自分でも、柱会議あたりで倒れると思っておりましたが
無事に吉原まで来られて良かったです。
竈門炭治郎の成長ぶりは、素晴らしいの一言だ。血鬼術を使う鬼、下弦との戦い、それらが全て彼の中で成長の糧となっていた。段階を踏むように用意された鬼のおかげだ。コレも全て鬼柱の配慮であったに違いないと裏金銀治郎は感謝の念すら感じていた。
「炭治郎君の成長は、目を見張る物があります。ですが、妹の方もおかしいですよね? 人を食べていない鬼が上弦の片割れを圧倒しています」
「理由はよく分かりません。竈門禰豆子は、
鬼柱――それは、ここ最近、鬼滅隊でも噂されている誰も知らない柱の存在。鬼が「貴様等が鬼に勝つなんぞ、『無理』なんだよ」というお決まりの台詞を言った瞬間、鬼が自滅する事象が報告されている。隊士にも鬼も察せられず、鬼を殺せるなど柱しかいないという事で鬼柱という存在が、隊士の中で信仰を集めていた。
窮地を助けてくれ、何も言わずに去って行く……そんな仏のような男にお礼を言いたいと、何処の誰なのかと裏金銀治郎の所にも問い合わせがあるほどだ。
裏金銀治郎もその噂を聞き、誰の事かは何となく察していた。
「相変わらず色々な事をご存じなんですね。はい、これは禰豆子さんの足です」
「ありがとうございます。私の足では、彼等にバレずに回収するのは困難でしたから助かります。それに、宇髄天元さんもご到着のようですので、身を隠すついでに市民の手当でもしておきましょう」
死人に口なしという言葉があるように、死者は何も語らない。
鬼に出会い生き残った一般人ほど、面倒な存在は居なかった。『隠』の者達もそれをよく理解していた。説明や口止めが非常に大変になる。だから、できる事なら死んでいて欲しいと言うのが組織の管理職としての言葉だ。
勿論、現場隊士からしても大半は死んでいて欲しいと考えていた。鬼退治の邪魔になるし、下手をすればもっと早く助けに来て欲しかったなど色々言われるのだ。
「あら、お優しいのですね。てっきり、女性にだけ優しいと思っていましたが」
「それは誤解です。私は、しのぶさん以外の人には優しくないつもりですよ。一部の知り合いを除けば、平等に扱っているだけです」
裏金銀治郎は、上弦の攻撃で手首を失った男の事など、気にしていない。ただ、この場に居たことがバレた時に、市民の手当てをしていたと言うていの良い言い訳が欲しかった。
関係ない一般人の生死など、無関心である。
音柱のように市民を守って、鬼退治をするという者達が多いのは事実だ。だが、それで負傷や怪我を負ってしまい、怪我人も隊士も共倒れになる。これが、隊士が死ぬ理由の上位にランクインしている。
「そう言うことにしておきますね銀治郎さん。ですが、手首が切断されている彼をどうするんですか?」
「少し、勿体ないですがコレを使いましょう。切れた腕は、まだあるので少量でも繋げられる」
裏金銀治郎は、懐から柱専用の緊急活性薬を取り出した。それを用いれば、理論的に一般人であっても手足の再生も可能だ。それさえ、使えば怪我人が幾ら「鬼が現れて手首を切られたんだ」と言っても、手首が繋がっているのだから誰も取り合わない。
この場に、胡蝶しのぶが居なければ、旋風で切断されたという強引なストーリーで世間を丸め込んだのは間違いなかった。ただの、治療に当たり患者への心配など一切していない裏金銀治郎である。
………
……
…
竈門炭治郎は、妓夫太郎と対峙して己の実力不足を理解した。飛躍的に実力が向上している彼であったが、足を引っ張る結果になっている。だが、それでも食らいつき宇髄天元と共闘するあたりは、流石は主人公だ。
「宇髄さん!! 他の柱の人は、まだなんですか!!」
「応援がくるまでは、まだ時間が掛かるだろう。その前に、派手に終わらせるぞ」
竈門炭治郎と宇髄天元の認識には、違いがあった。
竈門炭治郎は、犬にも勝る嗅覚で近くに裏金銀治郎と胡蝶しのぶが居る事を理解していた。戦いの最中であっても、ハッキリとかぎ分けていた。なぜ、この場にいるのか分からない。どうして、今も戦いに参加しないのかも分からない。そんな思いが、彼の中で渦巻いていた。
しかし、二人の匂いは、絶望感が全くない。ただ、日常と変わらないそんな匂い。捉え方を変えれば実に頼もしいの一言だ。
きっと、助けに来てくれると信じ、竈門炭治郎は目の前の戦いに集中した。
◆◆◆
戦いが佳境に入り、遂に動く裏金銀治郎。
「善逸君。呼吸を保ちなさい。君が死ねば、愛しの妻達は、汚い大人の餌食です。それに、まだ
「――あぁ、
瓦礫に埋もれる我妻善逸。
悲しい事にローションが入った容器が割られ、足が滑って原作通りになってしまった。本来なら、強化された我妻善逸は、竈門炭治郎を攻撃から守った上でも逃げ切れた。
「神は、寛容です。君にもう一度チャンスを与えます。この流星刀で、鬼の頸を落としなさい。その為に、更なる力を与えよう」
神と呼ばれたので、ノリノリで便乗する裏金銀治郎。懐から緊急活性薬を取り出し、投与を始めた。
音柱と嘴平伊之助が毒で倒れ、竈門炭治郎が妓夫太郎からネチネチと嫌みを言われている。そんな最中に、裏金銀治郎は顔を隠して戦場に現れたのだ。
本来、裏金銀治郎が自ら頸を落とそうかと考えていたが、確実性を取るために我妻善逸を採用した。鬼側からしたら、日輪刀も流星刀も同じである。刀の微々たる違いなど分かる者の方が少ない。
鬼側で分かる事と言えば、誰に殺されたかという程度だ。だからこそ、我妻善逸を矢面に立てる。今までイイ思いをしたのだから、この程度引き受けなければ罰があたる。
裏金銀治郎から流星刀を託された我妻善逸は、己の肉体回復に専念する。その凄まじい回復速度に、やはり神であったと信仰心は更に拡大していった。そして、3人目の嫁が楽しみであり、彼のもう一つの剣が雄々しく天をさしている。
「おぃおぃ、変なのが一匹紛れ込んできてやがる。ほれ、良かったなお前の仲間が助けに来たぞ。だが、俺達を倒そうなんぞ『無………不可能だぜ」
「ちょっと、お兄ちゃん!! そんな死に方イヤだからね」
上弦の鬼達は、思わず冷や汗を掻いていた。
一歩間違えば死んでいたのだ。それも、上司が設定したキーワードの『無理』という単語のおかげで。だが、ぎりぎりの所で助かる。キーワードを知らない有象無象の鬼達とは違うのだ。上司に選ばれた存在は、後から追加されたキーワードを把握している。
「えぇーーと……」
「竈門炭治郎君。私の事は妓夫太郎と呼んでくれ。そして、妹の方は梅だ」
大人である竈門炭治郎は、鬼の居る場で裏金銀治郎の本名を呼ばない。実に賢い男になりつつあった。そして、妹というのが誰を示しているかも大体察しが付いていた。
その偽名は、上弦の鬼達の本名だ。現代で知る者など、ほぼ居ない。知りうるとしたら、鬼しかあり得ない。
「でめぇ、何者だ。ただの隊士かと思ったら、そうじゃねーだろう。その名前を知っているって事は、アイツの関係者か?」
「アイツとは、貴方達兄妹を鬼にした当時上弦の陸だった、教祖の事ですか?」
裏金銀治郎は、時間稼ぎをしているに過ぎない。自らに注目を集めている間に、我妻善逸の準備が整うのを待っていた。その時こそ、全てが終わるのだ。
だが、その時間稼ぎに用いられる話題が酷いのは、裏金銀治郎の性格故にだ。
「なるほど、分かったぜ。ここ数年、鬼の数が激減した。下弦の鬼も死んだ。上弦の参もだ……次は、俺等ってわけか。野心と向上心がある奴だと思っていたが、まさか鬼滅隊と繋がっていたとはな!!」
「ちょっと、お兄ちゃん冗談でしょ。だって、この間の招集で――あり得なくも無いわね」
上弦の鬼に求められる必須技能。それは、上司に心が読まれないように思考と心の分離だ。これを、上弦の参は、
「――バレては仕方がありません。君達は、用済みです」
この会話を聞いていた我妻善逸は、『流石は、神だ』と感心していた。口上だけで、上弦の鬼を相手に、時間を稼いだのだ。竈門炭治郎は、匂いから『相手が勘違いした事に全力で乗る気だ』と分かってしまった。
「おもしれーな、俺達兄妹がお前なんかに負けると思っているのか」
まるで、どちらが悪役なのか分からない。
だが、上半身裸の変態に、露出狂の遊女という二人組。刀、銃、ローションとコンドームを持った男。そこだけでみれば、どちらも世間的には悪だ。
その様子に、胡蝶しのぶですら『あれ? 銀治郎さんが鬼側でしたっけ?』と苦笑していた。
「梅さん、私は紳士でありたいと何時も言っておりますよね。後で、楽しみにしていてください」
胡蝶しのぶは、無自覚に誘い受けをしている。全くもって、悪女だ。
上弦の鬼は、この時初めて梅と呼ばれていた第三者の存在を把握した。だが、遅かった。
胡蝶しのぶの最高速度は、既にどの柱よりも速い。上弦の弐を殺す為、裏金銀治郎同様に鬼を食べた。下弦の肆、上弦の参、上弦の伍、竈門禰豆子……を取り込む事で、その小さな体で冨岡義勇に匹敵する腕力を有している。
彼女は、一呼吸で鬼の背後から消えたかのように距離を詰める。そして、抜刀した流星刀が鬼の頸に触れる。宇宙で太陽光を億年単位で浴びた物から作られた刀である。地上の山の中から採取された鉱石とは、桁が違う。
頸の切断と言うより、崩壊であった。ポテトチップスをナイフで切るかの如く、一瞬でボロボロになる。これほどの威力ならば、元々の力でも鬼の頸を飛ばすことは可能であっただろう。
スパっと堅いはずの鬼の頸が一瞬で飛ぶ。
「弱いですね~、これが上弦の伍ですか。拍子抜けも良いところです。やはり、然るべき準備と手順を踏めば、上弦の鬼は恐れるに足りません」
「頸が切られたのか……堕姫!! にげろぉぉぉ」
状況を把握した妓夫太郎が妹を遠ざけようとした。双方の頸が同時に切られていない限り死なない鬼だ。片方が生きていれば、逆転の目はある。
ドンと音が響く。
我妻善逸が瓦礫を吹き飛ばす。あれだけの瓦礫を足の力で吹き飛ばすとは、既に人間を辞めているなと裏金銀治郎は思った。
「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 神速」
嫁達の為、これから増える嫁の為……覚醒した我妻善逸。流星刀を持つ彼の攻撃を頸に受けて生きられる鬼など存在しない。堕姫の頸も地面に落ちた。
「す、凄い。上弦の鬼があっさりと」
竈門炭治郎は、目の前の鬼達が普通の鬼だったのかと錯覚する。途中から来たとは言え、無傷で上弦の鬼二人を倒しきる。多少、卑怯では無いかという点はあったにせよ。同じ事は彼にはできない。
「よっしゃーー!! 譜面は……あれ、鬼は?嘘だろう!! なんで、死んでんだよ!! 俺様がこれから派手に活躍する予定が台無しじゃねーーか」
片手を失い、毒が回りつつも立ち上がった宇髄天元。その悲惨な状況に彼の嫁達も顔を覆っていた。もう、辞めたげて宇髄天元のHPは0よと。
「梅さん、その肉体が自爆するので札の使用を。そして、離れてくださいね。全く、頸が離れても体が動かせるとかどういう原理をしているんでしょうね」
「もちろん」
何十枚と用意された血文字の札が周辺に大量に張られた。自爆と同時にかなりの数の血文字が消し飛ばされたが、被害は最小限に収まる。
………
……
…
宇髄天元が横になり、寄り添う嫁達。
「いやあああ、死なないでぇ!! 天元様~」
「鬼の毒なんてどうすればいいんですか。解毒薬が効かないのよ」
泣き叫ぶ嫁達。
そして、期待の眼差しが裏金銀治郎と胡蝶しのぶへ向けられていた。本来、この場に居るはずの無い二人。終盤に現れて、鬼を片手間で倒す手際の良さを見せた。忍者視点からみても、得体の知れなさは鬼滅隊でぶっちぎりのトップである。
「腕は繋がりましたが、毒までは無理でしたか。やはり、緊急活性薬Gの製造を急がなければいけません。――まぁ、貴方達なら口が堅いでしょうから、いいでしょう。ここで見たことは、秘密ですよ」
裏金銀治郎は、宇髄天元にペタペタと血文字の札を張った。その瞬間、血鬼術が無力化され解毒される。瞬く間に、血の気が回復した。
「こりゃ一体どういうことだ?毒が消えた」
「鬼由来の技術ですよ。どうですか?体の調子は?」
ここで恩を売っておけば、後々便利になると考えた裏金銀治郎。音柱達も裏金銀治郎が血鬼術を使ったと理解していた。だが、それを深く追及はしない。彼等の中では、遂にそこまで相手の技術を物にしたのかという感心の一言であった。
だが、鬼滅隊の事情も分かっているので、大きくは宣伝できない技術である。そもそも、恩がある裏金銀治郎を売るような忍はいない。
「あぁ、問題ねー。寧ろ、前よりイイくらいだ」
「それは何よりです。後、私としのぶさんは非番でしたので二人で温泉旅行中です。この後、蛇柱や『隠』の人達が来た際はよしなに」
「そういう事にして置いてください。鬼達は、貴方達が死闘の末に倒した」
裏金銀治郎と胡蝶しのぶから、二人が関わったことは黙っておけと圧力がかかる。音柱達は、目的は分からないが、素直に従う。長いものには巻かれろである。
「最後に教えてくれ、さっきの術でお館様は治らねーのか」
「既に試しましたが駄目でした。お館様のアレは呪いでなく病気です。恐らく、先天性の遺伝子欠陥でしょう」
「――!! ちょっと、そんな話初めて聞きましたよ。銀治郎さんは、どうしていつもいつも~」
吉原から去る二人は、まるで仲の良い夫婦のようであった。
宇髄天元は、今回のお礼も兼ねて、くノ一仕込みの房中術を胡蝶しのぶに教えるようにと嫁達に指示を出していた。
(鬼)柱会議を挟んで、刀鍛冶の里へ^-^
刀鍛冶の人は、時間があればローションとコンドームの生産工場で働いております。
働かざる者食うべからず!!
手に職を持つ男って大事よね。