鬼は嘲笑う、鬼が嘲笑う   作:ねこのふすま

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何日も間が空いてすまないねぇ…サム。
『』の部分の出来事はまた後々書きますので長らくお待ちください…!


鬼と灯蛾

 鬼、酒呑童子の頸に傷をつけてから数分が経つ。

 それから互いに睨み合いが続き、どちらとも動こうとはしなかった。

 動かない理由は互いに違い、しのぶは今まで闘ってきた鬼よりも危険と感じたから動けず。酒呑童子はしのぶの考えを読んだ上で、()()()動かないのであった。

 

「……?」

「!!!!」

 

 睨むしのぶ、笑う酒呑童子。さらに睨むしのぶ、さらに嘲笑う酒呑童子。

 表情に腹が立つしのぶは、普段魅せる笑顔など忘れ青筋立てながら、酒呑童子に怒りの言葉をぶつける。

 

「……何か言ったらどうですか?!」

「あんたこそ、そないに眉間に皺を寄せとったら可愛い顔台無しどすえ」

 

 糠に釘、馬耳東風、何を言っても子供の戯言と揶揄う態度や言動を魅せる鬼に拳を握り締めてしのぶは何とか気を保たせる。

 

(落ち着け、落ち着くのよ胡蝶しのぶ。目の前の鬼は私を揶揄って楽しんでいる、揶揄う相手には無視をするのが一番、一度冷静になるのよ)

 

 何度も何度も落ち着く為に心の中で唱えて取り繕い、今一度酒呑童子を睨むように見据える。

 表情を見た酒呑童子は笑う事を止め、一息吐いてから自分から口を開く。

 

『────』

 

 語られる言葉は()から紡がれる筈のない言葉、言葉を聞いたしのぶは目を見開いて驚愕の表情を晒す。語り終えた鬼は嗤う、手だけを差し伸べて言葉の返答を待っている。

 しのぶは目を閉じて考える、酒呑童子からの提案を受け入れるべきか否か考えに考える。

 

 ──考えた上でしのぶは、酒呑童子の手を握るのだ。

 


 

「即刻下山してください、そしてその隊服は置いていってくださいね?」

 

 手を握ったとはいえ、やはり鬼は嫌いなしのぶは毒を散々吐いてさっさと山から出て行けと告げる。揶揄いたい気持ちをぐっと抑え、言われたとおりにしのぶの前から立ち去る事にする。

 ここで煽ってしまえば、提案した事が全て水疱に帰す。それは避けたいのでしのぶの目の前で隊服を脱ぎ始める。

 

「はっ?」

 

 置いていけとはいったが、目の前で脱げとは言っていない。

 しのぶが文句を言う前には隊服を脱ぎ捨て、独特な装飾(?)だけになっていた。肌を晒す事に恥も無いのかと、そして最低限しか隠していないそれは最早、下着や服と言える物なのかとしのぶは頭が痛くなった。

 

「そないにまじまじ見んといてや、すけべ」

 

 蠱惑な表情を魅せ、まじまじと酒呑を見ていたしのぶに頬を赤らめてすけべと言う。

 そこでようやく穴が開く程に見ていた事に気づいたしのぶ、同じように頬を赤らめて目をそらして文句を言う。

 

「何ですか、その服……?! いや、もう痴女ですか貴女は!?」

「えー? ええ思うんやどな?」

 

 服を置いていけと言われたので脱いだのに文句を言われ、着ている(?)物にも文句を言われ酒呑はどうしたらいいのだろうかと考える。

 考えたが面倒なので、しのぶの言葉を無視して下山するという答えに辿り着く。

 

「ほなまた会えるのを楽しみにしてんで、しのぶ」

「ちょっと!? 私はまだ!!」

 

 隊服をしのぶに投げ渡し、酒呑童子は脚に力を入れると飛び立つ。

 しのぶはその格好のまま行くことを止めようとしたが、止められるわけもなく酒呑童子は夜の帳の中に消えていった。

 

「どいつもこいつも……んっ?」

 

 しのぶは消えていった酒呑童子に対して怒りを顕にしながら、一つだけ疑問が浮かぶ。

 

(あれっ? 私、アイツに名前を言ったっけ……?)

 

 しのぶの疑問は解消される事はなく、その後に鬼の名前を聞く事を思い出して余計に謎が深まっていくのであった。

 後日、那田蜘蛛山では一糸纏わぬ姿の少女が天狗の様に空を駆ける姿が噂される事になったが、酒呑が知る由もない。

 


 

 那田蜘蛛山の麓、椿色の着物に身を包む銀髪の少女は心配から涙目になっていた。

 唐突に家主が人に化け、麓で待っていろと言い残して入山していった。いつもやる事成す事が唐突なので慣れてはいたが、辺りに鬼殺隊の気配を感じとってから心配へと様変わり。

 もしかしたら鬼殺隊と闘い、死んでしまった?いやいや、あの人は柱でもない限り頸を取られる所なぞ無いだろう。

と、思っていたら柱二人が入山していって椿色の少女こと元下弦の肆零余子(むかご)は慌てふためく。

 

(あの人はいつもこうだ、いつもいつも……心配で胃に穴が空いてしまいそう。そもそも、鬼殺隊から服をはぎ取る事自体危険が伴うでしょうに……)

 

 服を剥かれた鬼殺隊の剣士を憐れに思ったのか、酒呑の羽織だけではなく最低限辺りを移動出来る程度の衣服を渡しておいた。

 

「零余子」

「へぇっ?」

 

 考え込んでいると上空から聞き慣れた声が聞こえてくる。嫌な予感がするのですぐ様顔を上げると……そこには上空から滑空してくる酒呑童子がいるではないか。

ほって置いても自分から着地できるだろう、しかし零余子は性格を知っているので落ちてくる場所を予測して走り出す。

 腐っても鬼の力を有している零余子、直ぐに落ちる場所に到達して落ちてきた酒呑を受け止める。

小脇に抱える形で落ち着き、一息を吐く零余子の頬をつねりながら酒呑は褒める。

 

「おおきに、またせたなぁ」

 

 

 

 その姿を威厳ある鴉が見ていた事は、酒呑しか見破れなかった。

 

 




お仕事あるので中々書けなくてすみません…お仕事、しちゃったぁ!

毎回書いてると思うけど、鬼滅の刃で登場人物を救うとなると救うとかなり難しい事になる…なるよね?
カナエを救えばしのぶの動機が、錆兎を救えば義勇の動機が。
そして誰かを救えば負う不幸は何処かに跳ね返ってくる……?
なので中々救う事って難しく感じてしまう…私だけだよな、これ?

尾崎さんや零余子は死んでも死ななくても物語に支障はないからね…サイコロステーキ先輩…?
あれはサイコロステーキにならないといかんやろー!!

因みに皆様はどの登場人物が救われて欲しいと思っていますか…?
おじさんは真菰ちゃん!!!!!

あ、余談ですが伊之助はしのぶに助けられました。

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