鬼は嘲笑う、鬼が嘲笑う   作:ねこのふすま

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冨岡さんの義勇くんのお出番はここでは無くなりました……許してね!!!


鬼と父蜘蛛

 蜘蛛の糸と聞けば救いのお話と思うが、ここでは生者であろうと死者であろうとその身体を操る糸。どの様に手足が曲がろうとも、どのように身体が(ひしゃ)げようとも糸が繋がっている限り延々と操り人形となる。

 死に体になった鬼殺の剣士が刀を振るってくる、素手でそれを避けて距離をとっていつの間にか出現した青い瓢箪から剣を抜く。

 糸に絡めとられるので徒手空拳(としゅくうけん)は相性が悪い、骨を抜いたとしても身体があれば操り人形のまま。

 ならば、剣で身体として使えないように斬ってしまえばいいだろうと考えた。

 死に体となっても戦わされるのは可哀想なので、慈悲の心で斬ってやろう。

 

「かんにんな」

 

 血流が(たぎ)り、四肢に異常なぐらいの力がこめられる。

 放たれるのはただ一振り、人間(ひと)では見えぬ動きで地面を蹴り上げて剣を真上から振り落とす。普通なら両手で使う剣を事もあろうか片手で振る。

 振るわれ斬られた身体は縦に真っ二つ。糸も切り裂かれ死体は血を流しながら地面に転がる。流石に等分されれば使えないらしい、剣を地面に下ろし死体の前で手を合わせておく。

 

(さて、次が来る前に先に進んでおかないと)

 

 剣はしまわずに、片手に携えたまま先へと進んでいく。闇夜の森は方向感覚が無くなるので、どちらに進めばどの鬼に見つかる等も分からない。

 いきあたりばったり、運命は神のみぞ知るのであった……と黄昏れていると草葉の陰から生き物の気配を感じて立ち止まる。

 

「カァッー!」

「……(からす)ぅ?」

 

 やけにボロボロな鴉が顔を覗かせ、此方に何か言いたげな感じで辺りを跳ね回ってから隊服をつまんで引っ張ってくる。

 まるで()()()()()()()()()と訴えている用に思え、行く宛も無いので鴉が連れていきたい場所へとついていくことにした。

 


 

 嘴平(はしびら)伊之助(いのすけ)は脱皮した蜘蛛の鬼と対峙する。蜘蛛の鬼は脱皮をした事で図体も大きくなり、放つ威圧は脱皮前とは比べものにならないぐらい強大になっていた。

 対峙する伊之助が思わず、勝てないと思い。自らの死期を悟ってしまうほど。しかし、竃門(かまど)炭治郎(たんじろう)の死ぬなと言う言葉。藤の家紋の家での出来事、言葉を思い出して奮起する。

 

「俺は鬼殺隊の嘴平伊之助だ! かかって来やがれゴミクソが!!」

 

 言葉とは裏腹、蜘蛛の鬼の強さに翻弄され拳を受け身体が宙に舞う。動きが早く伊之助は攻撃の動作を見切る事が出来なかった。

 幹を殴り倒すのを利用して、自ら宙に舞って後方から頸を斬ろうと刃を振るうが頸の硬さに日輪刀が二本共折れてしまい、そのまま蜘蛛の鬼の拳を喰らって弾き飛ばされる。

 

(しまった、呼吸で受け身を取り損ねた!!)

 

 地面に落ちた伊之助の首を掴みあげ、蜘蛛の鬼は握り潰す為に力を入れていく。一矢報いる為に頸に折れた刀を刺したが、頸の固さに刺した刀はぴくりとも動かない。

 

「オ゙レの家族に゙、近づくな゙ァァァ!!」

 

 頚椎を握りつぶされる直前、伊之助は走馬灯を見る。炭治郎、善逸、藤の家紋の婆さん、知らない風景、泣きながら謝る女。

 

(誰だ……?)

 

 走馬灯は途絶える。死んで途絶えたのではなく、どこからか目にも留まらぬ速さで投げられた剣が伊之助を掴んでいる蜘蛛の鬼の腕を斬り落とし、幹を薙ぎ倒して止まる。腕が落ちたことにより伊之助も地面に落ちる、受け身が取れずに地面に転がりながら剣が飛んできた方角を見る。

 ありえない速度、あれが人に刺されば生を惜しむ瞬間も与えられなかっただろうと改めて思う。

 

「あらま、おつむに向かって投げたけど逸れてもうた」

(小さい、奴だ、あれはアイツが投げたのか?)

 

 その場に似合わない軽やかな口調で袖頭巾の剣士は現れた。その体躯はとても小柄、そして小馬鹿にするように笑みを浮かべている。

 現れた闖入者(ちんにゅうしゃ)にすぐ様蜘蛛の鬼は動く、目にも留まらぬ速さで駆け寄り、拳を振るった。

 

「オ゙レの家族に゙近づくな゙ァァ!!」

 

 蜘蛛の鬼の拳は届く事は無い。細腕は振るわれた拳を悠々と受け止め、蜘蛛の鬼が動かそうとするが受け止めた手から離れなくなっていた。

 

「やかましい蜘蛛やなぁ、蜘蛛は蜘蛛らしく巣でも張ってのんびりしときな」

 

 受け止めた拳を離し、瞬時に蜘蛛の鬼の手首を掴んで球を投擲するような動作で蜘蛛の鬼の巨体を投げ飛ばす。巨体は矢の如き速さで木々を巻き込んで飛んでいく。

 その様を見せられた伊之助は怪我をしている事も忘れ、猪の被り物の下ではあんぐりと口を開けていた。

 袖頭巾の剣士はやれやれと溜め息を吐き、投げた剣を取りに行く。

 

(なんだ、何なんだアイツ?!)

 

 伊之助の率直な感想は驚愕、あの小さな身体で何倍も差がある蜘蛛の鬼を(ゴミ)でも投げるように投げ捨てた。

 そして肌で感じる、鬼殺の隊服に身に纏いながらも伊之助は異常な雰囲気に気圧されていた。

 

「あ、生きとったかボウズ?」

「ボウズじゃねぇっ!!」

 

 睨んでいた伊之助に気づいた袖頭巾は揶揄うように声をかけ、伊之助はボウズと言われた事に腹を立てて叫ぶ。

 言い返してくる伊之助を面白がって、かんらからと嘲笑う。

 

「それだけ元気なら大丈夫や」

 





・大正コソコソ噂話
尾崎さんは服を奪った鬼のことを恨んでいるよ!
そりゃ、あんな格好で羽織だけだったら恨むよね!!


前みたいにすぐ書けずに悩むようになっているので更新頻度は少し落ちます……許してね。
筋力Aならこれぐらいやっても大丈夫だよね???
ちび段蔵ちゃん絡繰とか出してみたいな……いけ!ちび段蔵!!すいこむだ!!

あ、FGOのイベントはゆっくりやってます…ガチャはしたよ。
あと、隊服酒呑ちゃんは性癖の塊になると個人的に思ってる……ヌッ!

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