鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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何時もありがとうございます。
感想も本当に嬉しいです^-^

アンケートへのご協力ありがとうございました。
大変多くの投票を頂き、「1)NHK特番(東洋のジャンヌダルク) 」が、一位を獲得出来ました。つきましては、本編完結後に執筆して投稿したいと思います。

○アンケート結果
(1364) 1)NHK特番(東洋のジャンヌダルク)
(333) 2)時間跳躍のバイアグラ(50話後書き)
(163) 3)時空淫界のドグマ(52話後書き参照)
(682) 4)キメツ学園~JK3年生の夜の部活動~


62:ネコを崇めよ

 裏金銀治郎は、非戦闘員を近くの部屋に隔離した。その際、眠りについている竈門禰豆子と淫魔三人を見送る竈門炭治郎は、大丈夫だろうかと不安でたまらなかった。毎晩複数プレイを嗜む我妻善逸は、妻達がどっちもいける口だと知っている。だが、無駄な不安を煽る為、竈門炭治郎には伝えない。

 

 竈門禰豆子にとって、幸せとは何なのだろうか。彼女は、兄である竈門炭治郎をとても優れた男性(・・)であると認識している。己の身を呈して、守り通すその姿勢は、大事な何処か(・・・・・・)がキュンキュンと反応する程だ。だが、彼女と竈門炭治郎は間違いなく血の繋がった兄妹。

 

 世の中、"カッコウの雛"と呼ばれる事象が存在している。古今東西、未来に至るまでその被害者となる男性は数知れない。竈門禰豆子の周りに居る男性は、血縁者を除けば裏金銀治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の三名である。つまり、そう言うことだ。

 

………

……

 

 裏金銀治郎は、伊黒小芭内が華麗な手のひら返しをする事に対して不信感しか持っていない。勿論、伊黒小芭内の心情も理解している裏金銀治郎。だが、理解していても納得するかは別問題だ。

 

「ここで、甘露寺蜜璃さんを助ける事は難しいことでは無い。しかし助けたとしても、伊黒小芭内さんは無惨を殺し終えたら、私を殺しに来る事には恐らく変わりは無い」

 

「まぁ~、そうなるでしょう。禰豆子さんの一件でも、最後まで頑として認めなかった数少ない柱です。その鬼が銀治郎さんともなれば尚更です。正当防衛とはいえ、既に鬼滅隊の隊士を手に掛けているなら、言い分はいくらでもあります」

 

 酷い話だが、その通りである。裏金銀治郎は、襲ってくる隊士を既に殺害している。ここが、竈門禰豆子と違い庇う事が難しいポイントだ。

 

 日の出まで後90分近くもあるのに、柱に脱落者が出ては伊黒小芭内は当然として、鬼滅隊側のモチベーションは落ちる。毒の回り具合からも考えて、音柱のような退路を確保済みの柱を除けば、後10~15分もてば御の字の状態だ。

 

「伊黒小芭内さんには、何ら関心も湧かない。あんな親の敵を見るような目でお願いして意味があると思っているんでしょうか。しのぶさんとの約束もあるので、助けたい気持ちはあるんですが……正直、どうしたいです?」

 

「甘露寺さん()、助けましょう。伊黒さん云々は、関係ありません。私が、甘露寺さんを助けたいから助けるんです。だって、彼女いい人ですから」

 

 胡蝶しのぶの一言で助ける事が決定した。その決定に安堵するかまぼこ隊の者達。"柱稽古"を経験し、縁がある女性が死ぬのは心苦しさを感じていた。

 

 そんな心配が解決した所で新たな問題が発生する。

 

 最終決戦の場所に、一匹の猫が紛れ込んでくる。それも、珠世が子飼いにしていた優秀なネコである。

 

「神、ネコが紛れ込んでいます」

 

「あぁぁぁぁ!! あれは、珠世さんのネコ!? どうして、こんな場所に?」

 

 我妻善逸と竈門炭治郎が存在に気がついた。映像越しだというのによく観察している二人である。ネコが、甘露寺蜜璃へと近付く。その行動の意図が全く読めない裏金一派。ネコ一匹で戦場が好転するなら柱なんて要らないとすら考えていた。

 

 だが、その考えは裏金銀治郎が甘かったと言える。

 

 ネコが背負う鞄から、柱専用の緊急活性薬が大量に出てきた。それを確認した、伊黒小芭内は目を疑ったが、直ぐに緊急活性薬を甘露寺蜜璃に投与する。その傍らで、ネコが鬼舞辻無惨の毒を一時的に中和する薬を彼女に投与していた。

 

「なんだよ、あのネコ。知能高いとかそんなレベルじゃないぞ。あそこまでいくと、ネコの姿をした別の生き物だぞ。しかも、緊急活性薬を横領までしていたとは許せないな」

 

「えぇー、銀治郎さんも結構な数を懐にしまっていましたよね」

 

 下弦の鬼から搾り取った血液を凝縮して作る薬の為、製造から加工までにそれなりの労力を要する。市場に出回れば、お値段が付けられない代物だ。それを、何本も懐にしまっている裏金銀治郎も大概であった。

 

「私は、施設の管理者兼計画立案者だから良いんですよ。素材も資金もこの手で集めていたんですから。彼女は、外部協力者です。"鬼を人間に戻す薬"の研究をさせていたのに、傍らで横領とか許されませんよ」

 

「まぁ、彼女達への監視は杜撰でした。それに、鬼なんですから、人の常識で考えちゃ駄目です。で、どうします? 伊黒さんが何事も無かったかのように、戦いに向かいましたよ」

 

 伊黒小芭内は、ネコから回収した緊急活性薬と中和薬を闘う柱達に配った。だが、その配布先は、限定される。鬼舞辻無惨討伐後、裏金銀治郎を殺すと明言した者だけだ。中立派や殺害反対派には、鞍替えする事を条件で提供する心づもりだ。

 

 だが、そんな心づもりならそれでも裏金銀治郎は構わないと思っていた。

 

「仲間同士で足の引っ張り合いとは、醜い。最終決戦をしているという自覚はあるんでしょうか。あぁ、私は別に良いんですよ。彼等の味方というわけではありません」

 

 珠世の飼いネコ……裏金銀治郎は、そこから何か忘れているのでは無いかと考えた。喉まで出かけているがあと少し足りない。そんな思いをしていた。

 

 その時、裏金銀治郎達が控えている場所に肉の胞子が落ちてくる。

 

「ただの雑魚鬼だと思っていましたが、思わぬ伏兵でしたか。全く、私じゃ無くて鬼舞辻無惨を狙って欲しいものですけどね」

 

 これだけのメンツ相手に直前まで気配を悟られない有能さ。目くらましの術がないのに、素晴らしい。鬼になる為に生まれてきた浅草の男が残っていた。だが、惜しい……無限城の中で無ければ手傷を負わせる事も出来ただろう。

 

「大丈夫です。銀治郎さんが、血鬼術を処理します。あの天井に引っ付いている鬼は、任せましたよ」

 

「「御意」」

 

 竈門炭治郎と我妻善逸……裏金銀治郎への貢献度を稼ぐ為、二人は率先して鬼狩りに出陣した。何処に逃げ隠れしようとも匂いと音で察知できる人間ソナーが二人も居ては逃亡は不可能。

 

 彼は、"鬼を人間に戻す薬"が完成していたのに、人間に戻して貰えなかった。それは、対鬼舞辻無惨で有効な血鬼術を持っていたからだ。今となっては、珠世が全てが終わってから本当に人間に戻すつもりがあったかは、誰も知る術はない。

 

 彼が、恨むならば珠世か鬼舞辻無惨であるのは間違いない。

 

 

◇◇◇

 

 煉獄杏寿郎は、絶対に死ねない戦いをしていた。

 

 彼は、鬼舞辻無惨を倒してお終いではない。煉獄家の長男として、やる事が残っていた。彼の弟である煉獄千寿郎もできた男だ。そして、胡蝶カナエの一件も知っている。今回の一件も耳にすれば、兄同様に腹を切って死ぬ可能性が濃厚であった。

 

 つまり、彼の死は弟の死にも直結する可能性を秘めている。

 

 だが、立場上安全地帯から宇髄天元や不死川玄弥のように銃で攻撃する訳にもいかなかった。使い方が分からないという事もあるし、前衛が足りなくなれば鬼舞辻無惨が後衛を殺しに行くのは目に見えている。

 

 肉壁になってでも、鬼舞辻無惨を留める必要がある。

 

「俺にも中和剤と緊急活性薬を!!」

 

「ダメだね。これは、俺が手に入れた物だ。どうしても欲しければ、裏金を殺すとこの場で誓え」

 

 煉獄杏寿郎は、聞き間違いだと思った。

 

 だが、伊黒小芭内の眼は真剣である。断腸の思いで頭を下げたのに、甘露寺蜜璃を救わなかった裏金銀治郎は、もはや一分一秒でも早く殺したい鬼である。その憎しみは、鬼舞辻無惨に匹敵する程にまで膨らんでいた。

 

「わかった。もう頼まん!! だが、鬼舞辻無惨退治だけは必ずやり遂げてみせる」

 

「貴様等は、仲間割れをするのか。私と一時休戦して無限城を取り戻すか、いい加減どちらかにしろ!! 敵の敵は味方という理論を知らないのか」

 

 鬼舞辻無惨は、いい加減にして欲しかった。早く殺したい柱達が継続的に攻めてくる。猛毒を与えたにも関わらず、中和剤などを準備しており生き残る。更には、怪我すら治療する謎の薬。極めつけは、目の前で仲間割れだ。

 

 こんな状況でぎりぎりの所で耐え、あまつさえ、自らを切り刻んでいる柱達。胸くそ悪い光景を見せられてイライラも絶頂であった。

 

「知らぬ!! 今まで沢山の隊士が鬼の手によって殺された。俺達は、彼等の思いに報いる義務がある。だから、この場で貴様を倒す」

 

「この期に及んで、仲間割れをしている貴様等は、やはり異常者だ。だが、貴様等は忘れていることがある。鬼滅隊の手によって、私の大切な部下が何人も殺されている。だが、私は貴様等を恨んでなどいない」

 

 下弦という鬼の中でも上位に位置する存在を、その手で葬った男の言葉は説得力の欠片もない。それに、無理というキーワードを追加したお陰で、史上最高の数を討伐した男でもある。

 

 鬼舞辻無惨が鬼滅隊に鬼が討伐されても恨まないのは当然だ。興味が無いからである。だが、殺された鬼側は、鬼舞辻無惨に恨みを持って死んだ者達も多い。特に、上弦や下弦は恨んでいたのは間違いない。

 

「だからなんだと言う。もしかして、恨みを忘れて生きろとでも言うのか」

 

「その通りだ。鬼に殺された事は災害だと思えばいい。私も貴様等の事は災害とでも思うことにする。それに、そろそろ貴様は限界だ。今立ち去るというなら見逃してやる」

 

 煉獄杏寿郎の体力は限界に近かった。

 

 刀を持つ手には握力は殆ど残っていない。気を抜けば倒れそうな程だ。中和剤があれば状況は変わるだろう。だが、現物が無いなら持っていそうな人物から貰えば良いという結論に至る。

 

「それはどうかな。裏金殿、俺にも中和剤を!!」

 

 虚空に向かって叫ぶ煉獄杏寿郎。

 

 そして、中和剤ではなく真っ赤な血液が降り注ぐ。鬼の血鬼術を無効化するだけでなく、刀身に炎が宿る。血鬼術――"爆血"であった。毒を消し去り、攻撃力を上げるバフまで提供される。

 

 当然だが、同じ事を伊黒小芭内や不死川実弥が行っても実現はされない。

 

「裏金? まさか、裏金銀治郎の事か!?」

 

 鬼舞辻無惨は、この時初めて無限城を奪った存在が誰なのかを理解した。勿論、本物の方ではなく、裏金銀治郎(偽)の顔が思い浮かんだ。だが、その存在が感知できない事から珠世や竈門禰豆子同様に何かしらの手段で監視の目を逃れたと考えていた。

 

「無惨にまで名前が知られているとは、裏金殿は人気者だな」

 

「当然だ。私の血を与えて鬼にした。だが、恩を忘れて裏切りおって!! 八つ裂きにしてくれるわ」

 

「いいや、八つ裂きにされて死ぬのは貴様だ、鬼舞辻無惨!! 」

 

 絶妙にすれ違う煉獄杏寿郎と鬼舞辻無惨の会話。名前は同じだが、全く別人を示しているとは二人とも分かっていない。その会話を聞いている裏金銀治郎達も、どうしてこうなったと頭を悩ませている。

 

 煉獄杏寿郎に無償で、手を差し伸べた事に伊黒小芭内は憤怒する。そして、彼の握る刀が心の色を表すかのように赤く染まっていった。




 爆血刀の煉獄さん……ワンチャンあるか!!

 怒りで力に目覚めるのは、ジャンプ世界ではよくある。鬼特攻の赫刀へと進化……一人が条件に気がつけば、続々と増えていく。

完結後に外伝的な話を投稿を計画しております。読者の皆様がどれを読んでみたいか是非教えてください。言うまでもないかもしれませんが、全て、しのぶさんが絡んできます!! 基本的に数話程度に纏める予定です。※アンケートの〆 1/5日(日)24:00までになります。 ※アンケート結果で一番投票数が多い一つを執筆予定です。同数近い場合は、一考しますが2)と3)の両方投稿はありません。

  • 1)NHK特番(東洋のジャンヌダルク)
  • 2)時間跳躍のバイアグラ(50話後書き)
  • 3)時空淫界のドグマ(52話後書き参照)
  • 4)キメツ学園~JK3年生の夜の部活動~

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