鬼滅の金庫番   作:新グロモント

59 / 100
いつもありがとうございます。

感想もありがとうございます^-^


59:大切な物を忘れてきた

 原作より強力になっている"鬼を人間に戻す薬"。その効果は、間違いなくあった。本来であれば、解毒には長時間を要する。

 

 だが、それを短時間で終わらせる方法が存在していた。

 

『無惨が復活する!! 柱以外の者達は直ぐに退避を!!』

 

 鎹鴉により鬼舞辻無惨の元に辿り着いた隊士達へ連絡される。だが、着いたと思ったら、直ぐに退避しろと言われても現場は混乱する。それなら、最初から柱を呼べと現場隊士の誰もが思った。

 

「ハッハッハ!! 産屋敷め!! これで、もう気持ち悪いなんぞ言わせないぞ。久しぶりに腹が減ったな」

 

 肉塊の様な繭から這い上がる一人の女性(・・)。その姿に、誰もが息を飲んだ。圧倒的な存在感。それは、隊士達に絶望感を与えるに十分であった。なにより、姿は女性なのに男の声という時点で理解の限界を超えている。

 

 そう!! 鬼舞辻無惨は、復活を急ぐ為、大切な物を繭においてきた。いいや、そうしなければ、復活に時間が掛かり命が危なかったので仕方がない事であった。この男にそこまでの覚悟をさせたのは、産屋敷耀哉の最後の一言が原因だ。

 

 女装が気持ち悪いというなら、本当に女になってやろうという結論に至る。理想の上司を目指す者は、性別すら超越する存在になったのだ。

 

………

……

 

 産屋敷輝利哉は、鬼滅隊の司令塔であり常に冷静な判断を求められる。

 

 だが、彼の経験不足云々をこの時ばかりは責める大人は居ない。産屋敷邸を訪れた時は、男であった1000年の怨敵が、女になって復活してきたのだ。目を疑うレベルの大事件だ。しかも、声だけ変わっていない。

 

「お兄様、指示を!! このままでは、全滅してしまいます」

 

「分かっている。だけど……どうすればいいんだ」

 

 頭を抱えて悩む産屋敷輝利哉。

 

 柱が居る場所から鬼舞辻無惨の居る場所まで遠い。その間、道中に居る隊士達の生存は絶望的だ。柱以下の隊士など何人いても、鬼舞辻無惨の栄養にしかならない。一般隊士達を大量に喰わせる事が最上の作戦だ。だが、お子様には、ホウ酸団子作戦の詳細は知らされていない。

 

 "柱稽古"に参加した隊士達は、その身に藤の毒を蓄積している。肉体そのものが鬼にとって猛毒だ。それを大量に喰えば、鬼舞辻無惨とて無事では済まない。全隊士を生け贄にする覚悟があれば、倒す可能性すらあった。

 

【銀治郎に任せてみなさい。きっと、上手くいく】

 

 産屋敷輝利哉の耳にハッキリと聞こえた。亡き父親の産屋敷耀哉の、後は裏金銀治郎に全てを任せておけという、都合の良い空耳。そして、今だけその声に従うことにした今代当主。

 

「お父様の声が聞こえました。現場は、現場に任せましょう。我々ができる事はもうありません」

 

「えっ!? お兄様!! しっかりしてください。死んだ人の声が聞こえるはずないでしょう」

 

 産屋敷輝利哉の妹の方は、突然死者の声が聞こえたという兄を本気で心配していた。このタイミングで壊れてしまったのかと。

 

 その様子を見かねた彼の姉である産屋敷ひなき――改め、胡蝶ひなきは、静かに部屋を退出した。金になりそうな物をかき集める。そして、静かに呼ばれる時を待つことにした。

 

 胡蝶ひなきが両親から託された思いは、産屋敷一族の存続。すなわち、ココで死ぬことはできない。その為ならば、兄弟すら見捨てる心構えがあった。

 

◇◇◇

 

 無限城を掌握している裏金銀治郎は、早すぎる鬼舞辻無惨復活に驚いていた。

 

 強力な"鬼を人間に戻す薬"を取り込んで、コレほど早く解毒ができるとは計算外であった。それは、裏金銀治郎だけでなく、胡蝶しのぶも同様だ。

 

「しのぶさん――無惨が復活しました。即効性、遅効性など薬のバリエーションは用意していましたよね?」

 

「当然です。どうします? 私達で迎え撃ちますか?」

 

 この時、裏金銀治郎はとてつもなく嫌な予感がしていた。

 

 裏金銀治郎と胡蝶しのぶのペアならば、復活した鬼舞辻無惨を相手にしても後れは取らない。朝日が昇るまで耐えられるスペックは有している。

 

「なにか、嫌な予感がします。とりあえず、柱達をぶつけて様子見しましょう。動くのはそれからでも十分です」

 

 裏金銀治郎は、相手の手の内を確認するため、鬼滅隊の柱達を利用する事を決めた。上弦の壱との激戦を終えた直後だというのに、まさに鬼である。だが、鬼退治をする事が彼等の仕事だ。その最終目標を目の前に連れてきてくれる裏金銀治郎は、ある意味では神と言える。

 

「なかなか、酷い事をしますね。柱以外の方は、こちらに呼び寄せてください」

 

「栗花落カナヲさんの同期は、一人を除いて柱級の実力を持っています。鬼舞辻無惨討伐には、役に立つと思うんですが……、分かりました。丁度、善逸君があの部屋の縄を回収し終えた。なので、後は指を鳴らすだけ。ですが、まずは柱達に最高のプレゼントを贈りましょう」

 

 パチンと裏金銀治郎が指を鳴らす。

 

 鬼舞辻無惨を転移させた際、とてつもない違和感に気がついてしまった。想像より軽く、胸の膨らみ……そして、下半身にあるべき物がないという驚愕の事実。事実を確認すべく、裏金銀治郎は全能力を駆使して状況を把握してしまう。

 

 そして、鬼柱の全てを見てしまった。上から下まで隅々にだ……この時ほど、能力が向上した力を悔やんだことは無い。不幸中の幸いだったのが、既に吐く物がなかった事だ。

 

「銀治郎さん~、早くカナヲ達をこっちに連れてきてください。聞いてます?顔が真っ青ですよ、大丈夫ですか?」

 

「気分は、控えめに言って最悪です。今、コチラに呼び寄せます。それと、心して聞いてください。……鬼舞辻無惨が女になっていました」

 

「はい? こんな時に冗談を言うのは止めてくださいよ。仮に事実だとしても何の意味があるんですか? もしかして、嫌がらせでしょうか。……で、いつもの集英社情報を早く教えてください」

 

 むしろ、裏金銀治郎も教えて欲しい程であった。

 

 女装するくらいだから、女として復活しても可笑しくはない。だが、そのタイミングが何故今なんだと、裏金銀治郎にだって分からない事はある。それに、そんな情報は集英社とて持っていない。

 

………

……

 

 上弦の壱を決死の覚悟で討伐した柱一同。

 

 疲労困憊で負傷も多いが、誰一人欠けずに討伐した事に全員の眼には希望が宿っている。これだけの戦力が揃って最終決戦にいける。だからこそ、負ける事は無いと考えていた。

 

 そして、これからの彼等の課題は大きく二つになる。

 

 一つ目が、予定通りに鬼舞辻無惨を討伐する事だ。これは、兼ねてからの計画であり不変。産屋敷耀哉の弔い合戦でもあるので、最優先事項であった。無限城にいる誰もが納得する目標だ。

 

 二つ目が、煉獄槇寿郎からの伝達内容だ。裏金銀治郎の討伐と胡蝶しのぶの確保……簡単に言うが、難しい案件であった。困難な理由の一つが、難色を示す柱達がいる点である。コレに関しては、内部でも事前確認しておかなければ不要な争いを生む案件であった。

 

 裏金銀治郎討伐反対派筆頭である音柱は、一段落した所で全員の意志を改めて確認する。

 

「俺は、鬼舞辻無惨の討伐には当然参加する。だが、元・炎柱の伝達――「裏金銀治郎の討伐」と「胡蝶しのぶの確保」は絶対にやらねーからな。場合によっては、派手に敵対するぜ」

 

「俺も音柱に賛成だ。あの二人に手を出すようなら、俺が相手をしよう。恩を仇で返すような男は、男に非ず!! 」

 

 柱専用の緊急活性薬を何度も投与した事により、この場で誰よりも怪我をしていない柱である煉獄杏寿郎。彼が敵に回ると言うだけで、裏金銀治郎討伐賛成派は不利になる。

 

「なんだぁ、てめーら揃いも揃って!! 鬼は、皆殺しだろう」

 

「あ、僕は金柱さん相手なら中立で」

 

 好戦派の風柱。だが、彼に賛同する者はまだ居ない。反対派の音柱、炎柱、中立の霞柱。意思表明していない柱に無言の圧力が掛かる。

 

「鬼は、殺す」

 

「珍しく意見があったな、冨岡。そうだ、鬼は殺す。それでいい」

 

「私の寿命は、今日限りであろう。だから、鬼舞辻無惨を殺して時間があれば、鬼退治だけ(・・)は手伝おう」

 

 好戦派に水柱が加わり、条件付きで岩柱までもが加わった。

 

 つまり、この時点で狂信者が殺すべきターゲットが決定した事になる。幸いな事に、我妻善逸は裏金銀治郎の命令で上弦の壱の刀身を回収に来ていた。だが、少し遅くなり依頼の物が回収できない失態をおかす。

 

 そんな失態を神への反逆者を始末する事で挽回しようと刀を抜いていた。彼の奇襲ならば、最低柱一人は道連れにできる。だが、それが実現しなかったのは、この場に第三者が突然、出現した事だ。

 

「ここは……黒死牟に守らせていた場所か。あぁ、死んだのか。コレだから無能は嫌いなんだ。侵入者を誰一人殺さず死ぬなど、上弦の面汚しめ」

 

 全裸の女……体の所々にワニの様な口があり、人間でない事は明らかだ。鬼にしても、造形が整いすぎている。面こそ汚れていないが、色々と真っ黒な彼女である。とりあえず、鏡を見て誰が面汚しなのか考えるべきだ。

 

 何者であるか最初に気がついたのは、視覚からの情報に惑わされない鬼滅隊最強の男であった。

 

「無惨だ!! こいつが、鬼舞辻無惨で間違いない」

 

「霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り」

 

「水の呼吸 参ノ型 流流舞い」

 

「風の呼吸 漆ノ方 勁風・天狗風」

 

「なんだ、この気持ち悪い女は!! 音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々」

 

「声が男の物だ!! あれは無い!! 炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」

 

 柱達の総攻撃が始まった。

 

 音柱と炎柱以外は、鬼舞辻無惨(女)に全く動じない。精神力故か、理由は定かで無い。もしかしたら、動じない柱は女とは、こんなものかと思っている可能性がある。もし、そうならば、全国の女性に土下座だ。

 

 上弦の壱との戦い同様に、岩柱が竈門炭治郎達には後方支援を命ずるが……そこには誰もいなかった。裏金銀治郎の手で彼の元へ転移させられている。

 

 全柱の攻撃に対して、背中に触手を生やして対応する鬼舞辻無惨。一体、何処の変態鬼がこんな血鬼術を開発したのだろうか、裏金銀治郎は褒めたい気持ちであった。そして、その触手を見て、「ぎ・ん・じ・ろ・う・さ・ん」とおねだりする人が居るとか居ないとか。

 

「鳴女ぇぇぇぇぇ!! 柱をさっさと分断しろ。鳴女……いないだと」

 

 鬼舞辻無惨は、無限城がある事から鳴女が健在だと信じていた。

 

 自らの配下に既に鳴女が不在で、無限城が奪われている事に気がついた瞬間だ。太陽の当たらない無限城の中、ココこそが無敵の安全地帯だと思っていた男だが……場合によってはいつでも外に投げ出される可能性がある事に焦りを覚えた。

 

 鬼舞辻無惨は、全ての柱を殺した上で無限城のコントロールを乗っ取っている誰かを日の出までに殺さないといけないミッションを背負う。

 




よし、無惨様大復活!!

原作で無惨様の新能力が公開されないと触手プレイしか見せ場が無くなってしまう。

完結後に外伝的な話を投稿を計画しております。読者の皆様がどれを読んでみたいか是非教えてください。言うまでもないかもしれませんが、全て、しのぶさんが絡んできます!! 基本的に数話程度に纏める予定です。※アンケートの〆 1/5日(日)24:00までになります。 ※アンケート結果で一番投票数が多い一つを執筆予定です。同数近い場合は、一考しますが2)と3)の両方投稿はありません。

  • 1)NHK特番(東洋のジャンヌダルク)
  • 2)時間跳躍のバイアグラ(50話後書き)
  • 3)時空淫界のドグマ(52話後書き参照)
  • 4)キメツ学園~JK3年生の夜の部活動~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。