鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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何時もありがとうございます。

アンケートを計画しておりましたが、全部というご要望も多く頂けましたので
鬼柱編を投稿します!!

※作者の独断と偏見を多く、混ざっているのでご容赦を。


28:柱面談

 無限城……そこに呼びだされた生き残った上弦達。

 

 上弦の壱、黒死牟。上弦の弐、童磨。上弦の参、半天狗。上弦の肆、玉壺。

 

 彼等の中では、これから始まる事に対して頭痛と目眩、吐き気、胃痛を感じでいた。鬼になってから、ここまでの体調不良は皆、初めてであった。そんな、苦しみを共有するはずの上弦の伍が、リタイアしており……今日の会議は荒れると皆が確信していた。

 

 つまり、これからまたネチネチと嫌みが言われる面談が始まるのだ。鬼滅隊を倒すため、青い彼岸花を探すため、働く最中、唐突な呼び出しをされては仕事にならない。

 

 上弦の鬼は、この無限城という希有な血鬼術を持つ鳴女を不慮の事故で殺してしまおうかと考えている者もいた。強制招集を可能とするこの能力は、危険だ。早く何とかしないと身の危険があると。

 

 ベベン

 

 琵琶の音と共に現れる鬼舞辻無惨。

 

 この時、上弦の誰もが願った……『どうか、普通の姿でありますように!! どうか、普通の姿でありますように』と。大事な事だから二度言いました。

 

 前回の招集では、いきなり女装に目覚めた上司を見せつけられたのだ。誰も笑わずに、その場を乗り切っただけで評価に値した。

 

 だが、現実は何時も非情だ。現れたのは、またまた女装した上司であった。今度は和服では無く洋服――しかも白のワンピースである。そんな姿を見せられて、どんな反応をすればよいか理解に苦しむ上弦の鬼達。

 

 とりあえず、土下座!! 長年の経験で得た最適解を実行した。

 

 鬼舞辻無惨の行動は、働く社員の為に行われていた。労働意欲を削ぐためではなく、労働意欲向上を考えた施策である。彼は、企業運用に関するハウツー本を読み実践していた。企業運用において、社員の労働意欲向上は非常に大事だ。"やりがい"、"給与"、"福利厚生"など社員が喜ぶ事を実践しましょうと書かれている物だ。

 

 そこで鬼舞辻無惨は、考えた。不老不死という金銭では買えない報酬を既に渡している。鬼滅隊を滅ぼす事と青い彼岸花を探す事と言うやりがいのある仕事も与えている。ならば、後は何を与えるべきなのだと……その本に、職場環境に女性を用意しましょうと書かれていた。

 

 確かに、職場に花があった方が労働意欲がわく。つまり、自分が花になれば、上弦達は喜んで働くだろうという間違った結果に行き着いたのだ。趣味と実益が両立する素晴らしいアイディアを実行しているのだ。

 

「どうした皆の者、前回と比べて頭を垂れるタイミングが遅かったぞ」

 

 巫山戯るな!! そんな上司の見たくも無い女装ワンピースを見せられれば、誰だって目を疑う。この場に鬼滅隊の柱がいたら全員の頸を切っても余る時間があっただろう。

 

「も、申し訳ありません無惨様」

 

 黒死牟が代表として謝った。彼等の中で、順列を考えろと何時も言っている男だ。今こそ、それを態度で示したのだ。そして、上弦の誰もが、絶対に上がりたくないと思った瞬間であった。

 

「殊勝な心がけだな。今日は呼んだ理由は、いくつかある。まず、前回の宿題事項の確認だ。まさか、これだけの期間があって何一つ成果がないとは言うまい。そうだろう、童磨」

 

 前回呼ばれてまだ、数ヶ月しか経っていない。その前は、百数十年ぶりだったのに、前回と比較すれば期間が短すぎる。鬼の時間感覚で言えば、この間呼ばれたのは昨日の事のように感じでいた。

 

 だが、そんな言い訳ができる雰囲気でも無かった。前回より、明らかに不機嫌オーラが高い。

 

「申し訳ありません。準備に手間取っており、まだご報告できる程の進展は――」

 

「ほぉ、一体どんな準備をしている。それで、いつ終わる。今すぐに、その計画の詳細を説明してみろ」

 

 実は、何もしていない童磨。だが、そうでも言わないと殺されかねない。命を繋ぐための嘘であった。だが、伊達に口だけで教祖をやっているわけではない。その場を濁すことにかけては、上弦の壱すら上回る。

 

「青い彼岸花についての情報収集でございます。国内だけに留まらず海外に視野を広げる計画をしております。国外遠征の為、信者を使います。現在、渡航手続きを行っているところです」

 

「で、その計画の進捗状況を言ってみろ。あれから数ヶ月あったのだ、何も進んでないなど愚かな上弦ではあるまいな」

 

 架空の計画に進捗などあるはずも無い。つまりは、進捗は0%である。下手に進捗があるように伝えたら今後鬼フォローがある。引いても地獄、進んでも地獄。

 

「まだ、全体からみれば進捗は……0%でございます。申し訳ありません、無惨様」

 

「貴様等は、謝ることしかできないのか。既に、理解していると思うが堕姫と妓夫太郎が死んだ。猗窩座が死んでから、立て続けで上弦が討伐されている。何故だと思う?玉壺」

 

「よ、弱かったからでございます」

 

 玉壺は、心の中で願った。どうか、上司と同じ答えでありますようにと。

 

「それもあるだろう。上弦ともあろう者が、また柱一人にやられた。貴様等は、鬼なのだ!! 人間なら致命傷であっても瞬く間に回復する鬼が!! なぜ、敗北する!! 血鬼術もあるんだろう、一体なぜだぁぁぁ」

 

「「「「……」」」」

 

 上弦の弱さに、怒りを覚える。決して、上弦が弱いという事は無い。

 

 その場に居る上弦の肉体にヒビが入っていく。言葉だけで無く、物理的な拷問まで行う鬼舞辻無惨。部下である上弦のやる気はドンドン下がっていく。他人の失敗まで責められる始末。部下の失敗は、上司の責任という概念がない。

 

「本来なら、貴様等をこの場で解体したい程だが……私とて、鬼ではない」

 

「「「「(いや、お前、鬼だからね)」」」」

 

 だれか、突っ込めーー!! と、上弦達の連携度が上がった。仲間意識が強くなるとはこういうことだ。

 

「ここ最近、鬼達が次々と死んでいる。その速度も尋常では無い。鬼滅隊の10番目の柱と言われる存在が絡んでいるとわかった。そいつの頸を献上しろ。さすれば、更に血をやろう」

 

「10番目の柱とか恐ろしや~」

 

 その噂は、実はこの場に居る上弦達は皆知っていた。鬼滅隊を滅ぼせとの命令通り、適度に仕事をする中、『鬼柱様が来れば、お前等なんて!!』という死に際の言葉を耳にしていたからだ。

 

 その言葉を聞いて、パワハラ上司の姿が浮かんだのは言うまでもない。だが、それを誰も報告に挙げていない。『無理』というキーワードは、上司の失策ですとか進言したら、間違いなく殺される。

 

 だからこそ、「半天狗――無茶しやがって」と、皆が思った。同時に、その行動は上弦の鬼達からは、賞賛されていた。10番目の幻の柱が、今目の前に居るのにそんな危険な発言を平然と行う半天狗。彼を卑怯者などという鬼は、誰も居ない。仮に居たとしたならば、それは全ての上弦を敵に回す事になるだろう。

 

「他の者はどうした? 貴様等に許された返事は『はい』か『Yes』だったと記憶しているが、まさか、私の記憶違いだったというつもりか?」

 

「「「「はい!!」」」」

 

「貴様等は、返事だけは一人前だ。上弦に無能は不要だという事を覚えておけ」

 

 だれか、鏡を!!

 

 黒死牟が童磨に視線を送った。お前の血鬼術なら鏡同然の氷を出せる。今がその時だと。

 

「喜べ、お前達にはもう一つ聞きたい事がある。堕姫が殺される所を覗いていた。その時に、隊士の一人が『梅』と言う名を呼んでいた(・・・・・)。コレに、聞き覚えがある者は?」

 

 呼んでいた――上弦達は、その言葉に驚愕した。視界を盗む事までは分かっていた。だが、同時に聴力も盗めるのかと。もし、それが事実ならば今後は発言にすら気をつけないといけないと、更に気分が悪くなっていた。

 

 だが、事実は違う。読唇術という、どうでも良い技能があるのだ。1000年の間に、他に学ぶべき事はなかったのかと疑問だ。

 

「ご、ございます。確か、堕姫の本名だったかと記憶しております」

 

 童磨は、イヤな予感がヒシヒシしていた。鬼舞辻無惨だけでなく、上弦の鬼達も童磨を見た。これは非常にマズイ状況だと彼自身も理解した。

 

「確か、猗窩座も何かとお前には手を出していたな。鬱陶しく思っていたのでは無いか?」

 

「いいえ!! そんな事はございません。猗窩座殿とは、ただのじゃれ合いで…」

 

「貴様は、私が言うことを否定するのか!! いいか、私の言ったことが正しい。私が、空が赤と言えば赤だ。いいか、返事は『はい』か『Yes』のみで答えろ」

 

 この上司は、文字通り鬼であった。

 

 肯定すれば罪が増える。否定しても、肯定しろと強要される。この場から逃げ切る方法があるなら大金を積んでもいいとすら思う童磨であった。

 

「は、はい。些か鬱陶しいと思っておりました」

 

 鬼になってから、順調に強くなり多大な貢献もした童磨。だというのに、この扱いだ。誰かにはめられているかのような状況。疑心暗鬼になりつつあった。

 

「鬼側の内情を知らない限り、知り得ない事を鬼滅隊が知っている。おかしいとは、思わないか?半天狗」

 

「そ、その通りでございます無惨様」

 

 無惨の腕が変貌し、気色悪い肉塊をあらわにした。

 

「童磨――私は、貴様の事を高く評価していた。あの二人を鬼に推薦したのは、お前だったな。あれの本名を知っているのは、お前の他に居ない。私を裏切るような鬼は不要だ」

 

「無惨様、違います!! 私は裏切りなんて」

 

 童磨は、肉塊に囚われながらも必死に無実を訴える。

 

 ここで血鬼術を使い抵抗する事も彼にはできた。本気で抵抗すれば、言い逃れは不可能になる。つまり、無抵抗こそ最良の選択だ。

 

「いいや、違わない。貴様は私が間違っていると言うつもりか? 驕るな」

 

 理不尽。圧倒的理不尽であった。

 

 本来であれば、上弦の鬼達は童磨を見捨てた。だが、上弦の鬼の残数。そして、呼び出される頻度……少しでも被害を減らすため、童磨という存在は必要であった。それに、彼が居なくなったら、お金と餌が賄えなくなる。

 

 つまり!! 童磨が行っていた仕事が他の上弦に振り分けされる。そして、それができなければ責められるという悪循環が始まるのだ。まさに、ブラック企業。

 

「割り込み失礼致します無惨様!! 童磨に疑いを晴らすチャンスをお願い致します」

 

「わ、私からもお願い致します」

 

「私からも」

 

 黒死牟、半天狗、玉壺が深く頭を下げて願い出た。

 

 この時、上弦の中で仲間意識が芽生えたのだ。誰かが、あの理不尽にあったときは、お互い協力していこうという体制ができあがりつつあった。

 

「黒死牟……みんな、俺のことを」

 

「ほほぅ、良い同僚を持ったな童磨。いいや、私が選んだ上弦だったか、私も鼻が高いぞ」

 

 色々と突っ込みたい衝動を我慢する鬼達。なぜ、これほどまでの理不尽を身に浴びなければならないのだと心底思っていた。だが、それは人間が鬼に襲われた時と同じだ。たまには、その身に受けてみるべきである。

 

「チャンスか……いいだろう。この本にも書いてあった部下を許す器量を持てと。だが、貴様に与えた血の一部は没収とする。安心しろ、少し階級が下がるだけだ」

 

 鬼舞辻無惨は、慈悲の心をもって童磨から血を奪い返した。鬼の力は、鬼舞辻無惨の血の量が大きく関わっている。つまり、それが奪われるという事態は、弱体化に繋がるのだ。

 

 弱体化で命が助かるのなら安い物であった。何百年かかけて力を取り戻せば良いのだ。

 

「ぐっああぁっぁぁぁ……」

 

 童磨の目の刻印が上弦の肆まで下がる。

 

「では、引き続き仕事に戻れ。10番目の柱の頸も忘れるなよ。寛容な私にも限度という物がある」

 

 満足げに立ち去る鬼舞辻無惨。その後には、さりげなく本が置かれていた。『上司が求める理想の部下』、『理想の上司』と書かれた2冊の本。共に、著者が"裏金銀治郎"である。

 

 そして、議論される。この著者に会って、教えを請うべきかという指示なのか。それとも、著者を殺してこいと指示なのか。そして大討論の結果、前者であると結論がでた。




次は、我妻善逸の嫁とか、我妻善逸ブッコロし隊とか、裏金銀治郎とお館様の出会いとかそのあたりかしら^-^


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