感想も本当にありがとうございます!!
皆様からのアドバイスや共感がいただけたりと本当に楽しく読んでおります。
裏金銀治郎は、万世極楽教のコンサルを行った。
信徒達の情報を収集し、それぞれをランク付けした。そして、有能な者達を選抜し海外渡航組を結成したのだ。当然、渡航組達の心配は現地での生活である。国内ならまだしも海外となると誰でも尻込みする。
その問題を解決する為、裏金銀治郎は今日も喫茶店で打ち合わせをしていた。
いい加減、周りの目線が痛い彼であった。
「お膳立ては、我々でも可能。ですが、実際に現地で活動する者達が率先して動ける準備はしてあげる必要があります。無策に、海外に信徒を送り出すだけなら馬鹿でもできる」
「なるほど、裏金先生の解決策は?」
童磨は、裏金銀治郎に一定以上の信頼を寄せていた。万世極楽教の雑な管理体制を見直し、資産管理を行う事で財政状況が明確になった。更に、税制対策まで行う事で万世極楽教において確固たる地位を築いていた。
前任者も裏金銀治郎の手腕を褒め、全幅の信頼を寄せるまでに至っている。
鬼滅隊と異なり、剣の腕や腕力が物言う世界とは違う。ここが現実世界なのだ。
「金です。人は俗物です。現地で何不自由ない生活を保障し、潤沢な活動資金があれば人は動きます。それに、彼等は信仰心があるので、現地での裏切りは心配ありません」
「えっ!? まだ、お金が必要なの? 信徒達だって現地に行けば、やってけるんじゃない」
上司への報告の為、よりスピードが求められた。
そこで、裏金銀治郎は提案したのだ。通常の手続きルートを無視する為、賄賂を積んだ。名目は学術調査とする為、大学所属の研究員など嘘の経歴を作るにも苦労していた。それらを全て解決する為に金を湯水のように使った。
勿論、かなり水増しして請求しており、鬼滅隊の懐へと流れている。
「時間を金で解決していますからね。当然です。ですが、お金なら稼げば良い。いいですか……これから私が言うことは独り言です。それを童磨さんが聞いて信徒に指示したとしても私は一切関係ありません」
近い将来、猛威を振るう『ネズミ講』『デート商法』の詳細が話された。『オレオレ詐欺』には、まだ電話の機能が付いていかないので残念ながら却下である。
勿論、独り言である為、それを誰かが聞いて勝手に実践したとしても裏金銀治郎の知るよしではない。そして、集金されたお金が第三者に渡れば既に綺麗なお金である。
事実、国家機関の警察ですら、犯罪者から押収したお金は被害者へ返さず懐へしまい込む。被害総額○○○円と告知して仕事は終了なのだ。
よって、詐欺教団から奪った金を裏金銀治郎が鬼滅隊の給与に充てたとしても何ら問題はない。
「裏金先生。控えめに言って、天才ですか? 今日ほど、先生が鬼だと感じたことはありませんよ」
「いいえ、私は人間ですよ。人間だから、こんな事を思いつくんです」
鬼から、鬼と言われて微妙な気分の裏金銀治郎。
………
……
…
どの時代でも人間は醜い。
目先の利益を求め、知り合いに高額商品を売りつける事が横行した。まさに、ねずみ算式に被害者は増えていった。だが、その被害者の数に応じた利益が万世極楽教へと流れていく。
毎日座っているだけで、凄まじい金額が流れ込むのだ。
鬼舞辻無惨が研究の為、金の無心をしてきても痛くも痒くもない財政状況に童磨も喜んだ。しかも、あの上司からもよくやったと褒められたらしい。
だが、『私が薦めた本のお陰だ。私の言う事が正しいと証明された。これからも、……』などと戯言を言っている。部下の手柄は全て自分の手柄、失敗は部下のせい。
「すごいね裏金先生。これなら、海外に何人送っても問題ないよね」
「勿論です。それにしても、童磨さんも悪いお人だ。最終的にどうなるか教えて上げたのに、平然と実践するとは。鬼ですか、貴方は」
何時もの喫茶店で密会する男二人。既に、裏金銀治郎の世間的評価は、地に落ちた。
「そう!! 実は、鬼なんだよ。これでも少し前までNo.2だったんだけどね。でも、今回の仕事が上手くいけば昇格もあり得るから。その時は、裏金先生にもお礼は弾むよ」
「今でも十分な報酬を頂いておりますが、期待しています」
事実、既に相当な金額を横流ししている。鬼滅隊の懐事情が肥えていた。
「そうだ!! 裏金先生。折角だから、もう一仕事やってみない? こちらも報酬を弾むよ。受けてくれるなら、今の給料を3倍にしてもいいよ。こっちの仕事の成功報酬は100万でどう?」
「乗りかかった船です。この際、トコトンやりましょう。ただし、給料は5倍にして貰いましょう。その位、稼いでいますよね。なんせ、私が資産を管理しているんです。その位、お見通しです」
本来ではあり得ないような給料額。だが、童磨も笑ってそれを許した。鬼側の問題解決にあたり、既に裏金銀治郎という存在は不可欠になりつつある。金で解決出来る問題なら、それが一番だと童磨も分かっていた。
「裏金先生は、本当にお金が好きだね。いいよ、その位で仕事を引き受けてくれるなら大歓迎さ。それで、依頼内容だけど――"うぶやしき"って人を見つけて欲しい。上司と少なからず因縁がある人らしくてね」
「人捜し?その程度で、随分と大金を積みますね。名前から察するに日本人でしょう。――珍しい名字ですが、どのような漢字を書くんですか?」
その時、童磨の目が点になった。
実は、この時初めて気がついたのだ。探していた男の漢字を知らないという事実を。その事に気がついてしまった裏金銀治郎。鬼側の内情がコレほど杜撰であったのかと、嘆かわしい。
「か、漢字ね!! えーーと、それは後で電話で伝えるから待っててね。裏金先生なら、その人をどうやって探す?」
「顔色が悪いですよ? まさか、上司から探せと言われて今まで名字の漢字すら知らなかったとか止めてください。いい加減、上司の方が激怒しますよ」
絶望する童磨。鬼舞辻無惨に、探し人の漢字を今更聞くなどできるはずもない。同僚に聞いても同じ事だ。話が漏れれば、粛正待ったなし。降格か死の二択しか待っていない。"青い彼岸花"に関する調査で得た功績を鑑みてもマイナスに天元突破するだろう。
「裏金先生。助けてクレメンス」
「大金を貰っていますし、漢字が分からなくても何とかしましょう。但し!! 候補が増えて時間が掛かるのは、許容して頂きますよ。探し方ですが……地道に役所で管理している戸籍謄本と納税記録から当たります。生きている人ならば、そこら辺が管理されているはずです。私一人で全国は回れませんので、現地の探偵や役所への賄賂は経費にさせて貰います」
裏金銀治郎は、内心ほくそ笑みつつ仕事を引き受けた。
情報を小出しにして、金を限界まで搾り取る算段を立てていた。鬼滅隊では、上司である産屋敷耀哉の意向を最大限にくみ取り、良識の範囲でしか金儲けをしなかったが……ここでは、雇い主の意向を最大限にくみ取って仕事をしている。裏金銀治郎がイキイキしている仕事場であった。
◆◆◆
蝶屋敷から竈門炭治郎が刀鍛冶の里に出かける。
同時期に、甘露寺蜜璃と時透無一郎と不死川玄弥までもが現地入りしていた。当然、その情報を把握している裏金銀治郎。つまり、彼の取るべき行動はただ一つである。
鬼滅の刃にて、現物武器をドロップする半天狗に会いに行く事だ。特に、風を操る芭蕉扇と雷を操る杖とかロマン兵器といって過言ではない。コレに関しては、令和の世が来ても実現できない武器であるのは間違いなかった。ある意味、流星刀より貴重な物だ。
「しのぶさん、一緒に温泉でも行きませんか?寧ろ、行きますよね?温泉」
「箱根の秘湯ならお付き合いしますよ」
姉との思い出を自らで上書きしようとする可愛らしい行動であった。なに、この可愛い生き物は!!と、裏金銀治郎は、思わず頷きかけてしまった。
「いえ、ちょっと上弦の弐から幾つか武器を奪いたいなと。鬼が死んでも武器は残る可能性は高いです。血と同じで日光に当たらなければ――と言うわけで、刀鍛冶の里へ行きましょう」
「はぁ~、それは誰情報ですか?あの上弦の肆ですか?集英社ですか?」
いつも直前になって提示される上弦の鬼に関する情報。情報の精度は高い。事実、今まで上弦の出現情報を外した事はなかった。つまり、僅か1年もしないうちに、上弦の壱を除いて全てと顔合わせする。
今まで、上弦と出会った事がない柱が多いというのに、現役柱で弱い方に入る蟲柱と引退した元・金柱の二人が色々とおかしい。勿論、主人公一行も同様であった。
「無論、集英社です。流石に、上弦の肆も同僚が攻める場所を漏らすほど馬鹿ではありません。ですが、表向きにはそうしましょう」
「いいです。信じて上げます。だから……少しだけ、このままでいさせてください」
胡蝶しのぶが歩み寄り裏金銀治郎に抱きついた。そして、体を預ける。裏金銀治郎も腰に手を回し、片手で頭を撫でる。
裏金銀治郎の執務室では、色々と教育に悪い上、人目もある。つまり、甘える事ができる場所が限られてしまったという事だ。彼女とて、人の子である。柱としての重い責務を背負うには若すぎる。
時代が時代なら高校三年生である彼女――犯罪だな(確信)。
そんな彼女が甘えられる唯一の存在であり異性である裏金銀治郎。
「しのぶさんには、私がいます。必ず、私達の手で童磨の頸を落としましょう。それにしても、今日のしのぶさんは、子供っぽくて可愛いです。偶には、年相応に甘えてもいいんですよ」
「銀治郎さん、私は子供じゃありませんよ。そんな事言うと、今度夜にパパって呼んじゃいますよ」
大歓迎だと思う裏金銀治郎。無自覚に男心を的確に付く彼女……淫魔であった。
ガタン
二人がいる部屋の扉が勢いよく開けられた。その一瞬のタイミングで胡蝶しのぶは離れようとしたが、全力で阻止する裏金銀治郎。なぜなら、部屋を訪れたのが栗花落カナヲであったからだ。
実は、この時……裏金銀治郎は、栗花落カナヲから依頼を受けていた。内容は、『炭治郎さんと仲良くなりたい』と、いう物であった。そこで、彼女の師範である胡蝶しのぶの"誘い受け"を教えて貰えば良いと教えたのだ。
そして、胡蝶しのぶの実力を見せるため、二人っきりになる状況を作っていた。
「か、カナヲ!! これは違うのよ!! 銀治郎さんも早く離れてください。いつまで腰に手を回しているんですか」
「師範。"誘い受け"の方法……教えて欲しい。アオイは、強敵です。勝つためには、剣(意味深)の指導と併せて教えてください」
捨てられた子犬のような目で見つめる栗花落カナヲ。その行動は可愛らしいが、教える内容がとても人に言えるような事ではなかった。
「カナヲ、まるで私が銀治郎さんを誘っているみたいじゃありませんか。私は、襲われているんです。コレを見て分からないのですか?」
「えっ!? 師範、ちょっと何を言っているか分かりません」
「いいじゃありませんか、可愛い子供が男の子を射止める為に教えを請うている。くノ一から伝授された夜の四十八手を教えてくれと言われるより遙かにマシでしょう」
くノ一の秘伝と言われる四十八手。その威力は絶大である。だからこそ、使い手を選ぶ技だが……未来の柱候補である栗花落カナヲには、その資格は十分であった。
「誘い受け以外に師範に得意な型があるなんて
この状況を仕組んだ犯人がバレてしまった。
胡蝶しのぶは、犯人を逃がすまいと抱きついた腕に力をいれる。青筋を浮かべる顔がいつにもまして可愛いのは仕様であった。そんな女性の頭をなで続けており、胡蝶しのぶが照れながら怒るという器用な事を披露している。
「栗花落カナヲさん、わざとでしょう? しのぶさんの特技を見るために、私を売りましたね」
「何の事だか分かりませんが……師範は、可愛いです」
そんな師範や恩人を自らの恋を成就する為ならば、生け贄にしても構わないと思う彼女は、本当に自分の心に素直になった。
実は、鬼滅の刃のSSで感想数トップに立てて嬉しい><
読者の皆様ありがとうございます!!
この手のSSにここまで需要があるとは嬉しい限りです。
作者はこんな風なSSしか書けませんが、需要が有り本当に嬉しいです。
ここまで来たら最後まで終わらせてみせる!!