鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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いつもありがとうございます。

感想を本当に楽しく読ませて頂いております。
執筆意欲がわきまくりです!!

夜の一族が大人気過ぎて、仲間がたくさんいて嬉しい限りです。
でも、ネタ出演なのであしからず^-^






20:鬼と仲良く

 

 蝶屋敷の台所に、普段いない人物が居た。胡蝶しのぶ、その人である。

 

 普段忙しくて料理する時間すら取れない彼女が、今回ばかりは違っていた。ブランクが有り、感覚を取り戻すために努力している。彼女は、決して料理の腕が低いわけではない。料理なんて、レシピ通りに作れば良いという理系である。

 

 鬼気迫るような彼女の料理への姿勢は、胡蝶家の食卓にも影響が出していた。

 

「どうですかカナヲ、ひなき。新しいレシピを試してみたのですが……」

 

「美味しいです、胡蝶様」

 

「少し、味付けが濃い気がしますが美味しいです。お母様」

 

 食卓には、肉がメインの料理が並べられていた。胡蝶しのぶが食事当番である時は、野菜や魚メインの食事だというのに、ここ一週間ほどずっと当番を引き受け、肉料理が出され続けていた。

 

 いい加減、肉料理以外を食べたい彼女達であったが、嬉しそうに料理をする胡蝶しのぶを邪魔する事はできなかった。

 

 この時、産屋敷ひなき改め胡蝶ひなきは、父親から言い渡された使命を全うする。裏金銀治郎は、鬼滅隊に必要な人材だ。決して逃がしてはならない。だが、それと同時に上弦の鬼を撃破し、勢いがある鬼滅隊も維持しないといけない。

 

 ヤれば、できる!! と、いう言葉があるように、この状況で最高戦力である柱が戦力外通告を受けるのを避けないといけない。つまり――

 

「お母様、避妊はしてくださいね」

 

 まさか、食事の場でそんな話題が出てくるとは思わず、暖かい食卓が一転して南極のような凍りつく風が吹く。

 

「ひなき、時と場所は考えて発言しないとダメですよ。それに、どうしてそんな発想に?」

 

「あまねお母様が言っておりました、女が急に料理を始めるときは男の影があると。大丈夫です、あの人がお父様なら構いません」

 

 あの人とは誰のことか、栗花落カナヲ以外は分かっていた。

 

「胡蝶様は結婚なんてしない!! ずっと、蝶屋敷で一緒に暮らすんです」

 

 さらりと、胡蝶しのぶを生涯独身であると宣言する継子がいる。女の幸せを平然と潰そうとする可愛いが、可愛くない継子がこの場に誕生した。

 

………

……

 

 裏金銀治郎の執務室で、胡蝶しのぶが先日の食卓での大事件を話していた。

 

「お子さんが二人も居ると大変ですね。どうですか、母親の気分は?」

 

「だ、誰のせいだと思っているんですか!! 分かっていますか、あ・な・た ですよ!!」

 

 そんな可愛い胡蝶しのぶを虐めたくなるのは男の性だ。

 

 勿論、彼女自身も裏金銀治郎が、本気でそんなことを言っていないのは分かっていた。ただの言葉遊びであると。裏金銀治郎との会話は疲れるが、彼女は嫌いではなかった。それは、裏金銀治郎が柱や胡蝶カナエの妹といった立場を見ずに、彼女だけを真摯に見ていたからだ。

 

「分かっていますよ。だから、責任を取りましょうか」

 

 裏金銀治郎は、席を立ち上がりソファーに座る胡蝶しのぶに詰め寄る。先日、音柱が来た時と同じだが、今回は立場が逆だ。一歩間違えば、セクハラで裏金銀治郎は懲戒免職へ。

 

「えっ!! ちょ、ちょっと、銀治郎さん。マズイですよ!!」

 

「大丈夫です。ちゃんと、鍵は閉めてますから―――困った顔も素敵ですよ。しのぶさん」

 

 顔を近づけて、そっと耳元で囁く裏金銀治郎。普段、胡蝶しのぶのお家芸である耳元でささやくをお返ししたのだ。だが、女性から男性にやる場合は許されるが、その逆は許されない事は沢山ある。

 

 顔を真っ赤にする胡蝶しのぶ。神速の抜刀術により、裏金銀治郎の前髪がスッパリ切り落とされた。上弦の参というG級モンスターから採取した血液を投与していなければ、半歩後ろに下がるのが遅れて、今頃は額が割かれていた。

 

「銀治郎さん、乙女心を弄ぶと殺しますよ。どうせ、一度や二度心臓をさしても死なないんでしょう。だったら、私の気の済むまで切り刻んでもいいんですよ」

 

「すみません、私が悪かったです。ほら、そろそろお昼の時間なので、一緒に食事でもどうですか? 今日は、しのぶさんの為に、私が腕によりを掛けて作ってきました」

 

 お昼時もあり、胡蝶しのぶも怒りを収めた。

 

 そして、予てより約束していたお弁当の交換会が始まったのだ。

 

「いいでしょう。言っておきますが、私のお弁当も力作ですよ。今日この日をもって姉の味を超えて見せます。ですが、約束を覚えていますよね?」

 

 姉の味を超えなければ、姉の料理を思い出す度に男の影がうつる。だからこそ、超える必要があった。母の味を本当に母の味にする為に!!

 

「勿論です。胡蝶カナエさんと、箱根に鬼退治にいった件ですよね」

 

「そう、それです!! そもそも、姉さんは強かったのに、銀治郎さんもその場に居た理由がわかりません」

 

 当時、実力的に同じ柱であっても裏金銀治郎と胡蝶カナエでは、100回闘っても胡蝶カナエが全て勝利する。それほど、確実な差があった。

 

「それは、同じ志を持つ同士として、胡蝶カナエさんに呼ばれたんです。鬼と仲良く(意味深)したいなんて、鬼滅隊の中でも異端でした。それについて、お話したいと言われてノコノコと付いて行ったのが私です」

 

「――仲良くですか? 確かに、姉さんは、鬼と仲良くしたいと言っていました。本当ですか? ただ、美人な姉さんに近づきたかっただけとか、邪な気持ちがあったんじゃないですか?」

 

 胡蝶カナエは、鬼滅隊の中で1位2位を争うレベルの美女であった。男なら誰だって、誘われたらホイホイ付いていく。仕事に誠実な裏金銀治郎は、違った。今現在も、鋼の心で胡蝶しのぶを押し倒さない男だ。一時の感情に身を任せると滅びが待っていることを彼は知っている。

 

「しのぶさん、私を見くびらないで頂きたい。どこぞの先代炎柱とは違います。酒に酔った勢いで彼女をお持ち帰りしようとした人と比べないで欲しい。私は、それを殴って止めて柱から資産運用係に左遷された人材です。邪な気持ちなんて、ありません。ただ、辛そうな彼女を――」

 

「まって!! 今、おかしな話が紛れ込みませんでしたか!! 絶対、わざと挟んでいますよね」

 

 鬼滅隊でも一部の者しか知らない真実。

 

 だが、結果的に先代炎柱の行動は、鬼滅隊にとって利益となった。柱として、前線で働くより、現役引退し後衛に回された彼の働きは、並の柱の比ではない。

 

「話を戻しますね。で、箱根に潜む鬼ですが……どうにも、山奥の秘湯に現れるとの事で大変でした。しかも、女性が入浴しているときにだけ現れる鬼とかで」

 

「あの、銀治郎さん。そんな変態な鬼がいるはずないでしょ!! 」

 

「そんな鬼なんて、序の口です。鬼舞辻無惨なんて、強引に呼び集めた下弦の鬼達を目の前に女装して現れてパワハラ面接を始める程ですよ。それに比べたら、入浴中の女性を襲う鬼の方がまだ健全です」

 

 真実しか告げていない裏金銀治郎。

 

 だが、毎度のことだが、胡蝶しのぶの絶対零度の疑いの眼差しが降り注ぐ。当然、胡蝶しのぶのご機嫌はドンドン悪くなっていく。胡蝶しのぶの中で姉は完璧な存在であった。貴方のような人は姉には相応しくない。だから、私ぐらいで我慢しておきなさいと……心のどこかでそんな思いが燻っていた。

 

「いい加減に嘘をつくのは止めましょうよ。姉さんの風呂を覗いたんでしょ? そう言いましょうよ。今なら、指一本詰めたら許して上げます」

 

「私は、しのぶさんには嘘はつきません。お風呂は、覗いていませんよ。入浴中にしか現れない鬼でしたので、鬼が来た際に色々と見たのだけは認めますが―」

 

 胡蝶しのぶがニッコリとほほえみ。

 

 彼女は指に力を溜めて、全力のデコピンを放った。その破壊力は、カボチャの堅い皮を吹き飛ばし中身を抉る威力がある。そんな、殺人的な威力をその身に受けた裏金銀治郎は悶え苦しんだ。

 

「ぐあああぁぁ。ひ、酷い。正直に申告したら、この仕打ち。私が一体何をしたって言うんですか?」

 

「結局は、姉さんの裸を見た事実は、変わらないじゃないですか!! 嫁入り前の乙女の肌は、安くないんですよ」

 

 ムカムカが止まらない胡蝶しのぶ。大好きな姉の話だというのに、この男は!! という感情しかわかなかった。だが、完全に裏金銀治郎は冤罪だ。そもそも、箱根での鬼退治ネタという時点でこのような王道展開は、当たり前である。それを責められる彼の方が可哀そうだ。

 

「えぇ、その後、箱根で豪遊した費用は全部私持ちでしたよ。ほら、胡蝶さんの部屋にあった金魚鉢……イイ値段すると思いませんか?」

 

「も、もしかして、あの時ですか!! でも、姉さんが、現地の人がお土産を沢山くれたって」

 

「えぇ、その現地の人が私ですね。一緒に、箱根に居ましたからね。良い仕立屋で着物まで買わされました。しばらく、米と塩だけの生活でした」

 

 明かされる衝撃の真実。姉からの思い出のプレゼントにそんな過去があったとは、考えたこともなかった。むしろ、知りたくなかった。話を聞けば聞くほど、泥沼にハマるような裏金銀治郎との会話。

 

「銀治郎さん――ご飯にしましょう。箱根の件は、大体分かりました。財布に打撃を受けたと言う事で一応許して上げます。それにしても、過去は人間関係、今は金銭問題と鬼滅隊、大丈夫なんですか?」

 

「少なくとも、しのぶさんが居なければ即死でした。じゃあ、約束通り、コレが私が作ってきたお弁当です。お弁当の中身を確認したら、一応じゃなくて絶対許してくれる気持ちになりますよ」

 

 二人がお弁当を交換する。

 

 胡蝶しのぶが用意したのは、男性が好きなのり弁に唐揚げが入っており、男が好きなお弁当を体現化した物であった。茶色一色のお弁当だ。

 

 裏金銀治郎が、用意したお弁当を開けた胡蝶しのぶ。その中身を見て、動きが止まった。お弁当を凝視している。そして、まるで理解ができないと言った雰囲気が感じ取れるほどだった。

 

「銀治郎さん……どう反応すればよいか困ります。ですが、温泉の件は、許して上げます」

 

「デフォルメ化した胡蝶カナエさんを再現するのは、苦労しました。ですが、喜んでくれて何よりです」

 

 用意されたお弁当は、未来で大流行するキャラ弁であった。そこには、胡蝶カナエが『よく頑張りました、貴方は私の誇りです。後、銀治郎さんを許してあげてね。お姉ちゃんからのお願いです』と台詞まで付けており、手の込みようが尋常じゃない。

 

 海苔を使ってここまで精巧に再現するあたり、才能の無駄遣いであった。

 

「すこし、食べるのが勿体ないですね」

 

「早起きして作ったので、食べてください。好物の生姜の佃煮も力作ですよ」

 

 一度も教えた事がない好物を何故知っているかという疑問に尽きなかった胡蝶しのぶだが。裏金銀治郎だから仕方がないとあきらめの境地に達していた。

 

 その夜、男物のお弁当箱を洗う胡蝶しのぶを見つめる栗花落カナヲ。日輪刀を片手に、そのお弁当箱の持ち主を夜な夜な探す姿が目撃された。

 




さて、そろそろ 吉原編ですよね。
兄貴の方は、要りませんが……妹の方は若干欲しいなorz



音柱「俺は神だ」

善逸「はぁ!? 神は、裏金さんでしょ。アンタに、シルヴィちゃんやすずかちゃんみたいな天使を俺の嫁にできるの?」


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