誤字脱字報告も本当に助かっております^-^
夜の町で大繁盛する吉原。そして、今日ほど鬼滅隊の隊士がこの場に集まった事はかつてない。口が堅く優れた隊士達が、全裸待機していたのだ。何処に出しても恥ずかしくない隊士達なのだが、この時ばかりは、何処にも出せない隊士になっていた。
そんな馬鹿げた事実を胡蝶しのぶは、裏金銀治郎から伝えられた。
「銀治郎さん、鬼滅隊の運用費でなんて事をやっているんですか!! バレたら、問題ですよ」
「大丈夫です。私が資産運用をしているんですよ。監査も私の仕事です」
鬼滅隊の資産運用における透明性は、全て裏金銀治郎によって制御されている。
組織として、どうなのかと疑問に思うが、彼以外にその仕事を行える者がいない為、産屋敷耀哉も見て見ぬふりをしている。それに、使った分以上に金を稼いでくるのだから、誰もその事を問題にはしていなかった。大正時代における内部監査など、あってないようなものだ。
たわいない会話をしつつ、二人は闇夜に紛れて移動していた。その目的地は、「京極屋」。世のため人の為に、上弦に挑むわけではない。主人公一同に合流し、一緒に上弦を倒そうという気兼ねも無い。
ちなみに、今現在主人公一同が必死に上弦と闘っている。派手な音がすれば、全裸男達がすぐさま己の剣を納めて、要救助者を連れて郊外まで脱出する手筈になっている。
「宇髄さんと合流して、上弦の鬼を倒しに行かないんですか? 上弦で流星刀の効果を確かめるって言っていたじゃありませんか」
「大丈夫ですよ。あの兄妹は、両方同時に頸を切らないと死にません。その特性を理解するまで時間が掛かります。それに、我々が助けに行ったら、彼等が成長しません。可愛い子には旅をさせろというじゃありませんか」
胡蝶しのぶは、冷たい目で裏金銀治郎を見る。頸を切っても死なないとか、兄妹とか、どうしてそんな大事な情報を今言うのだと。
「もう良いです。銀治郎さんは、そう言う人でしたね。で、私達は何故!! 遊郭に忍び込んでいるんですか?」
「そりゃ、金目の物を物色する為ですよ」
裏金銀治郎と胡蝶しのぶは、上弦の伍である花魁蕨姫の私室に潜入していた。そして、彼は金になりそうな物を次々と物色していった。貴金属から洋服、現金など部屋にある物を平然と集める。
その手際の良さは、本職の泥棒も真っ青な程であった。僅か数分で、部屋から金目の物が一切なくなるのだから。
「ちょっと!! それ泥棒ですよ!!」
「しのぶさん。人から物を取ったら泥棒です。ですが、鬼から何をとっても無罪なんですよ。その証拠に、我々は、鬼から命を取り立てているじゃありませんか。これらは、鬼退治にかかった費用の補填になるんです」
「隊士の中には、鬼を殺して金銭を奪っている人がいると噂で聞いたことがありますが……」
噂でも何でも無い。隊士の中では、鬼が持っていた財布や財産を懐に入れることなど当たり前であった。律儀に鬼滅隊の運用費に回す裏金銀治郎が希有な例だ。
「誰ですか、そんな嘘を流布した人は。鬼が人間に何をしても罪に問われないように、我々も鬼に何をしても罪に問われないんですよ」
鬼に人権はない。
今回の獲物は花魁である。百年単位で花魁をやっているのだから、しこたま金を貯めている。鬼側へダメージを与えつつ、鬼滅隊の経済状況をよくする為にも、しっかりと回収するのは当然だ。
胡蝶しのぶも裏金銀治郎の言葉に納得した。そもそも、彼女は鬼に対して同情するなど一切の優しさを持ち合わせていない。鬼が苦しむなら、それはそれで有りだと思うほどに成長していた。
「なるほど、その通りですね。では、私は足抜けしたとお手紙を残しておきますね」
現役柱と元柱……そんな鬼滅隊の最高位の剣士が、鬼の居ぬ間になんとやら@@
………
……
…
鬼滅隊の吉原拠点には、現金は勿論、金品や美術品が沢山並べられていた。
「こうみると壮観ですね。これ、葛飾北斎の絵じゃありません?」
「美術品の鑑定には自信がありません。それにしても、回収した物には、日輪刀までありましたよ。やられた状況が、手に取るように分かりますよ。男って本当に馬鹿ですよね」
胡蝶しのぶは、裏金銀治郎をヤるならば、どのタイミングが理想的かと脳内シミュレーションしていた。その結果、実に簡単に殺せる事実に気がついた。古今東西、寝床で女に殺される男は腐るほど居る。
「たぶん、しのぶさんが考えているようなピンクな妄想じゃないと思いますよ。だって、兄の妓夫太郎が15人、妹の梅が7人の柱を殺していますからね。きっと、真面目に闘った結果だと思います」
「――!! わ、わかってますよ。人を変態みたいに言わないでください!! 」
数週間前まで処女をこじらせていた胡蝶しのぶ。だが、年齢=彼氏居ない歴を卒業した彼女は、今や普通の女になっていた。姉が望んだその姿が今ここにあったのだ。
「はいはい、そう言うことにしてあげます、しのぶさん。では、私達も鬼滅隊として、市民を守る為に働きますか」
「そうしましょう。先ほどから響く音……宇髄さんが派手に暴れているはず」
響く爆音。裏金銀治郎が、鬼の活動資金を奪う最中、主人公一同もしっかりとその役目を果たしていた。
「あの人、忍者なのに目立ちすぎですよね。人質救出の為に、地面を掘っているのだから仕方がありませんが~。しのぶさん、上弦の伍について、知りたい事はありますか?」
「なぜ、この場に居ない宇髄さんの行動や人質について知っている事は、もはや問いません。その兄妹が持つ血鬼術は?」
「兄の妓夫太郎は、血でできた鎌のような猛毒の血鬼術です。その猛毒は、毒に対して耐性がない我々では、苦しむでしょうね……普通ならね」
裏金銀治郎は、ポケットから血文字が書かれた札を彼女に渡した。血鬼術である毒だ。裏金銀治郎の血鬼術を無効化にする血界で対処は容易い。
「用意が良いですね。ですが、そういう抜け目の無いところが銀治郎さんです。で、女の方は?」
「帯を使った物理攻撃です。ただ、帯に人を取り込む能力があります。取り込まれた者は、腐りもせず時間が止まったような状態になります。そういう、概念的な能力を持つ血鬼術は本当に珍しく強力なんですけど……使い手は馬鹿なんでしょうね」
その能力を裏金銀治郎が持っていたならば、堕姫より遙かに使いこなしていただろう。鬼達は、自らの身体能力を強化するために人間を食べる以外に、血鬼術をどう活かせるか考えるべきであった。
「――上弦の参と比べたら、随分と劣りますね。銀治郎さん一人でも倒せるんじゃありませんか?」
「歴代最強の柱達と一緒にしないでください。堕姫の方ならば、苦戦するでしょうが殺せる。ですが、妓夫太郎は……地力の差で勝てませんね」
金の呼吸を使う裏金銀治郎もある意味、歴代最強。だが、その呼吸法を誰にも教えるつもりはない。過去に、何度か継子になりたいと志願者こそいたが、鬼を殺したいならば、他の呼吸を学べと門前払いしていた。
そもそも、鬼を殺す事に人生を捧げるような者が、ただの仕事として鬼を殺している裏金銀治郎とそりが合うはずも無い。だから、お互い不幸にならない為、それが最善であった。
「
「私が倒せないなら、倒せる者にお願いするとか、鬼を倒す武器を用意するとか色々しますよ」
鬼の頸が切れるようになった胡蝶しのぶとか、流星刀とかローションとか銃とかそう言うことである。
◆◆◆
上弦の鬼との戦いで、竈門炭治郎は覚醒する。上弦の鬼の手によって、惨殺された市民を見て激怒している。
その様子を隠れて眺めていた裏金銀治郎は、マズイと思った。
「些か、沸点が低いな。あの程度で怒っていたら、日本の闇を見たら怒りのあまり死んでしまうぞ」
「いや、助けにいきましょうよ。彼しんじゃいますよ」
お互いに、竈門炭治郎の事を心配しているが、二人とも全く違う理由からであった。
裏金銀治郎は、竈門禰豆子が人間に戻った後、二人の扱いをどうするか検討を始めた。竈門炭治郎をコントロールするには、妹を使うのが一番だ。つまるところ、身寄りの居ない二人の親代わりとなり、生活全般の面倒を見る方向で飼い殺しするのが理想だ。
鬼が居なくなれば、鬼滅隊はその規模が縮小される。言い換えれば、リストラの嵐だ。当然、裏金銀治郎が主導となり、銃刀法違反や殺人容疑で片っ端から檻の中へ送り込む。そんな状況で、妹を守る為、誰を頼るべきか分からない馬鹿ではない。
勿論、器量が良い妹が吉原堕ちする事で兄の生活を支える展開もあるだろうが、それを良しとする竈門炭治郎ではない。
しかし、そうなると、胡蝶しのぶの家系図や経歴が面白おかしくなる。将来、あの偉人の家系図を大公開なんて、特番があった日にはみんな目を疑う事になるだろう。
「いいえ、折角の上弦との戦闘です。彼等にはもっと成長して貰わないといけないので見守りつつ、最良のタイミングで殺しに入りましょう。鬼舞辻無惨がどのタイミングで覗き見しているか分かりませんので、姿が見えないように一撃で殺す」
「そうですね。ですが、本当に目的はそれだけですか? それなら、こんな近くに居る必要ありませんよね? 出番は、まだ先でしょうから」
裏金銀治郎は、「よくできました」と胡蝶しのぶの頭を撫でる。撫でられる胡蝶しのぶの顔には青筋が目立っていた。この場合、青ポとでもいうのだろうか。どこぞのMP回復薬みたいだ。
「折角なので、緊急活性薬Gを作りたいので、その材料集めです。そこに落ちている上弦の足とか……上弦の鬼に匹敵する強さになった竈門 禰豆子の体とか色々集まるんですよ、この場所は」
「随分と女性のお体がお好きなようで――」
胡蝶しのぶが、裏金銀治郎の足をぐりぐりと踏み踏みしている。
◆◆◆
胡蝶しのぶが、花を散らす三日前。
鬼滅隊の事後処理部隊『隠』――そこに所属する後藤は、恐ろしい情報を手にしていた。
彼は、蟲柱である胡蝶しのぶと元金柱の裏金銀治郎との関係を密かに調べていた。その目的は、仲間内で賭けた二人の関係が何処までいくかという物であった。『隠』では、そういった男女の仲を賭けの対象にする事がはやっており、常にネタを欲していた。
そして、今彼の手にあるのは……役所に勤めている親戚から入手した胡蝶しのぶの戸籍謄本だ。当然、真っ当な方法で入手していないため、犯罪である。バレれば、即逮捕レベルだ。
「――や、やべーーよ。こんなの、他の連中に教えられねーよ」
後藤は、二人の関係が親子であるという大穴に賭けていた。京都に向かう列車の中で、「パパ」「娘」という言葉を聞いていたから、既に勝利を確信していた。だが、蓋を開けてみれば、もっと恐ろしい事態だった。
胡蝶しのぶ
だが、問題は胡蝶しのぶの年齢と続柄、胡蝶カナヲの続柄だ。常識的に考えれば、実子を継子として育てていると捉えらえられる。むしろ、そうとしか考えられない。
「でも、それならそれで納得だな。裏金様がお二人に優しいのは、つまりそういう事か。胡蝶様は、裏金様と出かけたら、朝帰り。しかし、そうなると、胡蝶様って異常に若作りだ。10代にしか見えないからな」
………
……
…
『隠』の飲み会にて、後藤は酔い潰れていた。後藤以外にも、『隠』が誇る独身部隊……佐藤、田中、鈴木といった、よくある名前のオンパレードが揃っていた。そして、各々が日頃の不満をぶちまける。
「鬼滅隊って本当に、女が居ない!! 甘露寺様に近づこうものなら、伊黒様に殺されるかの如く睨まれる」
「分かる分かる。だが、胡蝶様も悪くない。寧ろ、あんな美人に診察して貰えるなら金を払ってもいい。そう思うだろう?後藤!!」
「馬鹿か!! 俺は、
後藤は、酔いが覚めていった。今自分が何を発言したのか思い出した。
すぐさま、その場を立ち去ろうとしたが、独身部隊の連中は強かった。剣士としての才能はなかったが、呼吸法だけはキッチリ身につけている変態達である。
「おぃおぃ、後藤。独身部隊の仲じゃねーか。もう少し、詳しく話していこうぜ。女将さん!! 度数の強いお酒をあるだけ持ってきて」
「そうだぞ、後藤。まだ、夜は始まったばかりだ。胡蝶様を人妻と断定したと言うことは、貴様、この間の賭けについて何か新しい情報を手に入れているよな」
「水くさいぞ後藤!! それに、栗花落様という選択肢をあえて触れずに、例の鬼の子をいうあたり、まだ隠し事があるだろう」
鬼滅隊の剣士と並んでも遜色ない体格を誇る佐藤、田中、鈴木。そんな男に左右をがっちり押さえられる。
「や、やめろーーー!! お前等、本当にヤバいんだって!! 」
だが、その叫びで助けは誰も来なかった。
………
……
…
翌日――胡蝶しのぶに、若さを保つ秘訣を聞きに来る女性隊士が続々と現れる。そして、この手の話は、大体犯人が決まっており、無実の罪が裏金銀治郎を襲う。
「銀治郎さん、最近、年の割に若く見える胡蝶様!! どうか、その若さを保つ秘訣を教えてくださいって聞きに来る人が増えているんですが、心当たりありますよね?」
「しのぶさんって、実年齢18歳でしたよね? 一体、女性はどんだけ若さを求めているんですか」
年の割に若くじゃなくて、リアルに若い彼女にそんな事を聞きに来る隊士は、何なのだと本気で思う裏金銀治郎。
「えぇ……なんでも、私の年齢が30歳って話が出回っているそうなんですよ。身に覚えありますよね?」
「つまり、どこかで情報が漏れていると」
「そうじゃありません!! 漏れているとかそう言う次元じゃありません!! 私の年齢が改竄されていることが問題なんです。どう責任取ってくれるんですか!?」
「しのぶさんが相手なら、いつでも責任を取る準備は整っていますよ」
割と本気で言っている裏金銀治郎だが、いつも胡蝶しのぶに、この男はぁぁぁぁと腹部を殴られる。
後藤ネタは、投函!!
アンケートは廃止して、前の話の後書きに書いたネタは全部やります。
PS:
土日のどちらかは、作者お休みするねん><
流石に、ここまで連続投稿したのは初めてで、だいぶ来てますorz
読者の皆様にはご迷惑をおかけしております。