夢魔が生き残った女の子と友人になる話【FGO×ハリポタ】   作:エキドナ

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あのマーリンに「私が言うのもアレだけど、彼女は私以上のクズだと思う」と呼ばれる混血の夢魔が、ハリーと友達になる話。


第一話 出会い

私の腐れ縁の話でもしよう。

 

 

私には、同じ時を生きたことはなかったものの、妹のように思っている存在がいた。

彼女は、私と同様、人と夢魔の間に生まれた混血児であり、最高位の座に位置する魔術師であり(だって、私が夢の中で一から教えてあげたからね)、その証たる“世界を見通す眼”千里眼の保有者だった。(ただし、彼女が見通したのは過去だけであったが)

そんな似た者同士の私達であったが、決定的に根本から異なる価値観を有していた。

私も彼女も、”美しいもの”を好む。

しかし、その”美しいもの”が問題なのだ。

私の求める“美しいもの”が“人のハッピーエンド”であるならば、彼女の求める”美しいもの”は”人のバッドエンド”だった。

別に、私が彼女の考え方をどうこう言うつもりはないけれど、それでも譲れないものは譲れないし、受け入れられないものは受け入れられない。

彼女も私と同様に、頑固だからね。自分の嗜好を私のぞの言葉で曲げるほど、彼女は素直ではない。

ただ、今まで私達が衝突せずにいられたのは、彼女が”量”ではなく、”質”を追求したからだろう。

彼女は、”人類”という大規模なものではなく、彼女好みの”一人”のバッドエンドを求めた。

その一人のために、尽くして尽くして尽くしあげた結果、最後は優しくそっと地獄へ突き落す。

そうして、希望に満ち溢れていた人間が浮かべる怒りや憎悪の味わい、そして自分に向けられる罵詈雑言を聞くのが、たまらなく好きなのだという。

…さすがの私も、ちょっとそれはないな、と思った。

まあ、彼女の幼少期の主食がそれだったのだから、彼女にとってはそれが当たり前なのだろうけど。

好き嫌いの問題だから、私があれこれと口を出すのはおせっかいだろうと思うので、何も言わないが。

程々にしておけ、とは思っていた。まあ、面白そうだから言わないけどね。

 

 

そんな彼女は、ある日私の夢の中にやってきた。

彼女から来るなんて、珍しいこともあるものだ。

一体どうしたのだろう。

そう思っていると、彼女は胡散臭い笑みを浮かべて、こう言い放ったのだ。

 

 

「マーリン、私は並行世界のイギリスに行ってみようと思う」

 

 

私は、この発言を聞いて、嫌な予感がした。

 

 

「マーリン。私は今まで英雄にならないはずだった者を”英雄”として育て上げることに尽力し、”立派な英雄”になったところをゆっくりと堕としていく。そうして歪んでいく彼らの姿に魅了されてきた。だが正直なところ、それに少々飽きてきているのだ。残念なことに。だが、そんなとき、私は閃いてしまったのだ。ああ、閃いてしまったのだよ。恐ろしいことだがね」

 

 

彼女は、わざとらしく、演説をするように片手を胸に当て、もう片方の手を宙に掲げる。

 

 

「そう!だったら、”私が”反英雄になればいい!!英雄だからと、さんざん好き勝手な感情を押し付け、利用しようとしていた者達を、私が裏切ってやるのだ。きっと、面白いことになるぞぅ」

 

 

…こいつ、本当に何がしたいんだろう。

はっきり言って、理解できない。

はあ、ボク、どこでこの子を育て間違えたのだろう。

いや、きっと母親に似たんだろう。

彼女の母親も人にしては、なかなかにエキセントリックだったし。

だが、それでも、こうして大きくなるまで面倒を見ていたのはボクだから、やはりボクの責任なんだろうか。

 

 

思わず、ため息が出た。

 

 

「大丈夫!君のテリトリーである、この世界には絶対に手を出さないから!!君のかわいらしいマスター君の幸せは、不本意ながら願っているから!!」

 

 

やっぱり、ため息が出た。

 

 

「じゃあ、行ってきまあす」

「…はいはい、行ってらっしゃい」

 

 

そうして、彼女は「ちょっと散歩に行ってくる」というように、あっけなく彼女が作り出した異空間に消えてしまった。

 

 

‥‥はあ、ほんと、どこで育て間違えたのだろう。

そうして、本日三度目のため息が出た。

 

 

…厄介ごとに巻き込まれないといいけど。

 

 

 

「おやおや。これは驚いた。未成熟ながら千里眼を持っているとは。普通の人間の心と千里眼のどちらも保有するなんて、辛いだろうに。”本来”であるならば、ありえないことなんだが。…さすが、並行世界というべきか。よく見れば、性別も変わっているし、境遇も微妙に酷くなっているようだ」

「…。」

「それにしても、これは酷い。でも、大丈夫。このくらいなら、私の魔術ですぐに治ってしまうからね」

「…。」

「ついでに、体も綺麗にしてしまおうか。私ほどではないとはいえ、綺麗な顔をしているのだから。着飾った方がいいよ」

「…。」

「うんうん。やっぱり、私の目に狂いはなかった!…しかし、君、さすがに痩せすぎじゃないか?昔の私といい勝負をしているぞぅ。…うー、ここは胃に優しいものがいいよねぇ。でも、本人の意思も重要だし…。ねぇ、君は何を食べたい?」

 

 

物置部屋に置かれたベッドの上で痛みに耐えていると、気が付けば”夢”で見た人がいた。

実際に会ってみると、優しい表情をしているけれど、氷のような鋭さを帯びた目をしている。

だけど、ああいう目をした人はすぐに怒るのに、この人は辛抱強く、ずっと私が話すのを待っている。

待っていて、くれている。…変な人。

 

 

「うん。ゆっくりでいいよ。私は、待つのは得意だからね」

「…なんでも、いいの」

 

 

体をうまく動かせない私をお姉さんが抱きかかえる。

お姉さんは、同級生の女の子が大きなテディベアを抱きかかえるように、私を抱えた。

 

 

「ああ。もちろんだとも。お姉さんは、すごーい、魔術師だからね。なんでも出せちゃうぞぅ」

「…じゃあ」

 

 

私が答えると、お姉さんが一瞬硬直したのが分かった。

たぶん、困惑しているんだと思う。

私が”あったかいもの”だなんて、抽象的なことを言ったから。

 

 

「ようし!じゃあ、お姉さん、頑張って温かいものを出してあげよう。とりあえず、食べやすいスープから出してあげようね」

 

 

お姉さんは、そう言って、本当にいろいろなものを出してくれた。

私は胃が小さくて、全然食べることができなかったけど、私が食べる様子を何の感情もこもってない目で見ていたのが、うれしかった。

 

 

どうしてなのかは、わからない。

だけど、さっきの優しい表情よりは、こっちの方が本当のお姉さんみたいだから、それが安心したんだと思う。

 

 

なんだかんだ言って、お姉さんは私の物置部屋に一年間寄生し続けた。

あと一年で、”魔法学校”から手紙が届く。

私も、そろそろ決断しないといけない。

 

 

お姉さんは、どういうわけか、私にすべてを語ってくれた。

私が未成熟とはいえ千里眼(全然扱いきれないし、身に余るものだ)を保有しているからか、距離感がすごく近い。

だからこそ、彼女がいかにロクデナシかはよくわかっている。

…彼女がこうして、私と一緒に過ごすようになったのも。彼女に言わないけれど、私は【視た】から、彼女がしでかそうとしていることさえ、知っているのだ。私は。

 

 

”本来”なら、私は止めなければいけないのだろう。

”本来の私”なら、きっと彼女を止めただろう。(まあ、本来の私なら知ることもできないが)

だから、彼女は私のところに来たのだ。

”壊れ切っている”私に。

 

 

「名前?はあ。人って些細なことを気にするよねぇ。今まで好きに呼ばせていたし…まあ、あいつは怒るだろうけど、アンブローズとでも名乗っておこうかな。でもでもぅ、自分で言ってアレだけど、アンブローズって呼ばれると死にたくなるから、やっぱり今まで通り、美しすぎるお姉さんと呼んでほしい」

「お姉さんって呼ぶね」

「ブハァ!ちょいちょい、ハリー!!私の性格、つかみすぎじゃない!?それとも、もしかして心の広いお姉さんなら、優しく受け止めてくれるとでも思ってる?ははは。これはきっと滑稽とかいう感情なんだろうか。ああでも、やっぱりだめだ。感情なんて、これっぽっちもわからない」

「ほんと、お姉さんってリラックスすると途端に無表情になるよね。まあ、別に私だって似たようなものだから何とも思わないけど」

 

 

そういうと、お姉さんは私を抱きしめる力が強くなった。

どうして、そんなことをするの。

私、わからないよ。

お姉さんは、矛盾しているから。

ロクデナシのクズなのに、時々、そうやってバグが発生したように、急に人より人らしくなるから。

だから、きっとお姉さんに騙されてきた人は、お姉さんを信じたのだろう。

 

 

「でもね、たとえ、お姉さんが感情なんて理解できない非人間でも、だからこそ救われている人はいるんだよ。私みたいにね」

「…私は、人を壊すことはあれど、救うことなんてないよ。口にしたくはないけれど、ちゃんとどんな形であれ、救ってくれるとしたら、私ではなく、マーリンだと思う」

「いや、正直どっちもどっちだと思う」

「そこは、はっきり言うんだね!?」

 

 

お姉さんは、きっと、人からしてみれば十分に心なんて存在してない、非人間なんだろうけど。

私から見れば、それはとてもとても小さくて、今にも消えそうだけれど、存在してはいるんだと思う。

だって、私にとっては、初めてといっていいほどの安らぎだったのだから。

 

 

仕方がない。

賭けてみよう。

 

 

私だって、正直疲れ切っていたのだ。

消えたいと思うけど、実際に消えようと思ったら、体は生きていたいのだと否定して。

未来の私は幸せそうに笑っているけど。

明日生きているかわからないような私が、どうして幸せそうに笑う私を信用できるというの。

人は嫌いだし、正義の味方なんて面倒なものになりたくない。

私は静かな場所で、眠っていたい。

悲しみも痛みもない場所で、ゆっくりと過ごしていきたいだけなのだ。

…それが、私という存在の死であっても。

 

 

「アンブローズ、私の体をあげる」

「…。」

「体だけじゃなくて、心もあげる」

「…ハリー、それは、」

「アンブローズのミジンコみたいに小さな心に人の心わたしが寄り添って、感情というものを教えてあげる」

「…」

「そのために来たんでしょう。アンブローズ」

「…」

「私ね。別にどうでもいいのね。世界がどうなろうと。全部がどうでもいいの。あなたの望むものは褒められたものじゃないけど、私にとってはどうでもいいものなのね」

「…やっぱり、君は私の目的を知っていたんだね。でも、君は自分の言っていることが、どんなに恐ろしいことか、わかっているのかい。君は…」

「体なんて重くて動かしづらいだけ。大丈夫、私はアンブローズと一緒にいるから、寂しくないよ」

 

 

お姉さんは、さぞかし驚いているのだろう。

感情を消費せずに真顔になっている。

驚いた。

お姉さん、全然嬉しそうじゃないのね。動揺してくれるのね。

壊れ切った私の心を上げるなんて、申し訳ないけど。

ちょっとだけ、嬉しいな。

 

 

「アンブローズ。私の、たった一人の友達」

「…ハリー」

「あなたの目的が叶ってほしいとも思うけど、あなたが人らしくなったところも見てみたい」

「…私にとっては、好都合だが。…馬鹿みたいだ。君みたいな人間、あんまり見たことなくて、理解できないよ」

「人間はね、そう簡単に理解できちゃうほど、単純じゃないんだから」

 

 

そういうと、お姉さんは私を抱きしめた。

抱きしめて、高速で呪文を唱え始める。

唱え終わると、お姉さんは真顔のまま私を凝視する。

 

 

「…私は絶対に忘れない。我が友がここにいたことを」

 

 

ああ、それだけで、私は十分、救われた。

 

 

「…理想郷アヴァロンでは悪戯好きの老人に気をつけて」

 

 

…真顔のまま、私を見送る彼女に返答できなかったのが、唯一の心残りだ。

 




設定集

アンブローズ
名付けられたこともなかったし、今まで好きに呼ばせていたので、腐れ縁の別名を借りたクズ。
マーリンと似ているが、嗜好は正反対。
嗜好がクズなのは、幼少期、その感情ばかり食べていたから。
こいつを見ると、マーリンも少しはかわいく見える。
千里眼で過去をずっと見てきたからか、「馬鹿だな~人間」と思ってはいるが、彼女なりに可愛がっているつもり。
好きな子は苛め抜いちゃうタイプ。でも、絶対に心を開くことはない。
ただし、自分と同様、世界の異物のようなものである千里眼保有者にはすぐに心を開き、割と言うことはきく。
心を開くと、時々”バグ”を起こして、自分の嗜好と矛盾した非人間のくせに人間らしい行動をとるという極めて面倒な人物。
マーリンのことは、面倒ごとを押し付けたら、とりあえずなんとかしてくれるお兄さん程度に思っているし、なんだかんだいって懐いている。
ハリーには申し訳ないと思っているし、こんな自分を友と呼ぶ存在なんていなかったので、かなり動揺した。
彼女なりに、ハリーにできることはしたつもり。ありったけの防衛呪文をかけておいた。


マーリン
完全に育て間違えた。
ため息が止まらない。
ボクも自分のこと、クズだと思っていたけど、アイツよりはマシだと思う。
自分を厄介ごと抱える妹のお兄ちゃんのように感じている。
あれ…また、誰か来た?忘れ物でもしたかな、アイツ…


ハリー
本来では”男”で千里眼を持たない。
しかし、並行世界だからか、いろいろ違っている。
未成熟な千里眼を持ったせいで、人らしい心も持っているためか、あまりにも幸せそうに笑う未来の自分と現実の自分との矛盾で、自分の生死すらどうでもいいほど、心が擦り切れていた。
自分と同じ千里眼を持つアンブローズに初めて、安らぎを感じた。
自分が消えるときに、動揺したアンブローズを見て、嬉しくなった。
…もう目覚めることはないと思っていたが…?
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