鬼滅の金庫番   作:新グロモント

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誤字脱字報告、本当に助かっております。

外伝を10話も投稿することになるとは作者も想定できなかったよ^-^
RTA風にサクッとなってしましたが、外伝ということでお許しください。



※しのぶさんが、二人いて混乱するので、一応以下の形で区別をお願い致します。


『』:裏金しのぶ

「」:胡蝶しのぶ





外伝:裏金カナエ~afterstory~ 10(完)

 無惨討伐に向けて、柱とかまぼこ隊の者達だけが集められた。裏金カナエという存在を容認し、鬼の始祖を問題視しない人選だ。だが、それで十分であった、戦力的に言えば過剰戦力。鬼殺隊と鬼側の戦力比は、アメリカ合衆国+中国+ロシア VS 日本 と言った具合だ。勿論、鬼殺隊が多国籍軍側である。

 

 奇跡すら起こりえない戦力差であった。

 

 一堂に会するこの場所、裏金しのぶと胡蝶しのぶといった同一存在がおり若干の困惑が場に生じた。だが、身に纏う気配が違う。どう違うかは、言うまでも無いだろう。

 

 そんな、顔だけで飯が食っていける存在を二人も侍らせている男――裏金銀治郎。モテたい、モテたいと明言する我妻善逸にとって、美少女を何人も侍らせる男など許しがたい存在であった。

 

「炭治郎!! ありえないだろう!! あの柱が惚れているだけでなく、既に食われているんだぜ。しかも、同じ顔をした裏金しのぶさん?だっけ。同じ顔の本妻もいるんだぞ。俺は、絶対認めないぞーーー!! アンタみたいな男がいるから、俺のようなモテない男に女が回ってこないんだ。一夫多妻とか、男の敵だぁぁぁぁーーー」

 

「おちつけ、善逸。あのカナエさんのお父さんだぞ。まぁ、確かに……複数の女性と関係を持つのは倫理的にどうかと疑問に思う。俺には理解出来ないが、きっと未来ではそれが普通なんだろう」

 

 裏金銀治郎は、もの申したかった。

 

 複数の女性関係を持つ事を責めれる立場に存在しない男達が、別次元とはいえ同じ女性と関係を持ったことを責めてくるんだ。勿論、これについては裏金しのぶも裏金カナエも同意見であった。

 

 よって、裏金銀治郎は、血鬼術を使い過去の映像を投射する事を決意する。選ばれたのは、大惨事 改め 第三次竈門炭治郎の乱の引き金となった、竈門禰豆子の結婚式。そこには参加者として裏金一家と我妻一家も参列している。

 

 つまり、この映像には淫魔四人を抱えた我妻善逸が映っている。

 

「あれ? ここに映っているのって、禰豆子ちゃん~!! すっげーー美人になってる!! ……うん?あの客席にいるのって俺じゃない?」

 

「いや~、違うんじゃ無いかな? 紳士的で鍛えられた感じがあるし、あんな美人達に囲まれているとか別人だろう。善逸はモテないし。それより!! 一体、誰との結婚式なんですか。お兄ちゃんは、絶対にゆるさないぞぉぉ」

 

 他の柱達も空中に投射される映像に釘付けだ。

 

 そして、式典が進行するにつれて、徐々にやべぇーー雰囲気である事に柱達も気がつく。恋柱ですら、最初はきゃーきゃー騒いでいたのに、額から冷や汗を垂らしている。

 

 どす黒い殺気を放つ栗花落カナヲと神崎アオイ。

 第一婦人とか第二婦人とか記載されているプレート。

 ガラスコップに反射して映る竈門炭治郎と竈門禰豆子結婚式という単語。

仲間からの一言で冨岡義勇が『いつか、ヤると思っていた』と言う発言。

 

 いつもの事だが、冨岡義勇が言いたかった事はこれだ。

 

******************

 これで、通算三回目になる。まさか、炭治郎から三回も結婚式に呼ばれ、祝()の言葉を述べる事になるとは思ってもみなかった。だから、何度でもこの言葉を贈ろう。()らい時、()なしい時()お互いが支え合う事で苦難を乗り越えられる。人生、()まあり、谷あり。炭治郎、お前はこの状況をく()しく感じているかもしれない。仮にそうだとしたならば、お前は大馬鹿者だ。お前と生涯を過ごしたいと思ってい(・・・・・)る妻達の事を考えてみろ。そして、この会場に集まり、お前()ちを祝ってくれている者達をみろ。これだけの仲間がお前達の門出を祝っている。勿論、俺も二人の幸せを祈っている。おめでとう、炭治郎、禰豆子。

******************

 

 最初は、竈門禰豆子の夫、憎しと騒いでいた我妻善逸すら沈黙した。そして、向こうの世界の自分が一夫多妻な上に、絶世の美少女、美女達に囲まれて幸せそうな光景を目にし、血の涙を流していた。

 

 皆に祝福される中、誓いのキスをするシーンで夫の素顔が……という場面で映像を止めた裏金銀治郎。状況証拠から考えれば、誰が夫だったのか明白だ。だが、未来の世界ではプライバシーが五月蠅いので、素顔は公開されない。

 

「――で、炭治郎君、善逸君。先ほど、複数の女性と関係を持つ事がどうとか言っていませんでしたか?」

 

「えっ!? 俺、何か言っていましたっけ? 記憶に無いな~、聞き間違えじゃありませんか裏金さん――いいえ、裏金様」

 

「おれ、聴力には絶対の自信があるから間違いないと思うよ~。裏金さんの様な男性なら、一夫多妻も当然ですよね。――あちらの世界で彼女達が居たって事は、コッチでも彼女達(俺の嫁)居ますよね。後で、色々と教えてください裏金様」

 

 華麗な手のひら返し。

 

 どの世界でも、やはりこう言う力関係になるのだと。そして、今の映像を見て、「なるほど、銀治郎。こちらの事は任せておくと良い」と、お館様が地位と権力を使い同じ事を実現する気でいる。そのお姿は、過去に見たことが無い程、イキイキしていた。

 

 

□□□

 

 無限城――そこは異次元に存在する。本来であれば、管理者である鳴女か同種の能力を持つ者しか入る事が出来ない場所だ。そこでは、全国の鬼達を集結し、激しい生存競争が行われていた

 

 蠱毒というのが相応しい言葉だ。

 

 上弦に多数の空席が出来た事と鬼殺隊が異様に強化された事により、鬼舞辻無惨は焦っていた。原因究明より、戦略的撤退を選んでいた。人間と鬼の寿命を考えれば、その作戦は実に有効的だ。

 

 歴代最高の柱や歴代最強の鬼殺隊、そんな連中と馬鹿正直に闘う必要などない。

 

 見込みがありそうな鬼達に血液を与えて強化を図る鬼舞辻無惨。その傍らで、無限城の管理を行う鳴女。有能な鳴女は、一瞬だけ管理している無限城に異物を感知した。

 

「無惨様……失礼しました。どうやら、勘違いのようです」

 

「――いいや、お前の勘違いではなさそうだな。招いてない客が来た。そこに居るのだろう。誰の許可を得て、無限城に入ってきた。殺す前に目的くらい聞いてやろう」

 

 裏金銀治郎からの接続を感知した鳴女、目くらましの術を使って接近してきた裏金銀治郎に感づく鬼舞辻無惨。こちらの次元の鬼達は、あちらの次元より優秀であった。

 

 裏金銀治郎の予定では、暗殺であった。無限城にいる鬼達は、既に柱によって掃討作戦が開始された。その中で血鬼術を持つ鬼については、可能であれば血液か肉体の一部を手に入れてくるようにお館様から厳命が下されている。これは、裏金銀治郎へのお礼も兼ねた報酬であった。

 

 目くらましの術をといて、裏金一家が姿を現す。一家の大黒柱として裏金銀治郎が前に出た。

 

「あなたには、沢山のお礼が言いたい」

 

 鬼舞辻無惨もこの言葉に困惑する。彼の人生、今まで人から感謝の言葉を掛けられた事は無い。更に言えば、いきなり現れた男からお礼が言いたいとガチで言われている状況だ。

 

 初対面の人間から心の底からお礼が言いたいなどと言われれば、鬼であっても対応にこまる。しかも、その存在が圧倒的な上位存在であるならば尚更だ。

 

 当然、鬼舞辻無惨は目の前の存在達が同じ鬼の始祖である事を見抜いていた。状況的に鬼殺隊とも手を組んでいる事も明白。よって、排除のため時間を稼ぐ。

 

「ほほぅ、では私の為に働く栄誉をくれてやろう。感謝しているのだろう。私が貴様にくれてやった恩恵は、貴様自身が働いて返すべきではないか。同じ鬼の始祖として、待遇は善処してやるぞ」

 

 この間、鬼舞辻無惨は鳴女に太陽の下に落とせと必死に念を送っていた。鬼ならば太陽は劇薬だ。確実にやれると踏んでいる。

 

「しのぶさん、二人分の対価。そこにカナエの分も加えると――何年ただ働きしないといけないか想像できません」

 

『はいはい、馬鹿正直に考えないの銀治郎さん。さっさと、終わらせて帰りますよ。銀治郎さんと私が不在だと、会社の決裁とかが色々と滞るんですからね』

 

「パパ~、鳴女はどうする?」

 

 裏金銀治郎は、一考する。鳴女から奪った血鬼術は、長年の研究と改良により究極といえるに相応しいに進化を遂げていた。過去に、無惨産の"おめこ券"を渡してきたというマイナスを加味してもお礼をするに十分であった。

 

「芸者になりたいと夢を聞いた事があります。無限城を貰った対価として、人間に戻してから芸者の人生を歩ませます。後の事は、耀哉君にでも任せれば問題ありません」

 

『無惨は、どうします?』

 

「感謝を込めて殺します。この世界に、鬼は不要です。産まれてきてくれてありがとう、鬼舞辻無惨。私は、あなたの事は嫌いではありません。しのぶさんに会えたのも、愛し合い結婚できたのも、子供を持てたのも全てあなたのおかげです。だから、今回は苦しまずに殺してあげます」

 

 初手から全力で殺す。とどのつまり、これが一番安全で効率が良い方法だ。

 

 裏金銀治郎――剣士としては並みの柱程度しか才能がない。だが、鬼を殺す事にかけては歴代最高である。そんな男が、選んだ血鬼術――。

 

「強制昏倒催眠の囁き――夢を見たまま死ぬといい」

 

 本来、格上には効果が薄い強制昏倒催眠の囁き。だが、格下の相手ならばエグイ効果がある血鬼術だ。自分の都合の良い夢を見る。そして、起きる為には自決が必要になる。だが、自決するのが鬼の場合……これが実質不可能だ。

 

 昏睡する鬼舞辻無惨と困惑する鳴女。両名に裏金銀治郎が、人間に戻す薬を投与する。親玉である鬼舞辻無惨が人間に戻ると連鎖的に鬼が死に絶える。何百年も鬼殺隊を苦しめた鬼、彼等のあっけない最後であった。

 

 そして、人間に戻った鬼舞辻無惨。このまま鬼殺隊に引き渡せば、無事では済まない。苦しんだ上に死ぬ。裏金銀治郎が手刀で首を刎ね飛ばす……これが彼にできる最大限の感謝の気持ちであった。

 

………

……

 

 無限城、攻略が始まって10分も経過せずにすべての事が終わってしまう事態。あまりの早さに、お館様ですら忘れ物を取りに戻ってきたと勘違いする程だ。当然、柱達は戦い足りない。上弦の壱との戦闘中に相手が崩壊して終わった。

 

 つまり、これをもって裏金一家が元の場所へ帰る時が来た。それに焦った、お館様が大急ぎである物を持ってくる。そして、笑顔で言い放つ。

 

「しのぶ、すまないが頼まれごとをしてくれないか。――あぁ、すまない裏金しのぶ先生の方だ。この書物に、産屋敷耀哉君へとサインを貰えないだろうか。銀治郎から、再販版だが君の書籍を貰ってね。ファンになってしまったよ」

 

 裏金しのぶは、どこぞの誰かがサイン会に来た場面を思い出してしまった、そして、やはり血筋かと嘆き崩れ落ちる。だが、恩人であった産屋敷耀哉のお願いを断る事もできず、手慣れた感じでサインをする裏金しのぶ。

 

 

□□□

 

 原作時空を平和にして、元の世界に帰ってきた裏金一家。そこには、新しい家族が一人加わる。胡蝶しのぶ……元いた次元で、継子のカナヲなどの面倒もみる必要があることから身辺整理もある為、当面は次元を行き来しての生活をする事になっている。

 

 その際に、産屋敷耀哉から依頼のあったエロ本の密輸人も引き受けている。人類史上、次元を超えてまでエロ本を密輸するアホは、産屋敷耀哉しかいないだろう。

 

………

……

 

 裏金しのぶは、上機嫌であった。当初、自分と同一存在が増える事に対して若干の懸念があったが、よい具合に方向性(SとM)が違う事で夜の生活が一層充実していた。おまけで、新薬の研究開発など猫の手も借りたい場面などで、自分がもう一人いたらと思う事も多く、助かっている面が大きい。

 

 そろそろ、学校生活にも加わってもらって交互に通学するのもありではないかと思い始めていた。だが、そんな夢はかなわない。

 

 朝のHRで転校生が来る事が周知される。

 

 そして、現れる転校生……だが、生徒達は首をかしげる。転校生が黒板に名前を書き自己紹介を始めた。

 

「みなさん、初めまして。今日から、皆さんと一緒に学ばせていただきます。裏金カエデ(・・・)といいます。えーーと、(年齢的に)しのぶの双子の妹になります。仲良くしてくださいね」

 

 資本主義社会において、金と権力があれば戸籍など簡単に用意できる。札束を使えば裏口入学など簡単なものであった。

 

 当然、注目を集める裏金しのぶ。クラスメイト達は、二人を見比べるが双子ならそっくりだと納得する。

 

 だが、クラスメイト達は大事なネタに気が付けていない。双子の片割れも裏金の姓を名乗っているのだ。それが何を意味しているかを知る日は近い。

 

『あの男はぁぁぁぁぁぁ!!きいてないわよぉぉぉぉ 』

 

 今日も平和な世界で青筋を立てる美しきヒロインが叫びをあげた。 




完結後、映画を見て突発的に投稿したアフターストリーでしたが最後までお付き合いありがとうございました!!

これにて、多分本当に完結です^-^

映画やアニメをみて、そういえばこんなSSもあったな~的なことを思い出せてもらえれば作者はうれしい限りです。

では、また次の作品でお会いいたしましょう!!


〇〇〇余談〇〇〇
カナエ「パパ、これって私のアフターストリーだよね? 最終的に、娘とパパの禁断の愛を育むエンドじゃないの」

銀治郎「全年齢向けの健全な作品ですよ。健全を絵にかいた私のような主人公が娘に手を出すことはありません」
〇〇〇〇〇〇〇〇


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