ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編   作:にゃはっふー

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第10話・雪山の決戦

 ゴロン族の里に来た俺たちは、クラインがダルマーニ3世のフリをしつつ歓迎された。

 

「いいのかな?」

 

「仕方ない、いまはな」

 

 彼、テイルはそうすぐに割り切っているが、俺には彼らしくない(・・・・・・)気がした。

 

 なにより、いま彼はずっと山の向こう側、おそらく敵がいるであろう山しか見ていない。

 

「キリト君」

 

 アスナに話しかけられ、俺は少し彼から距離を取る。

 

「やっぱり、その、いまの彼は変だよ」

 

「ああ………」

 

 自分ばかり負担を被り、自分だけで解決しようとする。

 

 慢心でも何でもなく………

 

「それ以外に考えがない………」

 

 そう、彼はまるで、それ以外に考えがない、未来が無いように考えている気がしてならなかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 この悪癖らしきものに気づいたのはユウキだ。

 

 ユウキは気づいた。例え先の事が確定していなくても、彼の『知っている事』と『知らない事』があまりに極端である事。

 

「テイルって、ボクがその、死んじゃうところまでは知ってたんだよね? それはどの辺なんだろう?」

 

「どの辺……それは………」

 

「ほら、ゲームとかアニメ、小説って1話2話でお話は完結しないよね? ボクの話だけ知っていて、キリトたち、SAOで起きた事、結構長い期間だよね?」

 

「確かに、ユウキだけ詳しいのは少しおかしい……?」

 

「い、いやけどよお。俺だって、人気アニメのキャラクターが活躍した話だけは知ってるってこと、よくあるぜ?」

 

「メインヒロインじゃなく、お話の中でのヒロインとかですよね?」

 

「まあ確かに、その話だけ知ってるってことは、あるのかしら?」

 

 クライン、シリカとリズが首を傾げる中で、俺もまた考え込む。

 

「彼は、俺が物語の中心だったって言ってたから、言いづらかったんじゃないか?」

 

「まあ、あんたの軌跡がフィクション化されてたらねえ」

 

「そうだぜ。あの人気女性プレイヤーの閃光の副隊長さんと仲良しだったんだ。ラブコメ間違いなしだぜ」

 

「そうなのか!?」

 

「正直、否定できないところはあると思う……」

 

 リーファはそう言い、俺は少し落ち込むと、ユイが懐から出て来て………

 

「確かに、その作品の作り方で、テイルさんが知っている情報、矛盾点がいくつかあります」

 

「矛盾点?」

 

「まずはユウキさんに付いてだけ、詳しく知っている事です。ご病気なのは知っていても、詳しい病名まで知っているかですね」

 

「………テイルは確か、病気にかからないを願っていた。事故とかじゃなく、後々症状に出るものなのは知っている?」

 

 そうなると少しおかしい。俺も物語の内容は知らないが、知っているキャラクターなどはいる。だが、詳しい内容までと言われるとすぐに答えられない。

 

「願いも、混乱していたためと言われれば何も言えませんが、『事件が起きない』、または『病気にならない』はダメだったのかどうか、テイルさんが聞かなかったのでしょうか?」

 

 ………

 

 俺たちの知るテイルは、いまの彼だ。その前なんて分からない。

 

 実際の状況も特殊過ぎて何も言えない。だが質問も何も無いのは引っかかる。

 

「すぐにそんなものかと納得したか………」

 

「けど彼、後々になって後悔したりしてるわよ? これが正しかったのかどうかって。彼には悪いけど、あまりの事に考え込む時間が」

 

「………いや、彼は『悩んでいる時間』がある。冷静になれる時間はあったはず」

 

 シノンの言葉に、俺は彼の話を思い出す。彼は悩んだと言っていたはずだ。

 

 だがどう考えても状況が特殊過ぎる。それで最善はなんなのか、誰にだってわからないが………

 

「だけど、彼奴の知る知識が偏り過ぎてる」

 

 デスゲームが起きる。これもまたそうだ。

 

 ソードアートオンラインがそのままタイトルらしいから、こちらの世界でそれが出れば分かるだろう。だけど彼はもう一つ知っているはずだ。

 

 妖精たちが活躍するALO。こちらも知っているはず。少なくてもユウキは主にプレーしているのはこちらなのだから。

 

「………穴だらけ過ぎる。SAOの事件を知らなくても、デスゲームがどのゲームを指すか分からないと、SAOをデスゲームと認識しないはず」

 

「ちょっと待って、彼は、いや」

 

 シノンの言葉に彼の言葉の中で『穴』を探す。

 

 そして見つけてしまった。

 

「黒の剣士、俺がメインだって、話の中心だと知っていた」

 

「? それがなんだって………」

 

 全員が疑問に思う中、一人だけが答えにたどり着いた。

 

 

 

「なんでキリトを中心に事件が起きるのに、何もしなかったの?」

 

 

 

 その言葉に、ユウキの言葉に全員が疑問に思う。

 

 彼は事件の被害者を止めたかった。誰がどのような経緯で死ぬかは分からない。

 

 攻略中かはともかく、彼の性格、いまの性格からして、物語で死ぬだろう人物を見逃すか?

 

「彼なら知らなくても、有名プレイヤーの顔を探して、俺を特定。その後なら、裏で俺のサポートを勝手にしそうだ」

 

 むしろする。自分のギルドを支えながら、無理矢理身体を行使して戦う彼のスタイルに当てはまる。

 

 もしも彼が、サチたちの時に現れたらと、俺は考えてはいけない考えをしてしまう。

 

(何を考えるッ!? サチたちの死を予測出来てても、できる事はたかが知れているだろッ!!)

 

 俺は俺に嫌悪しつつ、頭を思いっきり振る。

 

 だけど彼なら俺の情報、少なくてもトッププレイヤーたちの情報は集めているはずだ。

 

 だが彼はしていたのは、ギルドでの活動だけで、そう言った物語に関わろうとした事は無い。むしろ避けていた。

 

 自分の知る物語が狂うから避けた? 違う。

 

「彼は物語が狂うとか、そんな不確かな事を信じる質か?」

 

 いや違う。彼は流れに身を任せていたが、確信的な何かがあった。デスゲーム、SAOがどのようにクリアされるか知らないのにだ。

 

 デスゲームが起きないのなら、デスゲームが解決するかも分からない。

 

 だけど彼はSAOがクリアされると確信だけはしていた。信じたかっただけか?

 

「それでも考えられない」

 

 彼の当時の性格上、確実性を上げていたはずだ。なら確実に、トッププレイヤー全員を知っていて、様子を確認している。俺なら確実にそうする。

 

 物語は順調か分からないなら、せめて安心できるように情報を集めるはずだ。

 

「彼の中でデスゲームは起きるか不明なのに対して、デスゲームはクリアされるのは確定されている」

 

 この矛盾はなんだ?

 

 最後には彼は関わったが、彼の違和感が消えない。彼らしくない。

 

「なんなのよ」

 

 シノンは歯を食いしばりながら堪えていた。

 

「彼奴はできない事に、分からない事に苦しんでるのに、何なのよこの引っかかりッ!」

 

「シノン………」

 

「何かあるのなら明かしてやるッ! そうでないと彼奴は………」

 

 ずっと自分を許せずに、苦しみ続ける………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 クラインはダルマーニ3世のフリをしながら、まだ魔物がいるから出て行き、しばらく帰れない事を告げる。

 

 吹雪の中で響き渡る泣き声を放つ息子さんは泣くが、クラインはしっかりと泣き止ましながら、必ず帰ると約束していた。

 

 テイルはそれを複雑そうに見ながら、ずっと山を見る。まるで自分がしなければいけないと言わんばかりに。

 

「テイル」

 

「キリト」

 

「君は思いつめ過ぎだ。俺たちもいるんだ、任せてほしい」

 

「………すまない、だけどこれは俺がしなきゃいけないことだ」

 

「テイル………」

 

 彼はそう言って建物の外、吹雪く中で準備している。

 

 もしも彼の考えに理由があるのなら、変えなければいけない。

 

 それが、仲間である俺たちがするべきことだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 吹雪の中で立ち尽くすのは機械の魔物。

 

『懲りずに来たか、ダルマーニ3世』

 

「この卑怯者、仲間がいるんだろ? 姿を現せゴロッ!?」

 

 その瞬間、聞き覚えがある声が響き、出て来る魔物に、俺たちSAOプレイヤーは驚愕した。

 

「『ルイン・コボルド・センチネル』!?」

 

「なんでSAO、あの鋼鉄の城のモンスター。第1層のボスの取り巻きがいるんだッ!?」

 

 それに刀を持つ魔物、第1層ボス『イルファング・ザ・コボルド・ロード』が現れる。

 

『月より生まれた魔物たちよ、偽りの勇者とその仲間たちを討ち取れ!』

 

「まさかここまでややこしく………」

 

「みんなッ! ボスモンスターは任せたゴロ!」

 

 そう言ってゴロンクラインはゴートへと立ち向かい、テイルは弓矢を構えたまま、シークとシノンを見る。

 

「私たちは見えない敵に備えます」

 

「そっちは任せたわよ」

 

「分かった。行くぜみんなッ!」

 

 それに返事をして、全員が自分の戦いに集中した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 突進してくるゴートを躱し、炎のゴロンパンチを叩きこむクライン。それでも慣れない姿であり、雪に足を取られ、突撃により吹き飛び続ける。

 

「あなたいまの姿だと躱せないわよ! いまは元に戻りなさい!」

 

 チャットが周りを飛び、話しかけて来るがクラインは首を振る。

 

「へっ、いまのオレは漢の戦いしてるんだよッ! このままの姿で勝たなきゃ、ダルマーニ3世はあのガキんとこに帰れねえ!」

 

 その時、仮面であるはずのゴートの表情に、不敵な笑みが浮かんだ気がしたクライン。すぐに防御したら何かによって吹き飛んだ。

 

「テメエ!? 恥知らずにもほどがあるだろ!!」

 

 そう叫びながらそれがもう一度攻撃を仕掛けようとした時、同時に二か所、そこに矢が放たれた。

 

 響き渡る何者かの悲鳴に、ゴートが代わりに驚く。

 

『なんだと?』

 

「『まことのメガネ』が存在しないから負けないとでも思ったか?」

 

 片腕を包帯で包み込むテイルは無表情に吹雪を睨む。

 

 吹雪の中で何かの形がくっきりと浮かび、それが何なのかすぐに分かった。

 

「『暗黒幻影獣ボンゴボンゴ』。種が分かれば、後は繰り返すだけだ」

 

 そう言った後、少しだけ顔を反らすテイル。その後ろから射撃予測線(バレット・ライン)が通り抜け、テイルが合図を出した瞬間、シノンが撃つ。

 

 それは的確にボンゴボンゴの核を貫く。

 

『バカな!? 見えないものをどうして』

 

「何千回繰り返したと思ってる? シルエットだけ分かれば、核の位置は分かる」

 

 忌々しく語りながら、矢を構え、同時にボンゴボンゴの両手を貫く。

 

 ゴートはくっとそちらに注意を向いていると、ガシッと角を掴まれた。

 

「捕まえたぜッ!!」

 

『!? 己ッ!』

 

 力比べが行われる周りで、クラインの邪魔、シノンへの攻撃をさせないよう、シークがシノンを、残りはコボルドロードの手下と斬り合う。

 

「キリト君ッ!」

 

「任せろ、これくらい、やっとやるせぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 切り捨てられた配下の魔物を無視して、そのままコボルドロードへと突き進む。

 

「スターバースト……ストリームッ!!」

 

 ソードスキルを叩きこみ、コボルドロードは吹き飛んだ。

 

「なに?」

 

 リズはコボルドロードが吹き飛んだ瞬間、まるで煙のように配下の魔物が消えたのに驚く。

 

 キリトたちも驚きながら、剣の世界の魔物たちが消えたことを確認して、ボンゴボンゴの方を見る。

 

「ゲームじゃないんだから。こういう手も使わせてもらうよ」

 

 そう言ってシークが持っていたペイント、インクを核へと投げるリーファ。それによって位置がバレたいま、ユウキ、アスナがソードスキルを叩きこむ。

 

 悲鳴が鳴り響き、ボンゴボンゴもまた消えたのを見て、肺に貯め込んだ息を静かに吐き出すテイル。

 

「リーファの作戦がうまくいったな」

 

 そう呟きながら、最後の戦いをしているクラインとゴートを見る。

 

 追い詰められているクライン。崖の淵に追い詰められたが、クラインが叫び声をあげ、そのままゴートを持ち値上げた。

 

『バカなッ!?』

 

 投げ飛ばされたゴートは地面に激突し、そのまま崖へと落ちていく。

 

 崖に落ちたゴートの悲鳴がこだまする中、突然の光が崖下を照らして、一つの仮面がクラインの側へと飛び、離れた位置に立ち尽くす巨人を確認する。

 

「ゴートの仮面。これで二つ目の封印は解かれた」

 

「そうみたいだ」

 

「雪が……吹雪が止んでいく」

 

 リーファの言葉に全員が空を見ると、青空が広がり、太陽の光が大地を照らす。

 

 猛吹雪が止んだおかげで、彼らはそのまま下山する事が出来た。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「これで二つ目の封印が解かれました。その調子で頑張ってくださいね、勇者さま」

 

 お面が入ったリュックを背負い、下山する者たちを見ている者。

 

 静かに笑いながら、ふとっ考え込む。

 

「とはいえ、保険はかけていても、ドキドキしますね」

 

 そう言いながら、暗闇の中に歩き出し、その場を去る。

 

「頼みますよ勇者さま。そして黒の剣士さま」

 

 信じています、信じています……

 

 そう呟きながら、彼はその場を後にした。




本命テイル、保険キリト。

次回牧場編。オリジナル要素たくさん。

お読みいただきありがとうございます。
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