『』:裏金カエデ、一部海外リポーター
となっております。
鬼の居ぬ間に洗濯とは、実によく出来た言葉だと裏金カナエは常々思っていた。彼女は、この時を待ちわびていた。母親達は、JK3年生。つまり、卒業前に修学旅行という一大イベントが明日から始まる。
修学旅行の行き先は、イタリアとなっており一週間不在になる。そうなると、家に残るのは、裏金銀治郎と裏金カナエの二人。父親と娘という極々普通の組み合わせでこそある。
よく出来た娘とよく出来た父親という、不安要素こそ無いように見えるが裏金しのぶは、不安しかなかった。リアルに良くデキた関係になってしまうのではないかと一抹の不安。そして、結局、対策が思い浮かばないまま修学旅行当日になってしまった。
「しのぶさん、カエデさん。現地で、変な人に絡まれても付いていかないでくださいね。海外の男性は、日本人女性……特に、女子高生に対して凄まじい偏見を持っています。例のNHK大河ドラマの影響もあり現地メディアで竈門シノアさんが修学旅行で来る事が報道されておりました」
「心配性なんですから~。大丈夫ですよ、集団行動も意識しますし、変な輩は他の生徒達に迷惑を掛ける前に眠って貰います」
『安心してください。場合によっては、私の血鬼術で位相をズラして認識出来ないようにしますから』
「そうですか。気をつけて行ってきてください。国外では、国内ほど強権は使えないので問題が生じたら、力業で解決して戻ってきてくださいね」
裏金しのぶと裏金カエデを同時にどうにか出来る人類が、地球上に存在するのか疑問ではあったが心配してしまう裏金銀治郎。だから、妻達を送り出してあるところに電話を掛けた。
アンブレラ・コーポレーションの潤沢な資金を使い世界最大宗教で枢機卿に出世した裏金銀治郎の部下にして狂信者。スマートフォンのディスプレイに刻まれた名前は、モズクズ・アガツマ。裏金銀治郎の行動の結果、枢機卿自らが日本から来た女子高生達を案内するという話題が世界で放送される事になる。
◇◇◇
裏金カナエは、母親達を見送る。いつもどおり振る舞いつつも、彼女は彼女でしっかりと計画に基づいて動いていた。電話をして、母親達が確実に飛行機に乗り込んだか確認を始める。
【もしもし、紅莉栖お姉ちゃん~。ママ達は、飛行機に乗り込んだ?】
【確実にね。しかし、なんで私がこんな事をしないといけないのよ。そりゃ~、命を助けて貰った恩はあるけど、私だって暇じゃないんだけど】
産屋敷紅莉栖。産屋敷ひなきの子孫であり、産屋敷ノヴァの孫にあたる。まさに、天才の血筋であり、彼女も第三国の研究機関に高待遇でスカウトされるレベルだ。中には過激派もおり、引き抜けないなら殺してしまえという危ない連中もいる。
ある事件を切っ掛けに、裏金カナエの血で鬼になり血鬼術に目覚めた。今では人間に戻り普通に生活をしているが、裏金一家の裏事情を知る数少ない人間。裏金カナエの血鬼術の一つである"シュタインズ・ゲート"の元持ち主でもある。
【またまた、嘘言っちゃって。どうせ、オカベさんとイチャラブする時間が減っただけでしょ。良いわよね、男がいる女って……ぺっ。そんな態度だったら、欲しがっていた遠心分離機買ってあげないわよ】
【犬と呼んでくださいカナエ様。いいえ、えーーっと……お館様?でいいんだっけ】
父親のブラックカードを使って、個人的な部下に必要な物を買い与える悪い幼女がここにいた。
【えぇ、それでいいわ。その方が、秘密結社っぽくて雰囲気がでるでしょ?】
【まったく、面倒くさいわね。押し倒しちゃえばいいのに、なんでこんな面倒な事しているのよ】
【最終的には、パパをトップにすげ替える予定。それに、男の人ってこういうのが好きなんでしょ】
裏金カナエの言葉を否定したかった産屋敷紅莉栖。だが、彼女の恋人もいい年こいて、こういうのが大好きだった。男は、いつまで経っても童心を忘れる事はない。
………
……
…
渋谷のハチ公前、そこはデートの待ち合わせスポットである。その中に、周りの女性と比較しても頭一つ二つ抜けた美少女が、佇んでいる。素人目にも見るからに高そうなブランド物を身につけており、おいそれと話しかける者は誰も居ないように見えた。
その女性こそ、裏金カナエである。今日は、裏金銀治郎と買い物の約束をしており現地集合にしていた。だが、彼女の姿は普段の幼女ではなく、母親達と同じくJK3年生くらいにまで肉体を成長させている。詰まるところ、前世で裏金銀治郎と知り合った時代の頃の肉体年齢だ。
そんな周りから浮いている美少女の所に、タイミングよくイタリアメディアが日本文化の紹介という事で彼女に目を付けた。日本の開放的な性の問題が国外でも有名となっており、事実調査も今回の取材の一環であった。
大事な事だが、全て裏金カナエの仕込みである。伊達に長い年月、幼女のフリをしてノウノウと人生を謳歌していた訳ではない。
メディアのリポーターが、裏金カナエに話しかけた。リポーターは何も知らないが、取材の場所で目に付く女性……中でも、視聴率が取れる女性を選ぶとなれば裏金カナエが選ばれる確率は跳ね上がる。
『すみません、イタリアメディアですが少しお時間宜しいですか? 実は、今日本の文化について紹介をしておりまして、是非貴方に色々とお伺いさせてください。勿論、謝礼の方もさせて頂きます』
「えぇ、構いませんよ。ですけど、今日はパパと
パパというパワーワードに、リポーターは固まる。まさか、一発目で引き当てるとは考えていなかった。だが、伊達に海外派遣される優秀なリポーターではない。本当に父親が来る可能性もあり、ドキドキであった。
しかし、リポーターが裏金カナエのことを観察すれば身につけている品のレベルがとても見た目通りの年齢で購入できる品々ではない事に気が付く。時計は、パテックフィリップ。バックは、ルイヴィトン。服は、オーダーメイド。
リポーターは、ひょっとしてマズイ人に声を掛けたのではないかと電話で上司に指示を扇ごうとした時に……カメラに裏金カナエのパパが映り込む。
「パパ~♥」
実の娘の姿を確認して、裏金銀治郎は理解した。父親と母親と同じく肉体年齢を操作可能であると。今までは意図的に抑えていたのだという事も察する。
「これは、驚きました。昔より、少し幼く見えますがとても綺麗です。確かに、色々と買い物が必要になります……で、先ほどからコチラをカメラで収めて固まっている人達は?」
海外メディアの人達だけでなく、ハチ公前にいる人達も注目した。美少女がパパと呼ぶ人物の年齢が、どう見積もっても20代前半だ。これでは、パパ活というなの援助交○と勘違いされてしまう。
その為、誰も裏金銀治郎が裏金カナエの血の繋がった父親だと認識していない。
しかし、視聴率が取れる事は間違いない状況だ。
『どうして、彼の事をパパと呼ぶのでしょうか?』
裏金カナエは、裏金銀治郎の方をみてハッキリと伝える。
「だって、男の人ってこういうのが好きなんでしょ」
男の人は、実の娘にパパと呼ばれるのが好きなのは当然だ。何処も間違っていない。これを否定するならば、世の中の方が異常であった。
この日、『男の人ってこういうのが好きなんでしょ』という名言が世界に配信された。当然、このニュース映像はイタリア本国でも放送されており、修学旅行先でリアルタイムで様子を見せられた母達。真実を知らない彼女達の同級生や引率の先生には、不倫インタビューに見えて、周囲から慰められる始末であった。
そして、裏金カナエの勝負の結果は……
勝負結果は、読者様の心の中にあります。
いや~、健全な話になったわ。
最後の最後まで外伝にお付き合いいただきありがとうございます!