ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編 作:にゃはっふー
ゴロン族の里に来た俺たちは、クラインがダルマーニ3世のフリをしつつ歓迎された。
「いいのかな?」
「仕方ない、いまはな」
彼、テイルはそうすぐに割り切っているが、俺には
なにより、いま彼はずっと山の向こう側、おそらく敵がいるであろう山しか見ていない。
「キリト君」
アスナに話しかけられ、俺は少し彼から距離を取る。
「やっぱり、その、いまの彼は変だよ」
「ああ………」
自分ばかり負担を被り、自分だけで解決しようとする。
慢心でも何でもなく………
「それ以外に考えがない………」
そう、彼はまるで、それ以外に考えがない、未来が無いように考えている気がしてならなかった。
◇◆◇◆◇
この悪癖らしきものに気づいたのはユウキだ。
ユウキは気づいた。例え先の事が確定していなくても、彼の『知っている事』と『知らない事』があまりに極端である事。
「テイルって、ボクがその、死んじゃうところまでは知ってたんだよね? それはどの辺なんだろう?」
「どの辺……それは………」
「ほら、ゲームとかアニメ、小説って1話2話でお話は完結しないよね? ボクの話だけ知っていて、キリトたち、SAOで起きた事、結構長い期間だよね?」
「確かに、ユウキだけ詳しいのは少しおかしい……?」
「い、いやけどよお。俺だって、人気アニメのキャラクターが活躍した話だけは知ってるってこと、よくあるぜ?」
「メインヒロインじゃなく、お話の中でのヒロインとかですよね?」
「まあ確かに、その話だけ知ってるってことは、あるのかしら?」
クライン、シリカとリズが首を傾げる中で、俺もまた考え込む。
「彼は、俺が物語の中心だったって言ってたから、言いづらかったんじゃないか?」
「まあ、あんたの軌跡がフィクション化されてたらねえ」
「そうだぜ。あの人気女性プレイヤーの閃光の副隊長さんと仲良しだったんだ。ラブコメ間違いなしだぜ」
「そうなのか!?」
「正直、否定できないところはあると思う……」
リーファはそう言い、俺は少し落ち込むと、ユイが懐から出て来て………
「確かに、その作品の作り方で、テイルさんが知っている情報、矛盾点がいくつかあります」
「矛盾点?」
「まずはユウキさんに付いてだけ、詳しく知っている事です。ご病気なのは知っていても、詳しい病名まで知っているかですね」
「………テイルは確か、病気にかからないを願っていた。事故とかじゃなく、後々症状に出るものなのは知っている?」
そうなると少しおかしい。俺も物語の内容は知らないが、知っているキャラクターなどはいる。だが、詳しい内容までと言われるとすぐに答えられない。
「願いも、混乱していたためと言われれば何も言えませんが、『事件が起きない』、または『病気にならない』はダメだったのかどうか、テイルさんが聞かなかったのでしょうか?」
………
俺たちの知るテイルは、いまの彼だ。その前なんて分からない。
実際の状況も特殊過ぎて何も言えない。だが質問も何も無いのは引っかかる。
「すぐにそんなものかと納得したか………」
「けど彼、後々になって後悔したりしてるわよ? これが正しかったのかどうかって。彼には悪いけど、あまりの事に考え込む時間が」
「………いや、彼は『悩んでいる時間』がある。冷静になれる時間はあったはず」
シノンの言葉に、俺は彼の話を思い出す。彼は悩んだと言っていたはずだ。
だがどう考えても状況が特殊過ぎる。それで最善はなんなのか、誰にだってわからないが………
「だけど、彼奴の知る知識が偏り過ぎてる」
デスゲームが起きる。これもまたそうだ。
ソードアートオンラインがそのままタイトルらしいから、こちらの世界でそれが出れば分かるだろう。だけど彼はもう一つ知っているはずだ。
妖精たちが活躍するALO。こちらも知っているはず。少なくてもユウキは主にプレーしているのはこちらなのだから。
「………穴だらけ過ぎる。SAOの事件を知らなくても、デスゲームがどのゲームを指すか分からないと、SAOをデスゲームと認識しないはず」
「ちょっと待って、彼は、いや」
シノンの言葉に彼の言葉の中で『穴』を探す。
そして見つけてしまった。
「黒の剣士、俺がメインだって、話の中心だと知っていた」
「? それがなんだって………」
全員が疑問に思う中、一人だけが答えにたどり着いた。
「なんでキリトを中心に事件が起きるのに、何もしなかったの?」
その言葉に、ユウキの言葉に全員が疑問に思う。
彼は事件の被害者を止めたかった。誰がどのような経緯で死ぬかは分からない。
攻略中かはともかく、彼の性格、いまの性格からして、物語で死ぬだろう人物を見逃すか?
「彼なら知らなくても、有名プレイヤーの顔を探して、俺を特定。その後なら、裏で俺のサポートを勝手にしそうだ」
むしろする。自分のギルドを支えながら、無理矢理身体を行使して戦う彼のスタイルに当てはまる。
もしも彼が、サチたちの時に現れたらと、俺は考えてはいけない考えをしてしまう。
(何を考えるッ!? サチたちの死を予測出来てても、できる事はたかが知れているだろッ!!)
俺は俺に嫌悪しつつ、頭を思いっきり振る。
だけど彼なら俺の情報、少なくてもトッププレイヤーたちの情報は集めているはずだ。
だが彼はしていたのは、ギルドでの活動だけで、そう言った物語に関わろうとした事は無い。むしろ避けていた。
自分の知る物語が狂うから避けた? 違う。
「彼は物語が狂うとか、そんな不確かな事を信じる質か?」
いや違う。彼は流れに身を任せていたが、確信的な何かがあった。デスゲーム、SAOがどのようにクリアされるか知らないのにだ。
デスゲームが起きないのなら、デスゲームが解決するかも分からない。
だけど彼はSAOがクリアされると確信だけはしていた。信じたかっただけか?
「それでも考えられない」
彼の当時の性格上、確実性を上げていたはずだ。なら確実に、トッププレイヤー全員を知っていて、様子を確認している。俺なら確実にそうする。
物語は順調か分からないなら、せめて安心できるように情報を集めるはずだ。
「彼の中でデスゲームは起きるか不明なのに対して、デスゲームはクリアされるのは確定されている」
この矛盾はなんだ?
最後には彼は関わったが、彼の違和感が消えない。彼らしくない。
「なんなのよ」
シノンは歯を食いしばりながら堪えていた。
「彼奴はできない事に、分からない事に苦しんでるのに、何なのよこの引っかかりッ!」
「シノン………」
「何かあるのなら明かしてやるッ! そうでないと彼奴は………」
ずっと自分を許せずに、苦しみ続ける………
◇◆◇◆◇
クラインはダルマーニ3世のフリをしながら、まだ魔物がいるから出て行き、しばらく帰れない事を告げる。
吹雪の中で響き渡る泣き声を放つ息子さんは泣くが、クラインはしっかりと泣き止ましながら、必ず帰ると約束していた。
テイルはそれを複雑そうに見ながら、ずっと山を見る。まるで自分がしなければいけないと言わんばかりに。
「テイル」
「キリト」
「君は思いつめ過ぎだ。俺たちもいるんだ、任せてほしい」
「………すまない、だけどこれは俺がしなきゃいけないことだ」
「テイル………」
彼はそう言って建物の外、吹雪く中で準備している。
もしも彼の考えに理由があるのなら、変えなければいけない。
それが、仲間である俺たちがするべきことだ。
◇◆◇◆◇
吹雪の中で立ち尽くすのは機械の魔物。
『懲りずに来たか、ダルマーニ3世』
「この卑怯者、仲間がいるんだろ? 姿を現せゴロッ!?」
その瞬間、聞き覚えがある声が響き、出て来る魔物に、俺たちSAOプレイヤーは驚愕した。
「『ルイン・コボルド・センチネル』!?」
「なんでSAO、あの鋼鉄の城のモンスター。第1層のボスの取り巻きがいるんだッ!?」
それに刀を持つ魔物、第1層ボス『イルファング・ザ・コボルド・ロード』が現れる。
『月より生まれた魔物たちよ、偽りの勇者とその仲間たちを討ち取れ!』
「まさかここまでややこしく………」
「みんなッ! ボスモンスターは任せたゴロ!」
そう言ってゴロンクラインはゴートへと立ち向かい、テイルは弓矢を構えたまま、シークとシノンを見る。
「私たちは見えない敵に備えます」
「そっちは任せたわよ」
「分かった。行くぜみんなッ!」
それに返事をして、全員が自分の戦いに集中した。
◇◆◇◆◇
突進してくるゴートを躱し、炎のゴロンパンチを叩きこむクライン。それでも慣れない姿であり、雪に足を取られ、突撃により吹き飛び続ける。
「あなたいまの姿だと躱せないわよ! いまは元に戻りなさい!」
チャットが周りを飛び、話しかけて来るがクラインは首を振る。
「へっ、いまのオレは漢の戦いしてるんだよッ! このままの姿で勝たなきゃ、ダルマーニ3世はあのガキんとこに帰れねえ!」
その時、仮面であるはずのゴートの表情に、不敵な笑みが浮かんだ気がしたクライン。すぐに防御したら何かによって吹き飛んだ。
「テメエ!? 恥知らずにもほどがあるだろ!!」
そう叫びながらそれがもう一度攻撃を仕掛けようとした時、同時に二か所、そこに矢が放たれた。
響き渡る何者かの悲鳴に、ゴートが代わりに驚く。
『なんだと?』
「『まことのメガネ』が存在しないから負けないとでも思ったか?」
片腕を包帯で包み込むテイルは無表情に吹雪を睨む。
吹雪の中で何かの形がくっきりと浮かび、それが何なのかすぐに分かった。
「『暗黒幻影獣ボンゴボンゴ』。種が分かれば、後は繰り返すだけだ」
そう言った後、少しだけ顔を反らすテイル。その後ろから
それは的確にボンゴボンゴの核を貫く。
『バカな!? 見えないものをどうして』
「何千回繰り返したと思ってる? シルエットだけ分かれば、核の位置は分かる」
忌々しく語りながら、矢を構え、同時にボンゴボンゴの両手を貫く。
ゴートはくっとそちらに注意を向いていると、ガシッと角を掴まれた。
「捕まえたぜッ!!」
『!? 己ッ!』
力比べが行われる周りで、クラインの邪魔、シノンへの攻撃をさせないよう、シークがシノンを、残りはコボルドロードの手下と斬り合う。
「キリト君ッ!」
「任せろ、これくらい、やっとやるせぁぁぁぁぁぁッ!」
切り捨てられた配下の魔物を無視して、そのままコボルドロードへと突き進む。
「スターバースト……ストリームッ!!」
ソードスキルを叩きこみ、コボルドロードは吹き飛んだ。
「なに?」
リズはコボルドロードが吹き飛んだ瞬間、まるで煙のように配下の魔物が消えたのに驚く。
キリトたちも驚きながら、剣の世界の魔物たちが消えたことを確認して、ボンゴボンゴの方を見る。
「ゲームじゃないんだから。こういう手も使わせてもらうよ」
そう言ってシークが持っていたペイント、インクを核へと投げるリーファ。それによって位置がバレたいま、ユウキ、アスナがソードスキルを叩きこむ。
悲鳴が鳴り響き、ボンゴボンゴもまた消えたのを見て、肺に貯め込んだ息を静かに吐き出すテイル。
「リーファの作戦がうまくいったな」
そう呟きながら、最後の戦いをしているクラインとゴートを見る。
追い詰められているクライン。崖の淵に追い詰められたが、クラインが叫び声をあげ、そのままゴートを持ち値上げた。
『バカなッ!?』
投げ飛ばされたゴートは地面に激突し、そのまま崖へと落ちていく。
崖に落ちたゴートの悲鳴がこだまする中、突然の光が崖下を照らして、一つの仮面がクラインの側へと飛び、離れた位置に立ち尽くす巨人を確認する。
「ゴートの仮面。これで二つ目の封印は解かれた」
「そうみたいだ」
「雪が……吹雪が止んでいく」
リーファの言葉に全員が空を見ると、青空が広がり、太陽の光が大地を照らす。
猛吹雪が止んだおかげで、彼らはそのまま下山する事が出来た。
◇◆◇◆◇
「これで二つ目の封印が解かれました。その調子で頑張ってくださいね、勇者さま」
お面が入ったリュックを背負い、下山する者たちを見ている者。
静かに笑いながら、ふとっ考え込む。
「とはいえ、保険はかけていても、ドキドキしますね」
そう言いながら、暗闇の中に歩き出し、その場を去る。
「頼みますよ勇者さま。そして黒の剣士さま」
信じています、信じています……
そう呟きながら、彼はその場を後にした。
本命テイル、保険キリト。
次回牧場編。オリジナル要素たくさん。
お読みいただきありがとうございます。