誤字脱字もそして許してクレメンス…がんばるねん。
無限城――血鬼術で作られた異空間。
上弦の弐が血鬼術での戦闘能力がトップならば、異空間を作る鳴女の血鬼術は、汎用性でトップである。その能力は、わかりやすく言えば「どこでもドア」と「四次元ポケット」を組み合わせたような能力だ。
その空間に、今上弦達が集められていた。
集められた上弦の誰もが思った。これから、下弦の鬼達に行われた恐ろしい面接が始まるのだと。上弦の鬼達も下弦の鬼達が、唐突に戦力外通告を受けて、リアル頸にされたのを知っていた。
今まで汗水垂らして会社に勤めたら、集合を掛けられ頸にされるとか血も涙もない。鬼かと言いたくなるが……上司はリアル鬼であった。
ベベンという琵琶の音が響く。
そして、現れる和服女装をした変態――その名は、鬼の中の鬼である鬼舞辻無惨であった。精巧な擬態能力があるにせよワザワザ女に変わるあたり、未来を先取った男である。男の娘とか、まさに鬼舞辻無惨が元祖であった。
しかし、その擬態能力を活かし切れていないのは、鬼から奪った能力だからである。能力を奪う前に、持ち主から使い方を伝授して貰わなかったのが、この結果である。所詮は奪い取った力であるとよく分かる例だ。
そして、未来を先取った男の娘を見せられた上弦の鬼達も伊達ではなかった。変態だと大声で叫びたいのも我慢し、空気を読み即座に土下座!! プライドの高い鬼達ではあったが、鬼舞辻無惨から放たれる不機嫌オーラから命と天秤に掛けたのだ。
「ほほぅ、流石は上弦だ。即座に頭を垂れるあたり下弦とはデキが違う」
だが、その内心で鬼舞辻無惨は全くそんな事を思っていない。口だけである。
その様子に上弦達の心が一つになった「誰か、あの格好について突っ込め」と。しかし、その事を鬼舞辻無惨が読むことはできない。
当然、彼等とて、上司とは長い付き合い。視界に映る範囲に居れば心が読めることなど知っている。上弦の鬼になって、まず覚えることは……いかにして、思考と心を分離するかだ。
それができなければ、上弦としてやっていけない。事実、上弦のメンバー補充があるときは、上司の機嫌を取り損ねた愚か者がいる時が常だ。
「やっぱり、呼び出されたのは猗窩座殿の件ですか?」
「そうだ。下弦が弱いのは、まだ理解できる。だが、上弦の貴様等が柱一人に殺されるなど、呆れて言葉も出ない。お前等は、どこまで無能なんだ。何百年も鬼滅隊を滅ぼせない。青い彼岸花も見つけられない!! 」
鬼舞辻無惨の怒りのボルテージがドンドン上がっていく。前者については、確かに鬼達は無能である。それは、言い訳の余地などない。裏金銀治郎が鬼側に居れば、50年で鬼滅隊の財政を悪化させて、木っ端微塵にしていただろう。
だが、後者の青い彼岸花については、完全に鬼舞辻無惨が悪い。情報が曖昧すぎて、部下が困惑するのは当然だ。だから、鬼達もこの件については本気で探していない。
「申し訳ございません。無惨様……産屋敷は、巧妙に」
「黒死牟、貴様がそれを言うか。元鬼滅隊の隊士であろう。なぜ、所在すら知らぬ!!」
黒死牟の全身を激痛が駆ける。呪いの効果で、肉体の崩壊が始まった。上弦の壱である男でも鬼舞辻無惨の呪いの前では無力である。
しかし、黒死牟も責められて当然。裏切りの手土産に、元上司の頸くらいもってくる物だ。なのに、上司の場所は知りませんとか、話にならない。
「なぜだ!! 何故、貴様等はこうも無能の集まりなんだ!! 太陽は克服できない!! 鬼滅隊も滅ぼせない!! 青い彼岸花も見つけられない!! 」
鬼舞辻無惨に鏡を見せてやりたいと誰しもが思っていた。そもそも、最強の鬼と自称する上司が、太陽を克服できないのだ。それを自分より劣る部下に期待するのもどうなのだ。
そんなパワハラが横行するから、誰も真面目に仕事をしない。もし、真面目に仕事をやらせるのならば、太陽を克服した後のビジョンも見せるべきである。現状では、太陽を克服したら『お前達は、用なしだ。裏切られる前に全部殺しておく』とか平然と言いそうだ。だから、非協力的になる。
「いや~索敵系は苦手で……」
「童磨、最近信者が減っているそうだな。何故だと思う?教えてやろう……本気で取り組んでいないからだ」
この時、童磨はしくじったと思った。
黙って、黒死牟を生け贄にして場を乗り切るべきだったと。少しでも、頑張っているアピールが敗因であった。
「金も食料も色々と――これ以上は、すこし無理かも~」
「言い訳か? 貴様に許された返事は、『はい』か『イエス』のみだ。分かったか!! 他の者達もだ!!」
「はい」
童磨のポジションは、鬼滅隊でいう裏金銀治郎と同じだ。ただ、その上司が天使と悪魔くらい開きがある。彼は、新興宗教の割には勢力も大きく、頑張っていた。鬼滅隊の柱も殺すし、資金も稼ぐ、餌となる人間も沢山確保している。これ以上、要求するのは酷である。
上弦の鬼達の誰もが、嵐が過ぎ去るのを待っていた。口を開けば、何を言ってもネチネチと嫌みを言われる。しかも、激痛というおまけ付きでだ。
そして、最後に、鬼舞辻無惨から有り難いお言葉が言い渡される。
「『無理』というのは、嘘吐きの言葉だ。途中で止めてしまうから無理になる。上弦の鬼たるものが『無理』と嘘をいうなど許せない。今後、『無理』と言う事を禁じる!! 途中で止めなければ必ずややり通せる。お前達は不死身なのだから」
この時、無惨の呪いに『無理』というキーワードも追加された。
そして、部下に一方的なお説教と呪いの枷を追加し、満足げに退場していく鬼舞辻無惨。それを見送る部下達は、災害にあったと思う事にした。
◆◆◆
裏金銀治郎は、これから動く時代に向けて粛々と準備をしている。
むかし、偉い人が言ったように切り札を晒すときは、更に切り札をもっておくべきだと……実に良い言葉である。それを、くそ真面目に実践しているのが彼だ。
裏金銀治郎の狙いは、不死川玄弥という主人公達の同期だ。彼は、特異体質持ちで一時的に鬼の力を使う事ができる。その一点の才能で言えば鬼滅隊最強である事は間違いない。普通、鬼を食べても彼ほど力を付けることはできない。
そんな逸材と取引をする為、呼び寄せたのだ。
「不死川玄弥君、君は素晴らしい才能がある。是非、私と取引しよう」
「何の用事で呼び出されたと思えば、くだらね!! 悪いが他を当たれ」
兄同様に実に柄の悪い男であった。だが、鬼退治を確実に行うその仕事の実績は評価に値する。数字上では、主人公一行の中で鬼討伐数はトップであった。
不死川玄弥が席を立ち上がり、退出しようとする。
「私からは、下弦の肆の血肉。君が使う二連散弾銃の整備費用や弾薬を全て経費で提供しよう。後、私の権限で君に優先的に鬼討伐をさせる。そして、最後に――上弦の参から採取した血液を少量だが君に渡す用意もできている」
「あんた……まさか!!」
不死川玄弥が欲しい物を全て提示できるのが裏金銀治郎だ。利口な男なら分かるはずだ。誰に付いていくべきかと。
「鬼を喰っているのが、自分だけだと思っているのか? 君が最速で柱になるには誰の手を取るべきだ?さぁ、椅子に座りたまえ」
「あんた最高にイカれているぜ。……いいぜ、その話のってやる」
不死川玄弥は、自らの目的に裏金銀治郎を利用しようと考えていた。鬼滅隊でも、柱に次いで名前が売れている男である。そんな男が自分を必要だと思い、取引を持ちかけてきたのだ。
実の兄に認められるため頑張っていたが、それより先に裏金銀治郎にその才能を認められる事態になる。それが、彼にとって内心複雑であった。
………
……
…
隔離施設では、日々、珠世と胡蝶しのぶが鬼を人間にする薬の開発をしている。
研究成果は、施設の鬼達で実験が行われるので、何時も裏金銀治郎が補充してくるのだ。その為、鬼達は、やっと死ねると彼女達を崇拝し始めていた。鬼達から女神様とか天使様とか賛美される彼女達は、とてもイヤな顔をしている。
「そそられますね」
「――今の発言は聞かなかったことにしてあげます」
胡蝶しのぶが素敵な顔をしていた為、思わず本音を口にしてしまった裏金銀治郎。だが、その気持ちが理解できる男も多いだろう。胡蝶しのぶほど、青筋やイヤな顔が似合う女性は少ない。
「失言でした。研究が進むかと思い、面白い血液を持ってきましたので、是非使ってください」
「今度は誰の血ですか? 上弦ですか? まさかの鬼舞辻無惨ですか?」
「鬼舞辻無惨は、流石に難しいですよ。あの男が、花魁に会う際に狙うという事も出来なく無いですが、確実に私が死にます」
鬼舞辻無惨の出現情報をさらりと教える裏金銀治郎。既に、パターン化した流れで有り、胡蝶しのぶの冷たい視線が突き刺さっていた。
「貴方は、無惨の居場所が分かるのですか!!」
「違うと思いますよ。銀治郎さんは、分かるのではなく――知っている……そうなんでしょう?」
この時、珠世は裏金銀治郎が未来視や予知ができる特異能力者だと考えた。妥当な線である。事実、そうでもなければ辻褄が合わない事が多すぎたのだ。
未来を先取って行動しなければ、実現不可能な事を幾つもやってきた。特に、上弦の参がまさにそれだ。あれほどの準備を整えて挑めるなど本来ありえない。
「しのぶさんには、今度二人っきりの時に教えて上げます。今は、この血液を調べてみてください。鬼喰いをしている不死川玄弥の物です。彼は、一時的ですが、鬼に近い状態になれる極めて希有な存在です。更に、兄同様に稀血だと思われます」
「カナヲの同期じゃないですか。あの世代、色々と偏りすぎじゃないですか」
胡蝶しのぶが嘆くのも当然だ。あの世代はおかしいのだ。実力的にも全員が柱となれる才能がある。
「それで、貴方はこの血をどうしろと?」
「目的は二つ。不死川玄弥の体質を第三者でも手に入れられる薬が欲しい。二つ目は、不死川玄弥の兄の稀血は、上弦の壱すら酔わすほど強力だ。弟の血でもそれを再現して欲しい。上弦の上位ナンバーを相手取るなら手数は多いに越したことはない」
珠世は、勝利に何処までも貪欲な裏金銀治郎を恐ろしく思っていた。これが人間なのかと。だが、それが人間である!!
きっと、善逸の嫁にまさかの!!って思った人は残念でした><
みんな大好きなあの人の事です。