぱいと、力左衛門の意表を突かれた声に勢い付いたのか、純烈火の張り手の回転が更に一段階上がる。
(まだ速くなるのか……)
ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ!!!! っと最早絶え間なく打ち込まれるおっぱい張り手に、観客の興奮も最高潮に達する。だが、
(此は、勝ったかな?)
そんな、力左衛門の相手力士と観客の様子を前に、茶々丸は一人、内心で呟いた。
「はあっ!!」
甲高い裂帛の気合と共に、スパァン!! と止めの一撃が力左の右のおっぱいに突き刺さった。
―決まった―
誰もがそう思っただろう。観客も、行司も、そして、当の純烈火も。だが、
「甘いね……」
茶々丸が呟くのとほぼ同時に、「ふんぬらばっ!!」という気合いが、土俵の上で響き渡ったのだった。
「なあっ!?」
最初に気付いたのは、当然ながら組み付かれた純烈火関だった。会心の笑みが一転、呆然とした表情で力左衛門の不適な笑みを見詰めていた。
「残念だが……」
そんな対戦相手に、力左衛門はにやりと口角を持ち上げ、
「その程度の張り手では、我のおっぱいは貫けぬぞ?」
そのむっちりとした両手で敵のまわしを、そして、その爆乳で敵の頭をがっちりと捕らえ込んだ。
「もが!? もががっ!?」
「逃がさん!!」
深い谷間の奥で、何とか効率もがく純烈火関に、力左衛門もぎゅっと唇を引き結んで、そのまわしを固く固く掴み直した。
「ふんっ!!」
上手を取った力左衛門が、そのままおっぱいで純烈火関を押し込んでいく。何とか逃れようと暴れる敵だが、豊満な力左衛門のおっぱいが巨大な迷宮となり、その顔を捕らえて離さない。その決死のもがきも、力左衛門のおっぱいをぷるぷると震わせるだけだった。
「甘いのう!!」
そんな、敵の最後のあがきに、くわっ! と牙を剥いた力左衛門は、自分のおっぱいから逃げようとして引けた純烈火の腰を捕らえると、自身の体重に任せ、右足を軸にして純烈火を一気に振り回したのだった。
「んむううううううう!?」
力左衛門の胸の谷間で声にならない悲鳴を上げる純烈火関。丹田をまわしに、頭部をおっぱいに抑え込まれた彼女に、逃れる術は残っていないのだった。
どうと土俵に倒された赤い力士。
「う、おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
大の字になるその敵を前に、両拳を頭上に掲げて、力左衛門は渾身の雄叫びを上げたのだった。荒い呼吸と白い肌に浮かんだ汗、そして純烈火関の連続張り手で赤くなったおっぱいが、その激戦を雄弁に物語っていた。
「あ……」
と、両腕の力瘤を誇示しながら、歓声を一身に受けていた力左衛門と目が合った。
「……」
少し考えた力左衛門だったが、称賛の意味を込めてパチパチと拍手を送ることにした。
「!」
それが意外だったのか、一瞬きょとんとした顔になる力左。だが、直ぐにそれを引っ込めると、彼らしくふてぶてしい、会心の笑みを浮かべたのだった。
今日の興行を終えた力左衛門が、芝居小屋の裏から出てきたのは、そろそろ空が橙色に染まり始めた頃だった。
「お疲れ」
「うむ♪」
裏口で待っていた茶々丸が声を掛けると、力左衛門は嬉しそうに笑った。
「どうだった?」
「んむ?」
「初勝利の味は」
「ああ……」
茶々丸が尋ねると、こくりと頷いた力左衛門は実に満足げな微少を浮かべた。
「格別よ。それ以外、言葉などないな!」
そう言って、かっかっか!と笑う彼に、茶々丸は「おー」と手を打った。
「お主もどうであった?」
「うん?」
「我の取り組みを見てよ。前回は敗けであったからな」
「勝ったら聞くんだ?」
「当然! 負けた試合など、振り返っても楽しくもなんともない!」
「つまり、勝利を反芻して悦に浸りたいと?」
「そういうことだ!!」
わっはっは! と笑う力左衛門に、茶々丸は肩を竦めた。
「まあ、良い戦いだったと思うよ? 楽しかったし」
「お、おう……」
「自分で聞いたんでしょ」
真っ直ぐに賞賛が帰ってくるとは思わなかったらしく、言葉に詰まる力左に、くつくつと笑いながら茶々丸は大通りを市松屋に向けて歩き出す。
「ああ、そうだ」
「んむ?」
隣を付いてきた力左に、茶々丸は「はい」と紙に包まれたそれを渡す。
「何だこれは?」
「初勝利祝い」
包みを開ける力左衛門に、そう告げて茶々丸は肩を竦めた。
「おお!」
途端に嬉しそうにする力左衛門。中身は市松屋の近くの饅頭屋で買っておいたものだ。
「♪~」
破顔してはむはむと饅頭を頬張る力左衛門。
「ちなみに、負けてたら力左の前で一人で食べてたから」
「それは殺生であろう!?」
「結果的に勝利したがな! 流石我! 超最強!!」と自画自賛を続ける力左衛門の前で、茶々丸は静かに目を細めた。
「ん? のう、茶々丸よ?」
「何?」
「いや、何か引っかかる事があるのか?」
「……」
そんな茶々丸の隣で、不意に饅頭を食べる手を止めて、そう首を傾げた力左衛門。その視線に、ふと目を逸らして、茶々丸は「んー……」と少し考え込んだ。
「良く気付いたね?」
「長い付き合いではないが、それでも四六時中一緒におるからな。多少の機微は分かろうというものよ」
かっかっかと笑う力左衛門に、茶々丸は降参の意を込めて肩を竦めた。
「この前のさざんかが一寸気になっていてさ」
「ああ、あれか……」
茶々丸の言葉に、思い出したように力左衛門も頷いた。
「お主が庭に態々出たからどうしたかと思ったが、何かあったのか?」
「んー……正直、あったとは言えないかな。唯、少し気になるところがあった」
「それは?」
間髪入れずに問うてきた力左に、茶々丸は「もう、妄想の域なんだけど」と断って続ける。
「さざんかの枝の折れ口が、内側から外側に向かっていたんだよね」
「ふむ」
「って事は、店の中の誰かが折った可能性が高いと言えば高い。猫とかが折るには、一寸高すぎる場所だったし」
「……」
「けど、店の女将の庭にそうそう奉公人が入るのかっていうと」
「まずないな」
「だよね……」
茶々丸がそう言うと、力左衛門の方も「ふむ……」と首を傾げた。
「これ、意外と不味いのではないか?」
「とはいえ、確たる証拠なんて、口が裂けても言えないしね」
「まあ、それもそうであるが……」
茶々丸の妄想というのは確かにその通りで、こんな話だけでは奉行所に引っ張る事はおろか、話を聞く事すら難しいだろう。
「違和感はある。けど、断定はできない」
「つまり?」
「これまで通り、用心棒に精を出すくらいしか出来ることはない」
「か……」
溜息を吐いた力左が饅頭を食べ終わるのを見計らって、茶々丸は歩を早くする。少し傾き始めた夕日と伸びた影が、黄昏時の茶々丸の胸に僅かな懊悩を届けてきたのだった。
こんにちはこんばんはデポジットカンチョーでございます
今回も読んでくださりどうもありがとうございます。
また、話数を重ねるごとに、お気に入り登録や作品評価をしてくださる方が増えてとても感謝しております。
今回は申し訳ないのですが、話が長くなりすぎたので一旦切りです。
なるべく早めに、続きを投稿したいと思っております。
ではでは