鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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長らく時間を空けてしまい申し訳ありません。

感想をいつもありがとうございます!!

執筆前は、案外簡単に執筆できるとおもっておりましたが中々難しかった。

そして、気がつけば50話という事実に作者が驚いてしまった。
読者様がいてこそ続けられました。
ありがとうございます!!




50:零余子のプリズンブレイク

 鬼滅隊が保有する隔離施設。隊士達の生活を支える鬼達が暮らす施設だ。

 

 ここで暮らす鬼達は、幸せな事に鬼滅隊の隊士達に殺される心配も無い。働きに応じて、猿肉など動物の肉が提供される。毎日の仕事といえば、肉塊となる事だ。考え方によっては、安全な施設で毎日人の為になれる仕事まで提供してくれるこの場所は天国だ。通勤時間0という素晴らしい立地である。

 

 だが、その天国から脱出を試みている鬼がいる。その鬼の名は、零余子。

 

 今現在の彼女は、日輪刀と同じ素材から作られた箱にバラバラにして詰め込まれている。その箱には蛇口が付いている。蛇口を捻ると流れ出る血液が、柱専用の緊急活性薬の原材料となる。

 

 本来であれば、そんな状態で脱出など不可能だ。

 

 この施設では、裏金銀治郎の血鬼術――血界により、血鬼術の発動が阻害され。また、この施設には、珠世一派も暮らしている。"鬼を人間にする薬"の開発をする重要拠点にもなっていた。

 

 だが、厳重に管理している施設であっても、穴がある。

 

「珠世様が居るんだから、常に綺麗にしておけよ!! 汚れた所は、お前等で掃除しろ」

 

「わかりました」

 

 零余子がいる場所も血で汚れていた。裏金銀治郎が特注の隊服を作る為、箱から出した事が何度かある。その際に、命乞いをする彼女の生皮を剥いだ時にあちこち汚れたのだ。だが、その時は裏金銀治郎が自ら掃除を行った。

 

 この場所の重要性を考えれば、当然だ。

 

 だが、下弦の鬼を閉じ込めている箱がある場所を鬼に掃除させようとする愚か者がいる。従順な犬となった鬼とはいえ、掃除を命じて目を離すとは頂けない。どんな厳重な施設でも、管理人が手を抜けばどうなるか。大人なら誰でも理解できる事だ。

 

 真面目に掃除する累の姉を演じていた姉蜘蛛。監視の目が無くなったのを確認し、行動を開始する。

 

「零余子様、監視の巡回タイミングは把握しました。施設も壁は厚いですが、作りは単純です。薄い箇所なら零余子様で壊せるかと」

 

『よくやった。次は、箱の鍵を探せ』

 

 零余子は、何度か外に出されたタイミングで施設内を比較的に自由に行動が許されている姉蜘蛛を見つけた。そして、コンタクトを取る事に成功したのだ。蛇口から肉片を外に出して、排水溝の中で再生させた。

 

 少しずつ肉体を再生し、配水管の中を移動させ姉蜘蛛の場所まで辿り着いた。まさに執念の成果であった。そして、『外に出たくないか』と魅力的な言葉で姉蜘蛛を仲間に引き込んだのだ。その肉片は、バレないように姉蜘蛛が食べて処理する。

 

 肉片を少しずつ蛇口の外に出して再生するには時間が掛かりすぎる。だからこそ、仲間が必要だったのだ。

 

………

……

 

 零余子は、裏金銀治郎に捕まってから今まで何度も命乞いをした。当初は、死ねれば幸いという思いで、鬼舞辻無惨の情報すら彼女は提供した。当然、裏金銀治郎は彼女を解放しない。

 

 彼女は、生きる事を諦めなかった。

 

 いつか月明かりが照らす世界に再び戻る事を夢見る。いつか役に立つと思い、ここからの逃亡パターンを考える事だけが彼女の生きがいだ。そうでもしなければ、正気が保てない。鬼とはいえ、精神的に死んでいく。

 

 そして、彼女が逃げだそうと決意したのは、裏金銀治郎が上弦の弐と闘って重傷を負った事が珠世一派から漏れ聞こえたからだ。人間とは思えない程、冷酷で血の涙もない男がいないのだ。

 

 鬼の居ぬ間になんとやらとはこの事である。

 

「あの男の性格です。鍵は、本人しか持っていない事もありえませんか」

 

『ありえる。ならば、外から箱を分解しろ。できるな?』

 

「鬼をバラバラにしている施設があるわ。そこなら、機械を修理する工具があるはず」

 

『猶予はあまりない。どんな方法でも構わない、この箱を分解する工具を手に入れろ』

 

 人が作った物である以上、壊せない物は存在しない。特に、この手の物ならば作った手順の逆を行えば必然的に壊せる。箱の外側にあるネジを回せば良い。

 

「わかりました。――愈史郎様、血の汚れが酷いので、精肉部屋から洗浄液を持ってきてもよいでしょうか? このままでは珠世様がご不快に思ってしまうかも知れません」

 

 大声は、珠世一派が居る場所にまで届く。

 

 そして、珠世第一に考える鬼は、珠世という枕詞が付けば大体の事に対して許可を出す。これが、長年ここに住んでいる姉蜘蛛が知った豆知識だ。だからこそ、姉蜘蛛も脱獄の話に乗った。

 

 自らの力だけでは脱出不可能。勿論、ココの鬼の中で一番好待遇で猿肉を食えるという特権階級だが、それは感覚が麻痺しているに過ぎない。世間一般の鬼からしたら、ゴミを漁っていると大差ない。

 

「なんだと!! 早く掃除しておけ。珠世様の視界が血で汚れるなど許さないからな」

 

「愈史郎様、直ぐに掃除します。洗浄液が飛び散るので、少し離れていてください」

 

 こうして、着々と準備を整えていく零余子と姉蜘蛛。零余子の力は、ここからの脱出で必要不可欠。動ける姉蜘蛛という駒も不可欠であった。双方が協力して初めて事が成せる。本来鬼同士に仲間意識は希薄だ。だが、そんな鬼にも友情が芽生える瞬間であった。

 

◇◇◇

 

 工具を片手に掃除のフリをして、箱を分解しようと尽力する姉蜘蛛。

 

 堅いネジを少しずつ回していく。急ぎすぎて失敗すれば二度目のチャンスはない。だからこそ、丁寧に且つ迅速に事を行う必要があった。

 

 零余子としても、心が安まらない時である。一世一代の賭け。零余子の中では、既に裏金銀治郎の方が鬼舞辻無惨より恐ろしい人物に昇格している。人間というカテゴリーに分類されないにしても、同じ人型で女性の姿をしている者にコレほど無慈悲なことをできる存在が世の中にどのくらい居るだろうか。

 

 ギリギリと箱が音を立て始める。ネジを緩めた事で中に無理矢理押し込まれた零余子の血肉が漏れ始めた。あたりに血の臭いが立ちこめる。当然、鬼である珠世一派が気がつかない筈が無い。

 

「おい!! 血の臭いがするぞ、何をやっている? 飯の時間は、まだ先だ」

 

 異常を察知して、愈史郎が確認にやってくる。愈史郎の実力は、血鬼術があったにせよ鳴女を不意打ちできる程だ。姉蜘蛛でどうにかなる相手ではない。この段階で計画を破棄するにしても、二人は運命共同体。言い逃れは不可能。

 

『頭をぶつけて砕け。洗浄液で滑った事にすればやり過ごせる。後、あの男は童貞くさいから、上着も脱いでおけ』

 

「ば、馬鹿じゃないの!! そんな事で誤魔化せるはずないでしょ。それより、まだ出てこれないの!!」

 

 幾ら下弦の肆だからといって、流れ出た血肉で肉体を短時間で構成するのは不可能だ。肉体の重要な器官は、僅かな隙間から出すのは不可能。

 

 よって、否応にも時間稼ぎする必要があった。

 

『無理だ。ネジをもっと外せ。後、いいからヤれ。やらないと二人とも、二度と月明かりは拝めないぞ』

 

「わ、わかったわよ!! もう、どうなっても知らないからね」

 

 姉蜘蛛は、工具で自らの頭を砕く。血が噴水のように飛び出して、血の臭いを濃くする。そして、言われたとおり、服を脱いで全裸になる。もはや、鬼になって何十年も生きており、恥も外聞もなかった。

 

………

……

 

 箱の状態を確認されるより早く、姉蜘蛛は愈史郎の前に飛び出した。全裸で、頭を再生しながらの登場に、流石の愈史郎も困惑する。一体、どういう状況だと。だが、彼も男であった。目線が下半身や胸などイヤらしい所で固定される。

 

「申し訳ありません、愈史郎様。洗浄液で足を滑らして箱の角で頭をぶつけてしまいました」

 

「いいから、服を着ろ!! なんで、全裸で掃除しているんだよ」

 

「予備の服がありませんので、汚れないため脱いでおりました。掃除にはもう少し時間が掛かりそうですので、待って貰えませんか」

 

 童貞には、些か刺激が強かった。

 

 だが、濃厚な血の臭いが気になる愈史郎。しかし、運は鬼に味方する。

 

「どうしましたか、愈史郎」

 

「珠世様!! この状況を見られたら……後、30分だけやる。それまでに掃除を終わらせろ!! いいな」

 

 全裸の姉蜘蛛と愈史郎。

 

 この状況を見られて、誤解される事態だけは避けたかった。珠世一筋と謳っているのに、鬼を全裸にして楽しむ外道だと思われたら、生きていけないと結論がでた。よって、この部屋から最大の難敵であった珠世一派が勝手に離れていく事態になる。

 

「えぇ、それだけあれば十分です」

 

 彼が童貞で無ければ、この場に留まらず箱の確認に向かっただろう。

 

 姉蜘蛛は、愚か者の背を見送り、直ぐに作業を続けた。そして、格闘の末10分後、箱を留めていた主要なネジが全て外された。

 

 分解された箱の中から、バラバラになった肉片や骨が流れ出す。発声器官だけをこの中で再生し声を出せる状態にしたのは、零余子の執念である。

 

「少し待ってろ、体を治す」

 

「早く!! 早く!! 」

 

 零余子の肉体は、散らばった肉片を集め再構成を始める。

 

 再生を終えた零余子は、天にも昇る気分であった。今この時をもって、こんな最悪な場所からおさらばできる未来が見えている。

 

「くっくっく、よくやった。さぁ、こんな場所から早く逃げ出すぞ」

 

「はい!! 零余子様」

 

 裏金銀治郎が鬼の安住の地として用意した場所から、逃亡を図る二人。最大の難関であった監視の目は、ない。箱の外に出てしまえば、下弦の肆である彼女を正面から抑えられるのは珠世一派のみ。この施設で血鬼術が使えないのは、珠世一派も同じ。

 

 決死の覚悟で逃亡を図る下弦を地力で取り押さえる事が必要だ。それが可能な鬼は、この施設にはいない。珠世が本気になればそれも可能であったが、彼女はこの施設を快く思っていない。

 

 既に、"鬼を人間にする薬"の開発を完了しテストも終わっている。珠世一派にしてみれば、この施設は用なしだ。最悪、鬼が逃亡したところで、珠世一派としては支障は無い。

 

 零余子と姉蜘蛛は、施設で暮らす鬼達にも見つからないように、物陰に隠れつつ移動する。逃げ出す最中に気をつけるべきは、巡回を行う鬼。裏金銀治郎の手で心が折られて従順な犬となっている。同胞の鬼を監視するという仕事……この場所においては、特権階級であり猿肉を与えられる数少ない職だ。そんな鬼に見つかれば、事の露見が早まる。

 

「チッ!! 雑魚なんだけど、鬼は死なないのが厄介ね」

 

「もうすぐ、別の牢に移動しますので待ちましょう。零余子様」

 

 どこかに都合良く日輪刀が落ちていないかと思ってしまう零余子。この時ばかりは、鬼滅隊に代わり鬼退治をしても良いとすら思っていた。

 

 鬼が鬼を殺す新時代……そんな夜明けは、裏金銀治郎が望む時代であった。ゴミはゴミ同士で殺し合うという真っ当な世界になればよいと誰しもが考えている。

 

 鬼の巡回をやり過ごした彼女たちは、資材搬入口へと急いだ。数少ない外へと通じる出入り口である。胡蝶印のバイアグラを製造する機材を持ち運んだ場所であり、珠世一派が普段居る場所からも遠い。ここからなら、比較的安全に脱出可能だ。

 

 勿論、普段は厳重に封鎖されている。並の鬼の力では破壊不可能な扉もある。

 

「ここで私の出番って訳ね。確かに、この扉は並の鬼じゃ壊せないわね。私でも壊すのに時間がかかるわ。でも……」

 

「はい!! この先は、間違いなく外に繋がっています!! 」

 

 扉は確かに厳重であった。だが、馬鹿正直に扉を壊すなどしない。扉の横にある壁を破壊する。それが最適解であった。

 

 だが、何事も順調にはいかないのがセオリーである。普段は絶対にない。だが、こういうときに限り、巡回の鬼がやってくる。気が向いたから、仕事を頑張って報酬を更に貰おうとしたから等の理由は様々だ。

 

 眼が死んでいる鬼が、資材搬入口の扉の前にいる不審な鬼を見つけた。

 

「お前達、何をしている。早く牢に戻れ」

 

 この時、零余子達は選択に迫られる。

 

 この巡回中の鬼を仲間に引き入れるか、しばらく再起不能にしておくかだ。どちらの選択肢にもリスクがあった。

 

 だが、答えは直ぐに決まる。

 

「分かった。貴様は、そこでしばらく死んでおけ」

 

 ただの鬼が、下弦に勝てるはずも無い。本気を出した零余子の力を前に、仕事に従順な鬼はバラバラにされる。

 

………

……

 

 愈史郎は、いつまでも掃除が終わらない事に腹を立てて様子を確認して、愕然としていた。下弦が格納されているはずの箱が分解されている。そして、中身の下弦や掃除をしているはずの姉蜘蛛がその場から消えていたのだ。

 

「大変だ!! 珠世様の身を守らなければ!!」

 

 主人の事を第一に考える男であった。

 

 捉え方次第では、有能かも知れないが……死なない鬼を守る必要が何処にあるのだろうか。この場に、裏金銀治郎が居たならば、そう言っていただろう。

 

 

◇◇◇

 

 資財搬入口の壁が破壊され、見事に外へ通じる通路に脱出を果たす二人の鬼。

 

 そんな二人は、月明かりがさす出口に向かい一歩ずつ歩みを進める。これからの明るい未来を楽しみに、浮かれていた。人里から離れた場所に隠居して、細々と人間を襲えば見つからない……そんな事を考えていた。

 

「外に出たら京都へ行こう。あそこなら、私の拠点だったから鬼滅隊が来てもなんとでもなるわ。貴方は、有能だから連れてってあげるわ」

 

「ありがとうございます。零余子様!! 誠心誠意お仕え致します」

 

 姉蜘蛛にとっても、渡りに船である。下弦の庇護が無い状態で、今の世の中を暮らしていける自信は無かった。無駄に目立つ容姿である為、人目に付いてしまう。この先を生き残るには強い鬼による庇護が絶対不可欠である。

 

 

 出口の月明かりが、陰る。

 

 

 異様な雰囲気を纏っている人影がふたつ。その雰囲気に体と心に刻まれた恐怖が呼び起こされる。零余子と姉蜘蛛は、出口を前にして足を止めてしまった。

 

「あら~、そんなに急いでどちらに行かれるのですか? まだ、殺した人の罪を洗い流せてないじゃないですか。早く罪を洗い流して生まれ変わりましょうよ」

 

「はぁ~、しのぶさんの予感(・・)が的中しました。蟲の知らせとでもいうんですかね。これから、ラスボスを相手に準備が忙しい時に止めて欲しいです。貴方達の為、鬼滅隊の予算を削って用意したこの施設の何が気にくわないって言うんですか」

 

 胡蝶しのぶと裏金銀治郎。鬼側の視点で言えば、異常者であった。どちらも本気で言っており、正気を疑うに十分である。

 

 裏金銀治郎が投擲した一本の錫杖が姉蜘蛛を貫いた。

 

「ギャアアアアアアーーー」

 

 錫杖から迸る電流が鬼の肉体や神経を内部から焼く。死ぬに死ねない鬼にしてみれば、良い拷問道具であった。

 

「ば、馬鹿な!! これは、半天狗様の!? でも、ここで何故血鬼術が」

 

「あぁ、それは、私の(・・)血鬼術として再構成したからです。成功する可能性は、半々でしたが上手くいったようです」

 

 裏金銀治郎は、半天狗から回収した扇と錫杖を食らっていた。

 

 冗談で胡蝶しのぶに伝えたら、醤油とバターで炒めればなんでも食べられるでしょと料理してくれたのだ。人生で初めて、女性からアーーンと料理を食べさせられたのが鬼由来の道具という悲しい過去を背負う裏金銀治郎。

 

「何を言っているか分からない。お願いだ。もう人は喰わないと誓う。だから、許してくれ」

 

「どうしますか、銀治郎さん。割と本気で言っていますよ彼女」

 

 胡蝶しのぶも裏金銀治郎がどのような回答をするか予想していた。

 

「本当なら、ドリンクサーバーに逆戻りです。ですが、君達は運が良い……死んで貰いましょう」

 

 鬼化した裏金銀治郎の存在が露見するのは、まだ早い。

 

 鬼舞辻無惨という存在。珠世一派という存在。鬼滅隊の柱達という存在。だからこそ、胡蝶しのぶが未だに人間に留まっている。裏金銀治郎不在を人側から誤魔化すには彼女ほど適任はいない。

 

「だったら!! 意地でも逃げ切ってやる」

 

 零余子は、ここまで連れ添った姉蜘蛛を見捨てる事を決意した。柱一人でも勝率は低いというのに、それが二人。足手まといを連れてどうにかできる相手ではない。致命傷となる首だけを守り、血鬼術が発動できる外に逃げれれば、なんとかなるという希望的観測であった。

 

「だそうですよ。私がやってもいいですが、鬼とは言え裸の女性を相手にすると、しのぶさんが怖いのでお願いしますね」

 

「じゃあ、あちらで焼け焦げている鬼の処分をお願いします。私は、下弦と遊んであげます」

 

 胡蝶しのぶが、扇を振るう。その瞬間、視認できない風の刃――鎌鼬が発生した。その鋭さは、コンクリート壁に亀裂を残す。半天狗の扇は、面で押しつぶすタイプであったが、裏金銀治郎産の扇は殺傷能力重視。

 

 零余子は、勘で回避行動を取った。腕が切断されるが、直ぐに生やす。抜刀されないうちに横から逃げ切ろうとしたが、胡蝶しのぶが腕力だけで零余子を捕らえて、床に押さえつける。

 

「ガッ!! この女、本当に人間か!? 」

 

「失礼ですね~。私の何処が人間に見えないって言うんですか? 私、柱の中でも一番力が弱いんですよ。それに力負けする鬼とか、恥ずかしくないんですか?」

 

 全身の力を込めて、胡蝶しのぶの拘束を解こうとする零余子。だが、ビクともしなかった。下弦の肆ともなれば、馬力計算できる程だ。それを上回る胡蝶しのぶは、一体何馬力なのだろうか。

 

 胡蝶しのぶは、鬼の始祖の体液(意味深)を大量に摂取している。鬼の強さは、人間を食らう事でも上がるが、鬼の始祖の体液摂取量を増やす事でも大幅に向上する。勿論、人間であっても強い鬼を食えば食うほど強くなるし、強い鬼の体液を摂取すればそれだけ……。

 

「嘘をつけ!! 貴様のような人間が居てたまるか!! この淫魔め」

 

 その台詞を聞き取った裏金銀治郎は、何故分かった!! と思わず声を上げそうになったが堪えた。ここ最近、女性らしい色気が更にましてイヤらしいオーラを無自覚に振りまいている胡蝶しのぶ。一つ一つの仕草や行動が男のツボを刺激している。

 

 胡蝶しのぶに腕力で骨が砕かれるが悲鳴一つあげない零余子。彼女にしてみれば、箱に詰め込まれてドリンクサーバーにされた苦痛に比べればこの程度の痛みは無いに等しい。鬼の中で一番痛みに強いのは彼女である。

 

「しのぶさんを怒らせてどうするんでしょうね。まぁ、珠世一派が来る前に処理しましょう。最後に言い残すことは?」

 

 裏金銀治郎が、今まで隊服の材料に貢献してくれた姉蜘蛛に最後の情けを掛けた。彼女の働きが、鬼滅隊の一部を支えていたことは間違いない。

 

 電撃に焼かれ苦痛を味わいながらも姉蜘蛛は必死に口を開いた。

 

「今より、もっと働きます。だから!!」

 

「糸や溶解液なら、私でも生成できるからもう不要だ。便利な能力をありがとう」

 

 無惨産の鬼は全滅すべき。それが裏金銀治郎が出している結論であった。

 

「助けてよ。お願い」

 

「あぁ、じゃあ死のうか」

 

 裏金銀治郎の日輪刀が姉蜘蛛の首をはねた。

 

◇◇◇

 

 珠世は、下弦の鬼が逃亡したとの報告を受けて直ぐに行動を開始した。

 

 施設内を探し回った末に、資材搬入口に辿り着く。内部から壁が破壊されている事から逃亡に利用されたのは間違いないと判断する。一刻も早く鬼を捕らえるため、搬入口の鍵を掛けて外へとでた。

 

 そこには、胡蝶しのぶが一人立っていた。

 

 あたりは鬼との争いがあったのか、血しぶきで真っ赤に染まっている。胡蝶しのぶを淫魔呼ばわりした下弦の鬼の頭部が何度も粉砕された跡であった。

 

「遅かったですね珠世さん。ダメですよ、鬼はしっかり管理して貰わないと。私が居なかったら、下弦の肆と糸を出していた鬼が逃亡していました」

 

「それについては、コチラの不手際です。申し訳ありません。――、これは胡蝶さんが?」

 

「えぇ、多少時間が掛かりましたが、しっかりと処分しておきました。今後は気をつけてください」

 

 珠世は、胡蝶しのぶの雰囲気が以前と微妙に異なる事に気がついた。

 

 だが、鬼のせいで旦那の裏金銀治郎が重傷だ。そのせいで、気が立っているのは当たり前と追求はしなかった。

 

「分かりました。しかし、明日の夜には我々もココを出なければなりません。産屋敷の屋敷で無惨を待ちます。ここの鬼達はどうしましょうか」

 

「ならば、処分します。私も鬼舞辻無惨を倒すのに参加します。この施設を誰も居ない状態で放置は危険です」

 

 今まで役に立ってきた鬼を簡単に処分しようという胡蝶しのぶに、珠世は裏金銀治郎と同様に危険な存在だと認知し始めた。




ふぅ、何とかアンケートを全部消化できた^-^
年末年始は本当に忙しくて執筆に時間が割けなかった。

さて、無限城編へと突入だ!!



*************嘘予告*************
裏金産の血鬼術に目覚めた胡蝶しのぶ。
その血鬼術は、過去の自分に意識を上書きする物であった。
そして、一つの可能性に気がつく……胡蝶カナエを救う事ができると。

胡蝶しのぶは、裏金銀治郎から過去改変の危険性を説明される。だが、彼の制止を振り払い、血鬼術を行使した。その結果、姉であるカナエを助ける事に成功する。

だが、それにより未来に変化が生じる。裏金銀治郎と胡蝶カナエという、元居た世界線ではあり得ないカップリングが発生する。

最愛の男を唯一の家族に取られる結果を胡蝶しのぶは黙って居るほど大人しい女性ではない。

20020(・・・・・)年1月1日投稿予定――時間跳躍のバイアグラ(・・・・・)をこうご期待ください。
*****************************

タイトルをシュタゲ風にしてみました。
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