鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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いつもありがとうございます!!

最強の鬼柱様が大好きな人が多くて嬉しい限りでした。

感想と誤字指摘、ありがとうございます!!


29:モゲロ!!

 新たに討伐された上弦の伍。吉原で多少の被害は出たが、上弦との戦いを考慮すれば最小限であったと言える。その報に誰もが喜んだ。産屋敷耀哉も、2体目の上弦撃破を聞き、歓喜した。

 

 自分の代で、全てのケリがつく可能性が出てきたのだ。流れは、確実に鬼滅隊にある。

 

 そんな中、特段喜びもせず普通に業務をこなす者もいる。裏金銀治郎と胡蝶しのぶだ。

 この二人にしてみれば、上弦など倒せて当たり前というレベルに達していた。

 

 その二人は、裏金銀治郎の私邸に居た。

 

「しのぶさん、人を鬼にする薬の開発はどうなっていますか?」

 

「逆です!! 鬼を人間に戻す薬の開発です。完成度は、非常に高い。9割人間に戻せると言ったところです。ただ、効果が出るまでに時間が掛かるのが欠点ですかね」

 

「残りの1割は、やはり太陽を克服した竈門禰豆子の血液が必要ですか。それまでの間は、様々なタイプを用意してください。鬼舞辻無惨でも解毒困難にする為、即効性、遅効性など、あらゆるタイプ。理想は、人間に戻っている事に気がつけないのがよい」

 

「人使いが荒いですね。できる限り用意します。じゃあ、もうすぐ日が昇るので、お風呂を借りてから帰ります。カナヲ達に朝ご飯を作らないといけないので」

 

 寝室――そこには、胡蝶しのぶが生まれたままの姿で横になっている。その肌は、ツヤツヤしており、完全に事後であった。その反面、裏金銀治郎は敗北の味を味わっていた。

 

 喰う立場から喰われる立場になってしまったのだ。

 

 ケダモノは、より強いケダモノに倒される。自然の摂理だ。それもそのはず、裏金銀治郎と胡蝶しのぶでは、ポテンシャルが違うのだ。歴代最強の柱に数えられる女が、鬼を食べて、くノ一仕込みの房中術まで覚えたら勝てるはずもない。彼女のスタミナと技術の前に勝てる者は居ない。

 

「しのぶさん、今は幸せですか?」

 

「どうしたんですか急に。そうですね~教えてあ・げ・ま・せ・ん」

 

 可愛らしく人差し指を口にあてる仕草。誘い受けをされては、乗るのが男である。リベンジマッチが開始された。

 

 その日、蝶屋敷での朝食は栗花落カナヲが用意した。養子の育児を放棄する胡蝶しのぶは、世間的には酷い女であろう。

 

 モゲロ!!

 

………

……

 

 上弦の伍を倒して、一ヶ月。

 

 裏金銀治郎は、寄せられる嘆願書に目を通していた。鬼の絶対数が減った事で出世の機会を失った者達から、どうにかならないかという相談だ。人事評価も行っているから、規約改定も裏金銀治郎にはできた。それだけの権限を有している。

 

 だが、今から出世の基準を見直した場合、頑張って鬼を殺していた者達はどのように思うだろうか。ハッキリ言って、巫山戯るなと言うだろう。

 

「鬼舞辻無惨に、隊士が鬼を狩るので増産してくれと依頼するなど不可能だ。本末転倒だな。お館様に回す案件でもない却下だ」

 

 裏金銀治郎は、鬼舞辻無惨を殺すまでは隊士達を手放す事は考えていない。

 

 一人でも多い肉壁は必要になる。その為、希望退職者を募るような事はしない。鬼を退治していない者に払う給料も必要経費だと割り切っていた。

 

 却下するだけでは相手に不満が溜まる。出世は無理だが、副業を許す事にする。アンブレラ・コーポレーションが誇るローションとコ○ドームの生産工場での期間工兼護衛だ。本来の給料以外に纏まった額の金が手に入るように手配する。

 

 温泉街という事もあり、鬼退治に疲れた体をローションと温泉が癒やしてくれる。話の分かる上司である裏金銀治郎が、大々的に希望者を募る。少ない枠を巡り、壮絶なバトルが繰り広げられる事になるとは、この時知る由もなかった。

 

 

◆◆◆

 

 茨城重工……親族経営の零細企業である。母親が悪い宗教にハマり、会社の金まで献金してしまった。茨城夫妻は、美しい二人の娘――姉の香取、妹の鹿島がいた。金がなくなり、遂に娘まで献上しようとしたところ離婚が成立した。二人は、父親に引き取られた。

 

 その零細企業に、大口の仕事を持ち込んだのがアンブレラ・コーポレーションである。零細企業は持ち直した。そして、来年度の更なる受注を視野に入れ、銀行からお金を借りてまで設備投資を行った。

 

 来期の注文は、未だに無い。

 

 このままでは、返済が焦げ付いて会社は倒産。家族は散り散りになる。働く従業員の運命も……。献身的な妹の鹿島は、アンブレラ・コーポレーションのトップである裏金銀治郎との直接面談にこぎ着けた。

 

「鹿島嬢、手短に頼む。私は、忙しいのでね」

 

 裏金銀治郎は、本当に忙しかった。鬼滅隊で毎日起こる問題解決で血反吐が吐くほどだ。広範囲殲滅が得意の風柱が、建築物ごと鬼を斬る事がおおく、その修繕費の捻出に頭を痛めていた。

 

 まれに、新築の家を倒壊させる事もあった。その為、その家に住む家族には、家を建て直すまでのホテル滞在費や家具一式の新調費用など、柱の年収を超える額が消える。いい加減、罰金制度で減給してやろうかとも考えていた。

 

「貴重なお時間をありがとうございます、裏金様。来期の茨城重工への発注の件ですが――今年と同じ水準でなにとぞお願いできないでしょうか」

 

「鹿島嬢、企業とは慈善事業ではありません。まぁ、今年度は貴方達家族の状況に同情したから、多少割高でも発注をかけました。それで、凌げたはずでは?」

 

 裏金銀治郎は、全てを分かった上で発注を掛けていない。我妻善逸の3人目を確保するためにも、あの手この手を使っていたのだ。彼は、誠実に約束を守る男である。

 

「そ、それが……その~」

 

「来期の発注を見越して、銀行からお金を借り設備投資でしたっけ?」

 

 鹿島嬢は、何故ソレをと裏金銀治郎を見た。

 

 裏金銀治郎が知っているのは、当然だ。銀行の融資審査が通りやすくなるよう、手を打っていた。有能な鹿島嬢には分かってしまった。全て、仕組まれていたと。しかし、何一つ法に触れることはしていない。

 

「姉は、許してください。私で良ければ、ご自由にして構いませんので……」

 

「私が悪人に見える言い方は、辞めて貰えませんか。今の発言は、私が脅して君に体を要求しているように見えるでしょう。事実は、君が色仕掛けで仕事を受注しようとしている。悲劇のヒロインのまねごとは辞めたまえ」

 

 納得がいかない鹿島嬢。

 

 状況証拠でしか無いが、全て自分を手に入れる為に画策していたと考えていた。彼女は自分の容姿に自信があった。それなのに、全く靡かない裏金銀治郎に些か疑問を感じていた。そう…実は、女ではなく男の方が好きなのではと。

 

 そう疑われても仕方が無い。

 

 誰もが振り向く美少女が体を好きにして良いといって、お前何勘違いしているんだと言われれば誰だってその反応だ。

 

「では、どうすれば仕事を発注していただけますか」

 

「それでいい。ビジネスとはお互いが対等でなければならない。我妻善逸という男と結婚してくれれば、君達が夫婦の間は茨城重工に例年通りの発注を行おう」

 

「――誰ですか、それ?」

 

 裏金従兄弟とか裏金弟とか、一族なら理解できただろう。だが、全くの赤の他人と結婚しろとか、理解に苦しむのは当然だ。だからこそ、余計に不安が募っていた。裏金銀治郎と同じ血筋ならある程度容姿は保証されたようなものだ。

 

 だが、我妻善逸という知らない男は、ギャンブルにも等しい。しかし、ギャンブルのテーブルから降りる事はできない。既に退路は、裏金銀治郎によって断たれていた。

 

「私の同僚で、何時も結婚したいと叫んでいる男だ。ちなみに、君の他に既に二人の嫁がいる」

 

「はぁ!? 二人ってどういう事ですか!! どんな変態なんですか――くっ、分かりました。せめて、もう少し情報を頂けますか。私は家族の為、善逸様の妻となります」

 

「覚悟を持った良い目だ。では、一人目がシルヴィという少女だ」

 

 裏金銀治郎が、シルヴィの写真を一枚渡した。その写真には、痛々しい火傷の跡が写っており、鹿島の顔が青ざめる。控えめに見ても、酷いDVが容易に想像がつく物だ。世の中、色々な趣味の男がいる。特殊性癖があると勘違いしたのだ。

 

「せ、せめて服から見える部分は、許して貰えませんか」

 

「勘違いしているようだな。その火傷は、彼女の前の持ち主が拷問で付けた物だ。彼女は、お偉いさんのオモチャにされていた所を私が助けて、我妻善逸の嫁に宛がった。今では、幸せな家族となっている」

 

 疑いの眼差しが裏金銀治郎を貫く。そもそも、写真の選定が悪い。我妻善逸と仲良く写っている写真でも見せれば良いのに、悪意しか感じない。

 

「写真でもかなり若く見えますが……お二人目は?」

 

「あぁ、若いな。二人目は、月村すずかという少女だ。以前に、列車脱線事故があっただろう。両親が保険会社でね……責任を取って首を吊った。そして、残された一人娘が売られるところを私が救いの手を差し伸べた。そして、我妻善逸の嫁に宛がった」

 

 写真を渡す裏金銀治郎。そこには、幼い少女とその両親が写っていた。利発そうな可愛らしい女の子であるのがよく分かる。

 

「あの~、裏金様。善逸様というのは、若い子が好きな……その~、崇高なご趣味がおありでしょうか?」

 

「ないはずだ。美幼女、美少女、美女……容姿の優れた女性が大好きな男だ」

 

 一体どんな変態の夫になるのか鹿島には不安が募っていった。零細企業の娘として、取引先の男性と結婚する可能性は覚悟していた。だが、その男がド変態ともなれば、誰でも不安に思う。

 

「それで、善逸様というのは……」

 

「この写真の男だ」

 

 裏金銀治郎が取り出したのは、竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の三名が写った写真だ。鹿島嬢の反応が面白いから、わざと集合写真を出していた。この男は面白ければ、それでよかった。

 

「何年前の写真でしょうか? 一人、人間じゃなさそうな人も写っておりますが」

 

「ここ一年以内の物だが、何か疑問がありましたか鹿島嬢」

 

 話の流れ的に、完全に中年か年寄りが出てくるかと思っていた鹿島。だが、写真に写る少年達は、どう見ても10代である。だからこそ、なおのこと理解できなかった。年頃の男の子が何人もの女性を嫁にするという発想に至るのかと。

 

「高貴な身分のご出身とか」

 

「いいや、ただの一般市民だ」

 

「刀とかも写っていますが?」

 

「あぁ、仕事道具だからね。彼の仕事の詮索は、許さない。見聞きした事を外に話すこともだ。安心しろ、彼は愛妻家だ。悪いようには、されないさ」

 

 刀が仕事道具とか、完全にやべー奴である。

 

 その何処に安心する要素があるのだと鹿島は、疑問しかなかった。だが、ショタ好きな彼女としては、悪くないと内心楽しみでいた。

 

………

……

 

 我妻善逸は、裏金銀治郎の事を神と崇めていた。大国主命の生まれ変わりと言われても信じるほどに。

 

 なぜなら、今まさに3人目の嫁が紹介されたのだ。

 

「初めまして善逸様。今日から貴方の妻になる鹿島といいます。よろしくお願い致します」

 

「え、まじ!? まじで、こんな可愛い子がお嫁さんになってくれるのぉぉぉぉぉ!!」

 

「ご主人様のお嫁さんに、また美人さんが」

 

「善逸様~、私達の事も忘れちゃダメですからね」

 

 そんな微笑ましい光景なのだが、この部屋を遠くから覗く隊士からは下弦の鬼すら圧倒する殺意が撒き散らされる。恨みで人が死ぬのならば、我妻善逸は毎日何回も死んでいるだろう。

 

「善逸君。最初に教えておく。鹿島嬢は、とある会社のご令嬢だ。会社の経営を守る為、君の嫁になった。だが、君も男だ……彼女を惚れさせてみせろ。イージーとノーマルを経験したのだ。そろそろ、ハードモードでもいいだろう」

 

「分かりました神!!」

 

 では、後は若い者達で仲良くしてくれと立ち去る裏金銀治郎。竈門炭治郎が、昏睡から目覚めない間に増える新しい嫁。竈門炭治郎は、目覚めたときに呆れた顔をするだろう。

 

 




我妻善逸の三人目…戦艦が擬人化された鹿島です。
雷の呼吸は、下半身が大事らしいので……これで更に強化されるはず。

えーーと、とりあえず残りは、以下二つか@@
裏金銀治郎とお館様の出会いの話
胡蝶しのぶが強盗に入った日の話
ちょっと、お時間ください。

あまり脇道にそれると本編が進まないので^-^
竈門炭治郎が目覚めるまで後1.2話挟む予定。
そうしたら温泉編です。


次回は、裏金銀治郎と上弦の鬼が……

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