鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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42:大きくなったな

 裏金銀治郎が隊士全員に餌を提示したおかげで、素晴らしいやる気に満ちた"柱稽古"が実現した。柱達も無駄にやる気がある隊士達に満足し、高い水準の訓練を課す。

 

 何より素晴らしいのが、訓練の最中であっても隊士達が率先して技を磨いている事だ。皆が先陣を走る者達を蹴落とすため、技を繰り出す。それの応酬が実に美しい。基本呼吸の全てが見られる、技の市場と化していた。

 

「ギェェェェ!! なんでだよ炭治郎!! 俺達、死線を共にした戦友だろう!! なんで、炭治郎がそっち側なんだよ」

 

「禰豆子がな!! "お兄ちゃん、背中を流すよ"とか。"寒いから一緒に寝よ"とか大変だったんだぞ。見ろこの顔の怪我!! カナヲに殴られたんだからな」

 

 ミイラ取りがミイラになる。竈門炭治郎は、独身隊士達の気持ちを理解できていなかった。彼等は、我妻善逸が憎い……だが、それと同時にモテる男が総じて憎いだけなのだ。

 

「えっ!! それ、ただの役得じゃん。みんなーーー!! ここにユダがいるぞ!!」

 

「やはり、貴様は裏切り者だったか!! 竈門炭治郎!! 炎の呼吸 伍ノ型 炎虎」

 

「我ら独身隊士の力を見せてやる!! 雷の呼吸 肆ノ型 遠雷」

 

「裏切ったな。僕の気持ちを裏切ったんだ。水の呼吸 捌ノ型 滝壺」

 

「お義兄さん、禰豆子さんを僕にください!! 風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風」

 

 一糸乱れぬ連携に高レベルの技の応酬。

 

 風柱や蛇柱が隊士の質が低いと言っていたが、これをみてもそれが言えるんだろうかと本気で裏金銀治郎は思っていた。

 

「炭治郎~。みんなを敵に回すより、手を組もうよ。このままじゃ、俺とあっちの双方を敵に回す事になるよ。仲間だろ~炭治郎」

 

「ぐっ!! 卑怯だぞ、善逸。だが、一時休戦だ!!」

 

 怪我をしても全ての"柱稽古"をクリアする為、這ってでも進む意気込み。勝ち残るため、無自覚に全集中・常中を覚え、止血まで使えるようになる者が続出した。

 

「見えますか、しのぶさん。一般隊士を隠れ蓑にしていた準柱級の逸材達が」

 

「認めたくありませんけど~。でも、彼等はなんで上を目指そうと思わなかったのでしょうね。柱って、かなり厚遇されているじゃありませんか」

 

 裏金銀治郎と胡蝶しのぶは、歩きながら隊士達の訓練を確認していた。向かう目的地は、色々と世話になった方の所だ。

 

「ハッキリ言いますが、歴代最高と言われる柱の皆様……異常です。その戦闘力も当然ながら、何より人間性に問題がある人達が多すぎます。協調性がなさ過ぎて、彼等と連携するなら、適当な地位で鬼を狩った方がよいと理解したのでしょう。ある程度の地位なら給与は十分ですからね」

 

「納得です。確かに、カナヲ以外に継子がいない時点で問題があります。煉獄さんの継子だった甘露寺さんは、柱になりましたからね。皆さん、もっと下の教育に力をいれればいいのに」

 

 現役柱の大半は、育成に力を入れていない。

 

 隊士は勝手に育つ者だと考えているのだ。勿論、本人の努力も大事だ。だが、一人で鍛えるのには限界がある。柱は、そういった人物がより才能を発揮できるように指導すべきであった。

 

 事実、柱級の実力を有している栗花落カナヲは、胡蝶しのぶの正しい指導により今がある。

 

「問題しかありません。ですが、鬼に対する恨みや実力と言う面では、現役の柱達を信用しています。だからこそ、高い給与や好待遇を許しているんです。そうでなければ、費用対効果が悪すぎます」

 

「銀治郎さんらしい考えですね。それで、最終決戦が近いと言う事は、上弦の壱については、いつ皆さんに教えるんですか? 銀治郎さん一人だと、また揉め事になるので良ければ私が口添えしますよ」

 

 残る上弦についての情報など、今の鬼滅隊にとっては万金にもなる情報だ。敵を知っていれば対策なども見えてきて、スムーズに鬼退治ができる可能性もある。だが、裏金銀治郎は、胡蝶しのぶ以外に肩入れする気はなかった。

 

「教える気はありません。岩柱と霞柱と風柱と不死川玄弥君あたりで闘う事になるでしょうが、大丈夫です。私の読み通りなら、柱三人が"痣"に覚醒し、霞柱と不死川玄弥君の犠牲で倒せるでしょう」

 

「なんか、えらく具体的すぎませんか? 実は、未来が見える血鬼術とか目覚めてます? 私には、何でも教えてくれるんじゃありませんでしたっけ?」

 

「いえ、ですから集英社情報です」

 

「むむ~、またそんな事を言って煙に巻くんですか。そんな会社がないのは、調べました!!あ~あ、コレを贈ってくれた時に、約束したはずなのにな~。隠し事はしないって」

 

 真実しか告げていない裏金銀治郎の言葉を信じてくれない彼女。だが、そんな彼女はご機嫌であった。

 

 彼女の左手の薬指には、銀の指輪。それを愛おしそうに撫でる彼女は、女の顔をしている。胡蝶しのぶは、姉の遺言通り、女の幸せを手に入れていた。天国にいる姉が生暖かい視線で見ているだろう。

 

 まさか、裏金銀治郎と胡蝶しのぶ のカップリングなど胡蝶カナエでも予見できなかった。存命中は接点がなかったので当然と言えば当然だ。ちなみに、胡蝶カナエの未来予想では、冨岡義勇とのカップリングが最有力であった。

 

「しのぶさん、そんな道すがら指輪を見られると……隊士から凄い恨みの視線が私に当てられるんですが」

 

「私は、別に痛くも痒くもありません」

 

 恋人繋ぎして歩く二人に隊士達が声を上げて言う。

 

「祝ってやる!!」

 

「おめでとうございます金柱様!! 祝ってやる!! 祝われろ!!」

 

 祝われているはずなのに、"呪われろ"と聞こえる口調であった。

 

◆◆◆

 

 呪いのような祝いの言葉を受け止めた裏金銀治郎。

 

 そんな呪詛を携えて、煉獄家にやってきた二人。最終決戦に向けて、思い残した事は綺麗に片づけておきたいと考えたのだ。その一つが……胡蝶カナエの件に対してのお礼参りであった。

 

 家を訪ねると"柱稽古"で巡ってくる隊士を待っていたのか、煉獄杏寿郎が勢いよく玄関を開けて歓迎してくれた。

 

「裏金殿ではないか、それに胡蝶殿も!! "柱稽古"の見回りかな!! 残念だが、まだ俺の所まで回ってきている隊士は居ないぞ!!」

 

「本日は、煉獄槇寿郎さんにご用事があって参りました。ご在宅ですよね? こんにちは~煉獄槇寿郎さん。裏金銀治郎です。ご無沙汰しております~」

 

 訪れるにあたり、既に在宅している事は調べが付いている。

 

 開いた玄関からよく聞こえるように名を告げる裏金銀治郎。酒に逃げて無気力の人生を生きる男だが、嫌いな相手にだけは何故か元気になる。

 

 家の中から足音が聞こえる。酒瓶を片手に持ち、無精髭が伸びている男が玄関先までやってきた。

 

「どの面下げて俺の前に来やがった裏金!! 」

 

「父上、お客人に対して失礼では」

 

 この手のパターンになるのは読めていた裏金銀治郎は、気にしないでくださいと煉獄杏寿郎に伝える。それに、今日は彼の用事ではなく、胡蝶しのぶの為に訪れていた。

 

「こんにちは、煉獄槇寿郎さん。蟲柱の胡蝶しのぶです」

 

 現役柱にとっては、裏金銀治郎と胡蝶しのぶという組み合わせは珍しくない。裏方で一緒に仕事をしている事は周知の事実だ。だが、鬼滅隊の隊士でない煉獄千寿郎は、二人を何度も見る。

 

「あぁ、久しいな。花柱の葬式以来か……大きくなったな」

 

 胡蝶しのぶの背丈は、今と昔を比較してもそこまで大きくなっていない。一体、何処を見て大きくなったと言ったのだろうか。不思議で仕方が無い。

 

「えぇ、その節はお世話になりました。生前、姉にはよくして頂いたようで、そのお礼(・・)に参りました」

 

「裏金、てめぇ!! 神保町のあの件を教えやがったな!! あれは、最終的にてめぇがお持ち帰りしたんだろう。都合の良いところだけ教えただろう」

 

 胡蝶しのぶからの負のオーラを察した煉獄槇寿郎が暴露する。

 

 未だにそこで息子さんが、頭を傾げている。その大きな声のお陰で、煉獄杏寿郎の弟までが聞き耳を立て始めた。

 

「1から10まで、全てしのぶさんに話しましたよ。そのお陰でこの間は――ありがとうございました、煉獄槇寿郎さん!! 」

 

 心の底からの感謝を告げた裏金銀治郎。

 

 目の前の気にくわない男に全力でお礼を言って頭を下げても構わないという思うほど、美味しい思いをしたのだ。礼儀を忘れないのは殊勝な心がけである。

 

「お礼をいうなんて気持ち悪いな。胡蝶カナエの妹さんよ……左手を見ればどんな関係か分かるが、こいつは最低だぞ。酒に酔ったカナエさんを介抱しようとした俺を殴って、彼女をお持ち帰りした奴だ」

 

「なんと!! 裏金殿……女性には優しくすべきであろう」

 

 ついさっきまで、"都合の良いところだけ教えただろう"とか何とか言っていた人の台詞とは思えなかった。そして、父親の支援すべく煉獄杏寿郎が口を挟むが、裏金銀治郎も胡蝶しのぶもダメージがでかくなるから辞めておけと心の中で思っていた。

 

「介抱するために、神保町にある連れ込み専用のHOTELを選ぶ必要は無かったはずですよね」

 

「……ち、違うぞ。病院だったはずだ。裏金が嘘を言っているんだ」

 

 確かに、一理あった。

 

 裏金銀治郎の言い分を一方的に信じるのは良くない。だが、言い訳ができる余地を残してこの場に来るほど裏金銀治郎は愚かでは無かった。外堀を埋めてから動くのは彼の得意技だ。

 

「刀を持った男が倒れていると警察に通報があり、その時の調書が残っております。その調書サインに煉獄槇寿郎としっかりと記載されておりますが、ご確認なさいますか?」

 

「父上~、早く謝った方が」

 

「いいや、まだだ!! 俺は、何もしてない!! 酒に酔いつぶれた胡蝶カナエが仕事に復帰したのは、翌日以降だ!! つまり、裏金は酔っている女性相手に」

 

 非を認めない、煉獄槇寿郎。

 

 極めて黒に近いグレーである事は間違いなかった。事実、煉獄槇寿郎は嘘を一つも言っていないのだ。上手に裏金銀治郎がお持ち帰りして翌朝以降に胡蝶カナエが仕事に戻った事だけに目が行くようにしている。

 

 これだけ聞けば、人によっては騙されるだろう。

 

「言いたい事はそれだけですか、元・炎柱さん(・・・・・・)。いや~口が上手いですね。銀治郎さんから事前に話を聞いていなかったらコロッと騙されそうでしたよ」

 

「そんな胡散臭い男の言う事なんて信じるな、蟲柱!! お館様も俺の言葉を信じて、裏金を柱から外して裏方に回した程だ。他の柱達もみな賛同した」

 

 お館様は、得意の勘でこのチャンスを逃す手は無いと煉獄槇寿郎からの提案を利用し裏金銀治郎を裏方へと異動させた。つまり、彼はお館様に利用された。

 

 その発言に胡蝶しのぶは、裏金銀治郎を確認した。柱の皆が賛同したという件については、聞いていなかったのだ。

 

「誤解をする発言は、止めてください。皆というのは、煉獄家の力が及ぶ範囲でしょう。岩柱は、"お館様に一任します"と言った。胡蝶カナエさんは、最後まで反対してくれたはずでしたが」

 

「そりゃ~、脅されていたんだろう」

 

「あり得ません。そもそも、あの日……銀治郎さんは、姉をご実家に連れて行って介抱してくれた事は分かっています。ご両親にも確認済みです。さて、そこの人(・・・・)――受け身を取る事をお勧めします」

 

 "煉獄槇寿郎さん"、"元・炎柱"、"そこの人"とグレードが低下していく。

 

 胡蝶しのぶの全力。

 

 彼女の肉体は、太陽を克服した竈門禰豆子の血も取り込んでおりパワーで言えばゴリラといい勝負であった。つまり、その小さい体にゴリラ並みのパワーが秘められている。

 

 そんな、彼女の全力の拳は鬼の頸を飛ばす程の力があった。

 

「まて!! 話せばわかだっ――ぐうおぇ!!」

 

 ガシャーーン

 

 胡蝶しのぶの鉄拳が煉獄槇寿郎の腹部にめり込んだ。そして、大の大人がトラックに衝突したかのように玄関の扉をぶち破り、家の中に水平に飛んでいった。

 

「ち、父上ーーーー!!」

 

 煉獄千寿郎が見事に飛んでいった父親を駆け寄る。

 

「しのぶさん、あれ死んだんじゃありません? 人が水平に飛ぶのって初めて見ましたよ」

 

 カチャリ

 

 煉獄杏寿郎が正座して、切腹の構えをする。

 

「裏金殿、胡蝶殿!! 腹を切って詫びるのでどうか。父上を許してやって欲しい」

 

「なんで、こんな立派な煉獄さんのお父さんが……。煉獄さん、今の一発で水に流します。だから、腹を切るとか止めてください。少しでも申し訳ないとか、助けた恩を感じてくれているなら、鬼舞辻無惨と鬼を退治して返してください」

 

「誠にかたじけない!! この恩は、いつか返させて貰おう!!」

 

「いいえ、それと……緊急活性薬を一本だけ渡しておきます。死んでなければコレで治りますので」

 

 ピクピクと痙攣を起こして血反吐を吐いている煉獄槇寿郎。

 

 胡蝶しのぶは、裏金銀治郎の手を引っ張り退散した。

 




12月に入り年末年始で仕事が忙しくなり、更新ペースを維持できません。
それに、来月には引っ越しもあり多忙ですorz

投稿間隔が落ちてしまいますが、気長にお待ち頂けると幸いです。

童磨を倒して、無惨ブッコロしにいく!!

だいぶ終わりが近づいてきた^-^
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