鬼滅の金庫番   作:新グロモント

91 / 100
これから遊郭編を纏めて視聴予定ですが、第二次を投稿してみました。

またまた、完結後の外伝投稿ですが…許してクレメンス。


外伝:第二次竈門炭治郎の乱(1)~責任取って認知してください~

 大正の世、シングルマザーという文化は浸透していない。女性は結婚して専業主婦になり、子育てに専念するという古き文化だ。そのような文化に反逆するかのように、アンブレラ・コーポレーションでは、女性の活躍の場が目覚ましい。

 

 その中でも、幹部候補である竈門禰豆子。最高経営責任者である裏金銀治郎に特別に眼を掛けられた女性であり、語学堪能で主に海外案件を担当する程のキャリアウーマンだ。若く、仕事が出来て、美しい女性という全てが揃った存在である為、例え子持ちであったとしても社内の人気は極めて高かった。

 

 だが、彼女の子供の父親が誰なのか、殆ど知られていない。竈門禰豆子の第一子にして長男である竈門善治郎。察しの良い男ならば、この名前だけで理解出来る。そして、彼女の口から決して父親の名前が出ない事も相まって様々な憶測が飛び交った。

 

 当然、その事は竈門炭治郎の耳にも届く。日本屈指の大企業であるアンブレラ・コーポレーションに務める女性であってもシングルマザーへの風当たりは強い。世間体が悪いのは、神崎アヲイと愛人関係を構築していた彼にはよく分かっていた。

 

 そんな妹の状況を嘆く兄――竈門炭治郎は、遂に決心する。そして、事が事だけに同じ神の信徒であり、大親友であり、大先輩でもある我妻善逸に協力を仰ぐ。その会議場所は、アンブレラ・コーポレーションの食堂。

 

「善逸、神は言った。"複数の女性と関係を持つなら隠すな"と……だから、俺は決めた」

 

「そっか。ようやく決心したんだな。……ちなみに、どの件?」

 

 我妻善逸が知る限り、竈門炭治郎の女性関係はアンブレラ・コーポレーションでトップだ。第一婦人の竈門カナヲ、第二婦人の神崎アオイ。そして、竈門禰豆子。他にも、事実関係は把握できていないが、アンブレラ・コーポレーションの託児所で働く寺内きよ、中原すみ、高田なほの体内で胎児の鼓動を確認していた。逆算すると、繁忙期で竈門炭治郎が会社に泊まった時期と一致する。その際、なぜか、託児所を仮眠室代わりにしていた。

 

 そんな叩けば埃が出るような女性関係は、末恐ろしいとすら我妻善逸は感じていた。早く精算しないと死ぬぞと本気で心配している。

 

「えっ!? どの件って、禰豆子の事に決まっているだろう。(神の女性関係について、俺が知らない事を我妻善逸は知っているのか。だが、神の家庭環境を見る限り女性に対して紳士的なのは分かっている。だから、禰豆子の事もしっかりして欲しいんだ。俺達は神の信徒だろう。だから、神が過ちを犯そうとしたら正しい方向に向かって貰うように進言するのも勤めだと思うんだよ。だが、俺一人の言葉だと神に通じるか不安がある。)だから、協力してくれ」

 

「炭治郎!良く言った!俺は、お前を信じていたぞ。禰豆子ちゃんの幸せの為ならば、俺は何でも協力するぞ」

 

 どこぞの水柱に習ったかのような圧縮言語。冨岡義勇の指導は、しっかりと受け継がれていた。

 

「うん?今、何でもって言った?」

 

「言った。男に二言はない」

 

 竈門炭治郎の言葉に、我妻善逸は感銘を受けた。だからこそ、協力は惜しまない考えだ。竈門炭治郎と竈門禰豆子は、血の繋がった実の兄妹である。それ故に、竈門善治郎の父親の事が露見すれば、お世辞にも世間体は宜しくない。両者とも後ろ指を差される可能性が高い。それでも、第一婦人や第二婦人とも折り合いをつけつつ、妹とその子供の幸せすら守ろうとする。

 

 これに協力しないなどあり得ない。

 

 そして、善は急げと言うように竈門炭治郎と我妻善逸は行動を開始した。

 

 我妻善逸は、周りを固めるため宇髄天元や時透無一郎、煉獄夫妻(杏寿郎及び蜜璃)、鱗滝左近次にも話をつけに行った。同じ釜の飯を食べて鬼と闘った戦友であるが故、竈門炭治郎と竈門禰豆子の関係が表沙汰になったとしても変わらず接してくれる。だが、それでも通すべき筋はある。親友のため、かつての思い人の幸せの為、無償で働くいい男だった。

 

 竈門炭治郎は、竈門禰豆子の元へ走った。今まで、気が付いてやれなくてごめん。そして、これからは俺が何とかすると。それを伝えに向かった。

 

………

……

 

 裏金銀治郎は、社長室で裏金しのぶと裏金カナエと一緒に過ごしていた。勿論、遊んでいるわけでは無い。仕事をしている。広い社長室だからこそ、子供を一人くらい連れてきても問題にはならない。

 

 それに、裏金カナエのご機嫌取りでもあった。両親に預けたり、託児所に預けると露骨に機嫌が悪くなる。母親より父親に抱かれる事が好きなのだろうか、裏金銀治郎が背負ったり抱っこしていると非常に機嫌が良くなる。それこそ、裏金しのぶが焼き餅を焼くほどに。

 

「ねぇ、銀治郎さん。そろそろ、代わってください。私もカナエを抱っこしたいんですけど」

 

「カナエ、ママの方が遊んでくれますよ」

 

 なぜか、悲しそうな顔をする裏金カナエ。そして、まだまだ、この姿で甘え続けてやるぞという凄まじい気迫がなぜかソコにはあった。だが、その様子には気がつく事はない。裏金銀治郎も裏金しのぶも身内には激甘であり、基本的に全てを許容してしまうほど寛容であった。

 

 そんな家族の時間に割り込んでくる集団がある。

 

「お邪魔するぜ、裏金社長…CEOだっけな?まぁ、どうでもいいか」

 

「おや、宇髄天元さんに皆様まで。もしかして、トラブルでも発生しましたか。止めてくださいよ。この間みたいに無限城内で材料()達が暴れるなんて困ります。管理基準の見直しなど大変だったんですから」

 

 嘗ての戦友にして、現社員達の元柱達。竈門炭治郎、竈門禰豆子。そして、我妻善逸。ここまで揃えば、問題が発生したと勘違いしても無理はない。彼等の力だけでは、情報封鎖が出来ないから手伝ってくれと言われた方がまだ安心できるという物だ。

 

 そして、特記戦力の集まりみたいな集団から神の第一信徒と自称する我妻善逸が説明を始める。

 

「神!実は、炭治郎が遂に決心をしたんです。そして、その宣言をする為、この場をお借りさせてください。神の家族の時間に誠に申し訳ありません。ですが、これも神の言葉を受けた友の行動なのです。その結果、一人の女性と子供が幸せになれるのならばと断腸の思いでここに参りました」

 

「そうでしたか。これで、ようやくお二人のご母堂様も安心出来るでしょう」

 

 裏金銀治郎の夢には、まだ親友である産屋敷耀哉が遊びに来る。新刊のお焚き上げ依頼や子供の様子を確認しに来ている。そして、その序でに毎度毎度お世話になっていますとご迷惑をおかけして申し訳ありませんと涙の土下座をしてくる竈門母。

 

 二人の行く末を見届けなければ、死んでも死にきれないとの事で成仏できずにいるとか。その一番の原因が、竈門炭治郎にある。第一次竈門炭治郎の乱で血のクリスマス事件で怪我の治療で鬼になった際に、竈門母が鬼となった息子を通じてその場を覗いていた。

 

 母の思いを知らず、竈門炭治郎が竈門禰豆子の手を引いて一歩前に出た。竈門禰豆子の背中には、竈門善治郎がいる。

 

「神。俺は、神に本当にお世話になっております。神の言葉は全てに優先します。ですが、神が誤った道に進みそうな場合には、進言するのも勤めだと思っております」

 

「うん?まぁ、そうですね。Yesマンばかりでは、仕事も社会も回らない事もあります。私一人では固定された視点を崩せない場合も多くあるでしょう。だから、君達のような若い者が必要だと思っております」

 

 何やら、不穏な空気を感じるこの場に集まった者達。

 

 だが、竈門炭治郎だけは大真面目だ。彼が持つ、嗅覚は真実すら見分ける。その超人的な嗅覚が、竈門禰豆子や竈門善治郎から裏金銀治郎の残り香があるのを嗅ぎ取っていた。だが、それもそのはずだ。元々、竈門善治郎出産に際し、表沙汰に出来ないため年単位で無限城で暮らしており、生活道具まで全て揃えて与えたのが裏金銀治郎だ。

 

 CEOとして、託児所などにも顔を出して子供の面倒がみられているかなどもしっかりと確認している。その結果、預けられた子供達にお菓子を配っており、匂いが残るのも当然だ。

 

 常識的に考えれば、竈門炭治郎が何故、自分の匂いに気が付かないと思うかも知れないが、これは仕方が無い。自分自身の匂いは、誰であっても感じる事は難しい。口臭などが良い例と言える。

 

「神。竈門禰豆子の子は、善治郎といいます。社内の風の噂で聞きました。善治郎の父親について。だから、俺、決心したんです!」

 

「待って、お兄ちゃん。それ以上は」

 

 今までは、遂に認知してくれるんだと思い嬉しそうな顔をしていた竈門禰豆子。だが、今の彼女の顔は真っ青になっている。他の参列者も同様に、驚きを隠せない顔になっていた。

 

「責任取って認知してください。神は以前におっしゃいました。"複数の女性と関係を持つなら隠すな"と。調べましたが、竈門禰豆子に渡航記録はありませんでした。出産の前後の時期は、日本に居たはずです。居た場所って、無限城ですよね。冨岡さんが、食事を運んでいたと証言しました。子供の父親については、言葉を濁してお前自身がよく知っている人物だと」

 

「なるほど、状況証拠から考えれば可能性はありますね。そうですか……非常に残念ですよ。我妻善逸君、君が付いていながらこのような事態になるとはね。失望しましたよ」

 

「なかなか、面白い事になっていますね、銀治郎さん。つまり、ここに集まった皆さんは、銀治郎さんが浮気して、子供をこしらえたから認知しろと言いたいんですね。言っておきますが、私は銀治郎さんの事を信じていますから、絶対に認めませんからね」

 

 周囲の反応がイマイチなのが理解出来ない竈門炭治郎。これが第二次竈門炭治郎の乱の始まりであった。

 




ゆっくりとですが、第二次竈門炭治郎の乱を始めたいと思います。

次回:「お兄ちゃん、一緒に死んでくれる」

当然、メッタ刺しになる予定です。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。