ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編 作:にゃはっふー
スノーヘッドから下山した俺たちは、シークが手配した宿で休む話をしていた。
クラインはゴロゴロと語尾が付き、リズにツッコミを入れられながら、俺はユイを肩に乗せ、馬車を操るテイルの隣で揺られている。彼もフェリサを肩に乗せている。
気の抜けたと言うより、リラックスしようと気を抜いている彼は、ぼそっと呟いた。
「ミルクロードか、こっちがこんなルートになるなんてな」
「分からないのか?」
「目的を優先していたから、ぶっちゃけ、どんな場所をどんな風に歩いたか曖昧なんだ。さすがに寒い場所や暑い場所くらいの違いは分かるがな」
ゲームで見る景色と現実で見る知識は違い過ぎる。そう呟きながら前を見る。
その言葉を聞いて、彼が想像もできない旅をしていたのが分かる。だけど結局はそれだけだ。俺ができる事はあるのだろうか?
「ところでチャット。どうして俺の懐に隠れてるんだよ?」
「う、うるさいわね。レディーには色々あるのよッ!」
「レディーって、妖精だろ?」
「ふん!!」
フェリサに目を殴られ、悶えながらも馬の扱いはしているテイル。大岩が道の先にあって先に進めない。
「なんだこれは?」
「岩で道が塞がっています」
その為に馬車を止める。
彼は流れる動作で爆破した。なんでだよ。
◇◆◇◆◇
なぜか目の前にある障害を排除したら怒られる。テイルはそう思いながら地面の上で正座させられていた。
「いや問題ないように言わないでくれないかな? 岩の撤去作業してた人もいたし、いま全面的に謝っているところだし」
「すいませんすいません」
「ええよ~おかげでオラたちの仕事も片付いだ~」
だが「オラが壊したかっただ………」と言う言葉が聞こえ、アスナが謝りながら、テイルはシノンに叩かれた。
ともかく先に進み、牧場へとたどり着く。
「さっきの岩の所為で客が少ないみたいだな」
「馬車はどこに止めればいいんだろう?」
「お客さーーんっ!!」
馬車道の先、大きな建物と牛や馬、鶏など放し飼いしている牧場から、一人の少女が満面の笑みを浮かべ、両腕を力いっぱい振りながらこちらに来る。
「お客さんが来た。もう大岩は無くなったのね」
「ああ」
「………」
シークが呆れながら横目で見るがテイルは頷き、少女が馬車を止められる場所まで案内する。
少女の名前はこの牧場と同じ『ロマニー』であり、お客様が久々に着て嬉しそうに話してくれた。
「他に道は無かったのか?」
「他に道はあるけど、その場合は港町かクロックタウンが近いの。他だとゴロン族の里とかね!」
馬車を止める中でキリトの質問に答えながら、後はと呟く。
「後は迷子の人たちぐらいね」
「迷子の人たち?」
「よく分からないけど、ジーエムとか、ウンエーがどーとか言ってる人。だいたいは勝手にどっか行ったりしたりしてるの」
そう言い、馬車馬を止めさせた後、宿を取る為に建物に入る事になる。
「テイル」
そんな時、キリトたちはシークと共には建物へ入ろうとしていたテイルを引き留める。
「彼女の話、どう思う?」
「あー………確かに気にはなるが、まさかそんな訳がないと思いたい」
「けど、もう私たちのこともあるし、なにより私たちの世界、VR世界で小鬼はいるのよ?」
「………」
テイルは黙り込み、考えたくない事を考える。
そう思いながら全員で中に入ると………
「あれれ? キリト?」
「えっ? キリトですか?」
「………」
その時、テイルはあまりの事に体制を崩しかけ、キリトたちも絶句する。
目の前にいたのは………
「ストレア? プレミア!?」
仮想世界の住人であるはずの少女たち。そして………
「テイル……その怪我はなに?」
「あっはは………知ーらないっと」
トレジャーハンターである彼女は頬をかき、すぐに離脱。背後に炎を背負う鍛治師の妖精がそこにいた。
「………助けてくれ」
「んー自業自得だと思うなー」
ユウキはそう言い、テイルはうなだれた。
◇◆◇◆◇
言葉の暴力でボコボコになったテイルの代わりに、キリトがテイルの事情と、現状を説明する。
ストレアとプレミアがへぇーと驚き、レインたちは信じられないと言う顔をしながら、それでも信じると頷き、そして再度自分一人で抱え込んでいたテイルを攻めてボコボコにして、彼女たちの話に移る。
「わたしの方は、ALOにログインして、武器の材料がなくなったから、素材集めにフィールドに出た時、変な仮面を付けたエネミーに会った後からだよ」
「スタルキッドか」
「フィールドなのに、表示が何も無くてなんだろう?って見てたら、変な霧みたいなものが辺りを包んで、気が付いたらウインドウが開かなくなって、みんなと出会ったの」
「アタシたちはSA:Oで、仲良くフィールドで遊んでたら」
「急に不思議なお面を付けたエネミーが現れました」
「初めは噂のエネミーだと思ったんだけど、なにかおかしいなーって思ってたら、いつの間にかね」
そしてストレアたちは噂のエネミーで、キリトに話したら喜ばれそうだから後を追っていたら巻かれ、気が付いたらレインと遭遇したらしい。
「わたしはALO、ストレアたちはSA:Oのアバターのままでこっちに来た見たい」
「ああ、確かにそのままだな。俺たちの時みたいな変わってない」
「テイルたちは、どっちかって言うと、SAO、ソードアートオンラインの姿だね。テイルはそのまま現実と変わらないし」
「そうだな………」
考え込むキリトたち。彼らと自分等の違いを考えて、どうしても消え方やある人物に思い当たる。
消え方は霧に包まれてはいたが、それは途中まで。それでも途中で飛べなくなる事態はあり、その後に別の方法でクロックタウンたどり着いた。
(もしも最初の移動で、すでに別の、この世界に来ていたと仮定して、最後の入り口みたいなものだな。あれがどういう意味か分からない)
そして次にテイルがいるかいないか。あれはテイル側、シノンの証言で知った、彼がこちらに来る時だ。そう言えば………
「シノン、君がこっちに来た時、変化は一回だけか?」
「………一回だけね。彼もそう」
シノンとテイル、彼らの移動は同一の物。自分たちは霧とテイルたちと同じ。
この違いから見た目や装備が変わったのだろうかと思いながら、テイルは尋ねた。
「レインたち以外にも、同じようなプレイヤーがいるようだけど、彼らは?」
「あの人たちなら、新フィールドとか言って出て行ったよ。わたしたちはどうするか考え込みつつ、とりあえず人手不足なこの牧場で厄介になってる」
「まだ朝からですが、だいぶ上達しました」
「上達?」
「うん聞いて聞いて♪」
ストレアの話は、どうもこの牧場は夜中にたびたび、家畜が盗まれる被害が出ている。
その理由を犯人を知っているから、退治しないといけないらしい。
「退治って、それはなんなんだ?」
「あいつらよ」
そう静かに呟き現れたのは、弓矢を持つロマニーだった。
「彼奴らって?」
「うん、実はね………」
彼奴らは、毎年カーニバルが始まる時、真夜中に現れる。ぼうっと光るたまに乗って現れる。
そして牛小屋に来て、牛を攫う。だから自分が守らないといけない、とのこと。
「おねえさんがいるんじゃないのか?」
「あなたも姉さんのこと知ってるのね。町でも美人の一人だもの」
そう言った途端、テイルは無数の貫くような視線を浴びて膝を付く。
姉はこのことを話しても信じてくれない為、ロマニーはともかく今夜現れるだろう彼奴らに備え、弓矢で追い払う準備をしているらしい。
テイルはユウキに捕まりながら、放っておけない事やレインたちはすでに了承している事から、手伝うことにした。
◇◆◇◆◇
各々が部屋に移動する際、キリトはアスナとシノンを連れてレインの部屋を訪ねる。
確認しなければいけない。SAO時代の彼の事を。
「レイン、いま時間あるか?」
『キリト君? うん、平気だよ』
「アスナとシノンもいるんだ。レインに聞きたいことがあってな」
レインは聞きたいことと首を傾げながら部屋に三人を入れて、詳しい話し合いが始まる。
「テイルの事だけど、それで聞きたいことがあるんだ」
「テイルが転生者、なにか二次創作みたいなことになって、勝手に色々悩んだりした件?」
「それもあるけど、レインもすんなり信じてくれたんだな」
「それは……少しだけ分かる気がしたから」
少しだけ曇るレイン。悲しそうに呟き、過去を振り返る。
「彼奴、テイルはギルドに入ってからしか知らないけど、実際はテイルがいて初めて運営できてたの」
「確か彼のギルドは、攻略組を支える事を主体で動いてたな」
「うん。実際攻略組だけじゃなく、生産系ギルドや個人プレイヤーを繋げたり、ギルド同士の架け橋になってたよ」
けどねと言葉を結び付け、レインは少しばかり表情を曇らせながら、当時を振り返る。
「ギルドの運営は常に火の車だったはずなの。実際は言っている通り、テイルがいて初めて運営できていた」
「ああ聞いてるよ。確かギルド運営で必要な資金やアイテム、情報はほとんど彼が仕入れていたんだよな」
「うん。それはうちのギルド、《血盟騎士団》でも有名なソロプレイヤーだからね」
彼は常に無理をしていたとレインは覚えている。食事する時間や寝る時間、人との交流を全て削れるだけ削り、全てをフィールド探索と言う初歩的なことで支えていた。
「確か当時の彼は謎に包まれてたんだよな」
「実際は移動スピードが速いし、特別なことはしていなかったからね。単純に数をこなしてただけ。わたしとかがなに言っても聞く耳持たなかったし」
「………それじゃ、やっぱり彼が攻略組の情報を集めるのは無理か」
「えっ?」
レインに対して、テイルへの違和感を伝える。それを聞いたレインもまた、難しい顔をしながらも、静かに受け入れて頷く。
「うん、確かにいまの彼奴の事しか知らないけど、クリアされるのが分かっている気がした」
「本当か?」
「ええ。当時は頼もしいなって思ったけど、彼奴の事情を知ると、攻略組の情報集めを欠かしたのはおかしいと思う」
「どう言うことかしら………」
「本人に聞くのが早いけど」
「少し聞きにくいもんね。色々と悩んで苦しんでるのに、そんなこと聞けないよ」
「ああ………」
◇◆◇◆◇
キリトたちが悩んでいる頃、テイルはゼルダから治療を受けていた。
「だいぶ良くなったな」
「早く治る代償に、それなりに染みるのですが」
「痛いくらい気にならない」
そう言う時、ゼルダは僅かに悲しそうに見つめる。
「まだ少し、あなたたちの話を理解していないと思います。ただ漠然に、苦しい日々と聞いています」
「勇者の力の事か? それは自業自得さ」
勇者の力を求めた愚か者の代償だと思えば、痛みに慣れた事は安いのだろう。正直、染みると言われているが、いまだ我慢できる範囲だ。
「感じているものを口にしないのは、辛い事ですよ」
「口に出すほどじゃない」
「あなたは………」
呆れながら包帯を巻き終え、テイルは手に力を入れ、痺れなど取れているか確認する。
「それに、実際体験が無ければ、みんなを助けることはできなかったと思う。色々大変だったからな」
「そうなんですか」
「ああ」
目を閉じて思い出すのは、資金のやりくりに頭を痛めているギルドの幹部たち。それを助ける為に資金を提供し続けた日々。
やる事は何事も変わらず、いつかキリトがゲームをクリアする日を待ち続けていた。
(そう言えば、確かホロウに飛んだとき、キリトと出会ってびっくりした。
その後に
「ん?」
「どうしましたか?」
「いや」
何かおかしいな? 何かがおかしい。
(なにが………)
その時、頭に何かが聞こえ出す。誰かの笑い声が、頭の中で響きだす………
「テイル?」
「………あ、ああなんだ?」
「……いえ、少し。なんでもありません」
ゼルダはそう言う。やはり痛みの所為か、考えが纏まらない。
ともかくいまは夜に備えなければいけない。
あのトラウマイベントに遭遇するとは思わなかった。回避できるのならしなければいけない。
意識を集中して、考えを切り替える。
真夜中の時間、あのよく分からないものを射る。それがいまやるべきことで、考えるべきことだ。
そのはずなのに………
俺は一体、何を考えていたのだろうか。
心の中で疑問が残りながらも、時の針は止まらずに針を動かし続けた………
テイルはSAOでリーファのことを知っていました。それに疑問を持ちますが、なにに疑問を抱いているか気づいてません。
テイル「作者のミスか?」
そ、それではッ! お読みいただきありがとうございます。