鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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72:エピローグ~我妻善逸~

 真の長男が露見し、第一次(・・・)竈門炭治郎の乱が終わった一年後。

 

 アンブレラ・コーポレーションで公的な嫁が一番多い我妻善逸は、今日も元気に仕事に励んでいた。淫魔四人衆に夜戦で勝利をおさめ、朝のお勤めまで完ぺきにこなす彼は、社内でもヤベー級の存在になっていた。

 

 そんな彼の部署は、資材調達部。

 

 良い職場は、挨拶から始まる。それを忠実に実行する模範的な社員である我妻善逸。今日も職場の上司に挨拶をする。

 

「おはようございます、天元さん。ゲッソリしていますけど、やつれました?」

 

「誰のせいだと思っているんだ!! 誰の!?」 

 

 時代を先どった栄養ドリンクを片手に、やつれた宇髄天元が出社してきた。ホワイト企業であるアンブレラ・コーポレーションの仕事が原因ではない。

 

「あぁ~、先日はママ友会でしたからね。俺は、乗り切りましたよ」

 

「嘘だろ!? お前……まだ、人間だよな?」

 

 我妻善逸の精力は、人間の枠を超えている。それは、自他ともに認めるレベルであった。仮に、裏金銀治郎でも淫魔四人を相手にしろと言われたら、四人目(殺生院キアラ)は外してくださいと頭を下げるレベル。それを交えて勝利を収める彼は、同じ人類なのか疑問であった。

 

 ママ友会は、子持ちの奥様達で構成されている。子供を通じて、交流の輪を広げようという真っ当な会であった、表向きは!! その真の目的は、旦那とイチャコラする為、下ネタを共有する会だ。勿論、旦那達もうれしいのだが……何事にも限度がある。

 

「そのセリフ、(裏金銀治郎)にも言われました。でも、俺分からないんだよね……勃たなくなるって感覚が」

 

「派手に理解した。お前とは、この手の話で理解は得られないと。やっぱり、裏金さんに相談するわ」

 

「二人とも、あんまり遊んでないで仕事だよ。手当がある方の調達」

 

 和気あいあいと話す二人の下に、同じ資材調達部の時透無一郎が帯刀して現れた。資材調達部の戦闘力は、アンブレラ・コーポレーションの中でもぶち抜けている。他にも、準柱級の俗物隊士達も何名か所属していた。

 

「あぁ~、またかよ。この間、間引いたばかりだってのに」

 

「いつも、うじゃうじゃ湧いてきて!! あいつら一体なんなの!? 馬鹿なの!?」

 

 我妻善逸の考えに、部の全員が賛同した。

 

 だが、そんな奴らを部の連中は愛してやまなかった。金になると。

 

………

……

 

 港に集まるガラの悪い連中。銃や刀で武装し、今から戦争でも始めるかのような雰囲気だ。中には、アジア系の外国語を話す者もいる。そんな連中を纏め上げているのが、北九州で急成長を遂げた不死川(・・・)組である。

 

「野郎ども!! 今日こそ、組長の悲願を達成するぞ!!」

 

「「「「「おおぉぉぉぉーーー!!」」」」」

 

 不死川組……不死川実弥が率いる指定暴力団であった。彼は、鬼舞辻無惨の毒で侵されながらも、生き抜いた。稀血という特別な存在であった為、生命力が他より高かった事と裏金銀治郎が鬼舞辻無惨をスムーズに倒した事が主な要因だ。そして、意地汚く生き延びて、裏金銀治郎を殺す為、遠い地で力をつけていた。

 

 歴代最高の柱という事で、武力をもってあっという間にのし上がったのだ。反抗勢力を血祭りにあげて、服従か死かという恐怖で縛り上げていた。

 

 

◇◇◇

 

 アンブレラ・コーポレーションの資材調達部。その本当の目的は、胡蝶印のバイアグラの原材料確保である。生け捕りにする事で、ボーナスがもらえる。安定した生活を乱そうとする不届き者達を処理して、ボーナスまで貰える。柱級の者達にしてみれば、笑いが止まらない。

 

 我妻善逸は、柄を握る手に力を籠める。

 

 包囲網が完成したところで各出入口から一斉に資材調達部が突入した。危険度が高い場所を担当する我妻善逸は、目の前で重火器を構える男たちに問いただした。

 

(裏金銀治郎)と敵対した者は、雇われることがない。いつまでも、そんな武力に頼ってないで、日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう。殆どの元・鬼滅隊の者達はそうしている。なぜ、お前たちはそうしない?」

 

「ふざけるな!! この裏切り者が!!」

 

「しつこい。お前たちは本当にしつこい飽き飽きする。口を開けば、裏切り者、鬼滅隊の志をなど口にする。そもそも、(裏金銀治郎)を恨んでどうする。本当に恨むべきは、組織の長である産屋敷だろう。だが、子供を相手に怒鳴りつけても解決しないと涙を呑んで殆どの者達が我慢した。なぜ、お前たちはそうしない?理由は一つ……不死川組に加担した連中は異常者の集まりだからだ」

 

「それがどうしたぁぁぁぁ!! 俺達だって、勝ち組になりたかったんだよ!! だから、殺して奪うしかないだろう!!」

 

 不死川組の者達は、人間一人を木っ端みじんにして余るほどの弾丸をばらまいた。だが、引き金をひくより先に、彼は目の前から消えていた。そして、重火器を撃つ男の肩を後ろからポンと叩く。

 

「俺さぁ~、手加減するのが苦手でね。ボーナスをもらえない事が多かったんだよ。だから、(裏金銀治郎)に教えてもらった技の実験台になってよ。大丈夫だよ……成功率は4割もあるから」

 

「か、風の呼吸――」

 

 アンブレラ・コーポレーションとの戦力差を埋める為、不死川組では組員に呼吸法を教えていた。元・鬼滅隊の隊士ならまだしも、普通の暴力団員にもその技術を教え込んでいる。門外不出というわけではないが、暴力組織が使ってよい技ではない。

 

「金の呼吸 壱の型 珠砕き」

 

 刀の側面部で男性の睾丸を叩く。その絶妙な力加減のおかげで左右の睾丸が衝突しあう。そして、片方が破裂するまで効果が継続する。男性ならば、わかるだろう。下手に斬られるより地獄の苦痛が続く。

 

「あ゛あぁぁぁぁーーー!! いでぇぇぇぇぇ!!」

 

「へぇ~、よかったじゃん。痛いなら、死んでないって事だよ」

 

 我妻善逸は、殺さずの呼吸を裏金銀治郎から学んでいた。雷の呼吸が使えるならば、金の呼吸が使えない道理はないという理論で覚えてしまったのだ。

 

 多少呼吸を嗜んだ程度では到達できない頂の一人。そんな者を前に有象無象の暴力団など、かかし同然。苦痛にもがく仲間をみて、完全に戦意を喪失する組員達。正面から勝てるような相手でない事は明白であった。

 

「た、助けてくれ。なぁ、もとは同じ鬼滅隊だろう」

 

「それは、ちょっと都合がよすぎじゃない。大丈夫だよ、(裏金銀治郎)は優しいから、新鮮な材料が入れば破棄してくれるよ。金の呼吸 弐の型 金縛り」

 

 本来であれば、鬼を生きたまま捕獲する技。それを平然と人間相手に使う男。まさに、鬼より恐ろしい存在だ。

 

………

……

 

 生け捕りにした資材を一か所に集めると、パチンと音が響く。裏金銀治郎による無限城への転移だ。そして、白装束を着た研究員達が次々と材料を奥へと運んでいった。社会不適合者達が、社会貢献する存在に生まれ変わる。

 

 ゴミから金を生み出す……まさに、神の御業である。

 

 裏金銀治郎が皆に慰労の言葉を掛ける。

 

「実に!! 実に、素晴らしい手際です。貴方達のおかげで、社員達が路頭に迷わなくてすみました。感謝いたします」

 

「勿体ないお言葉です、(裏金銀治郎)。よろしければ、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

 我妻善逸は、かねてより疑問に思っていた事があった。

 

 裏金銀治郎の力をもってすれば、敵対勢力を潰すなど片手間で終わる。そこに、胡蝶しのぶまで加われば、鬼に金棒である。だが、それを行わないのが疑問であった。敵対者には容赦しない性格である事は周知の事実だ。

 

「なぜ、不死川組を処理しないのでしょうか。許可さえいただければ、この足で壊滅させてまいります」

 

「簡単ですよ。全国に散らばった我々を恨む元・鬼滅隊、育手、刀鍛冶の里などの不良債権は一か所に纏まっていたほうがいい。今は、不死川組が全国各地を回り、そんな不良債権を一か所にまとめる動きをしております。集まったところを、一気に包囲殲滅します」

 

 ちなみに、その不死川組を陰から支援しているのはアンブレラ・コーポレーションだ。いくつものダミー会社を経由しているので、その正体はばれていない。多少金を渡す事で、不穏分子を集めてくれる。そして、その資材を金に換えるという関係図が裏で出来上がっていた。

 

「流石、(裏金銀治郎)!! その時は、炭治郎も誘っていいでしょうか。最近、色々とストレスも溜まっていそうで……あと、金が必要みたいです」

 

 家庭でのストレス発散の為、人斬りを進める親友。だが、アンブレラ・コーポレーションを守る事は、家族を守るに等しい。しかも、臨時ボーナスまで入るのだ、一石二鳥どころではなかった。

 

………

……

 

 無限城から地上への帰り道、我妻善逸はあるところへと寄った。

 

 それは、鬼を材料にした新薬開発や鬼を利用した血清を開発する部署。アンブレラ・コーポレーションの根幹を担う部署と言ってもよい。ここで作られた薬などが、莫大な利益を生んでいる。

 

 そして、彼の目的は、そこで働く親友の妹……竈門禰豆子であった。

 

「禰豆子ちゃーーーん。今日もきれいだね~、これ銀座で買ってきた洋菓子だけど、みんなで食べてね」

 

「ありがとうございます、善逸さん」

 

「いいって事よ。俺は、何があっても禰豆子ちゃんの味方だからね。炭治郎は、目の前の事が手いっぱいで、善治郎の事は見なかった事にしているけど……子供には、父親が必要だと思うよ。どうしてもって時は、俺が父親になるから」

 

 かつて愛した女性が不幸になるのは見たくない。幸せになってほしいと切に考えるいい男、我妻善逸。幼い子供にとって、母親も必要だが、父親だって必要だ。それを理解している。家で立派なパパをやっている男の言葉は重みが違った。

 

 仮に、今から我妻善逸が善治郎の父親だと名乗り出たら、親友が助走をつけて殴りに来るだろう。『今まで、なんで妹を一人にしたぁぁぁぁ』と、理不尽な暴力にも耐え忍ぶ覚悟もできている。

 

「善逸さん、そんなの女性の心を鷲掴みにするような事を言っていると、お兄ちゃんみたいに、めった刺しにされちゃいますよ」

 

「それで、禰豆子ちゃんが幸せになれるなら構わないさ」

 

 泣き虫だった頃の我妻善逸は、影も形もなかった。成長した彼は、女性に対して紳士な態度で接するイケメンへと生まれ変わっていた。しかし、竈門禰豆子は首を縦に振る事はない。

 

 彼女の矜持を守るため、それ以上は何も言わずに笑顔で立ち去る。

 

 『善逸さんに奥様達がいなくて、もう少し積極的にアプローチしてくれていたら、善逸さんの横にいたでしょう。ありがとう』と、彼の耳にしか聞こえない囁きが届いた。

 




扱いに差があるといわれる事もありますが……当然、あります!!
いいんですよ、作者のえり好みがでても!!

我妻善逸なら、こんな感じで綺麗にまとめて終わるはず。

次回は、裏金銀治郎の版。
外伝:NHK特番はそのあとになります。

残すところ@2話!! よく頑張った自分とほめてみる。
完結したら、おいしいもの食べて行ってきます。


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