鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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いつもありがとうございます!!
感想ありがとうございます!!


感想であの童磨に同情の声が集まるとは……裏金さんの人徳のせいかしら^-^

そして、感想からネタを拾える作者は幸せだ!!
ありがとうございます、佐土様!!


作者、初めて記号に色を塗る技を手に入れたので活用してみた!!
まさか、最初に使う色文字が文字通り色文字になってしまったよ。


45:それが人間のやることかよぉぉぉぉぉ

 裏金銀治郎は、鬼滅隊として当然の仕事をしたまでであった。

 

「酷いよ。今までの俺との関係は、嘘だったんだね」

 

「辞めろって言っているだろう!! その絶妙に誤解を招く発言はワザと言っているだろう。ご近所様から生暖かい目で見られる気持ちにもなってみろ」

 

 泣き真似をする鬼を前に裏金銀治郎は、着々と装備を整える。特性の服を着て、流星刀、散弾銃、ローションと万全の構えであった。

 

 この時、童磨は時間稼ぎをしていた。鬼舞辻無惨が視界を覗き見ており、裏金銀治郎の裏切りに気がついたと思っていた。そして、仲間の派遣か、鳴女により無限城への強制招集を待っていた。

 

 だが、そんな都合の良い事はいつまでも起こらない。

 

「――でも、いいのかな? 鬼の味方にならないって事は、裏金書房に鬼が襲いかかるかもよ。今なら撤回してもいいよ」

 

「何度も言っておりますが、常に先読みして行動しないと上司のご機嫌は取れません。鳴女による無限城への強制転移など不可能。無惨による視覚ジャックもできませんよ。後、両親を狙うとか言われてたら、温厚な私でも我慢できません。――跪け」

 

 裏金銀治郎は、持っていた散弾銃で童磨の足を打ち抜く。その様子を笑顔で見守る胡蝶しのぶ。

 

 銃なんて引き金を引くタイミングに合わせて、頸を扇で守れば良いと浅はかな考えをしている童磨。だが、裏金銀治郎の指を追うことが()の彼にはできなかった。

 

 ズドンという音と共に忘れていた激痛が駆け巡った。

 

「ぎゃーー!! あだだだだっ!! な、なんで……治らない」

 

「いい気味ですね。姉の仇が、地面にひれ伏すなんて滑稽です。確か、鬼舞辻無惨なら、こう言うんでしたっけ?『何様のつもりだ、頭を垂れろ』と」

 

 何が起こったのか全く理解できない童磨。

 

 この程度の傷なんて、再生に時間を要する物でなかった。本来であれば、食らったと同時に治癒する程度のかすり傷。何かしらの要因で鬼の力が封じられている事を理解した。

 

 ならば、再度力を付けるべく鬼舞辻無惨の血が入った酒瓶を探す。あの量の血を取り込めば、状況を打破できると考えたのだ。だが、あったはずの瓶は何処にも無かった。

 

「お探しの酒瓶はこれですかな? 無駄ですよ。私程度の動きが目で追えなくなっている時点で、もう勝ち目は無い。血鬼術を使っても良いんですよ」

 

「――あれ? ど、どういうこと!? 俺の血鬼術がぁぁぁぁぁ」

 

「滑稽ですね。100年以上討伐された事がなかった上弦の鬼が無様。こんな鬼に姉さんがやられたなんて信じられないほどに」

 

 裏金銀治郎と胡蝶しのぶは、容赦がない。無力化した敵だとはいえ、無意味に長生きはさせない。往々にして、助けが来たり突発的な出来事が起こるのを避けるためだ。

 

 なにより、既に鬼を人間にする薬の検証も終わった。

 

「童磨さん、冥土の土産です。万世極楽教の資金を横領して、これらの準備を整えました。他にも、鬼滅隊の隊士の給料とか様々な事に利用させて頂きました。本当に感謝しています。そして、貯まった資金も全て回収させて貰いますので安心してください。万世極楽教の方は、日本国内を騒がした最悪の宗教団体として長く歴史に残る。鬼滅隊の為に、資金を稼いでくれてありがとう」

 

「それが人間のやることかよぉぉぉぉぉ」

 

 長年かけて築き上げた宗教団体。それは、童磨にとって存在意義でもあった。それを、奪うだけに飽き足らず、罪まで被せて闇に葬ろうとする裏金銀治郎。まさに、悪魔みたいな存在だ。

 

「いいえ、銀治郎さんだから、そこまでやるんですよ。感謝しなさい……楽に死ねるのだから」

 

 スパン!! と良い音が響く。

 

 胡蝶しのぶが流星刀を抜刀し、童磨の頸を切り落とす。

 

 その速度は、柱最速といっても過言で無い程であった。頭部を更にみじん切りにする。鬼から人間に戻った童磨は、消失せず肉片が床に散らばる。

 

 長年追っていた怨敵を討ち滅ぼしたというのに、何故か悲しさがあった胡蝶しのぶ。死闘の末に倒すという事もなく、唯の鬼を倒すより簡単に殺せてしまった事に不完全燃焼していた。

 

「後は、液体窒素で固めます。日光に当てて最終確認してから、残っているようだったら灰にしましょう。鬼舞辻無惨も童磨の存在が感知できなくなった事に気がついているでしょうから、早々に撤収です」

 

「銀治郎さん、ありがとうございます。色々と思う事は、ありますが…姉の仇を討つ事ができました」

 

「どういたしまして。私もしのぶさんと約束が果たせて良かったです。後は、鬼舞辻無惨と黒死牟だけです。もう一踏ん張りです」

 

 胡蝶しのぶは、裏金銀治郎の胸で涙を流していた。姉の仇を討つ事で緊張の糸が切れた。そんな彼女を優しく撫でる裏金銀治郎。美人の涙で服が汚れるのは、男の勲章である。

 

「……でも、姉さんの最後の言葉については、お話を聞かせて貰います」

 

「冤罪ですよ。私は、しのぶさん以外と肉体関係を持ったことはありません。今すぐに証拠をお見せしたいのですが、とりあえず早々に死体を回収して撤収しましょう」

 

 頬を膨らませて拗ねる胡蝶しのぶ。

 

 そんな可愛らしい彼女で遊びつつ、裏金銀治郎は液体窒素で固めた死体を回収した。

 

………

……

 

 "柱稽古"の真っ最中である現在、柱なのに稽古を行わない蟲柱と元・金柱。不思議な事に、後者である裏金銀治郎をこういう時だけ「柱としての自覚が足りない」とか理解不能な文句を付ける蛇柱や風柱がいる。

 

 しかも、胡蝶しのぶとの仲が公然となった為、拍車をかけて非難されていた。

 

 男と付き合い始めたせいで、本来やるべき稽古をやらないと。しかし、"柱稽古"に参加している隊士達にしてみれば、そのような理不尽な意見は全く理解できないものであった。

 

 医療で隊士の健康管理を支える蟲柱の胡蝶しのぶ。鬼滅隊の資金を管理し、"柱稽古"では、やる気を出す為、景品を用意してくれた裏金銀治郎。この二人が居なければ、"柱稽古"どころでは、無かった。

 

 上弦である童磨の死体を灰にした後、鬼滅隊に一本の電話が掛かる。電話の先は、鬼滅隊の資産運用係。産屋敷輝利哉は、恐る恐る電話を取った。

 

『輝利哉様ですか? 胡蝶しのぶです』

 

『あぁ、良かった胡蝶さんでしたか。一体、今どこに居るんですか? 休みを取ると言って一切連絡がなかったので心配しました』

 

 休みの日にも女性の行動を把握しようなど、とんでもないストーカー行為である。会社といえど、休日の社員行動は自由であるべきだ。

 

『色々と立て込んでいたので……良い報告と悪い報告があります。どちらから聞きたいですか?』

 

『……物言いが、裏金さんに似てきましたね。良い報告からお願い致します』

 

 胡蝶しのぶは、電話先で若干ショックを受けていた。

 

 鬼よりも鬼らしい恋人に似てきたと言われたのだ。

 

『上弦の肆を殺しました。万世極楽教にも国家機関の手がはいりっ!!……す、全ての罪を被って消えます』

 

『えっ!? 待ってください。上弦の肆を倒したって!? どうして、そんな大きな事をやるのに連絡が無かったんです。他の柱の人達に協力だって……いいえ、終わった事でしたね。皆には私から伝えておきます。悪い方の報告は?』

 

『――銀治郎さんが、上弦の肆との戦いで重傷を負いました。私もしばらくは、戻れません。ですが、アァン心してください。銀治郎さんの仕事机の引き出しに隊士への報償金とお見合い写真があるので、"柱稽古"突破者への対応はお願い致します』

 

 産屋敷輝利哉は、悪い報告が想像以上で耳を疑った。それに、音声が何故か艶っぽい謎もあるが電話のせいだろう。

 

 裏金銀治郎が重傷。胡蝶しのぶは当面帰らない。ハッキリ言って、他の柱が不在より問題があった。今現在だって、寝る間も惜しんで仕事をしているほどなのに、悪い冗談だと思えた。

 

『困ります!! 裏金さんの看病ですか? それなら、屋敷に連れてこれない程でしたら、他の者を代わりに向かわせます。どうか、胡蝶さんだけでも戻ってきて貰えませんか』

 

 仮にも指輪を付けている既婚者。新婚ホヤホヤの相手に重傷の夫を捨てて、仕事に戻れとは時代が時代ならパワハラで訴えられている。子供は純粋だから思ったことを口にする。だが、言って良い事と悪い事がある。

 

『最終決戦には、間に合わせます。また、れんらくァ……します』

 

 上弦の肆を撃破というのは、吉報であった。この報告があれば、"柱稽古"を蔑ろにしていると言われる二人の評価は、変わるのは間違いない。

 

 だが、その二人が鬼滅隊に戻らないという事は伝えるべきか伏せるべきか判断できない産屋敷輝利哉であった。

 

 

◆◆◆

 

 鳴柱……桑島慈悟郎。

 

 雷の呼吸の使い手で有り、育手として数々の隊士を輩出した男である。その一人に、裏金銀治郎も含まれる。呼吸法を知らない彼に対して、懇切丁寧に指導し才能を開花させた。

 

 今、その男は、腹を割いていた。

 

 理由は、雷の呼吸の継承権を持つ男が鬼となり、人を襲い食らったからという下らない事だ。そもそも、呼吸法が使える男が鬼になる事例は、上弦の壱がいる。その時に、上司である産屋敷が腹を切ったという情報はない。

 

 竈門禰豆子が人を食った場合、腹を切ると申し出た柱も居たが……桑島慈悟郎は、育てた隊士が鬼になったからといって腹を切るという事は約束していない。そもそも、腹を切ったからといって何の解決にもならない。

 

 寧ろ、優れた育手が死ぬだけという。鬼側に得しかない。

 

「ぐぐぐぐああぁぁぁぁ」

 

 切腹とは、腹を切る。苦しまないように頸を落とすまでが一連の動作である。人間、腹を切っても直ぐには死なない。つまり、頸を斬られないと言う事は、苦しみが増すだけである。

 

「一歩遅かったですね。ですが、この程度の怪我なら、何とでもなります。お久しぶりです。桑島先生、裏金銀治郎です」

 

「銀治郎さん。そんなことを言っていないで、緊急活性薬を」

 

 裏金銀治郎が桑島慈悟郎の一世一代の切腹を水の泡にする。緊急活性薬は、直ぐに切腹した傷を癒やした。

 

「何がおこったんじゃーー!! って、裏金じゃないか。いいや、それより、儂は腹を切らねばならんのじゃ」

 

「折角助けたのに、止めてください。それに一度腹を切ったので十分ですよ。獪岳が鬼になったからといって、優秀な育手が死んでは鬼側に利が多すぎます。私は、恩師である貴方の死ぬ姿なんて見たくありません」

 

 礼節を重んじる裏金銀治郎。鬼滅隊には重傷と報告してあるにも関わらず、恩師が腹を切る事を思い出して、足を運んだのだ。

 

「じゃが、儂が教えた雷の呼吸を悪用して罪も無い人を殺したんじゃ。儂が腹を切って詫びるしかない」

 

「別に、月の呼吸を使う上弦の壱もおりますので特に気にしないでもイイと思います。それに、獪岳は藤の香を消して鬼を寺に呼び寄せた過去を持っています。そのせいで何名もの犠牲者がでました。彼は、才能はあったでしょう。ですが、人間性はお世辞にも褒められた物ではありません」

 

 桑島慈悟郎は、上弦の壱が呼吸法を使う鬼だったのかと驚いた。獪岳の性格については、その通りだと思うところが多かったので、素直に受け入れてしまう。

 

「ならば、儂は殺された者達にどう詫びればいいんじゃ」

 

「詫びるのは、獪岳でしょう? それに、腹を切って自己満足されては困ります。我妻善逸君が悲しみますよ。彼、今凄く成長しました。まともに闘っては、私では勝てないでしょうね。そんな彼の成長を見たくはないのですか……ついでに、美人な奥さんを三人も娶っていますよ」

 

 あまりの正論に、桑島慈悟郎も冷静になってしまった。詫びて腹を切っても何にもならない。解決する為には、もっと他のことをすべきだと。

 

「なんじゃと!! 善逸の奴、いつからそんなにモテるようになったんじゃ」

 

 善逸が嫁を連れて、桑島慈悟郎へ挨拶に来る日も近い。だが、その時こそ、真の我妻善逸ブッコロし隊の刺客が増える。まさか、絶世の美女達を何人も侍らしているとは鳴柱の目を持っても見抜けなかった。




電話の音声が……まぁ、時代が時代だから電話線の状態がね!!
仕方が無い事故だ。

無限城編までもうすぐじゃ!!

次は、"柱稽古"の様子をやろうかしら^-^


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