パワハラ面接上弦版……思いの外好評でうれしかった^-^
きっと、あんな感じになるよね。
裏金銀治郎は、報告書を片手に頭を抱えていた。
そこには、政財界VIP達の吉原事情が載っている。そのような調査を行ったのには当然理由がある。まもなく、上弦の伍と吉原で死闘が行われる。目を覆いたくなる被害が出るのは当然の帰結。
その戦いで政財界VIPのお気に入りが死ぬ事態になれば、鬼滅隊も窮地に立たされる。鬼滅隊が大正の世で特別扱いをされているのには、彼等の大いなる力が働いているからだ。胡蝶印のバイアグラという餌を提供しているが、列車事故の隠蔽などにも多大に尽力してもらったので、貸しより借りが多い状態だ。
つまり!! 裏金銀治郎は、政財界VIPのお気に入りだけでも吉原から遠ざけるつもりでいた。だが、大きな問題は……やはり金である。理想的には、身請けして政財界VIP達に何時もお世話になっていますとプレゼントすることだ。列車事故前ならそれも可能であったが、今の財政状況ではそれは不可能。
そして、思いついた案が隊士に守らせるという行為である!! その為、裏金銀治郎は鬼滅隊の運営資金から特別予算を捻出した。
「口が堅く、剣の腕にある程度自信がある者を選出して欲しい。階級に拘りはない。万が一の場合には、女を連れて安全圏に逃げられること。それだけでいい」
「あの~裏金様。口出す事じゃないのですが、本当に宜しいのですか?」
「後藤君――君は、大の大人を背負ってかなりの距離を走れるね。安心しなさい、君の席は確保済みだ。リストの中から好きな女性を先に選んでいい」
会社の金で、女が抱けるとなれば靡かない男は少ない。しかも、政財界VIP達のお気に入りともなれば、上玉である。
裏金銀治郎の執務室に呼ばれた『隠』の後藤は、当初困惑していた。いきなりのお偉いさんからの呼び出し。そして話を聞いてみれば、会社の経費で女を抱く人選をしてこいなど聞き間違いを疑うレベルだ。
鬼滅隊の金庫番と呼ばれ、金に細かい男に何があったのかと!! 中身の入れ替わりを疑う程だ。
しかし、後藤という男は、忠実であった……欲望に!!
「この後藤にお任せください。必ずや、裏金様のご期待に添う隊士を集めて参ります!!」
後藤は、『隠』と呼ばれる事後処理部隊の者。つまり、鬼滅隊の中で最も隊士の側にいる者達だ。だからこそ、隊士の人柄についても知っている事が多い。本人が知らなくても仲間の誰かが知っているなど普通にある。
後藤は、かつて無いほどのやる気を見せて、部屋を退出した。当然だが、その人選候補に我妻善逸が挙げられる事は決して無かった。
………
……
…
独身男性隊士にとって、理想的な上司である裏金銀治郎。どこぞの上司とは、次元が違う男である。だが、情報とは人が多いほどバレる物だ。口が堅いという条件で探させたが、「誰にも言うなよ」的な事で漏洩していくのは、過去も未来も変わらない。
だが、酷い事に噂には尾びれ背びれが付く。
何を間違ったのが、噂は二転三転し……裏金銀治郎に認められた者は、第二の我妻善逸になれるという噂話になってしまった。
コレに関しては、裏金銀治郎も何をどう間違ったのか理解を超えていた。そして、裏金銀治郎の執務室には、我先にと己を売り込む独身隊士達が長蛇の列を成していた。
「階級は、乙。水の呼吸を使います。下弦と戦い生き残った経験もあります。必ずや、金柱様のお力になれます!!」
「近衛幸村君ですか、戦歴も申し分有りません。可視化できるほどの水の呼吸の使い手というのも非常にポイントが高い。しかし、君は噂を聞いて、ここに来たのではないのかね?」
「あの憎き――いえ、我妻善逸と同じく理想の嫁を探して貰えるというアレでしょうか。私は、そのような噂に踊らされてはおりません。吉原で最高の女が経費で抱けると『隠』の者から選抜された一人です」
「ならば、なぜ私と直接面談を求めたのかね?」
「勿論、金柱の裏金銀治郎様にお名前を覚えて頂くためです」
裏金銀治郎は、彼の事を覚えた。鬼滅隊にしては、珍しい有能タイプであった。事実、その通りである。責任がない立場で適当に鬼を処理して、お金が貰えれば良いと考えている者だ。某サイコロステーキ先輩の上位互換版だ。だが、男である以上、理想の嫁は欲しいと考える極普通の思考の隊士である。異常者の集まりの中では希有な者であった。
「私としても君のような有能な人材が、隠れていたとは驚きだ。働きぶり次第では、色々と融通しよう」
裏金銀治郎が差し出した手を、握り返す隊士。
そして、彼が退出すると新しい隊士が部屋を訪れる。それが、夕方まで続いた。
それから数日後。
裏金銀治郎は、お呼び出しを喰らっていた。これから、吉原で人命を守る為、画策しなければいけないこの時期に何故だと不満に思った。
その呼び出したのは、お館様である。そして、その脇には風柱・不死川実弥と炎柱・煉獄杏寿郎の両名が付き添っていた。実に、物々しいと言わざるを得ない。柱の中でも上位の実力と言われる二人が揃ってこの場にいるのだ。
「すまないね銀治郎。この二人が、どうしても同席したいと言ってね」
「いいえ、お構いなくお館様。それで、本日はどういったご用件でしょうか?」
この時、裏金銀治郎は大体の要件を察していた。流石に目立ちすぎたと後悔したが、後の祭りである。
そして、この場に呼ばれていない胡蝶しのぶ。裏金銀治郎と色々と噂があるため、公平を期すために、外されたのだ。
「てめぇ!! 何を企んでやがる。何日か前、何人もの隊士がお前と会っているのを知らねーとでも思っているのか。腕の立つ隊士が何人もいたそうじゃねーか」
「不死川実弥さん、私が隊士と会って何か問題でもあるんでしょうか? 話した内容ですが、鬼退治に伴う人命救助を依頼していただけです。誓って嘘ではありません」
このような下らない詰問をする為に、柱2名も同席させたのかと裏金銀治郎は、少し失望していた。だが、感情で動く風柱が殴り込んで来ないで済んだのは、産屋敷耀哉が止めたからに他ならない。
「だから、言ったではないか。裏金殿が謀反など企むわけがないと」
「だが、謀反を企んでいない証拠にもなっていない。柱が各地にいっている隙に、一部の隊士と裏金がいれば、決してできない事じゃない」
風柱は、産屋敷耀哉を崇拝するあまり、周りがよく見えていない。
産屋敷家がいてこそ成り立つ鬼滅隊である。謀反を起こして、実権を握ったとしてもトップが裏金銀治郎では、志の高い隊士は従わないだろう。金目的で働く隊士は別だが。
「実弥は、銀治郎が謀反を起こすと懸念しているんだね。それはない。銀治郎は、輝利哉の後見人を断った程だ。それなのに、謀反を起こしてまで鬼滅隊を手に入れようとは思わないよ」
「なんと!! お館様のお願いを断るとは、理解しがたい!! どういった理由で断ったのだ」
柱の両名は、後見人を断ったという事より、後見人になぜこの男がと思っていた。風柱の中では、納得ができなかった。彼は、自分が選ばれる事は決してないことは理解していた。
では、誰が後見人に相応しいかと言われれば――胡蝶しのぶ。現役柱達は、口を揃えて彼女の名前を口にするだろう。戦闘力以外の面で、彼女はどの柱よりも優れていた。それに、女性だからこそ、輝利哉と子供を作れる。そうなれば、色々と安泰だとすら思っていた。
そんな夢物語が実現された場合は、鬼とは別の新勢力が誕生する可能性もある。場合によっては、新しい上弦の鬼が誕生するだろう。
「柱の皆様のそういう所です。お館様を崇拝するのは構いませんが、ソレを他人に強要しないでください。柱の皆様と私では、主義主張が違いすぎます。そんな私が、輝利哉の後見人になったら、柱の誰かが私を殺しにくるのは明白。私は死にたくありませんので」
「気にくわね~、気にくわね~!! 五体満足のくせに柱を引退して裏方に移動し、コソコソ動く奴が、偉そうな主張をしやがる」
裏金銀治郎は、煉獄杏寿郎を見た。誰のせいで柱を引退して資産運用をするようになったのか、この場でぶちまけてもいいのだが、配慮した。煉獄杏寿郎とは、友好的な関係でいたいため、親の恥を晒すのは申し訳ないと判断していた。
「実弥が言いたいことも分かる。だけど、銀治郎が居るおかげで鬼滅隊が回っているのも事実。それを見ないふりして、一方的に文句をいうのは良くない。銀治郎も、一言二言多い。相手に合わせて会話する事も君ならできるはずだ」
「申し訳ありません、お館様。ですが、謀反の可能性を否定し切れたわけではありません。給与管理と資産運用を担当する身であれば、鬼滅隊の資金を私的利用している可能性もあります。謀反とは、武力以外でも起こせる可能性は十分にございます」
人、物、金――その全てを操作できる立場にいる裏金銀治郎。だからこそ、疑われても仕方が無いところもあった。事実、遊郭費用などは人助けという名目ではあるが、会計上グレーである。
しかし、その程度の金額は、裏金銀治郎が鬼滅隊の為に稼いだ金額と比較すればゴミみたいな物だ。
「良い視点をお持ちです。ですが、お館様も先ほど仰ったように私には鬼滅隊を乗っ取るメリットがない。なので、不死川実弥さんが危惧するような事態にはなり得ません。お館様の意を汲んで、この平行線な話し合いを止めましょう」
双方不完全燃焼ではあったが、お館様の取りなしにより、解散となった。
◆◆◆
胡蝶しのぶは、栗花落カナヲの変化に気がついた。
以前にも増して、話をするようになった。感情も表に出すようになった。
――とある雑誌には、「女を変えるのは男」という素晴らしい言葉が掲載されている。女子力を絶賛強化中である胡蝶しのぶもその雑誌には目を通していた。
そこで、大きな問題が出てくる。
任務以外では蝶屋敷から殆ど出ない栗花落カナヲ。そんな彼女に影響を与える男とは誰なのか。蝶屋敷の入院患者という線が濃厚だ。しかし、栗花落カナヲに影響を与えそうなほどの男は、一人しか思いつかなかった。
「師範、男の人って何をあげれば喜ばれますか?」
「――ねぇ、カナヲ。プレゼントをあげる相手が分からないと、流石に答えられないかな」
無自覚に胡蝶しのぶの心にダメージを与える継子の栗花落カナヲ。年齢=彼氏いない歴の彼女に、男性へのプレゼントとか、ハイレベルな質問をする。剣術では師範であるが、女子力では栗花落カナヲの方が師範であった。
「……」
顔を赤らめてそっぽを向く栗花落カナヲ。
胡蝶しのぶは、日輪刀を持ち「少し出かけてきます」と、栗花落カナヲに告げる。その夜、元金柱の屋敷に刀を持った強盗が押し入る事件が発生した。その犯人は、一夜を強盗先で過ごす。
さて、花魁でもたべにいこう^-^
男の肉はまずそうだから、女の方が良いよね。