鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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06:勘の良いガキは嫌いだよ

 蝶屋敷で負傷した隊士の看護をする神崎アオイがいる。彼女は、有能である。最終選抜を通過したが心が折れてしまい、裏方へと回る事になった。だが、それは彼女には天職であった。鬼を殺す才能より、人を生かす才能があったのだ。

 

 だが、ここ最近は、看護の仕事以外にも時間が取られて困っていた。

 

「アオイ!! アオイ!! お願いします。金柱様を紹介して~、この通り」

 

 かつての同期が頭を深く下げてきた。

 

 毎日のように、呼び止められたと言えば要件は大体コレである。現役の柱に近づく事は、難しい。それに、誰もが性格に一癖も二癖もある為、男女の仲に発展するのは現実的ではない事は、火を見るより明らかだ。

 

 勿論、隊士の間で結婚するに至った者も極めて少ないがいる。

 

 花の寿命は短い――その為、結婚という事に関して、女性が焦る気持ちは、男性では想像できない。チャンスを掴む為なら、プライドすら投げ捨てて頭を下げるのだ。

 

「……サクラ、貴方はどんな話を聞いてここに来たの?」

 

「そりゃ~、金柱様と蟲柱様が夜な夜な出かけて、朝帰りする事も多いって。つまり!! 私にもチャンスがあるって事でしょ」

 

 その何処にチャンスがあると考えたのか、じっくり話し合いたいと神崎アオイは、思った。

 

 裏金銀治郎は、結婚したい男性TOPランキングに入るが、周りに女の影も形もない事から男色ではないかと、腐女子達の間では様々なカップリングがされていた。

 

 しかし、そんな薔薇色の噂も終焉を迎えた。

 

「どう考えれば、そうなるのよ。ここ最近、頻繁にお見かけしますけど、胡蝶様とカナヲ様以外とは会話しているのを見たことないわよ。つまりは、無駄よ」

 

「カナヲ様って、あのミニスカ隊士の?」

 

 栗花落カナヲは、隊士の中では有名であった。

 

 正式な隊士でないにも関わらず、蟲柱の継子に選ばれた天才――という事と、風変わりな隊服を着る隊士として。ちなみに、後者は、男性隊士達からは絶大な評価を得ている。女性隊士の隊服変更の署名活動まであった程だ。

 

 裏金銀治郎の所にも、予算都合立ての嘆願書が届いた事もあった。却下すると、隊服運動をする隊士達が自らの給与を使っても構わないと、纏まった金を用意されたこともある。

 

「継子のカナヲ様ね!! 変な覚え方しないでください」

 

 服装に関しては、前衛的であるとは彼女も思っていたのでそれ以上の反論はできなかった。以前に洗濯物に紛れていたスカートをこっそり履いた過去があったが、鏡に映った自分を見て、「何やってんだろう私」と心がえぐられた過去を持つ悲しい女性である。

 

「つまりは、私もミニスカにして迫ればワンチャンあると。カナヲ様の部屋には、予備のスカートくらいあるわよね。――お願い」

 

 最終選抜の為、蝶屋敷を離れている栗花落カナヲ。

 

 つまり、今部屋に入って服を漁るなど造作もない。だが、そんなお願いを素直に聞くような者は蝶屋敷にはいない。人様の部屋に勝手にはいり、本人の許諾なしに洋服の貸し借りなど許されるはずも無い。

 

「それだと、金柱様が変態に聞こえますよ。そんなこと言っている暇があれば、さっさと退院して鬼でも狩ってきてください」

 

「うーーー、じゃあ!! 金柱様が来たら一声掛けて。後は、こっちで何とかするから」

 

 そういい、サクラはステップを踏みながら病室へと戻っていった。

 

 三日前まで松葉杖がないと歩行すら困難であったのが嘘のようであった。胡蝶しのぶの治療のおかげと信じて疑わない神崎アオイ。そんな、胡蝶しのぶのようになりたい――それが無理なら力になりたいと真剣に考えていた。

 

「もしかして、薬を変えたのかしら? そういえば――去年に同じような怪我で入院していた人が居たわね」

 

 胡蝶しのぶは、誠実に仕事を行う。その為、過去の治療に関するカルテは全て残っている。つまりは、サクラのカルテともう一つのカルテを見比べれば――。

 

 そんな独り言を口走り、仕事に戻る神崎アオイ。この時、竈門炭治郎が側にいたならば、物陰にいる男性の香水に気がつけただろう。

 

………

……

 

 その日、胡蝶しのぶは、料理の本を開きお菓子を作っていた。

 

 年を重ねるにつれ、女としての色気が栗花落カナヲに負けているのではないかと薄々気がつき始めたのだ。継子の成長は嬉しい……だが、女として負けてはならない事もあった。

 

「嬉しさ半分、悲しさ半分とは、まさにこの事です」

 

 妹のような存在が、成長するのは嬉しい事であった。言われなければ、何もできなかったあの子が……などと思ってしまうのは仕方がない。

 

 そして、自らの女子力を証明する為にも、お菓子作りをしているのだ。カナヲが最終選別でいないタイミングで少しでも腕前を上げる算段であった。普通なら、身を心配する所なのだが――既に、全集中常中を会得し、花の呼吸まで扱える。その為、只の鬼退治など彼女にとっては、雑草を刈るのと同程度だと分かっていたのだ。

 

「それに、それに!! なにより気にくわないのはあの男です!! ケーキを焼いたのでお裾分けに来ましたとか、馬鹿ですか!?」

 

 イチゴのショートケーキを持ってきたあの日を胡蝶しのぶは、決して忘れる事はない。日持ちしないため、蝶屋敷の勤め人と一緒に食べたが、誰もが彼女が作ったと思い込み「美味しいです。胡蝶様」と称賛を浴びせた。否定しようとしたところ、次々と称賛を貰い否定するタイミングを失ってしまったのだ。

 

 そのケーキ……実に美味だったのだ。

 

 同じ材料を使っても、同じ味を出せる自信が全く無いほどに。乙女の尊厳が完全に砕かれたのだ。柱として、鬼狩りや修行に忙しかったからお菓子作りなんてと言い訳しようものなら、裏金銀治郎とて同じだ。むしろ、良い年したオッサンがお菓子作りが得意なんて誰が想像できるだろう。

 

 胡蝶しのぶは、想像ができた数少ない一人だ。だが、考えないようにしていたのだ。

 

 そもそも、蝶屋敷の患者に提供している食事は、裏金銀治郎が考案したメニューである。洋食という奇抜な選択で、素材が何なのかという疑問を消し去るというアイディアも盛り込まれており、感心してしまうほどだ。

 

 つまりは、裏金銀治郎は料理も得意という事である。ならば、お菓子もと考えられる可能性であった。

 

 

◆◆◆

 

 裏金銀治郎の執務室で、金つばとお茶を食しつつ、休憩する二人の男女がいる。

 

「手作りですか――美味しいです」

 

「どういたしまして。カナヲが最終選抜を合格してくるでしょうから、そのお祝いの予行練習です」

 

 胡蝶しのぶは、詰めが甘かった。

 

 市販ではなく手作りである為、相応の手間が掛かっているのは簡単に分かる。それこそ、料理やお菓子作りにおいて、自身以上に得意であろう者に提供しているのだ。練習で作るような物でない事は直ぐに分かった。

 

「てっきり、私の為に作ってくれたと思ったのですが、違いましたか?」

 

「はぁ? 自意識過剰ですか? 練習といったでしょう。耳でも悪くなったんですか」

 

 「酷いな~」と笑いながら裏金銀治郎は、黙々と金つばを食べた。

 

 そして、いつ例の話題を切り出そうか、迷っていた。裏金銀治郎が持つ権力やコネを使えば、鬼滅隊の隊士の一人くらい、明日にでも鬼の餌にできる。だが、協力者との関係上、それを行うと破綻するだろうと理解していた。

 

「裏金銀治郎さん、一つ聞きたいことがあります。ちょっと小耳に挟んだたわいない世間話なんですが~」

 

「なんでしょう?」

 

「カナヲのスカートを用意したのが、貴方だと聞いたのですが本当ですか?」

 

 空気が凍り付いた。

 

 スカートどころか、昔……そう、胡蝶しのぶが、鬼を殺す毒を開発する時、下着一式まで全て用意したのが裏金銀治郎であった。一瞬、その事までバレたのでは無いかと思い、背中に嫌な汗をかいていた。

 

「誤解されないように、私の言い分も聞いて貰えるかな?」

 

「あら、否定されないんですね。いいですよ、聞きましょう」

 

 カナヲ自身から、ズボンはださいからスカートが欲しいと直訴があった。あのカナヲが自らの意志を伝えてきたのだから、それに応えてやるのが親心という物だと力説した裏金銀治郎である。

 

 ちなみに、スカートに関しては、生地を用意したのだという正しい情報も共有した。

 

「そもそも、彼女にお小遣いとか渡していますか?」

 

「……あげて…あげてません。ごめんなさい」

 

 カナヲの立場は、鬼滅隊に所属しない継子という物だ。つまりは、鬼を殺しても鬼滅隊から給与はでない。裏金銀治郎も、隊士以外に給与などださない。例外を認めてしまえば、一般人が鬼を殺したと報告が有れば全て対応する事になるからだ。

 

「じゃあ、どうやって彼女の私物が増えていったと思います?」

 

 衣服にかかわらず、カナヲの部屋は充実していた。ファッション誌、専門書、勉強机にベッド……外出用の服、ハイカラな靴などを胡蝶しのぶは思い浮かべた。どれもが、自分が買い与えた物ではない。

 

「ほ、ほら!! カナヲって、私に付いてきて鬼を切っているので」

 

「隊士でも無いのに給料が出せるはず無いでしょう。鬼滅隊の赤字状況を知らないとは言わせませんよ」

 

 その発言で理解したのだ。栗花落カナヲは、裏金銀治郎の厚意で色々な物を手に入れていたのだと。ちなみに、栗花落カナヲとしては、鬼滅隊から支給されていると思っており、双方で認識の相違があった。

 

 裏金銀治郎は、気がついていたが訂正する事はなかった。売れる恩は売っておくべきだと考えたのだ。

 

「えーーと、先ほどの発言は撤回しますね。改めてお礼を言った方がよろしいですか?」

 

「誤解が解けたなら何よりです。それに、先行投資だと思えば安い」

 

 将来、栗花落カナヲは上弦を撃破する要の一人になる。明るい未来のため、そういった人材には、お金は惜しまないのだ。

 

◆◆◆

 

 世間話も終わり、胡蝶しのぶが部屋を退出する際、裏金銀治郎は呼び止めた。

 

「胡蝶さん、少し真面目な話があります」

 

「胡蝶さん……ですか、フルネームで呼ぶのが貴方だと思っておりましたが」

 

「お気に召しませんでしたか?私の事は、裏金さんでも銀治郎さんで構いませんよ」

 

 いい加減フルネームで呼び合うのは長ったらしいので、まぁ良いかと思う二人である。それに、秘密を共有する仲でもあり、距離感は縮まっていた。

 

「はいはい、裏金さん。どういったご用件ですか?」

 

「神崎アオイが、カルテを確認する恐れがある。鬼肉を食べる前と後で治療方法が変わらないのに、怪我の治りが明らかに早いと怪しまれかねない」

 

「まさか!?」

 

 その話を聞いて、胡蝶しのぶは青ざめた。

 

 何を考えたかと言えば、一つだ。すでに、消されているという想像だ。目的のためならば、手段を選ばない男であると、彼女も分かっていた。

 

「何もしていない。廊下で盗み聞きしただけだ。私一人で処理するのは、朝飯前だ。だが、胡蝶さんとの協力関係を破綻させる気はない。だからこそ、こうして話している」

 

「裏金さんに任せた場合は、どうなるのですか?」

 

「勘の良いガキは嫌いだよ。不穏の芽は、早めに摘む必要がある。つまりは、死んで貰う。強権で急な人事異動という事もできるが、確実性を取りたい」

 

「そうですよね、貴方はそういう人間ですよね。はぁ~、分かりました。こちらでここ最近の患者には新しい治療方法を行っていると嘘の報告を書いておきます。彼女の事ですから、それで問題ないはずです」

 

 それならば、良いでしょうといい裏金銀治郎は、彼女を見送った。

 

 医師である彼女が、患者のカルテを改竄するとは、成長を喜ばしく思う裏金銀治郎であった。

 




さぁ、主人公!!

裏金銀治郎が君のことを頸を長くしてまっているぞ。
君が望むすべてをあたえよう^-^
だから、上弦と下弦・・・その上司もよろしくね。

さて、そろそろ、例の下弦を探しに向かうか。
首から上があればいいから、下半身は吉原の最下層風俗で稼がせるか。
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