鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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58:日本人にあるまじき行為

 裏金銀治郎は、鳴女から回収した血鬼術を馴染ませていた。

 

 鳴女の血鬼術は、空間に作用する血鬼術として最高峰の能力であり、並の鬼では扱う事すら難しい。鬼の始祖になった裏金銀治郎とて、直ぐには扱えない程だ。だが、元現代人を舐めてはいけない。3Dゲームや体感型ゲームを嗜んだ経験がココで活きてくる。

 

「あれだけの過剰戦力が揃っているのに、倒すのにここまで苦労するとは上弦の壱は化け物だ。首を落としても、崩壊が始まるまでが長すぎる」

 

 裏金銀治郎は、無限城で起こっている出来事を覗き見していた。柱専用の緊急活性薬のお陰で、死傷者こそ出ていないが大半が重傷だ。炎柱が何度も重傷を負ったせいで薬不足になり、回復が間に合っていない。

 

 黒死牟を前に棒立ちで何度も重傷を負った煉獄杏寿郎。これがバタフライエフェクトと言われる現象なのかと。原作通りならば、居ない筈の男がこの場で奮戦している。だが、それが事実ならば、裏金銀治郎という存在も同様である。すなわち、考えすぎだ。

 

 歯磨きを終えて、口の中の清潔感を取り戻した裏金銀治郎。彼は、胡蝶しのぶが転移可能な場所に居る事を把握した。そして、指をパチンとならし転移させる。距離が意味をなさないこの能力は誠に素晴らしいと裏金銀治郎は興奮していた。

 

「おかえり、しのぶさん。伊黒さんを殺さなかったんですね。お優しいことで」

 

「ただいま、銀治郎さん。計画は順調のようですね……あの糞野郎の一件を除けば。次は、どうします? 鬼舞辻無惨ですか? 黒死牟ですか? それとも、鬼滅隊ですか?」

 

 胡蝶しのぶの瞳は濁っていた。

 

 彼女は、鬼滅隊に世話になった過去がある。産屋敷耀哉という最高の当主に恩もあった。恩に応えるだけの働きを彼女は行っている。彼女のお陰で何人もの隊士の命が助かっている。彼女がいたからこそ、隊士達が大幅に強化され、文字通り鬼滅隊を支えた。

 

 そんな彼女を見かねた裏金銀治郎が、胡蝶しのぶをそっと抱き寄せる。青筋を立てるのは美しいが、濁った彼女の瞳は美貌を損なう――それが、裏金銀治郎の持論であった。そして、子供をあやすかのように背中を優しく叩く。

 

「大丈夫です、しのぶさん。いつかこうなる気もしておりました。だから、責任を感じないでください。汚れ役は私だけで十分です……ほら、私って何かと胡散臭いでしょ。そういう役にピッタリじゃないですか」

 

「――そう言う言い方は、卑怯です。銀治郎さんが、あまりにも不憫じゃないですか。まぁ、確かに胡散臭いですし、そんな役回りはピッタリかもしれませんよ。ですが、私の大好きな旦那さんなんです。私が怒るのは変ですか?」

 

 この可愛い生物は何というのだろうと裏金銀治郎は思っていた。

 

 胡蝶しのぶは、包容力のある胸に抱かれ心なしか顔を赤らめて嬉しそうにする。そんな二人の奮起を遠目で眺める隊士達。床にペッと唾を吐き捨てていた。

 

「私のために怒ってくれたのは嬉しいです。アレ(煉獄槇寿郎)については、私が原因ですから、気に病む必要はありません。あの時、もっと上手に取りなしていたら問題にはならなかったでしょう。だから、冷静になってください。そうしないと、足下をすくわれます。――例えば、首を狙ってくる愈史郎君とかに」

 

 裏金銀治郎や胡蝶しのぶに致命の一撃を与える可能性を持つ鬼がもう一人この場に居る。目くらましの術という鬼舞辻無惨の知覚能力すら上回る血鬼術。その使い手が、機を狙っていたのだ。

 

 胡蝶しのぶは、その存在を裏金銀治郎の言葉で思い出した。咄嗟に、血鬼術"胡蝶の夢"を発動させる。彼女の血鬼術は、常時発動型ではない。それなりの体力を消耗する能力であった。

 

「2秒後、私の右後ろ5m」

 

 胡蝶しのぶが経験をフィードバックさせる。そして、出現座標を正確に伝達した。裏金銀治郎は、両指の間に深紅の糸を生成する。下弦の伍から回収した血鬼術だ。だが、鬼の始祖が繰り出す威力は、下弦とは規模と威力の桁が違う。

 

「一度、こういうのやってみたかったんですよ。血鬼術―"聖剣乱舞(エクスカリバー)"」

 

 裏金銀治郎の指から網の目となった糸が放たれる。

 

 その網の目のサイズは、1cmとサイコロステーキを作るには丁度良いサイズであった。広範囲且つ高速で広がっていく規則正しい形状の網。あらゆる物を切断するその力は、鬼の始祖に恥じない物であった。そして、数十メートル進んで消失する。

 

 グシャリという肉が崩れる音と共に無限城の一部が盛大に崩壊する。

 

 だが、切れ味が良すぎるというのは欠点でもあった。鬼という再生力を持つ者にとって、繋げやすいという結果を生む。愈史郎は、裏金銀治郎の攻撃を受けた傷を再生させていた……だが、無傷では無い。衣服と目くらましの札が消し飛んだ為当然全裸となり、鬼の形相で裏金銀治郎をにらみ付けていた。

 

「きさまぁぁぁ!! 珠世様を助けられたのに見捨てたなぁぁぁぁ」

 

「見捨てるって……人間を大量に殺した鬼を何故助ける必要があったんです? そもそも、自爆特攻を覚悟していたんでしょう。流石に、怒りの矛先を間違っているでしょう。私より、鬼舞辻無惨を殺しに向かってくださいよ」

 

「嘘をつけ、珠世様は人を殺してない!!」

 

「いいや、殺している。実の子供と夫をその手で殺し、自暴自棄になって沢山の人を殺している。それにさ~、珠世を殺したのは鬼舞辻無惨でしょ。何でここに来るかね?」

 

 鬼舞辻無惨がこの無限城に隠れている限り、鬼滅隊に勝利はない。

 

 愈史郎は、鬼舞辻無惨を太陽の下へあぶり出す為、鳴女を処理しにここに来ていた。居るはずの目標が不在、代わりに裏金銀治郎と胡蝶しのぶを発見したのだ。彼は、今現在無限城が崩壊していない事から一つの仮説に行き着いた。裏金銀治郎が何かしらの方法で、無限城を維持している。

 

 その維持している力を使えば、鬼舞辻無惨に一矢報いる事ができる。

 

「鬼舞辻無惨を地上に叩き出すためだ!! その為に、貴様の血鬼術を使わせて貰おう」

 

「銀治郎さん、彼馬鹿ですかね。そんなの普通に頼めば良いじゃありませんか。鬼舞辻無惨を殺すのは、銀治郎さんの目的の一つなんだし、何故暴力に訴えようとするんでしょう」

 

「良い疑問です、しのぶさん。そりゃ、無惨産の鬼だからに決まっている。愈史郎君も目障りだから、死んでくれ(・・・・・)――金の呼吸 肆ノ型 化合爆砕」

 

 女性の前でいつまで全裸で汚い物を見せつけてくるのだと裏金銀治郎はイライラしていた。血鬼術を回収済みの鬼なんて、早々に殺す。それは、変わらない基本方針だ。

 

 裏金銀治郎の流星刀が愈史郎の首をはねる。首から下が風船のように膨らみ爆発して木っ端微塵となった。実に、汚い花火だ。

 

「あらあら、殺しちゃったんですか、銀治郎さん。隔離施設じゃあれだけ働いてくれたのに~。さて、邪魔者も居なくなりましたね!! コホン、銀治郎さん。さっきの続きしてくれてもいいんですよ」

 

「おいで。多少予定外の事もありましたが、問題ありません。だから、しのぶさんは冷静に事に対処してください。それと――愛していますよ」

 

 ぽかぽかと可愛らしく裏金銀治郎の胸を叩く胡蝶しのぶ。

 

最終決戦を前に愛を告げられる事は、よくある展開。胡蝶しのぶは耳まで真っ赤にしていた。淫柱と言われる割に純情である。だからこそ、"誘い受け"の威力が破壊的なのだ。

 

「ずるいずるいーー!! なんで、それを今言いますか!! 恥ずかしいじゃないですか。わ、私も銀治郎さんの事を愛していますよ。喜んでください、こんなに若くて可愛い女の子から愛してると言われるなんて、普通ありえないんですよ」

 

「分かっていますよ。可愛くてエッチな女の子だってね」

 

 胡蝶しのぶが、裏金銀治郎の口を塞いだ。そして、唾液が糸を引く……その様子を見てしまった隊士達。無限城の畳に大量の唾が吐き捨てられる。畳に唾を吐き捨てるなど行儀が悪い。日本人にあるまじき行為である。

 

◇◇◇

 

 俗物有能隊士達は、裏金銀治郎と胡蝶しのぶのやり取りをしっかりと見ていた。

 

「やっぱり、金柱様って鬼だな。俺達独身隊士になんて物を見せ付けてくれる!! なに、あれ!? 最終決戦前に胡蝶様とイチャイチャ!! 羨ましすぎるだろう。そうだろう、幸村!!」

 

「いや、俺彼女居るし、普通だろう。あのくらい」

 

 20人の固い結束に綻びが生じる。だが、戦いとは同じレベルでしか発生しない。彼女持ちというステータスだけで、彼女無しは敗北が決まっていた。男同士の醜い殴り合いが発生する。

 

 馬鹿丸出しの行為だが、雰囲気が明るくなる。戦場の張り詰めた雰囲気は、彼等には無かった。

 

「いいな~胡蝶様。私もそれなりのスタイルだし~、愛人枠ならいけると思うんだけど。 アオイには金柱様のご実家を教えた恩もあるし、期待できるわよね」

 

「サクラ、何でお前は金柱様の実家を知っているんだ。あぁ、言っておくが実家の場所なんて俺達に言うなよ。後藤みたいになりたくないからな」

 

 天堂サクラ……神崎アオイの同期にして数少ない女性、そして俗物隊士の一人であった。彼女こそ裏金実家を神崎アオイに教えた張本人である。彼女が裏金実家を知る理由は、実に簡単だ。彼女の実家は裏金銀治郎と童磨が密会していた喫茶店だ。つまり、ご近所様という事だ。

 

「えっ、後藤って『隠』のあの人でしょ? 胡蝶様の戸籍情報を漏洩したまでは知っているけど、どうなったの?」

 

「あいつ、今、網走監獄で終身刑にされているぞ。二度とシャバ復帰は不可能だろうな」

 

「――今の話、みんな聞かなかった事にしてよ。今度、可愛い女の子紹介してあげるから」

 

 言われなくても報告するつもりなど無かった。

 

 言った言わないの話で刑務所送りなどごめんである俗物達。だから、何も知らない事にして可愛い女性を紹介してもらおうと考える。俗物に恥じない隊士達であった。

 

「俺、アオイちゃんを紹介して欲しい!! なんだかんだで、あの子可愛いからね」

 

「アオイは、産休だから無理よ。諦めなさい」

 

 俗物男性隊士が涙を流して崩れ落ちた。休暇ならまだしも、好きだった女性が産休で休みとか心を抉るに十分な攻撃だ。

 

「嘘だぁぁぁ!! 相手は、誰だよ!! 今なら、炎の呼吸の奥義が使える自信があるぞ。ぶっころしてやる」

 

「さぁ、父親は教えてくれなかったけど~、竈門炭治郎かな。女の勘だけど」

 

 女の勘とは、こういう時は無駄に鋭い。男性では、気がつけないような事を平然と言い当てる。そして、俗物男性隊士が何人も崩れ落ちた。数少ない可愛い女性隊士の下事情がドンドン暴かれて、絶望のどん底であった。

 

「え、でもアイツって胡蝶様の継子の栗花落カナヲとヤっているだろう。"柱稽古"の途中から態度があからさまだったしな。……あぁ~、だから産休で金柱様の所に避難したのか」

 

………

……

 

 俗物達は、人の不幸を笑っていた。人の不幸は蜜の味という、有り難い言葉の意味をかみしめている。そして、嫉妬の力を下弦級の鬼へとぶつけていた。

 

 遠くで鬼舞辻無惨が産声を上げて、お館様によって捧げられた生け贄を大量に食しているにも関わらず、元気なのは良いことだ。こういう奴等が大体最後まで生き残る。

 




アンケートへのご協力ありがとうございます^-^
前回ほどアンケートが拮抗しないで、少し安心しました!!

男の子なら誰でも一度はやってみたいよね!!




○どうでもいい作者の愚痴
新年になると、携帯ゲームがこぞって課金パック出してきて財布が痛いですorz
読者の皆様も、課金はご計画的にね^-^
※ネット○ーブルなんて滅びてしまえ!!

完結後に外伝的な話を投稿を計画しております。読者の皆様がどれを読んでみたいか是非教えてください。言うまでもないかもしれませんが、全て、しのぶさんが絡んできます!! 基本的に数話程度に纏める予定です。※アンケートの〆 1/5日(日)24:00までになります。 ※アンケート結果で一番投票数が多い一つを執筆予定です。同数近い場合は、一考しますが2)と3)の両方投稿はありません。

  • 1)NHK特番(東洋のジャンヌダルク)
  • 2)時間跳躍のバイアグラ(50話後書き)
  • 3)時空淫界のドグマ(52話後書き参照)
  • 4)キメツ学園~JK3年生の夜の部活動~

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