鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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平和な蝶屋敷。

誰も不幸にならない、幸せ一杯をお届けしたい。

短めで申し訳ない。


外伝:裏金カナエ~afterstory~ 2

 蝶屋敷に裏金カナエが居座るようになり、胡蝶しのぶの評価が激変する。母性があり、鬼殺隊の母的存在であったが、マジモンの母親であったと。そりゃ、母性も感じるわと殆どの隊士が納得していた。

 

 だが、その反面。未来を先取った現場ネコならぬ、現場柱が半泣きで頭を抱えている。

 

「どうして!! ねぇ、どうしてーー!! 鬼殺隊には、馬鹿しかいないんですか」

 

「ママ、馬鹿じゃなきゃ鬼殺隊には居ないと思うよ」

 

 残酷な事だが、裏金カナエの言葉は真理であった。

 

 誰もが、裏金カナエが胡蝶しのぶの子供と疑わない。立ち振る舞いや雰囲気が似ている。事実、世界線は違えど血が繋がっている。実の親子に思われても無理もない。

 

 信じがたい事ではあるが、お館様の一声もあり、彼女が本物の胡蝶カナエの生まれ変わりで、未来人だという事も確定されている。

 

 理解不能な目的の為、未来から来たという点を除けば可愛らしい子供であった。

 

 ちなみに、裏金カナエの存在について、一般隊士達には真実は伏せられている。その為、胡蝶しのぶの子供という事だけが、伝達される。多少の真実を混ぜ込んだ方が信憑性があるとの事で全会一致の意見であった。

 

 寧ろ、真実しかない。

 

「まぁ、この件で悩んでも仕方が無い事は分かりました。で……折角だから、未来の話を聞きたいわ。未来の私って、どうなっているの?」

 

「――世の中、知らない方が良いこともあるわ」

 

 母親である胡蝶しのぶの顔をこの時ばかりは直視出来なかった裏金カナエ。

 

 母親が現代日本において一番知名度が高い女性。教科書にも載っており、記念館まで出来る程の偉人である。どの携帯ゲームにおいても最高レアリティで実装されている。他にもコンドーム、ローション、バイアグラという単語を調べれば、Google先生が勝手に画像まで付けてくれるほどだ。メイド服を着て嫌な顔をしてパンツを見せる画像が……。

 

「もしかして、死んでしまいましたか」

 

「社会的には死んだも同然かもしれないけど、ママは元気だよ。最近だと、年齢偽って学生生活を楽しんでるよ。この間なんて、パパと一緒に学園祭にお邪魔して楽しかったな。ママがメイド服を着て、胡蝶しのぶのコスプレをしていたんだよ。本人が自分のコスプレするとか楽しかったな~」

 

 胡蝶しのぶは、理解に苦しんだ。一体、未来の自分に何があったらそんな事態になるのか。彼女は、考えた……自分の性格から考えて、そんなバカな事はしない。きっと、子供がいう嘘だと。

 

「知らない言葉もありますが、何となく文脈でわかります。ですが、嘘は駄目ですよ。私が、そんな馬鹿な事するはずありません」

 

「えぇ~、じゃあ見る? 文化祭の動画なら撮っているよ」

 

 裏金カナエは、未来から持ち込んできた私用のタブレットを取り出した。完全にオーパーツである。だが、母親から嘘つき呼ばわりされるのは、納得がいかなかった。それに、なにより、どういう反応をするか楽しみで仕方が無い彼女である。

 

 大正時代を生きる胡蝶しのぶは、タブレットなる存在など知るはずも無い。明かりが付いて、映る画像に心底感動していた。未来はどんな世界なのだろうと興味が沸く。

 

 そして、裏金カナエが文化祭とタイトルが付けられた動画を再生する。

 

『しのぶさん、自己紹介からお願いします』

 

『本当にやるんですか? 絶対に、流出させないでくださいね。昨今、そんな事件をよく聞くんですからね』

 

『大丈夫です、このタブレットはオフライン専用です。wifiもありませんし、セキュリティ対策も万全ですよ』

 

 なにやら、寝室だと思われる場所でベッドに、メイド服を着た自分が座っている映像が始まった。世界を切り取ったような映像に感動する胡蝶しのぶとは、裏腹に裏金カナエは小声で呟いた。「あ、これパパのタブレットだ。ふーーん、私を友達に預けたと思ったら、裏でこんな事をしていたんだ」と。

 

『コホン、裏金しのぶ一八歳。キメ●学園に通うJK三年生をやってまーす。今は、学園祭真っ最中ですが、これから保健室で――』

 

 その台詞を最後に、動画が閉じられた。当然、その操作を行ったのは裏金カナエだ。どう考えても、大惨事にしかならない。よって、この行動は、彼女なりの母親への配慮である。

 

「なんで、消すんですか!! 未来の私だけでなく、裏金さんでしたっけ? どんな人か、折角見られると思ったんですが」

 

「だって、あのまま見ていたら後悔するよ。ママの為を思って、言っているんだからね。こればかりは、本当だから!!」

 

 駄目だと言われれば、見たくなるのが心情だ。

 

 それに加えて、胡蝶しのぶにとって謎の存在だった裏金銀治郎の姿が映る可能性がある動画だ。未来の旦那とか、興味がある。頭脳明晰な胡蝶しのぶは、ある種の可能性を見いだした。

 

「見て後悔する程、裏金さんというのは不細工だったりするんですか?」

 

「はぁ?ママと言えども、それを言ったら戦争だよ。ハッキリ言っておくけど、パパはママが想像している人物像を遙か上をいく人だよ。パパはね~、世界とママを天秤に掛けてもママを平然と選ぶ人だよ。悔しいけど、私じゃママの代わりにはなれないわ」

 

 実にその通りであった。全人類の命と裏金しのぶのどちらかしか救えないなら迷わず、裏金しのぶを選ぶ男が裏金銀治郎だ。娘である裏金カナエも理解している。

 

「なるほど。では、さっきの続きを見て判断しても構いませんよね。私は、人を見る目は確かですよ。まさか、人様に見せられないような男性じゃないなら、恥ずかしがる事なんてないじゃない」

 

「そこまで言うなら構わないわ!! じっくりと見て、パパの素晴らしさをその目に、脳裏に焼き付けると良いわ」

 

 胡蝶しのぶは、完全に裏金カナエを手の内で踊らせていると思っていた。所詮は子供……例え、姉の生まれ代わりであったとしても、自分の方が上だと。

 

 胡蝶しのぶは、もっと裏金カナエの言う事を信じるべきだったと後悔する事になる。

 

 裏金カナエは、動画再生を始めて部屋を出た。

 

 鬼殺隊の未来を支えるであろう、アレ(竈門炭治郎)とか、あの(我妻善逸)問題児(胡蝶カナヲ)を鍛えてあげようと思っていた。

 

 

□□□

 

 胡蝶しのぶが、声にならない悲鳴を上げている最中――裏金カナエは、かまぼこ隊が入院している部屋を訪れていた。

 

 そして、彼女は驚愕する。見ただけで分かるほど竈門炭治郎が澄んでいた事だ。彼女が知る竈門炭治郎といえば、事あるごとに裏金一家に死に体で駆け込んできて、人間→鬼→人間と何度も繰り返した存在であった。

 

 その度に増える家系図と彼の生傷。親族の多さでは日本記録を保持しており、一夫一婦制の日本なのに、なぜそんな記録が存在しているのか謎の男だ。現代日本において、竈門という名字を持つ者は、数代遡れば竈門炭治郎に行き着く。

 

「嘘でしょ!! だれよ、このピュア治郎!? 」

 

「えーーと、誰かな? もしかして、みんなが噂している胡蝶さんの娘……裏金カナエちゃんかな?」

 

 未来の竈門炭治郎しか知らない裏金カナエにとって、何がどうなれば、あんな男に育つのだと思っていた。

 

「嘘だろろぉぉぉぉぉ!! あの顔だけで食っていけそうな、柱の娘!? えっ、でもこの子の年齢的に考えて、子供を仕込んだとなれば……控えめに言って、この子の父親犯罪者じゃね?」

 

「こっちも嘘でしょ!! あの男気溢れる紳士な善逸さんが、こんな糞ガキだなんて……本当にどうなっているのよ。しかも、パパの悪口って――あの善逸さんが聞いたら、世界線が違うと言っても自決してお詫びしそうだわ」

 

 これも全て、裏金銀治郎という存在があれこれ暗躍した事が原因だ。本来の彼等は、こんな感じである。

 

 嗅覚と聴覚で真実を見分けられる特技は健在であり、裏金カナエが本気で言っている事が二人には分かった。そして、当然彼女が鬼である事も理解した。

 




伊之助の霊圧がないのは、気にしたらだめです。

次話当たりで、鬼側の内情暴露か無限列車あたりかな^-^

裏金カナエの実力は、正史において鬼舞辻無惨より若干劣る程度の予定。

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