短めですが、『おもてなし(意味深)』のお話です。
※しのぶさんが、二人いて混乱するので、一応以下の形で区別をお願い致します。
『』:裏金しのぶ
「」:胡蝶しのぶ
蝶屋敷で夕餉の準備を始める裏金銀治郎。接待を受ける側だというのに、自ら調理する。だが、流石に申し訳ないと思い胡蝶しのぶがお手伝いを申し出た。
大正時代において、台所に立つ男性など皆無だ。まさに古い時代の考え方で、何で妻である裏金しのぶが一切手伝わず、継子である栗花落カナヲと戯れているか、理解出来ない胡蝶しのぶであった。
『きゃーー、カナヲってば若いわ。それに、可愛いわね~』
「でしょでしょ!! あっちのカナヲも可愛かったけど、炭治郎君のせいでお目々がハイライトオフになる事が多かったからね。やっぱり、物静かな女の子は、可愛げがあるわ」
酔っ払い上司に絡まれた部下のような立場の栗花落カナヲ。だが、逆らう事が出来ずオモチャにされてしまう。明るい食卓と言えば、聞こえは良いが……敬愛すべき師範である胡蝶しのぶと同じ顔を持つ裏金しのぶに絡まれては、コミュ障の彼女では対応が困難であった。
師範である胡蝶しのぶに助けを求めるが、彼女は夕餉の準備で忙しかった。
「すみません、お客様なのにお手伝いをさせてしまって」
「いいえ、気にしないでください。向こうの世界……というか、未来の世界では男性が厨房に立つ事も珍しくありません。家事分担という考えが浸透しています。それに、料理は私の趣味でもありますし、愛する妻と子供に振る舞ってあげたいという気持ちが大きいです。まぁ、私の方が料理上手ってのが一番の理由ですけどね」
「あ、あの~良ければ、私に料理を教えて貰えませんか」
「えぇ、私で良ければ喜んで」
可愛らしく料理を教えてくれとせがんでくる胡蝶しのぶ。
エプロン姿、上目遣い、照れながらの三コンボを無自覚に決めてくる――卑しい女であった。料理中、試食と称して「あ~ん」と言いながら差し出された者を食べ合う二人。当然、そんな様子が妻と子に見えないはずも無く、食卓に並べられた箸がへし折られる結果になった。
………
……
…
慌ただしい夕餉を終えて、客間で雑魚寝をする裏金一家。世界線を越える為、相応の力を消費した事もあり、裏金しのぶも熟睡している。裏金カナエも母親に抱きかかえられて、夢の世界だ。
そんな微笑ましい光景を確認し、裏金銀治郎は勝手を知る蝶屋敷を歩いていた。そして、夜空がよく見える縁の下で一休みをしている。月見酒を一人楽しんでいると、この家の家主である胡蝶しのぶがやってきた。
そして、さり気なく裏金銀治郎の横に座る。だが、妙に距離が近い。それこそ、服という布切れ一枚挟んで豊満な肉体が真横にある状況だ。何より、良い香りがする。
「一人でお酒は寂しいでしょう。お注ぎ致します」
「ありがとう、えーーと胡蝶しのぶさん」
お返しにと裏金銀治郎も胡蝶しのぶにお酒を勧める。
お互い殆ど会話する事無く、ただお酒が無くなる度に継ぎ足していく。次第に、胡蝶しのぶは酔いが回り、裏金銀治郎の肩に頭を預ける。そして、裏金銀治郎は優しく頭をなでであやす。
「よく頑張りました、胡蝶しのぶさん。私の助けなどなくても、柱として何人もの人を助けてきました。もう力を抜いてもいいんです。だから、もっと大人を頼ってください、貴方はまだ子供なんですから」
「や、止めてください。そんな事言われたら、私…わだじ、泣いちゃうじゃないですか」
胡蝶しのぶは、この世界でひたむきに頑張ってきた。それを認めてくれる男性が今目の前にいるのだ。年頃の女性なのだから、弱った時にこれを言われると効く。
「辛いときに、側にいられないで申し訳ありません。ですから、今日の事は誰にも言いませんから存分に泣いてください。貴方が満足するまで私が頭を撫でてあげます」
「なんで、そんなに優しくするんですか。お酒がしょっぱくなっちゃうじゃないですか」
「愛、愛ですよ」
裏金銀治郎の寝間着が涙や鼻水で色々グシャグシャになる頃には、胡蝶しのぶが疲れて寝息を立てていた。そんな彼女を抱きかかえて寝室まで運ぶ裏金銀治郎。
………
……
…
胡蝶しのぶの寝室に到着し、彼女をゆっくりと降ろす。そして、押し入れから掛け布団を出そうとしたところ、後ろから誰かに抱きつかれた。言うまでも無く、抱きついたのは胡蝶しのぶだ。
「いかないでください。いっちゃ、嫌です」
暗い寝室でお酒の影響で、若干汗ばんだ美人が背中から抱きついてくる。そして、行かないでと殺しに掛かってくる。どうして、ここまで男性の心を抉るような事を無自覚にできるのだろうか。
「私には、妻も子供もいます」
「知っています。でも、その妻って私ですよね」
「え、あ、うん? そうですね」
裏金銀治郎も混乱していた。
今日初めて会ったこの世界の胡蝶しのぶからここまで思いを寄せられる理由が全く思いつかなかったからだ。元居た世界の胡蝶しのぶを落とすために、大変苦労したというのに何故この世界だと会って数時間で合体できる展開まで進んでいるのか謎であった。
寧ろ、それが分かるなら誰も苦労しない。
「今日は、少し寒いです。暖めて貰えませんか、銀治郎さん」
シュリシュルシュルと衣服が脱げる音がする。
「落ち着いてください、胡蝶しのぶさん」
「あっちのしのぶ程、エッチの経験はありませんけど……一生懸命頑張りますから。や、優しくしてくださいね。――声……出さないように頑張ります」
恥じらいながら、初々しい態度でお願いされる。そんな事されて、耐えられるはずがないだろうと裏金銀治郎が心の中で叫んだ。
裏金銀治郎――またしても人間に食い物にされる。
この日、親子丼、姉妹丼に並ぶ、妻倍盛丼という斬新なジャンルが開拓された。流石、HENTAI大国日本。
後、一話か二話でお終い予定^-^
いや~、劇場版のおかげで、執筆を始めて外伝なのに長くなってしまった。
読者の皆さん、エッチなしのぶさんは好きですか?
作者は大好きですよ^-^
本SSは全年齢の健全なSSなので、これが限界です。