鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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60:異常者

 裏金銀治郎は、竈門炭治郎達が混乱しているのも無理がないと思っている。

 

 目の前に女体化した鬼舞辻無惨があられもない姿で登場したと思ったら、いきなり別の場所に転移させられた。転移先にいるのが、裏金銀治郎と胡蝶しのぶの二人である。今現在、鬼滅隊から絶賛指名手配を受けている二人。

 

「お久しぶりですね。栗花落カナヲさん、かまぼこ隊のみなさん、不死川玄弥君。こうして、また再会できた事を喜ばしく思います」

 

「銀治郎さん、その言い方だとすごーーーく胡散臭いですよ。実は、貴方が黒幕でした的な感じがします」

 

 丁寧に再会の喜びを伝えたら、胡蝶しのぶから酷いツッコミがはいる。本人は、至って真面目であった。人とのコミュニケーションは挨拶から始まる……それを実直に行っていた。だが、それは、聞く側にとっては不安を大きくする。

 

「師範!! 今まで何処でナニをしてたんですか。指導してくれるって約束したのに」

 

「カナヲ、心配をかけましたね。色々、あったんです。全てが終わったら、お話しましょう」

 

 栗花落カナヲは、胡蝶しのぶに抱きついた。

 

 その絵図は、再会を果たした姉妹のように見える。だが、絵面だけだ!! 淫魔見習いを淫魔へと育て上げる話し合いになるに決まっている。そして、その美味しい被害者になるのが、不安そうな顔をしている竈門炭治郎だ。

 

「美しい姉妹愛ですね……戸籍上は、親子ですけど。単刀直入に聞きます。鎹鴉から全隊士向けに連絡があったように、私が鬼になった事は事実です。降りかかる火の粉は払いますが、それ以上はしたくありません。だからこそ、君達一人一人に問いたいのです。私の味方か敵対か――中立かを。ちなみに、味方でなければ、無惨とのデスマッチに放り込みます。聞くまでもありませんが、善逸君」

 

「私は(裏金銀治郎)の下僕でございます。この場を借りて、謝罪したい事がございます。神より賜った仕事を達成できませんでした。この我妻善逸に挽回のチャンスを頂きたくお願い申し上げます」

 

 額に血が滲むほど頭をこすりつけて土下座するその様は、嘴平伊之助と不死川玄弥をドン引きさせる。裏金銀治郎を信仰しているのは彼等も知っていたが、ここまで常軌を逸しているとは想像できていなかった。

 

「君は何時も期待以上の働きをしてくれる。君の全力で間に合わないなら、他の誰でも無理だ。そうそう、竈門禰豆子さんは、元・炎柱がいる部屋の横の布団で寝ている。鱗滝左近次がトイレ休憩とかで席を外すときもあると思うんだよね。元・炎柱は、しのぶさんの姉である胡蝶カナエを酔いつぶしてホテルに連れ込もうとした過去がある。私なら今すぐにでも彼女をこの安全地帯に連れてこれる――で、炭治郎君はどっちの味方だっけ?」

 

(裏金銀治郎)の味方です。どうか、禰豆子を助け出してください。俺、頑張るんで、あっち(神崎アオイ)の件もどうかお願いします」

 

 竈門炭治郎も裏金銀治郎の前に膝を折った。そして、忠誠を誓う。それ以外に彼には選択肢が残されていなかった。他を選べば破滅する可能性が極大だ。大人になった彼は、この世知辛い大正時代を生き抜く為、きれい事だけではダメだと知る。

 

 家族ができれば、明日食べる食事を手に入れるためお金が要る。炭屋という選択肢もあるが、このご時世、それでは生活が日を追うごとに辛くなる。妹や家族……生まれてくる子供を支えるには稼ぎが必要だ。

 

 恩もあるので、膝を折るのに十分な理由であった。

 

「炭治郎もやっと、神の素晴らしさが分かったんだね。何か、分からない事があったら俺に聞いてくれよ。これからも、仲よくやっていこう」

 

「善逸、本当に!! 本当に期待しているからな」

 

 竈門炭治郎は、これから降りかかる女性問題を解決すべく、我妻善逸を師と仰ぐ事を決意する。

 

「次に、伊之助君。鬼が滅べば、君の大好きなお爺様も安全だろう。君は、母親の仇を討った私と敵対するかね?それとも、味方になるかね?」

 

「俺に母親はいねぇぇぇぇぇ。鬼は、本当に嫌いだ。だが、味方してやる。さっきから、しのぶがすげーーーこぇんだよ。俺が敵対したら、絶対に殺される気がしてるわ」

 

「伊之助君、しのぶさんは美人で優しいですから恋心を抱くのは構いませんよ。私も妻がモテるというのは鼻が高い……だけど、手を出そうものなら肉片一つ残さずこの世から焼却します」

 

 ビリビリと空気が震えた。

 

 獣の世界では、NTRとかも当たり前かも知れないと思い、裏金銀治郎が念のため釘を刺した。その圧倒的な圧力は、上弦の壱を凌ぐ程だと彼等は理解する。

 

「お、おう」

 

「素直で宜しい、伊之助君。では、次に不死川玄弥君。君はどうしますか? 貴方の兄である風柱は鬼は殲滅する心構えです。同調した柱もいます。一時的とはいえ、鬼化できる君は人間とは言えないでしょう」

 

 裏金銀治郎は、風柱が都合の良いときだけ弟は人間だと解釈をする汚い人間だとは思っていない。まさか、あれだけでかい口を叩いて弟だけは許してやるとかいう軟弱な意見は許されない。

 

「それでも、俺は兄貴の元へ帰りたい。兄貴に死なれたら寝覚めが悪い。裏金さんには、恩もある。俺が短期間で(きのえ)になれたのも感謝している。だから、中立をとらせてくれ」

 

「美しい兄弟愛だな。まぁ、いいだろう。どうせ、止めても兄の元へ行くんだろう。散弾銃じゃ心許ないだろうから、コレを持っていけ」

 

 裏金銀治郎は、影の中に格納していた三八式機関銃を予備マガジンと一緒にプレゼントした。剣士としての才能が乏しい不死川玄弥では、鬼舞辻無惨に近づく事は困難だ。だが、近づかずに攻撃する手段があれば話は別だ。

 

 不死川玄弥は、裏金銀治郎からのプレゼントを受け取り頭を下げた。そして、ココに残るといった同期達に最期の挨拶をする。兄とは違い実にできた弟である。見た目は、どこからみても不良だが……人は見た目で判断してはいけない典型だ。

 

「最後に、栗花落カナヲさん。聞くまでもありませんが、貴方はどうしますか?」

 

「あちら側に居る意味があるのでしょうか?勿論、師範と炭治郎さんが居ますので、コチラ側です。裏金さんと敵対してもいい事ありません」

 

 裏金銀治郎は、予定通りになったと喜んでいた。

 

 柱達が鬼舞辻無惨を倒すか、鬼舞辻無惨が柱を倒すか高みの見物を決め込む裏金一派。どちらが勝っても、ラスボスは裏金銀治郎である。彼自身も何故こうなってしまったのか、何処で道を誤ったのか分からなかった。

 

 だが。心強い仲間が居る事に安心していた。

 

◇◇◇

 

 鬼の始祖である鬼舞辻無惨は、柱全員を相手に凌げるスペックを有していた。

 

 柱達もその異常性に気がつく。身体能力もさることながら、その再生能力が問題であった。切り刻んでも即座に回復してしまう。ダメージを蓄積する事ができない。

 

 危険な賭けにでて、腕を切り落としても即座に接合されてしまう。体力が有限である柱達にとっては、悪夢のような相手である。

 

 そんな無謀とも言える特攻を仕掛けてくる鬼滅隊の柱に鬼舞辻無惨は嫌気がさしていた。朝日が昇るまでに、無限城を取り戻さないといけないという使命があるのにココで時間を食うわけにはいかない。

 

「しつこい。何故、自分を亡き者にしようとするのか?それは、自分が彼等の親の、子の、兄弟の生命を奪った鬼の首魁だからか? だとすれば、筋違いだ。過去の私は、もう居ない。見よ、この美しい体を」

 

 鬼舞辻無惨は、柱達に同意を求めた。

 

 彼自身、既に男である自分は捨ててきているのでそれで罪は洗い流されたと自負している。だからこそ、女性体となった自分を執拗に付け狙うのが疑問でならなかった。美しすぎる事が罪なのかとすら思っていた。

 

「何を言ってんだぁぁぁ、オィ」

 

「落ち着け、不死川。これは、無惨の策略だ。冷静になれ」

 

 悲鳴嶼行冥は、好機だと考えた。鬼舞辻無惨が自ら手を休めて、棒立ちだ。そして、長々と演説を始めた。つまり、朝日が昇るまでの時間を自ら消費している。ここは、話に乗るべきだと冷静に判断する。

 

 盲目であるが、透き通る世界を感じ始めている悲鳴嶼行冥。他の者達より視覚的ダメージは少ないが、疲労が蓄積していた。

 

「貴様等は、恥ずかしくないのか? 女を相手に、刀を手に集団で襲いかかるなど、日本男子にあるまじき行為であろう。恥を知れ」

 

「貴様、何を言っているんだ!!」

 

 冨岡義勇が、柱全員の心を代弁する。普段無口な彼だが、この時ばかりは冴えていた。普段からこれならば、対人関係はマシになっていただろう。

 

 仮に、地獄からこの光景が眺める事ができたのなら、12鬼月達が全員口を揃えて言うだろう、「おまえが、言うな」と。そして、心が通い合った鬼と人間が手を取る時代を迎える事ができたかもしれない。

 

「分からぬか? 私を殺したとしても、死んだ人間が生き返ることはないのだ。いつまでもそんな事に拘ってないで日銭を稼いで暮らせば良いだろう。殆どの人間がそうしている。何故お前達はそうしない? いい加減、前を見て生きろ。過去に囚われると碌な事にならない」

 

 過去を清算して女体化した鬼の言う事は正論であった。そんな真っ当な良い台詞は全て書物からの引用である。だが、この場において、スラスラと口にできるのは、彼が勉強した成果だ。

 

 ただし、それを鬼滅隊の柱達が受け入れるかは別問題だ。

 

「ふ、巫山戯るな!! 一体、貴様のせいで何人死んだと思っていやがる」

 

「貴様は、今まで食べる為に殺した牛や豚の数を覚えているのか? 諦めろ、その問いに何の意味も無い。人間は過去を忘れ、明日を生きる生き物だ。何故、それが貴様等にできない。理由は、ひとつ――鬼狩りは、異常者の集まりだからだ。異常者の相手は疲れた。いい加減、終わりにしたいのは私の方だ」

 

 鬼に異常者呼ばわりされる柱達。だが、否定する要素は無かった。特に、元忍者であり過酷な訓練を経験した宇髄天元は、世間一般的には異常者で間違いない。

 

「だからこそ、貴様等に提案がある。双方に利益のある話だ。『敵の敵は味方』という、素晴らしい言葉がある。無限城のコントロールを奪った者を倒すのを手伝え。これは、貴様等にとっても死活問題だ。この空間が閉鎖されれば、貴様等は生き埋めだ。私以外助からん」

 

「できない相談だ、鬼舞辻無惨!! 俺には、何となく誰が裏で動いているか見当が付いている!! だからこそ、貴様の言葉より、(裏金銀治郎)の方を信頼できる。貴様を殺して、恩を返す」

 

 信頼とは簡単に手に入る物ではない。実績の積み上げが大事である。煉獄杏寿郎の信頼を勝ち取るのは、鬼舞辻無惨には不可能だ。

 

 それを覆す事ができる方法もあった。莫大な報酬などが良い例である。そして、全てを失いつつある鬼舞辻無惨が用意できる報酬は一つだけあった。古来より、男への最大の報酬は美女である。見た目だけは、美女である鬼舞辻無惨。

 

 上弦達が泣いて喜んだ"おめこ券"が遂に柱達へ配られる瞬間であった。

 

「つまり、私の味方をするにあたり報酬が欲しいと言う事だな。受け取るがいい。その券を持つ限り、貴様等の未来は私が保証しよう」

 

 鬼舞辻無惨が夜なべして、一枚一枚丁寧に作った"おめこ券"が紙吹雪のように舞い散る。この券が裏金銀治郎の全力でも消し飛ばせない紙切れだとは誰も知らなかった。

 

 柱全員が何かと思い手に取り、呪いのアイテムを手に入れる。

 

 




漫画無いのでネット情報で調べながらだと大変でした。

後は、恋柱と蛇柱も参戦させましょうか。
蛇柱が泣いて詫びるのが目に浮かぶ。

完結後に外伝的な話を投稿を計画しております。読者の皆様がどれを読んでみたいか是非教えてください。言うまでもないかもしれませんが、全て、しのぶさんが絡んできます!! 基本的に数話程度に纏める予定です。※アンケートの〆 1/5日(日)24:00までになります。 ※アンケート結果で一番投票数が多い一つを執筆予定です。同数近い場合は、一考しますが2)と3)の両方投稿はありません。

  • 1)NHK特番(東洋のジャンヌダルク)
  • 2)時間跳躍のバイアグラ(50話後書き)
  • 3)時空淫界のドグマ(52話後書き参照)
  • 4)キメツ学園~JK3年生の夜の部活動~

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