鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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何時もありがとうございます!!

裏金銀治郎、約束を守る為尽力する。



12:珠世所長

 主人公である竈門炭治郎を自陣側に引き込めたのは僥倖であったと裏金銀治郎は、満足げであった。

 

 人格・能力・運……あらゆる要素を持ち合わすジャンプが誇る主人公。彼が味方にいるだけで未来は明るくなる。だが、その光をダークサイドへと誘う裏金銀治郎。ジェダイの戦士も闇へと堕ちることでボス属性を得て強くなる的な展開もあった。

 

 闇の力を得て更に強くなるのも良し!!

 

 闇を克服し更に明るい光へと変わるも良し!!

 

 どちらに倒れても美味しいと思っている裏金銀治郎である。つまるところ、ボスを倒しきるまで、持てば良い――その後の事など誰も知らないのだから。

 

 約束通り、本格的に支援を始めることにした裏金銀治郎。だが、執務室を出ようとしたところ、扉が開けられた。そこには、笑顔の胡蝶しのぶが待ち構えている。眉間がピクピクと動いており、負の感情が表れている。

 

「あら~、何処にお出かけですか?」

 

「怒っていらっしゃいますか?あまり、怒ると美人が台無しですよ」

 

 裏金銀治郎は、何故怒っているか理解できなかった。

 

 彼は、部屋の中に胡蝶しのぶを招き入れ持てなす。お茶請けと珈琲を用意しご機嫌を取る。そして、頃合いをみて胡蝶しのぶが話し出した。

 

「柱会議……なんで、出席してないんですか?お館様が、緊急活性薬を全員に配るという話を聞いていましたから、絶対に居ると思っていました。酷い裏切りです」

 

 元々、先行量産分として現役柱と裏金銀治郎分があったのだ。

 

 そして、企画から完成まで携わった人が、説明の場にいないのはどういう事だと思っていた。だが、裏金銀治郎からすれば、出るとは一言も言っていない。なにせ、今回の柱会議は、厄ネタが盛り沢山であった。

 

 配布に際し、説明こそ産屋敷耀哉がするが、そんな薬をいつ誰が何処で研究していたかなど、柱達も思うところがある。

 

 当然、そんな疑惑の目が誰に行くかは明らかだ。毒と薬は表裏一体というように、鬼を殺す毒を使い薬学に精通する胡蝶しのぶへと向かうのだ。材料の言及こそ、産屋敷耀哉の無言の圧力で潰されたが、全員が察していた。

 

「私は、柱じゃありませんよ。それに、その場に私が居たとして話が纏まりますか? 誰とは言いませんが、鬼が怖くて柱を辞めて裏方にいったとか、金の亡者だとか色々という人達がいるでしょう」

 

「確かに、そういう風に言う人もいますね。よく、耳にします。でも、引退したのも鬼滅隊を支える為じゃありませんか」

 

「それが理解できるほど、理性的な柱は半数もいません。それに、信用と信頼とは実績の積み重ねです。現役の柱達は、任務を一緒にこなす事も多かったので横の繋がりがあります。ですが、私はありません。なんせ、世代が違いますから」

 

 裏金銀治郎の世代は、現役より一つ上。つまりは、亡くなった花柱と同じ世代だ。今の世代の柱とは、一緒に鬼退治をしたことはない。

 

「気むずかしい人達が多いですからね。それでも、一緒に立ち会いしてくれるのが人情じゃありませんか?」

 

「嫌ですよ。代わりに、お館様への根回しをしました。根掘り葉掘りは、聞かれなかったでしょう。鬼を滅ぼす事と万が一の備えという事。みなが、敬愛するお館様たっての願いなら、しぶしぶ受け入れてくれたはず。それに――人を食べない鬼である竈門禰豆子の方がネタ的に盛り上がったでしょう?」

 

 裏金銀治郎も秘密裏に那谷蜘蛛山に居たので、竈門禰豆子の存在を知っている可能性は確かにあった。だが、人を食べない事については、あの現場にでもいないと分からないと胡蝶しのぶは考えていた。

 

 その為、鬼滅隊の中に独自の情報網を築いているのではないかと疑ってしまう。

 

「やっぱり、近くに居ませんでしたか? 会議が終わって、直接ここにきたんですよ」

 

「いいえ、私は蝶屋敷で炭治郎君を待ち伏せしていました。その後も、彼を私達側(・・・)に引き込むのが忙しくて、会議を盗み聞きなんてしてません」

 

 この時、胡蝶しのぶは、聞き間違ったのではないかと考えた。

 

 一度も会っていない竈門炭治郎をなぜ、自らの屋敷で待ち伏せしているのか。それに、こちら側(・・・・)とは、何処を示しているのか。最近、隊士になった若者をどうして、裏金銀治郎が引き込むか。

 

 まだ、隠している秘密の一端がバレたから処理に困っていると頼られるのならば、彼女も理解できた。神崎アオイの時は、バレそうだったからといって相談されたのに、今回に限っては、その様子すら見せないのが不思議でならなかった。

 

 秘密は、知る者が少ない方が良いという男が、秘密を教える行動にでるなど、首を傾げるしかない。

 

 胡蝶しのぶは、裏金銀治郎に詰め寄った。

 

「どういう事ですか!! あれほど厳重に管理している秘密をわざわざ教えるとか、何を考えているんです。納得のいく説明をして貰えるんですよね」

 

「しのぶさんが望まれるのでしたら、お答えします。まず、炭治郎君の鼻は異常だ。犬並みの嗅覚だけに留まらず、言葉の真偽までかぎ分ける。その為、鬼肉の存在は隠蔽不可能。だから、妹を人間に戻す事に協力する事と私が持てる全てを以て支援する事を対価に、見て見ぬふりをして欲しいとね。彼は、快諾してくれたよ」

 

 鬼を殺す毒を研究した胡蝶しのぶにしてみれば、できない約束をしましたね、というのが本音であった。だが、前者より後者の方が問題だと思った。前者については、努力目標である為、実質的にいえば実現しなくても問題ない。

 

 だが、鬼滅隊の金庫番で、政財界や裏社会にも伝手がある男が全力支援する。一隊士には過剰な支援だ。

 

「竈門炭治郎君には、私も会いました。あの純粋無垢な少年が、よく鵜呑みにして、快諾しましたね」

 

「人を鬼にできるのですから、鬼から人間に戻す事だって可能に決まっているじゃありませんか」

 

「理論的には、そうかもしれません。その理論なら、鬼から人に戻せるのは鬼舞辻無惨だけです」

 

「時代と共に技術も日進月歩です。病気だって、昔なら死病と言われた物でも今では特効薬があったりします。時間を掛けて研究すれば、必ずや人間に戻す特効薬も作れます」

 

 その言葉に、胡蝶しのぶは甘いと考えた。

 

 どんな薬だっても、長い研究と臨床実験をする必要がある。鬼を人間にする研究をしている存在など居るはずもないと考えるのは当然の帰結だ。そもそも、鬼は殺すのが当たり前で有り、裏金銀治郎の様に材料扱いする存在も例外的なのだ。

 

 だが、胡蝶しのぶは、裏金銀治郎の言葉を安く見ない。信用と信頼とは実績の積み重ねである。つまりは――。

 

「薬の現物を持っているのですか!?」

 

 期待の眼差しを裏金銀治郎に向けるが、流石の彼も未来から来たネコ形ロボットではない。言われた物がポケットから出てくるほど準備は良くないのだ。

 

「しのぶさんは、私が何でも持っていると勘違いしてませんか? 流石に、そんな薬の現物があったら、鬼なんて全滅していますよ。まぁ、その薬の研究をしている珠世という鬼をこれからスカウトに行くんですけどね」

 

 叩けば埃がでる布団ではないが、叩けば叩くほど情報がポロポロ出てくる裏金銀治郎に彼女は、怒りを覚え始めた。そして、ついにはその両手で彼の顔を鷲掴みにする

 

「銀治郎さん、わたし……そろそろ、怒ってもいいですよね?」

 

「じゃあ、何が知りたいですか? 珠世という鬼の事ですか? それとも、鬼舞辻無惨が鬼になった経緯ですか? 竈門禰豆子の血鬼術についてですか?」

 

 他にも、上弦の鬼の能力なども把握していたがあえて選択肢から外している裏金銀治郎。情報は、適切なタイミングで提供するのが一番である。

 

「……他にも色々隠していますよね?」

 

「勿論」

 

 その日、裏金銀治郎の執務室から電気が消える事はなかった。翌日、蝶屋敷に朝帰りする胡蝶しのぶ……嗅覚の優れた竈門炭治郎が、悪意もなく朝まで裏金さんと一緒だったんですね、と言わないでいい事を口走る。

 

 

◆◆◆

 

 埼玉県の某所に、裏金銀治郎と胡蝶しのぶが足を運んだ。

 

 そこには、三階建ての住居が有り、中からはうっすらと鬼の気配がする。柱であっても、最初から鬼がいると疑って掛からねば見逃すほどだ。

 

「銀治郎さん。本当に、ここに珠世という鬼が居るんですよね?」

 

「勿論――と、言いたいのですがこれで四件目ですからね。居ることを祈りましょう」

 

 産屋敷耀哉は、人の人脈を使い居場所を特定したが裏金銀治郎は違った。金の流れで探したのだ。そもそも、表社会に戸籍もない上に、夜しか行動できない彼等が真っ当な方法で家を手に入れることは困難。

 

 それに、珠世も世間的に言えば、かなりの美人であり人の記憶に残りやすい。そんな情報を元に裏社会に協力を仰いで得た情報だ。似たような方法で、一般人に紛れ込んでいた鬼の女もおり、ここに到着するまでの全てのゴミ達は、二人によって処分された。

 

 裏金銀治郎は、紳士的にドアをノックする。

 

「珠世さんは、ご在宅でしょうか? 鬼舞辻無惨を処分する為、我々と手を組みましょう。貴方達の行動時間に合わせて、夜分遅くに来た我々の紳士的な対応を理解して頂きたい」

 

 紳士という発言に、胡蝶しのぶが自らを指しアピールする。次から、紳士淑女とアピールするように心がけた。

 

 二人の呼びかけには応じないが、中からはドタドタと走る音が響く。

 

「愈史郎君も落ち着きなさい。実年齢35歳なのですから、いい加減に母離れしてもイイ頃ですよ」

 

「銀治郎さん、35歳にもなって母離れできてないって、もう死んだ方が良いですよ。気持ち悪いです」

 

 悪気もない一般論が愈史郎を殺しに掛かる。既に、彼のライフは0であった。ショタおじさんなんて属性は、未来永劫現れない。

 

 この時、珠世一行は、焦っていた。何故場所がバレたのかと。浅草から逃げた先は、竈門炭治郎にも伝えていない。場所の特定方法が分からない限り逃亡を続けても無駄だ。

 

 そして、裏金銀治郎と胡蝶しのぶを招き入れる決意をする。

 

………

……

 

 裏金銀治郎は、部屋に入ると同時に血文字の札を壁と天井に刺した。

 

「これは、血鬼術!!」

 

 珠世は、裏金銀治郎が何をしたかを理解した。まさか、鬼滅隊の者が血鬼術を使えるとは想像できず、反応が遅れる。騙されたと感じ取る珠世一行だが、それも仕方がない反応だ。

 

 だが、珠世一行の血鬼術は警戒に値するレベルであるので、紳士的な話し合いの場を作るにはこのくらいは当然だ。

 

「あぁ、ご安心ください。これは、血鬼術を無効化する術です。珠世さんの幻術、愈史郎君の認識阻害、浅草で貴方が拾った鬼の拘束棘。どれも怖いですからね。だが、これではフェアじゃない」

 

 交渉とは、フェアに行う物である。

 

 裏金銀治郎の計画には、珠世の存在は必要不可欠であった。その為、彼も誠意を見せる。日輪刀を愈史郎君に渡し、自らの首をいつでも切り落とせる準備をして構わないと告げる。

 

「珠世様!! やっちゃいましょう。一人倒せば、残りは一人です」

 

「勝手な行動は許しません。……で、お名前を聞いても宜しいですか?」

 

 珠世の言葉に、今の今まで名乗りを上げていなかった事に初めて気がついた裏金銀治郎と胡蝶しのぶ。自称、紳士淑女は自称の域をでなかった。

 

「蟲柱の胡蝶しのぶです」

 

「裏金銀治郎。給与管理と資産運用を担当している」

 

 二人の自己紹介に珠世は疑問に思った。特に、裏金銀治郎の方だ。蟲柱と同等以上に鬼を殺している雰囲気があるにも関わらず、裏方と言い張る。

 

「こちらの自己紹介は、必要ですか? 随分と詳しいようですが……」

 

「それは、おいおいでも構わないでしょう。それで、私達と手を取り合って鬼舞辻無惨を倒しませんか? こちらは、貴方の研究に場所と資材を提供します。それと鬼を殺す毒を開発し薬学に精通するしのぶさんも手伝いをします」

 

「不本意ではありますが、その研究成果があれば私の目的にも大きく役に立ちます」

 

 逃亡生活をしつつ、鬼を人間に戻す研究をするのにも限界があった。だからこそ、鬼滅隊からの申し出は渡りに船でもある。

 

 だが、鬼滅隊という存在を信じ切れなかった。

 

「罠ではないという確証はあるのですか?」

 

「珠世さん、罠であるという証明ができないのと同じように、罠でないという証明はできません。私を信じろなんてセリフはいいません。ですが、私は竈門炭治郎君と約束しました。妹を人間に戻す事に尽力すると……だから、貴方の許に足を運んだのです」

 

 竈門炭治郎という名前の効果は抜群だ。しかも、妹の話も持ち出し、揺さぶりを掛けていた。

 

 そして、裏金銀治郎は、珠世に利き腕を差し出す。

 

「何のつもりですか?」

 

「頭の良い貴方なら理解できるでしょう? 手を取り合いましょう。鬼舞辻無惨……あれは、生かしていてはいけない存在です。これ以上、貴方と同じような被害者を出さないためにも。そして、貴方を母のように慕う竈門禰豆子の為にも」

 

 迷う珠世だが、数秒考えた後に裏金銀治郎の手を取る。この瞬間、珠世所長が誕生した。

 

 自分の為ではない誰かの為に……そんな文句で釣れると裏金銀治郎は確信していた。そして、内心でチョロイと思っていたが口走る事はない。

 




次は、蝶屋敷に入院している三名のご様子でも^-^

ハンバーグ定食
ミックスグリル定食
98%豚骨ラーメン
レバニラ定食
餃子定食

選択式の病院食があります^-^
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