情報化社会において、メディア露出の恐ろしさを体験している裏金銀治郎。先日のゴム製品の穴開け問題に続いて、別件で国会の参考人招致を受けている。
今回は、呼び出された内容を全く知らされていない。日本経済を支える大企業CEOは暇ではない。気軽に呼び出せば、議員の首が何人か変わる。事実、先日の一件以降、一部議員が謎の辞職を遂げた。そして、今では電波の届かぬ異空間にいる。
経済的影響を考えれば、お互いにwin-winの関係が望ましいのだが……アンブレラ・コーポレーションが揺らぐような事態があれば喜ぶ企業も多いのが事実。シェア拡大を狙う企業も多く、そんな連中から息の掛かった議員達が今回頑張っている。
『昨今の風紀の乱れは酷い。そうは思いませんか、アンブレラ・コーポレーションのCEO裏金銀治郎殿。子は親の背を見て育つ――実に、良い言葉です。私もそう思っております。つまり、今の風紀の乱れは言い換えれば大人である我々が原因とも言えましょう』
「話が見えませんね、議員。世界の性産業を支える我が社が、風紀の乱れの原因だとでも言いたいのですか?オリンピックでは、国の要請で何十万個の近藤さんを無償提供しました。その費用は、どこから出たかご存じですか?私のポケットマネーですよ」
企業として宣伝のために、そういった品物を無償提供する事はある。だが、タダで作れる商品などない。人件費、材料費など様々な経費が掛かる。裏金銀治郎は、お国のため自費でそれに答えた程の愛国心がある男だ。
『その節は大変お世話になりました。ですが、今回お呼びだてした件はそれではありません。心当たりがあるんじゃありませんか?』
「風紀の乱れに関する事ですか……そうですね~。もしかして、第二婦人が居る事ですか?その件については、両者合意の上です。それとも、第二婦人を娶った事を記念して、社員全員に10万円の特別お祝い金を配ったことですかね?アレは、弊社の税理士や法務部としっかりと相談をした上でやったことなので何も問題は無いはずですが」
この男……裏金銀治郎は、平行世界から連れてきた胡蝶しのぶ(原作)を第二婦人に据えた際、誰かに自慢したくて社員全員に金をばらまいた男だ。嫉妬もされたが、ばらまいた金が高級風俗一回分程度の金額でもあり、社員からは好評であった。こんなに金を配るなら、毎年一人娶ってくれみたいな話題も出たほどだ。
『違います。いい年した大人が何をやっているんですか。まぁ、今はその件ではありません。本当に分かりませんか?貴方は、父の日にイタリアメディアのインタビューを受けていたと思います』
ざわざわ
イタリアメディア、父の日というキラーワード。ここから連想される事は、簡単であった。日本が更に誤解されてしまった大事件。裏金銀治郎がメディアにアンブレラ・コーポレーションCEOとして顔が露出してから、数分足らずでネットには彼が何者か調べる記事が沢山投稿された。
その中に、【パパ活していた男性にソックリじゃない?】というスレッドが一番伸びていた。暇人達は、顔認識ソフトを駆使し、様々なネット情報を集めて、パパ活していた男が裏金銀治郎だと特定に至る。
「あぁ、そういえば、そのような事がありましたね。で、それが何か問題でしたか?」
裏金銀治郎の淡泊な反応に、質問している議員も困る。
何が問題かって、全てが問題であると言いたい。だが、ここまで自信をもって認められると、返って自信がなくなってしまうのは仕方が無い。
大事な事は、裏金銀治郎が父の日にイタリアメディアのインタビューを受けたことを認めた事実だ。これにより、ソックリさんという線は無くなった。この瞬間、一気に伸びる【パパ活CEO】というスレッド。
『貴方は、父の日にイタリアメディアにインタビューを受けたことを認めるのですね。そして、この写真の女性と食事して、買い物をして、ホテルに泊まった事実を』
「えぇ、認めます。それが何か問題でも?」
実は、何も問題は無い。女性から訴えがあったわけでもない。ただ、男性が女性と食事をして、買い物をして、ホテルに泊まっただけだ。それの何が悪いかと言われれば、罪に問われるような事は何もない。
『問題ですよ。未成年らしき女性と援助交際――パパ活など、言語道断です。人間として恥ずかしくないのですか?』
周囲から、そうだそうだと議員を援護する声がある。その反面、裏金銀治郎の息の掛かった議員達は、議員を援護した連中をメモして、彼等のスキャンダルを率先して提供を始める。
「幾つか疑問なのですが……その未成年【らしき】女性から、何か訴えでもありましたか?それに、らしきってどういうことでしょうか。まさか、そんな情報で参考人招致で呼び出したのですか?」
『今のところそういった情報はありません。しかし、この中継を視聴したならば彼女が名乗り出て必ず、貴方を訴えるでしょう』
アンブレラ・コーポレーションCEOを相手にパパ活で訴えれば、示談金が凄まじい事になるのは明白だ。一生掛かっても使い切れない莫大な金が転がり込む。これに乗らない女性はいないと議員は思っていた。
だが、それは不可能だ。
「無理だとは思いますが、頑張って下さい。後、こんな下らない事で参考人招致は止めて頂きたい。名誉毀損で弊社の株価が下がった分だけ請求させて貰います。それと……議員、貴方は議員になる前は大層遊んで居たようですね。議員、今からメールを一通送りますので、それを確認した上で今の発言を撤回するか、ご判断下さい」
一通のメールが議員に届く。
そこには、彼のDNAと一致した彼が認知していない子供の情報があった。それらの母親は、過去に肉体関係があった女性達……当時未成年であった。
顔面蒼白になる議員。
コレが世に出れば、パパ活議員として一躍有名人間違い無しだった。アンブレラ・コーポレーションの後ろ盾があれば、過去に関係のあった女性達が一斉に訴えに出る事は容易い。メディア操作もされて、議員辞職に追い込まれるまで一週間と掛からないのは明白であった。
『―――す、全てを取り下げします。この度は、ご足労ありがとうございました』
「それはよかった。私としても誤解が解けて何よりです。私も実の娘と買い物や食事、ホテルに泊まって訴えられるのは納得がいかなかったので助かりました。後、名誉毀損で弊社株価が下がった補塡は請求させて貰いますから」
………
……
…
翌日、東京湾で身元不明の遺体が発見された。そのお陰で、名誉毀損の訴えが出来なくなる。その結果をみて、
久しぶりに執筆して、ストレスが少し甲斐性された。
また、気が向いたら外伝投稿します。