鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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外伝:裏金カナエ~afterstory~ 9

 裏金銀治郎は、九死に一生を得た。

 

 胡蝶しのぶと盛大に盛り上がり一段落付いた時、背後から『お楽しみのようですね』と裏金しのぶからお声が掛かったのだ。この時ばかりは、死を覚悟した裏金銀治郎。どんな言い訳をしようか必死で考えていた。

 

 だが、次の瞬間、「ごめんなさい、銀治郎さん。事前に話は通しています。だって、隠し通せるはずないじゃないですか」と胡蝶しのぶが恥ずかしそうに言う。それもそのはず。同じ家の中で他の女性と事に及んでバレない筈が無い。鬼の始祖である知覚能力から考えれば当然の結果だ。

 

 裏金しのぶは、悩んだ結果、この件について受け入れていた。『どうせ、銀治郎さんの事だからこっちの私も救っちゃうんでしょう。いいですよ、そういう銀治郎さんを好きになったんです。だったら、最初からこっち側に引き込む事にします。いいですか、私が正妻。こっちのしのぶが愛人です。今まで以上に愛してくれないとお仕置きしちゃいますからね』と、妻倍盛丼プレイが始まった。

 

 裏金カナエは、裏金しのぶに一服盛られており、乱入出来ない状態になっていた。まさか、父親と<<放送禁止用語>>する許可を取りに来たら、寝ている間に先を越されているなど思わないだろう。

 

………

……

 

 翌朝、朝食の良い匂いに誘われて起床した裏金カナエ。朝食の席で妙に父親と胡蝶しのぶの距離が近い事に気がつく。プライベートスペースと呼ばれる空間にまで入り込んでおり、その顔から女になった事を知る。

 

「どうじて~、どうしてぇぇーー!! こんなの絶対おかしいわ。だって、こっちのママ(胡蝶しのぶ)とパパって、昨日が初対面でしょ!! なんで、そんなに下半身事情がユルユルなのよ」

 

「えーっと、ごめんね、カナエ。銀治郎さん、とっても優しかったわ」

 

 生粋の鬼である裏金カナエに致命的な精神ダメージを与える胡蝶しのぶ。その一言のダメージが大きく、裏金カナエが倒れ込んだ。だが、彼女は腑に落ちない事が一点だけあった。それは、裏金しのぶがそれを認めていると言う事だ。

 

ママ(裏金しのぶ)、これってパパの明確な浮気案件じゃないの?」

 

『カナエ、ママは気がついたのよ。どの次元世界でもママが好きになるのは銀治郎さんだけだと。無惨を滅ぼした後、拗らせて一生独身です。そんなの私が可哀相じゃない。女の幸せをもっと味わって欲しい。それに、私を見捨てるような銀治郎さんなら、好きにはなっていません』

 

「で、本音は?」

 

『カナエへの牽制です。あの堅物の銀治郎さんでも、身内には甘々です。いつか、カナエにも手を出してしまうでしょう。ですが、私がもう一人いたら、話が違います。だって、コッチの私……純情で可愛いんですよ』

 

 全くもって、酷い理由で関係を持つことが許容された。

 

 話題の裏金銀治郎は、我関せずと食事を黙々と食べている。というか、当の本人がいる場で浮気がどうのとか、会話に混ざれるはずも無い。

 

 

□□□

 

 思惑が失敗するどころか、自らの頸を締めてしまう結果になった裏金カナエ。彼女としても胡蝶しのぶが嫌いではない。コチラの世界にきて何かとお世話になったし、一緒にいて楽しくもあった。

 

 だからこそ、裏金銀治郎の愛人的なポジションになったのも納得している。

 

 だが、鬱憤が溜まらないと言えば嘘だ。そのストレス解消に、鬼退治が行われる。無限城に隠れている鬼達はメインディッシュであるので、前菜である珠世一派の掃除だ。

 

 日本中どこにかくれても、お館様の第六感と人脈。裏金銀治郎の無限城があれば、一瞬で鬼がいる場所まで移動できる。柱達が今、珠世一派が隠れている建屋を囲んでいた。

 

 一体どういう事かと戸惑う珠世一派。逃げ場が無い彼女達は、一縷の望みである竈門炭治郎に賭ける。弁明の場があれば、生きる道が開けるかも知れないと。この場には、我らが主人公もいる。

 

「炭治郎さん、これは一体どういう事ですか? 禰豆子さんを人間に戻すには――」

 

「禰豆子は、もう人間に戻して貰いました。今では、元気に暮らしています。今まで、お世話になりました」

 

 笑顔で辛辣な事をいう竈門炭治郎。

 

 よって、妹が平和に暮らせる世界に鬼は不要。人間を鬼に出来る存在など危険きわまりない。もはや、彼にとって珠世は第二の鬼舞辻無惨で他ならない。

 

「そんな筈ありません!! 鬼を人間に戻す研究には、長い月日が必要です。一体、誰がそれを実現したんですか」

 

「おぃおぃ、まだ殺しちゃいけねーのか。鬼だろう、こいつら。しかも、鬼を増やせるとなりゃ即刻殺すべきだ」

 

 風柱の言う事は正論だ。

 

 血鬼術を開花させた鬼は希少な資源。それを無駄にはしてはいけないと裏金一家が前に出る。誰が鬼を人間に戻す研究を成功させたのか、知ってから死んでも良いでしょうと。

 

 太陽の日差しが照らす元、最強の鬼の一家が自己紹介を始める。

 

「初めまして。私は、裏金銀治郎。鬼殺隊と共に鬼退治をしています。鬼の始祖も兼任しており、ワールドワイドな企業でCEOも務めております」

 

「えぇ~、これ私もやるんですか~。裏金しのぶです。娘がお世話になった鬼殺隊の手伝いをしています。同じく鬼の始祖もやってますよ~。一応、今は学生をやっていますかね」

 

「パパとママの娘の裏金カナエです。今日は、パパの愛人が増えた事で憂さ晴らしに来ました。悪いけど、鬼は邪魔だから死んでくださいね」

 

 全くもって、酷い自己紹介だ。

 

 鬼殺隊と鬼の始祖達が手を組んでいるなど、悪夢だと感じる珠世達。なにより、鬼舞辻無惨以外に鬼の始祖が潜んでいたなど信じられない事であった。

 

「では、不死川実弥さん、伊黒小芭内さん。カナエとどっちが先に頸を落とせるか、勝負ですね。もし、勝てたのなら弟さんの治療や包帯の下も綺麗に治療いたします」

 

 この世界において、風柱と蛇柱との関係は良好であった。

 

 お互いに先入観がなく、双方が利用してやろうという関係である。裏金一家は、お館様が認めた存在であり、事が終われば元いた場所に帰ると明言している。よって、利害関係が築けていた。

 

「ねぇ、パパ!! 私へのご褒美は~?」

 

「そうですね~。カナエが欲しがっていた、洋服を買ってあげましょう。貴方は、可愛いから何でも似合いますからね。では、炭治郎君がお別れの言葉を言ったら開始の合図です」

 

「珠世さん、鬼は殺さないと。また、妹が鬼にされたら大変ですからね」

 

 その言葉を聞いた珠世は、一体、あのピュアな男であった炭治郎に何があったのだと思った。だが、これが人間の本質なのだ。大人になるという事なのだ。

 

 一つの鬼の一派が全滅した。その血鬼術は、裏金銀治郎の手中に収まり、無惨に悪用されることは無いだろう。

 

 

□□□

 

 裏金銀治郎は、産屋敷一家と対話の場を設けた。

 

 産屋敷側としては、鬼退治に際し様々な面で支援してくれた事からある程度の報酬を考えていた。よって、報酬面で交渉だと考えていた。

 

 この時ばかりは、寝たきりの産屋敷耀哉が妻のあまねに支えられて無理に起き上がっていた。

 

「一応、未来の世界でも価値があると思われる品々を用意させてもらった。他に希望などがある場合、可能な限り融通させてもらおう」

 

「気にしないで良い。家出娘が世話になったお礼をしているだけだ。世界は違えど、親友から金など取る気は無いし、私なりの謝罪の意味もある」

 

 優れた第六感を持つ産屋敷耀哉は、裏金銀治郎が自らに誰かを重ねている事を理解する。そして、向こうの世界ではきっと想像も出来ない事が起こっていたのだろうと。

 

「それは、どういう意味かな?良ければ教えてくれないか」

 

「構わない。だが、その前に手を出せ産屋敷耀哉」

 

 病に犯されて、枯れ木のような手を裏金銀治郎はしっかりと握った。未来においても、治療法が確立していない病気は、多々存在している。勿論、産屋敷耀哉の遺伝子障害もそれに該当する。

 

 だが、鬼ならではの治療法が幾つか確立出来ていた。

 

「一体、何をするつもりですか裏金銀治郎殿。夫は……」

 

「知っている。私の世界でも、無理矢理治療する事は出来たが本人が拒んだのでやらなかった。だから、別アプローチで治させて貰う。安心しろ、鬼と人間をループさせるやり方じゃ無い。病気というのはな、誰かに移せば治るんだよ」

 

 治癒系の血鬼術は希少だ。それこそ、空間に作用する血鬼術並みである。裏金銀治郎とて、この手の能力は数個しか所持していない。

 

 産屋敷耀哉が徐々に正常な肉体を取り戻していく。病床が正しく移されている証拠であった。そして、病気の移し先は裏金銀治郎だ。鬼の始祖である彼の回復力を持ってすればどんな遺伝子障害であっても、一瞬で治療される。

 

「なぜ、ここまでしてくれるんだ。裏金銀治郎」

 

「あちらの世界じゃ、産屋敷輝利哉を助けられなかった。悪いな。それと、コッチの世界じゃ鬼を全滅させた後、後処理があるだろう。それを誰がやるんだ。そんな事が出来るのは、産屋敷耀哉しかいないだろう。子供達も優秀だろうが、まだ早い。しっかりと教育を施して後継者を育てろ。私のお勧めは、産屋敷ひなきだ」

 

「なぜ、ひなきなんだい?」

 

「彼女は、家の再興を成し遂げた。特に、彼女のお孫さんが、頭おかしい。どのレベルかで言うと、しのぶさん以上だぞ。産屋敷ノヴァ。通称ノヴァ教授と呼ばれて、世界に名前が知られているほどだ。余りに危険すぎて、野放しに出来ないからウチの企業で好きな研究を好きなだけさせている」

 

 体調が戻った産屋敷耀哉。

 

 自分を旧友の如く扱う心地よさを感じつつ、裏金銀治郎と未来の話題や別世界の鬼滅隊の話題で大盛り上がりをした。そして、酒を浴びるように飲み、馬鹿騒ぎする二人をハラハラと見守る産屋敷あまねであった。

 

 ちなみに、エロ本の話題を出した時……実は、この世界でもエロ本を集めているんだと希少なコレクションを見せてくれた。歴史的遺産もあり、本当に表に出せない物が多数あった。

 

 裏金銀治郎は、それに対抗してお炊き上げでエロ本を天国に送っていた馬鹿話をしたりと、実に楽しい時間を送った。そして、産屋敷耀哉より金塊と宝石を握らせられて、未来からの輸入品待っているからねとこっそり言われてしまう。

 

 エロを通じて、親友同士はまた出会う。

 




さぁ、残るは無限城だけ^-^

上弦のみんな、無惨様、待っていてね。



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