鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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いつもありがとうございます。

感想も沢山頂けて嬉しい限りです!!

もう一つの緊急柱合会議……きっと、こんな感じかなと。
作者の独断と偏見が盛りだくさんですが、笑ってみて許してください。


39:緊急柱合会議(殺)

 無限城――そこに呼び出された黒死牟と童磨は、お互いの無事を確認し安堵した。だが、いつまで待っても来ない二人の存在に嘆きを覚える。四人で受ける筈の攻撃をたった二人で凌がなければならない。

 

 単純比で二倍の攻撃を受ける事になる。歴史史上最強の鬼柱の攻撃は、歴代最強の月柱(笑)や氷柱(笑)であっても無抵抗にやられるほどである。

 

「鬼殺隊の同士がまたやられたか――」

 

「黒死牟殿。ここは、我々が先手を打って場を乗り切る方法でどうだろう。裏金先生から、女性の気を引くなら花束だと言われた」

 

 裏金銀治郎は、胡蝶しのぶに"赤色のアネモネ"を贈りご機嫌を取った事があり、そのリスペクトをパワハラ上司に対して実行させようとしていた。ちなみに、"赤い色のアネモネ"の花言葉は、『あなたを愛します』という。

 

 童磨は、容姿に優れている。よって、この手を使うべきだと強く勧めた鬼畜がいたのだ。当然、花言葉などは一切教えずに。上手くいけば、上司と密な関係になり責められる事もなくなると……その話を聞いた時、童磨は吐いていた。

 

 それが人の考える事かと、唯の人間に恐怖すら感じた瞬間であった。しかし、何を血迷ったのか、童磨は、"赤色のアネモネ"を用意していた。備えあれば憂い無しという裏金銀治郎の指導のもと、常に携帯していたのだ。

 

「なるほど、半天狗や玉壺の話題に触れられる前に先手をうつのか。悪くない……」

 

「じゃあ、俺より呼吸法が使える黒死牟殿がお願いね。死んだら骨くらい拾って上げるから」

 

 冗談にもならない言葉であった。そして、二人でお前が渡せと押しつけあう醜い争いが始まる。その作戦は、双方とも自分が行わない前提で話しており、成功した場合は次回より導入しようという算段であった。

 

 大事な事だが、無限城に呼ばれたと言う事は、鳴女が既にいる。その様子は、しっかりと観察されていた。鳴女も、この場に鬼舞辻無惨を呼ぶと恐ろしい事態になると思い、引き延ばしていた。この醜い男二人は、彼女に最大級の感謝を述べるべきである。

 

………

……

 

 黒死牟と童磨は、前回の失敗を活かして、最初から土下座スタイルで待っていた。

 

 これから見せられる女装姿に耐える準備も万全である。パワハラ上司は言っていた『これからは、もっと死に物狂いでやった方が良い』と……だから、二人は努力した。

 

 万世極楽教の信者や男の鬼に女装をさせて、その姿を見ても平常心を保つという訓練に身を費やしていたのだ。そして、彼等は手に入れたのだ。例え、どんな変態な上司であっても、平常心を保てる鉄の心を!! どんな変態であっても上司の良いところを見つけて褒める技術を!!

 

 裏金銀治郎のアドバイスにより実現した。新たな力を手に入れた上弦の鬼は、より駄目な方向にパワーアップを遂げたのだ。

 

 ベベン!!

 

 琵琶の音と共に現れる鬼舞辻無惨。優れた上弦の鬼達は、上司の雰囲気を感じ取る。だが、喜びと怒りの半々であり、微妙な所であった。

 

「今回は、頭を垂れていたか。ようやく、教育が行き届いたか」

 

「勿論でございます。無惨様!! 本日は、いつにもましてお美しい!! 今日は、童磨より日頃の感謝を込めて贈り物がございます」

 

 黒死牟……上司の方を一切見ずに、床に話しかける。そして、平然と童磨が贈り物をすると口走った。勿論、どちらが上司に花をプレゼントするかという議論に結論は出ていない。つまり、黒死牟は童磨を生け贄に捧げたのだ。

 

 童磨も決意した。既に、引けぬ所まで来てしまっていた。

 

 女性相手(・・・・)ならば絶対に大丈夫と言われた裏金銀治郎の言葉から勇気を貰い。上司が求める理想の部下となる為、一歩を踏み出した。

 

「貴方様の為に、アネモネの花を用意して参りまし――」

 

 顔を上げた童磨は、驚愕した。今日に限って、鬼舞辻無惨は男の姿をしていたのだ。趣味と実益を兼ねて、女装して部下を鼓舞していたあの変態に対して、花束まで準備した今日に限り男であった。

 

 無惨の怒りのボルテージが上昇していく。片腕から肉塊が飛び出して童磨を捕らえた。そして、メキメキと骨を砕いていく。

 

「気持ち悪い事、この上ない。童磨、私は貴様の趣味(衆道)にとやかく言うつもりは無い。だが、自分の趣味に私を巻き込むな。このゲスが」

 

「ち、違います無惨様!! 俺は、貴方の女性姿に……」

 

 そもそも、女装姿を披露していた男が趣味に巻き込むなとか言って良い台詞ではない。童磨があまりにも哀れに思えて、黒死牟の目には心の汗が流れていた。

 

「やはり、私は上弦の鬼だからと言って甘やかしていたようだ。童磨――ここ最近は、非常に優秀だと思っていたが、私の勘違いだった。なぜだか、分かるか?」

 

 必死に思考を巡らすが、回答に行き着く事はできなかった。

 

「"青い彼岸花"を見つけられていないからでございます!!」

 

「あぁ、それならもう不要だ」

 

 その瞬間、童磨だけでなく黒死牟までもが、聞き間違ったと考えた。

 

 あれほど、固執していた"青い彼岸花"がもう要らないとか冗談にしか思えない。しかも、聞かれて思い出したかのように、言うのだから苦労していた童磨にしてみれば、巫山戯るなであった。

 

「海外に信徒を派遣し現地の者とも交渉が」

 

「貴様は、私の言ったことに口答えするのか。物覚えが悪いようだから、再度教えてやる。貴様等に、許された回答は、"はい" か "Yes"のみだ。理解したか」

 

「「はい」」

 

 上司のたった一言で、莫大な金と時間と労力の全てが失われた。物事には、セカンドプランが必要だ。だが、アイディアを提案したら、口答えするのかと言われて痛い思いをする。

 

 上司のターンは、まだ終わっていない。

 

「黒死牟、『はい』と言ったからには分かっているな。私が、なぜ怒っているのかを」

 

 無理である。

 

 こんな上司の心が分かるのならば、もっと上手に立ち回っていた。剣の腕を極める為に鬼となった黒死牟。当時は、上司もそれをよしとしていた。だが、今、回答をしくじれば、鬼殺隊の仲間――童磨を見捨てる事になる。

 

 童磨を失えば、次は我が身であるのは明白であった。

 

 加えて、この状況下で鬼滅隊と戦う事になれば、全ての柱と一人で闘うなど不利な展開が待ち受けている。上弦の鬼達を、誰一人欠ける事無くスムーズに討伐する鬼滅隊と闘うなど冗談では無かった。

 

「それは、我々が無惨様が求める理想の部下に程遠いからでございます。未だ、鬼柱の頸も献上できず、産屋敷も見つけられず、太陽も克服出来ず、"青い彼岸花"も見つけられていないからでございます」

 

「その通りだ。貴様等は何一つ仕事を全うできない無能だ。もっと、力を効率よく使う事を覚えなければならない」

 

 黒死牟が本気を出せば、今すぐにでも鬼柱の頸を献上できる。だが、命と引き替えにするのは割が合わない。そもそも、最強の鬼である上司だって、部下に言った言葉が全て言える。

 

 鬼滅隊の当主である産屋敷耀哉のように病気で動けないならまだしも、最強の鬼であって血鬼術を使いこなす上司が、日陰で優雅に過ごしているだけだ。電話指示や電文なども一切ない。

 

「だが、今日は機嫌が良い。今日という祝いの日を感謝するといい」

 

 土下座させられて、男上司にアネモネの花をプレゼントし、衆道と疑われ、骨を砕かれた日の何を祝えというのだろうかと童磨は思った。これがお祝いだというなら、普通の日は一体どんな地獄なのだと。

 

 黒死牟と童磨が心で話し合う。どう考えても、上司に対して何か喜ばしい事があったのですかと聞くシーンだと。お互いが絶対に地雷だから聞きたくないと、譲り合いの精神を見せる。

 

 反応が無いため、重圧が増す。負傷している童磨が血反吐を吐くほどのものであった。このままでは、童磨が死ぬ可能性が見えた黒死牟が決意する。

 

 お前だけ楽にさせないと!!

 

「無惨様、もしや半天狗と玉壺が不在な事に関係がございますか?」

 

「ようやく、その質問か。もっと早く、あると思っていたが遅かったな」

 

 鬼殺隊の二人が思った。ウゼーーー!! 何様だコイツは!? だが、よく見なくても二人の上司である。

 

「そうだ!! 半天狗がついに、太陽を克服した鬼を見つけ出した。鬼滅隊の隊士が連れている禰豆子という鬼だ」

 

 その言葉に、話の流れが見え始めた二人。どうせ、探し出せと言われるのだと。だからこそ、聞いておかねばならない事が二つある。

 

「おめでとうございます、無惨様。して、どのような風貌の鬼でしょうか。それと名の漢字を教えて頂ければ、全力で探して参ります」

 

「探す? 鬼柱も探せず、産屋敷も探せず、"青い彼岸花"も探せない貴様が?」

 

「"青い彼岸花"は、もう要らぬとっ!!」

 

 ブチという音を立て、黒死牟の頭部が粉砕された。無惨の呪いにより、再生も遅い。激痛に耐える黒死牟。

 

 黒死牟が思わず言い返してしまった。"青い彼岸花"については、終わったことなのにネチネチいうから、無意識に言葉にしてしまった。だから、彼に罪は無い。

 

「貴様達は、人の揚げ足を取るのが好きなようだな。口だけは達者だ。成果も出さないくせに、図々しいにも程がある」

 

 全部、お前のせいだ!! と叫ぶわけにもいかない二人。何時もの如く、平謝りでやり過ごす。建設的な会話などまるで発生しない。

 

「無惨様!! どうか、挽回のチャンスを!!」

 

「チャンス? それは、前回くれてやったはずだ。……だが、"青い彼岸花"の捜索や産屋敷の捜索で一定の成果があったのは認めてやろう。故に、最後のチャンスをくれてやる」

 

 鬼舞辻無惨は、裏金銀治郎の本に書かれていたことを実践していた。落として上げる!! 一度限界まで下げてから、ちょっとだけ褒める。そうすると、不思議と人はやる気を出すという摩訶不思議の現象だ。

 

「寛大なご慈悲を感謝致します!! 童磨と共にあらゆる手段をとって見つけ出して見せます」

 

「お任せください。裏金先生より"産屋敷"の姓を持つ人間の洗い出しをしております。信徒全員を導入し、必ずや探して見せます」

 

「有能な男から学ぶことは良い事だ。あの本を薦めた私も鼻が高い。それと、欠けた上弦を補充する為、新たに血を分けておく。私は有能な()が好きだ……分かっているな?」

 

 上司に頭ごなしに全て否定される上弦達は言葉どおりの意味で理解した。そして、無能な女になりたいと、真剣に考える日がやってきた。

 

 そして、和製マイケルジャクソンは身を翻して、言いたいことだけ言い残して立ち去る。大事な事だが、禰豆子という漢字を知らない上司に罪は無い。あの字は、普通読めないし書けない。

 




あまり、緊急柱合会議を長くなると本編に進めないので「緊急柱合会議(淫)」をやって、柱稽古かなと^-^

流石に、「緊急柱合会議(淫)」を一日で書き上げる自信がないので時間が欲しいなと><
大事な事ですが、本SSは健全な作品ですのでR-18とかR-15のタグは付きません。

ひっそりと、"誘い受け"ネタも募集しております。
頂けたネタも全てを実現できるわけではありませんのでご承知頂ければと思います。

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