鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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いつもありがとうございます。
感想も本当にありがとうございます。

誤字脱字指摘も助かっております><
読み汚し誠に申し訳ありません。

何時もより短くなってしまったけど、無理に話をかくより
切りよくという事で許してクレメンス。


24:ハメられた(意味深)

 胡蝶しのぶは、甘露寺蜜璃と茶屋で食事を楽しんでいた。

 

 鬼滅隊御用達の茶屋であり、運営を鬼滅隊OBや隊士の親族が行っている。その為、普通のお店では話せないような鬼の話題や鬼滅隊の裏事情などが、よく飛び交う。

 

 柱達も利用するこのお店――気を利かせて、柱の人は専用の個室へと案内される。柱と一緒では飯がまずくなると一般隊士に気を遣っている結果だ。

 

「しのぶちゃんは、最近変わったよね。いつにもまして綺麗だし、更に女らしくなった気がする。」

 

「そうですか、別にそんな事はないと思いますよ。それより、そんなに食べて大丈夫ですか?」

 

 甘露寺蜜璃の前には、ぜんざいがバケツ一杯というレベルで置かれている。見ているだけで吐き気がするほどの量であった。しかし、それを当然の如く食べる彼女は、恵まれた体質が故にだ。

 

 女というのは、スタイルを気にする。古今東西それは変わらず、美しさを保つため食事にも気を遣う必要がある。だが、彼女はいくら食べても太らないという女性なら誰でもうらやむ特異体質だ。

 

「大丈夫です!! だって、鬼討伐の帰りだから全部経費精算だよ」

 

「そういう意図じゃ~。でも、そんな事がよく認められましたね」

 

 食費だけで、並の隊士の給与分は軽く食べる彼女である。それが高級店であれば、柱の彼女の給料でも支払は厳しい物があった。だが、そんな彼女の事情を知る者が手を差し伸べたのだ。

 

 経営者視点で考えれば――飯代を経費精算するだけで、柱が喜んで鬼退治をしてくれる。コストパフォーマンスを考えれば、悪くない。

 

「裏金さんが、『君の働きは、隊士数十人分だ。プライベートの食費は、自己負担してくれ。但し、鬼退治の帰りならば全て経費精算しよう』なんて、言ってくれたのよ。年齢の割に若く見えますし、元柱で実力もある。それに、見た目もかっこいいし、お金持ちみたい――狙ってみようかしら」

 

 それに対して、間髪入れずに胡蝶しのぶが反論した。

 

「止めておきなさい甘露寺さん。あの男は、ケダモノ(・・・・)です。甘露寺さんのような、チョロイ人にはお勧めしません。伊黒さんにしておきなさい。彼は、貴方に気があるようですし、告白すればそのままゴールイン確定です。保証します」

 

 男は、みんなケダモノである。当然、(けだもの)の呼吸的な意味ではない。

 

 胡蝶しのぶは、先日の事を思い出していた。継子である栗花落カナヲが、裏金銀治郎の家に胡蝶しのぶが向かうように仕向けた日の事を!!

 

 栗花落カナヲは、竈門炭治郎の事が気になっていた。それを察した裏金銀治郎は、彼が持つ竈門炭治郎の情報を全て渡したのだ。家族構成から好物、今までの任務状況、過去の女性関係、親族の情報。何も言わないでも、必要な時に必要な物を提供してくれる裏金銀治郎は、栗花落カナヲにとって、恩人であった。

 

 そして、出来る女である栗花落カナヲは、行動を起こした。

 

 胡蝶しのぶと裏金銀治郎の双方の気持ちを理解している彼女は、恋のキューピットになる事を決意する。胡蝶しのぶが、裏金銀治郎の誕生日を把握していれば、もっと別の手段に出ていただろう。思い人から誕生日にプレゼントの一つも貰えないのは可愛そうだと思い、今までの恩を返す事にした。

 

 そして、師範がプレゼントになれば良いと、彼の誕生日にプレゼント(胡蝶しのぶ)を贈った。まさに、天才であった。花の呼吸が使えるのは伊達ではない。師匠の花すら散らすのだから―。

 

 独身男性の家に、夜にお邪魔するなど色々とアウトである。当然、朝まで同じ寝床を共にする。誕生日の夜に独身男性の家に訪れれば当然の結果。勿論、合意の上でと付け足しておこう。

 

 翌朝、胡蝶しのぶの朝帰りを待っていた栗花落カナヲ。最初の台詞は、お帰りなさいでは無く、「昨日はお楽しみでしたね」という名台詞だった。この時ほど、胡蝶しのぶは、栗花落カナヲが誰の継子なのか疑問に思ったことはなかった。

 

 大事な事だが、竈門炭治郎が自分の気持ちに素直になれといったせいである。

 

「――もしかして!! しのぶちゃん、おめでとう!! それなら、早く言ってよ。それで、それで、出会いからシッポリと行くまでの経緯を詳しく教えてね。私も参考にするから」

 

銀治郎(・・・)さんとは、ビジネスライクな関係です。甘露寺さんが考えているようなやましい関係ではありません!!」

 

「しのぶちゃん~、ソレは無理があるかな。だって、お店に来る途中から歩き方に違和感があったよ」

 

 甘露寺蜜璃も柱である。恋話が好きで、自分より強い男と結婚する為に鬼滅隊にいるとはいえ、剣士としての実力は最高位。つまり、胡蝶しのぶの体の異常にも気がつく。当初は、女の子の日と思っていたが、話を聞く内に確信に至ったのだ。

 

 既に、女として一歩先に進んでいると。

 

「……銀治郎さんには、お世話になっているので。そのお礼で」

 

「ダウト!! しのぶちゃんって、そんな人じゃありませんよね。お世話になっているからといって、そんな事をする人じゃありません」

 

 人の恋話ほど楽しい物はない。自分には一切被害が及ばない上に、ネタとして美味しいことこの上ない。しかも、甘露寺蜜璃が鬼滅隊に入った目的を鑑みれば、胡蝶しのぶは良い観察対象であった。

 

 同じ道を辿れば、自分もと考えていた。だが、彼女は何故、伊黒小芭内という存在に目を向けないのか、誰しもが疑問に思っている。伊黒小芭内が、空気過ぎて不憫である。

 

 だが、柱の男達は、絶食系男子かと言うほど、へたれが多かったので仕方が無い。

 

「あの~、甘露寺さん。そんなに、人の話を聞いて面白いですか?」

 

「もちろんよ!! だって、しのぶちゃんとあの裏金さんだよ!! 何処がどうなって、どう繋がったのか気になるじゃない!! 」

 

 現役柱の胡蝶しのぶは、その美貌から惚れる男性隊士も数多い。蝶屋敷での治療もあり、その人気は留まることを知らない。一方、裏金銀治郎……女性隊士から人気がある反面、鬼滅隊の金庫番として現場からは疎まれている傾向がある。

 

 美男美女である二人が、男女の仲になったとあれば、そりゃ話を聞きたくなる。だが、既に、色々と噂されていた二人だ。なるべくしてなったとしか考えていない者達が大半だ。

 

「下世話な話はしませんからね!!」

 

「えぇ~!! しのぶちゃんのケチ~、減るものじゃないからいいじゃない」

 

 甘露寺蜜璃は、胡蝶しのぶの話を聞いて一つ思ったことがあった。裏金銀治郎は、よく我慢してたなと。

 

 

◆◆◆

 

 産屋敷耀哉は、体調が悪いにも関わらずとても喜んでいた。上弦の参を倒した時と同じほどに。

 

「そうか!! よくやった、しのぶ」

 

 産屋敷耀哉は、持ち前の勘で今日あたり、裏金銀治郎と胡蝶しのぶが男女の関係になるのではないかと察していた。そして、鎹烏が秘密裏に二人の行動を監視させていた。

 

 これで、裏金銀治郎では無く、胡蝶しのぶを鬼滅隊に縛り付ければ必然的に裏金銀治郎も付いてくる。これも、産屋敷耀哉の努力の結果でもあった。二人の予定が合うようになるべく鬼退治を振らずにいた。しかも、夜は可能な限り二人ともフリーになるように画策も行っていた。

 

 裏金銀治郎ともあろう男が、ハメていたと思ったら、実はハメられていたという驚愕の事実である。

 

「では、早々に式の準備に取りかかりましょう」

 

「あまね、銀治郎は鋭い。私達が裏で動いていたとなれば、この理想的な状況が崩れかねない。大丈夫だ、彼は誠実な男だ。仕事にも女性にも」

 

 ここまで来たら何もしないのが一番良い。胡蝶しのぶは、産屋敷ひなきを養子にしている。どのように転んだとしても、産屋敷の血筋が途絶えることはない。

 

「裏金銀治郎が優秀な隊士である事は分かっております。しかし、彼は危険ではないでしょうか。今までの仕事は把握していますが、異常です。恐らく、私達に報告していないような事も色々と行っているでしょう」

 

「そうだね、あまねの心配はもっともだ。だが、銀治郎でなければ、鬼滅隊は支えられない。事実、彼がいなければ何ヶ月も前に鬼滅隊は無くなっていた」

 

 産屋敷あまねも、裏金銀治郎からの報告書を目にして、頭を抱えたことを思い出した。

 

 信じられない財政状況であり、何から手を付けるべきかも分からない程であった。それなのに、裏金銀治郎は誰にもマネできない方法でお金を稼ぎ出し、一気に状況を好転させていった。

 

 その手腕は、神がかりである。

 

「分かりました。裏金銀治郎には、このまま何もしないでおきます」

 

「ソレで頼むよ、あまね。私の勘では、裏金銀治郎という存在は、鬼舞辻無惨への最大の切り札になるはずだ」

 

 ローションにコ○ドーム……それだけで、鬼達がどれだけ死に至ったか、数えるのが困難になっていた。新聞でも消える死体という、怪奇現象が紹介されるほどだ。それらに関わっている裏金銀治郎。

 

 この男が居なければ、無惨の呪いキーワードに『無理』という恐ろしい言語が追加されることもなかった。この呪いのせいで、鬼舞辻無惨が100年掛けて増やした鬼が僅か2週間で死ぬほどの被害がでた。

 

 その為、切り札といっても過言ではない。

 

 

 




次こそは、吉原へ!!

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