ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編   作:にゃはっふー

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第13話・寄り道の終わり

 弓矢の準備をして荷馬車の手伝いをするテイル。牧場の娘であるクリミアが、町までミルクなど食料を運びに行くところ。

 

「助かります。ミルクロードの大岩も無くなったですけど、心細かったですから」

 

「別に気にしなくていい」

 

「その通りだ」

 

 そう、怪我した腕を見に来たところ、話を聞いたシークが手伝ってくれる。クリミアの話では祭りの日に来るゼルダ姫などの著名人の為に、いっぱい運び込みたいと言う。おいしいチーズやクリームをいただいてほしいとのと。

 

「なにか言いたいことがあるのかい?」

 

「別に何も無いよ。シーク」

 

 なんとなくアスナと共に黒パンにクリームをたくさん乗せて食べていたシークを見ていたテイル。そう言い終えたところ、クリミアが馬車を操り、一度クロックタウンに向かうことになる。このことはキリトにはすでに話を通している。他のみんなは徹夜の防衛戦の疲れから、まだ眠っている者もいる。

 

 二人だけで彼女の手伝いの為に町へと繰り出した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 二人が、テイルとシークがクリミアさんと共に町に繰り出してしばらくして、俺はユイ、チャット、フェリサの相手をしていた。

 

 ここは俺とテイル、クラインが借りている部屋。クラインはレイン、リズの手伝いに駆り出されている。テイルの武器の手入れらしい。

 

 レイン曰く、彼は癖があり、注文が多いらしい。盾一つも妥協しない方がいいとのこと。

 

 ここは現実の世界であり、どこまで仮想世界の技術が通じるか分からないが、できる限りサポートしたいとのこと。

 

 クラインはハンマー以外の重い物を運ぶ際に手伝いで駆り出され、牧場のクワなどの整備ができる部屋を借りて、俺たちの武器の手入れをしている。

 

 俺はと言えば、娘であるユイの、妖精の会話に耳を傾けていた。

 

「妖精さんにも、色々と違うところがあるんですね~」

 

「なに言ってるのよ? あんたもフェリサと同じ、成長した妖精じゃない?」

 

「それはどういうことだチャット?」

 

「ふっふーん♪ あんたたちは何も知らないのね。聞きたいなら教えてあげないことも無いわ♪」

 

 そう胸?を張りながら、チャットは得意げに話しだす。

 

「いい? 妖精にだって長い時の中で成長はあるわ。あたしのような妖精が大抵だけど、力があって、長い年月を生きている妖精は人の姿なのよ」

 

「まあそう言うこと、傍から見れば私やあなたは長生きした妖精だと思われるわ」

 

「はぁ~そうなんですか? ともかく、この人型の妖精は珍しいんですね」

 

「まあ、姿かたちなんて妖精は気にしないから、別にどうでもいいことなんだけどね。人の姿だからって何が変わるわけでもないし、中には大きな姿で住処が少ないって話も聞くわ」

 

「そうなんですか~」

 

 そう妖精の姿のユイは感心しながら楽しく話をしている。そうしていると、ドアがノックされた。

 

「キリト君いる?」

 

「アスナか、ああ、いま開けるよ」

 

 アスナを部屋に招き入れると、妖精たちもそちらを向く。アスナは妖精たちの団欒を見て微笑みながら、アスナの要件を聞く。

 

「プレミアちゃんたち、シークさんの力を借りて先に町の方を見てるって。馬車もこれ以上人数を増やすことできないし、町の方を見ておきたいんだって」

 

「確かに、ここは彼が知るゲームじゃないからな。なにかしてる可能性がある」

 

 スタルキッド、操られてるって雰囲気は、チャットの話を聞く限りしっくりくる様子らしい。チャットもイタズラはよくしたが、それは大人がターゲットであり、酷過ぎるのはしなかった。

 

 だからだろうか、この牧場のイタズラも遊び相手のいないロマニーの相手をしているから、見逃されていたという話だ。まあそれでも酷いとしか言いようがないが………

 

「ところでキリト君、少し思うんだけど」

 

「テイルのことか?」

 

「うん………」

 

 テイル。所々で彼の発言の中で、この世界をゲームの世界と照らし合わせているところを感じる。

 

 朝方におばけ、じゃなくって宇宙人の襲撃が終わると言っていたが、実際は大型の影を倒した後だと俺は思う。

 

 妙な優先順位ができていて、それが普段の彼ではあり得ない優先の仕方だと、俺たちは思う。

 

「テイル君が優先にするのは他人。たぶんユウキが一番だと思うんだ」

 

「ああ、後は親しい人、次に無関係な人か。自分を最後にしているのがな………」

 

「それはあんたが言える事なの? まあ、彼奴、勇者と同じようにお人好しだからね~」

 

 フェリサがジト目で俺を見ながらそう呟く。

 

 その時に俺はあることを尋ねた見た。

 

「フェリサは勇者の事を知ってるんだよな? その勇者、どんな人なんだ?」

 

 フェリサは話を振られ、少し考え込む。

 

「テイル似、って言いたいけど、どちらかと言えばガキね。彼奴と違ってすぐに怒鳴るし、綺麗な子には鼻の下伸ばすし」

 

「そうなのか?」

 

「けど、大事なところは同じ。自分よりも他人を優先して、誰かを守る為に実力以上のことをやり遂げる。そんな奴、私たちは彼のことを『最後の勇者』と呼ぶ」

 

「最後の勇者?」

 

「私はかぜのさかなから、この世界に産み落とされた妖精。だけどかぜのさかなのおかげで、少しだけ外の知識、世界がいくつも分岐した歴史を知ってるの」

 

 多くの勇者の中でこの世界は、時の勇者と黄昏の勇者が活躍した世界。自分がいる世界では無いらしい。

 

「彼はその中で追体験のように、勇者の歴史をなぞったのか」

 

「ええ。ってか、確かに勇者の技術を求めたけど、なんでそんなことになったのか分からないわ」

 

「そうなんだ」

 

 アスナが不思議そうに頷きながら、それで彼の違和感だけど………

 

「確かにおかしいけど、もしかしたら抜けてないだけかもしれない。彼は追体験はさっき言った通りなぞるように過ごしたからね。勇者よりも先のことを知っていても、身体が動かないって聞いたわ」

 

「テイル君が?」

 

「ええ。誰かが勇者を庇った命を落とすとか分かっても、動くことも何もできなかったって言ってたし、後で忘れてほしいとか言われたけどね」

 

「そうか………」

 

 俺ももしサチの事を先に知っていて、その場面を体験しないといけない。考えただけで顔が歪みそうになる。

 

 体験する時間が多い彼は、先の事を考えて憂鬱になっただろう。そう考えながら、俺はあることに気づく。

 

 彼は技術が欲しいと言ったが、そんなことも含まれていたか?

 

「………」

 

 技術的な面でダンジョンの攻略、ボス戦の追体験は分かる。だがストーリー、物語まで体験させる事は含まれるのか?

 

 彼は自分の事を偽物と言うが、本物から技術を叩きこまれて、彼は勇者と言っても過言では無いんじゃないか? 少なくても、ユウキにとって彼は勇者のはずだ。

 

(おかしい、彼の転生特典と彼が実際に受け取った物に違和感があり過ぎる)

 

 俺はそんなことを考えながら、彼が向かったであろう町の方角を見つめた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 彼らは荷台の中で、肩を寄せ合いながら沈黙を守り続けていた。クリミアは馬を扱っているし、荷物の中には繊細な物もある。話しながら運転はしない。

 

 シークは別段話す事は無いし、テイルは元々話をするより、聞いてくれる方なので、道中話すことは何も無く、ただただ静かだった。

 

「そう言えば、スタルキッド、あの子のイタズラはいつから始まったんだ?」

 

 シークがそう訪ねると、クリミアは少し困った顔をしている。昨日のイタズラの件はもう伝わっている。初めは信じられない顔をしていたが、戦いの後が物語っていたために、信じられた。

 

「だいぶ前、お父さんがサボり始めるようになってから、ロマニーも働かないといけなくなって、それで」

 

(あの父親、後で話し合いしておいた方が良いんじゃないか?)

 

 テイルはそう思いながら、その中でイタズラを通して遊んでいるのは分かっていた。スタルキッドは寂しがり屋であり、ただの子供だ。

 

「ムジュラの仮面の所為か」

 

 シークがそう呟いていると、クリミアは馬車を止めた。

 

「あら?」

 

 道が鉄の柵で塞がれていて、馬車で通ることはできない。

 

「迂回するしかないわね………」

 

 それを何度か繰り返し、シークは弓を確認しているテイルに気づき、何かあると思い自分も構え出す。

 

『イェーイッ!!』

 

 そうしていると、馬にまたがり仮面、ガロのお面をした男二人が現れ、その手に持つフォークを振り向けて来る。

 

「こいつらは野党か」

 

「殺さないように気を付けるか」

 

「ぜ、全力で走り抜けますッ!!」

 

 クリミアがそう叫ぶと共に、彼らが向かってくる。

 

 テイルはすぐに矢を構え、そのお面に向かって放つ。その一撃を受けたが、暗闇が吹き出て、びくともしていない。

 

「あのガキが言った通りいまのオレ様たちは無敵だぜイェーイッ!」

 

「気分がハイだぜイェーイッ! いまならロマニー牧場を潰せるぜイェーイ!」

 

 そんなことを口走りながら、イェーイイェーイと叫び続ける。

 

「これもスタルキッドが?」

 

「だが無意味だ」

 

 矢を二本番え、同時に放つテイル。何度も何度も繰り返し射貫く中、イェーイと叫ぶ二人組の様子も変わり出す。

 

「イェーイ……なんだ?」

 

「イェーイ………どんどん力が抜けて来るぜイェーイ……」

 

「まだだ、あのガキに牛を盗ませたり、ミルクビンを散々壊したんだイェーイ。このまま終われなイェーイぜ………」

 

「なにを口走っているんだか」

 

 シークは呆れながらイェーイイェーイと農具を振り回す二人組。一気に接近してきたき、その刃先がシークの顔を捕らえた。

 

「しまっ」

 

 赤い血が舞う。

 

「ッ!?」

 

 シークの目の前で傷付くのはテイルの片手、矢を手放してシークを守り、口で弦を引っ張り、覆面へと放つ。

 

 ガロのお面に当たり、お面が取れた瞬間に馬から落ちた男。暴れ止まる馬に激突しかけて、もう片方も馬から落ちる。

 

 こうしてゴーマン兄弟は捕まり、ロマニー牧場のイタズラは全て憲兵に知られてしまった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 町の役所でクリミアが手続する中で、俺は怪我の治療を受けていた。

 

 シークからゼルダに戻りながら、借りた部屋で薬を塗り、包帯を巻く。

 

「全く、盾が無いのに、よりにもよって盾の腕で………」

 

「心配かけてすまない」

 

「なんとなくユウキたちの反応が分かり出しました」

 

 そんなことを言いながら、さほど深く無く、少し切った程度の傷に安堵しながら、腕を見る。

 

「これからは無理をしないでください。それとありがとうございます」

 

 ゼルダは説教が終わると、静かに頭を下げた。

 

「構わない。顔に傷がつかなくてよかったよ」

 

「全く………だからと言ってあなたが傷付かなくていいでしょうに」

 

 呆れながらホッとするゼルダ。それよりも気になる事を気に行くことにする。

 

 治療が終わる頃には、クリミアの配達も、犯人の引き渡しも終わっていた。

 

 いましばらくは錯乱しているが、詳しい話を聞きだすとスタルキッドに牛へのイタズラを進めたのはこの兄弟らしい。他にも余罪があり、現在調べているとのこと。

 

「あなたたちのおかげです、どうもありがとうございます」

 

「いや気にしないでくれ」

 

「それでもお礼をしないと………うちのミルクで良ければ、今日のご飯と明日の朝食を楽しみにしてください♪」

 

 微笑むクリミアに、静かに頷く。

 

 これでゴーマン兄弟のイベントが終わり、やっと一息つく。

 

 全てのイベントをやらなければいけないわけではないが、牧場のイベントは放っておけなかったからよかった。

 

 こうして『何事も無く』全て片付いてよかっ………

 

(………?)

 

 なぜ俺はゴーマン兄弟へ平気に弓を放った? ゲームじゃないんだから当たり所が悪ければ危険なはずだ。

 

 考えれば考えるほど頭と胸が痛くなる。

 

「………まあいいか」

 

 少し目まいがし出し、そう呟いて切り替え、帰りの馬車に揺られて牧場へと戻る。

 

 後日談ではあるが、ロマニー牧場のクリームを気に入った姫君がいて、なぜかそのうわさが流れる頃、クリミアたちの父親はなぜか反省して仕事に打ち込むようになるらしい。

 

 これもだが、後日の朝食、アスナと共にクリームをたっぷり乗せた黒パンを食べるシークがいた。二人揃ってクリームが好きらしい………




アスナ「もぐもぐ……♪」

テイル(この笑顔もあの地方に入ればどうなるか、気が重い)

ユウキ(テイル……なにか悩みがあるのかな?)

お読みいただきありがとうございます。
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