今日もお休み予定でしたが、投稿ができて良かったです!!
感想も本当にありがとうございます。
実は、感想の方が本編より面白いのではと思うほどです。
鬼滅隊に入って十数年……一週間という纏まった休暇は初めてであった裏金銀治郎。宿泊する場所が、刀鍛冶の里に併設されている隊士用の宿でなければ、今ごろ淫靡な日々を送っていた彼であった。
胡蝶しのぶは、甘露寺蜜璃と同室である為、女部屋に忍び込む事はできない。報酬の前渡しで、彼女が赤裸々な話をしており、流石にその場に居合わせたくないと裏金銀治郎も思っていた。
朝風呂に向かう途中、女性二人組と出会う。
「う、裏金さん……流石に気絶してまで続けるのは、良くないと思います。もっと、女の子の事を考えた方がいいですよ。キャーーー、言っちゃった」
周りに誰もいなかったから良かったが、一体どんな話が伝わっているのかと裏金銀治郎は不安に駆られていた。初期の頃ならまだしも、今じゃ立場が…。
反論する前に、猛スピードで遠ざかった。言いたい事だけ言い残していなくなる。
「そうですよ、銀治郎さん。女の子には、優しくしてあげないとダメですよ。えいえい」
朝風呂上がりの胡蝶しのぶから良い匂いがする。浴衣姿と上目遣いという理性に大ダメージを与えてくる彼女。その綺麗な指で頬をつつく仕草は、可愛らしいの一言であった。
ここが、彼の部屋の近くであったなら、そのままお持ち帰りは確定だ。しかし!! 良識ある裏金銀治郎は、歯を食いしばり耐えた。宿内にある室内温泉への通路であり、いつ人が来るか分からない場所で、お互いの評判を落とすような事はできない。
「しのぶさん、ここは人目がありますよ」
「コホン――清掃中の看板を立ててきました。女湯には、私達が出てから誰も入浴してません。一週間ぶりに……ね」
裏金銀治郎の頭の中で天使と悪魔が闘っていた。
裏金天使『いけません。男湯にすべき』
裏金悪魔『馬鹿野郎。男湯には他の客が居るかも知れないだろう。人が来る前に、早く女湯へ』
裏金天使『その通りですね。では、女湯へ行きましょう』
天使と悪魔は、結局同じ結論に行き着く。
柱の身体能力があれば、女湯から飛び出て男湯に飛び移ることも可能だ。呼吸法の力とは、このためにあったのだと裏金銀治郎は悪魔の声に従った。
「しのぶさん、その言い方は狡いですよ」
胡蝶しのぶは、裏金銀治郎の手を引いて女湯へと入っていった。繋ぐ手は、指を絡ませており、彼女の愛らしさが溢れている。
当然だが、男が女湯に入るのは犯罪だ。『おまわりさんコイツです!!』と、呼ばれればそれで鬼滅隊の金庫番は解任され、組織も崩壊する。
………
……
…
ポタポタと血が垂れる。
女湯が覗ける絶好のスポットで、ピンクの髪をした女性が鼻血を垂らしていた。甘露寺蜜璃は、胡蝶しのぶを置き去りにしたのを思い出し戻ってきていたのだ。その際、二人の雰囲気を察して物陰に隠れて話を聞いていた。
「しのぶさんなんて失礼な呼び方はできないわ。これからは、しのぶ様と呼ぶ事にするわ。キャーーー!! 嘘でしょ、しのぶ様。あんな格好でなんて!! これは、勉強になるわ」
大事な事だが、彼女は胡蝶しのぶの名誉を守る為に、この位置を守っていた。男が多い刀鍛冶の里では、女湯が覗かれるという不埒な事件が発生している。そんな不埒な輩から、大先輩である胡蝶しのぶを守る為、柱である彼女が守りについたのだ。
と、いう方便である。
◆◆◆
襲撃のある夜、蟲柱と恋柱、金柱は完全武装で待機していた。
霞柱は仲間外れである。その理由は、男だからとか悲しい理由ではない。彼の協調性のなさが原因だ。痣に目覚めて貰う為にも、彼には何も知らせていなかった。
「
「それでお願いします。私としのぶさんは、基本的に里の人を守る為に動きますので、全力を出して頂いて問題ありません。ですが、半天狗が持つ武器については、可能な限り回収をお願いします」
「あ、あの~何故、様付けなんですか?甘露寺さん。この間までは、しのぶさんでしたよね?」
「だ、だって!! あんなの見せられたら……さぁ!! 鬼退治に行ってきますね」
顔を真っ赤にして走り去っていった。まだ、襲撃の合図がないというのに、行動が早い彼女である。だが、早めに待機していても問題ないだろうと見送った。
胡蝶しのぶは、甘露寺蜜璃の行動で理解した。朝の出来事が覗かれていたと思うと、顔が真っ赤になる。彼女の中では、何処まで見られたのか、どうやって口止めするかなど様々な事が巡っていた。
これから上弦の鬼がくるというのに、鬼退治より口止めをしなければと胡蝶しのぶは考えていた。優先度が完全に入れ替わっている。
「イヤァーーー!! 嘘でしょう!! どうするんですか、銀治郎さん!!」
「しのぶさん、覗いていたのが甘露寺蜜璃さんで良かったじゃありませんか。男なら、私が殺していました」
裏金銀治郎は、真剣であった。
胡蝶しのぶの裸を覗く野郎は、隔離施設の鬼達の餌にしてやってもいいとすら思っていた。刀鍛冶の里の連中とて容赦はしない。男の場合、スポンサー様の裸を覗いたら、死罪は当然だ。
「私は、今すぐに追いかけます!! 半天狗は、此方で処理します。玉壺の方は、任せても大丈夫ですか?」
「勿論。時透無一郎さんだけで、倒せる鬼です。私は周りのゴミ掃除くらいしかやる事はありません。終われば、手伝いに行きます」
ズドンという音が響いた。
宿を揺らすような一撃。竈門炭治郎達がいる部屋に鬼が現れた証拠だ。そして、飛ばされる時透無一郎が窓の外からよく見えた。人間とは、あれほど見事に空を飛べるのだと、二人は思った。
「えっ!? 今、時透さんが飛ばされていきましたよ」
「えぇ、全て予定通りです。私は、彼の元へ向かいます。それと、顔を隠して名前も変えてくださいね。鬼舞辻無惨は、此方を覗いている可能性があります。今回は、"巌勝"と"縁壱"で行きましょう。男性名ですが、我慢してください」
蝶の羽根飾りを外し、髪を縛り上げる胡蝶しのぶ。そして、狐のお面を付けて顔を隠す。残念な事に、残っているのは狸のお面であった。
「それで、今回の名前は誰のですか?狸さん」
「"巌勝"と呼んでください。"巌勝"は、上弦の壱の本名です。"縁壱"は、双子の弟の名前です。弟は、日の呼吸という始まりの呼吸の使い手。兄は、派生である月の呼吸の使い手になります」
胡蝶しのぶから、またですか?と言った雰囲気が漂う。さらりと、最後の上弦の情報が公開される。だが、今は目の前の事に集中する事に決めた彼女。裏金銀治郎に「また、後で」と言い残し、鬼退治に出かけた。
………
……
…
森の中を進む裏金銀治郎。道中逃げ遅れた刀鍛冶達を助けつつ、玉壺が居ると思われる場所へと向かっていた。
「金の呼吸 肆ノ型 化合爆砕」
血鬼術で作られた魚の化け物が砕け散る。体内のメタンと水素を化合させて内部から吹き飛ばす技。壺がどこに引っ付いていても体ごと吹き飛ばせば壺も割れるというやり方だ。
裏金銀治郎は実感していた。以前にも増して技の切れも威力も増している事を。鬼を喰らう事で身体能力が飛躍的に上がっている。特に、上弦と竈門禰豆子の血肉を食べてからは、それが顕著に表れた。
「た、狸のお人!? 助かりました。他の者達もお願い致します」
「任せておけ、露払いくらいは私でもできる」
雑魚を倒して感謝されるなど、ぼろい商売だと思っている男である。血鬼術で作られた壺が弱点の存在など、元柱である彼の敵ではない。それからも、霞柱の元へ行くまでの間に何人も助け、辿り着く。
裏金銀治郎は、上弦の鬼を目視すると直ぐに物陰に隠れ気配を断つ。
そこには、水の牢に囚われた時透無一郎が最後の酸素を使い技を放ったタイミングであった。だが、無念にも刃こぼれした刀では、血鬼術は破れず朽ち果てるのを待つばかりである。
鬼滅隊の隊士として、助けるならば今しかないのだが……裏金銀治郎は動かなかった。この後、痣に覚醒するイベントが待っているのを知っている彼。だから、見捨てたわけではない。
「なかなか、心苦しいですね」
時透無一郎を助けるため、刀鍛冶の子供が必死に水の牢を攻撃している。しかも、血鬼術で作られた魚人に攻撃されながらだ。だが、そこで裏金銀治郎は気がついてしまった。原作では、炎柱の鍔で急所を守ったが、ここではどうなると!!
現役で仕事をしている炎柱がいるのだから、あの子供は腹に攻撃を受けたら致命傷になる。しかし、子供一人の命で柱が痣に目覚めるなら安い物だと華麗にスルーする裏金銀治郎。
「ギャ!! 痛っ…!!うわあ血が!!」
ドスっと魚人の刃が子供に突き刺さった。そして、倒れる。本来であれば、よろめきながら、空気を時透無一郎に託すのだが、子供が急所を刺されて歩けるはずもない。現実とは、こういうものである。
「くそ!! 予定変更!! 雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」
裏金銀治郎は、即座に助けに入る方針へ転換した。金の呼吸ほど得意でないが、次に得意な雷の呼吸は、こういう急ぐ場面では大いに活用される。
そして、魚人と水の牢を切り裂いた。内部からは、破壊しにくい水の牢であっても、外部からは脆い。そして、何喰わぬ顔で今駆けつけた雰囲気を醸し出す男……裏金銀治郎。
「ゴッホゴホ!! ガッハゴフ……はぁはぁ。ゲッホゲホ」
「時透無一郎さん、ご無事で何よりです。無理に喋らないでください。鬼の毒が回ります。直ぐに、治療をしましょう」
時透無一郎は、目の前にいる男を……裏金銀治郎だとは気がつかない。だが、太刀筋から、柱に匹敵する実力者という事だけは察していた。狸の仮面を付けた怪しさ抜群ではあったが、日輪刀を持っており、隊士だと判断した。
「俺の事より、こ…小鉄君を」
「深手です。あの傷では助かりません。それより、貴方の怪我を」
まだ死んでいないが、小鉄の命は間もなく尽きる。傷が深い為、裏金銀治郎では対応ができない。だから、死んだ怒りで覚醒しろと心の中で応援する男がそこには居た。
「これを、小鉄に使ってくれ!! これなら、その程度の傷は治る」
「柱専用の緊急活性薬ですか~。それを使えば、貴方の傷が治りません。上弦の鬼がまだ健在なのですから、ご自身に使うべきでは?」
柱の命の価値は、そこら辺の子供とは訳が違うという持論を常日頃持っている時透無一郎。そんな彼が、人の心を理解し子供の命を優先するようにまで成長したのだ。手のひら返しが、素晴らしい事この上ない。
「いいから、早くしろ!!」
裏金銀治郎は、自らの懐から緊急活性薬を取り出して投与した。その様子を見た時透無一郎は、何故それを持っているという顔をしている。柱専用であるこの品物は、お館様より万が一にと渡された物だ。
狸のお面を付けた柱など、時透無一郎は知らない。雰囲気からも現役の柱ではないと、理解していた。だが、時透無一郎には心当たりがあった。
「これで、大丈夫でしょう。時透無一郎さん、後は貴方の仕事です。無限の力を引き出して、鬼を殺してください。私では、あの鬼に勝てませんので」
「あぁ、分かったよ。そして、ありがとう。
時透無一郎は、全身に突き刺さった棘を抜き、自らの体に緊急活性薬を投与した。みるみる肉体が再生したが、顔に出ている
時透無一郎は、激怒していた。己の不甲斐なさと鬼への憎しみで覚醒をはたす。
「二週間だけの指導でしたが、覚えていましたか。ここでは、巌勝と呼んでください」
「刀鍛冶の人達は、頼みます。俺が鬼を倒すので」
最小の努力で最大の結果を得るため、裏金銀治郎は時透無一郎を笑顔で送り出した。もっとも、狸の仮面のお陰で、その表情を見るのは誰もいない。
今日も、しのぶさんの"誘い受け"講座が投稿できて満足しました。
これで年齢で言えば、リアルJK何ですぜ。犯罪だよ、まったく。
金の話よりしのぶさんの話の方が多い気がするのは、まぁ、可愛いからいいよね!!
>十三カイダン様、人食い椎茸様
遅れながら推薦ありがとうございます。
作者側で通知などがなく、今気がつきました。
推薦を頂けたのは、初めて嬉しい限りです^-^
作者より作品の説明が上手で悔しいと思うほどです
これからも、執筆頑張ります!!