鬼は嘲笑う、鬼が嘲笑う   作:ねこのふすま

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追儺

 那田蜘蛛山から数里離れた、名も残らぬような農村の一家(いっか)

 人気も無く、腐臭漂い、明らかに異常な光景が広がる中で鬼は酒を呷る。なみなみと注がれた酒は人間であれば中毒になり、命に係わる量であるが鬼には何も関係は無い。

 そして腐臭に顔を歪めている零余子も関係ない、鼻をつまんで息が出来ないようにしてやるのもまた関係ない。

 

「ぶっはぁっ!? はぁ……はぁ、殺す気ですかぁ!?!?」

「そないなことで、しなんやろ?」

「いや、まぁ、確かにそうですけど!!」

「なら、問題あらへんなぁ」

「あ゛た゛っ゛!?!?」

 

 納得が出来ない零余子を蹴り飛ばし。残っていた徳利の酒を転がった零余子の口に強引に流し込み、目を回している零余子の首根っこを掴み一家から出ていく。

 辺りは血だらけ、微かに残った()()()()()()は時間が経って腐りハエやウジが集る。

 名も知らぬ小さな農村は、知らぬうちに滅びた。鬼がやったかもしれない、野党が襲ったのかもしれない。しかし、酒呑童子にとってはどうでもいいこと。生きていようが生きていまいが、それは弱肉強食だ。弱いものは強いものに嬲られる、それは世の常。

 強くなくてはならない、この首を刎ねて飛ばせるように人は強くなればもっと面白くなる。

 これから起きていく楽しい惨状を思い、酒呑童子は笑う。

 

「そういや、あの山におった下弦はどないな奴やった?」

「う、うべぇ……え、っと。確か下弦の伍、名は累という小さい男の鬼ですね、うぷっ……」

 

 口に突っ込まれていた徳利を吐き出し、零余子は答える。

 零余子よりも数が一つ小さいのでは、戦い慣れぬ者では苦戦するであろう。しかし、あの場にいた鬼狩りの柱が来ているならば虫の手足を千切るように、簡単に刎ねて死んだろう。

 一瞬だけ興味を抱き、すぐに興味は消える。

 

「ほな、残る下弦は四匹ってことになるん?」

「ええ、私が肆で、累が伍なのでそうなりますね」

 

 あえて四匹と言った事には零余子は触れず話を進める。

 鬼舞辻 無惨が使役する上弦の鬼、下弦の鬼はそれぞれ壱から陸の数を与えられる。下弦はそう大したことも無いが上弦の鬼は人が対峙して戦うものではないとされている程に力を持っている。

 一匹が死に、一人は逃げられた。下弦の鬼は時間が経たずとも無くなるのは明白であろう。

 

(それはそれは、可哀そうに、可哀そうに)

 

 微塵にも可哀そうとは思わないが、自らの手足となって働ける存在を馬鹿で阿呆な理由で殺してしまうおつむの弱さを嘆いてやる。

 人の数よりも鬼の数は少ない、下弦といえど3人も失えば出来る事も後手に回るだろう。超人的な力を持っていようが、数は強い、そして数に遅れをとる事になる。

 残しておけば柱は無理としても、一般隊士の数を減らすことはできる。えらい違いではないか。

 その事に鬼舞辻は最後まで気づかないだろう、この酒を賭けてもよい。

 

「……楽しそうですね」

 

 いつの間にか抜け出して土ぼこりを払う。

 零余子は不気味に嗤っている酒呑童子に問いかけながら見ほれ、質問の答えは酒呑童子から返ってこない。

 零余子にとっては見慣れた表情だ。普通に笑えば国を傾けられる程の美貌をもっているのに、楽しそうに嗤えば──

 

(──とても、魅せられる)

 

 自ら首を捧げたくなる、()()()()()()()

 




※後書き更新済み

とても、とてもお久しぶりです。
もう何か月も更新してなくてすみません…多分、一年に数回更新できればいいかなと思います…来年になれば書ける、のかな?

もうすぐ一年が経つとは時が流れるのは早いですね…間違いない。
お久しぶりすぎて鬼滅本誌は完結してしまいましたね…けど、完結したほうが書きやすいのもあるのでゆっくりと亀のように動いていけたらなぁと思ってます。
あ、卑弥呼かわいいよね、卑弥呼。

こんな感じですが、もしも読んでいただけたら幸いです。
無事に生きていますので。

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